交換レンズレビュー
SIGMA 50mm F1.4 DG HSM | Art(ソニー用)
MC-11と組み合わせるより使い勝手が向上
2018年6月8日 12:07
シグマから50mm F1.4 DG HSM | ArtのソニーEマウントが発売された。圧倒的な描写力を誇るArtラインの最高性能の標準レンズ。その性能はそのままにソニーEマウントに最適化し、AF-Cやカメラ内手ブレ補正、およびカメラ内レンズ補正機能に対応した。
同じく高い解像力を誇るソニー純正レンズ Planar T* FE 50mm F1.4ZAと比較するとサイズ、重量ともに増すが、価格面にも注目したい。ソニーEマウントにネイティブで対応したレンズが純正品の半額に近い価格で買えるというメリットは大きい。写りの差はもちろんあるが、どちらが良いというわけではなく好みの問題だろう。
発売日:2018年5月25日
実勢価格:税込11万円前後
マウント:ソニーE
最短撮影距離: 0.4m
フィルター径:77mm
外形寸法:約85.4×125.9mm
重量:約910g
デザイン
特徴的なのがマウント部分のくびれ。同レンズのキヤノンEFマウント+シグマのマウントコンバーターMC-11の組み合わせと比較すると、全長はさほど変わらないものの、上品で高級感のある仕上がりになっている。
約915gだけあってレンズ単体で持つとさすがに重量感があるが、ソニーα7R IIと組み合わせると非常にバランスが良く、ボディと合わせると約1.5kgほどにもなる重さを感じさせない。
すっきりとした外観ながらホールド感もすばらしく、細かな部分のつくりに設計者の気遣いが感じられる。
フードは大型だがプラスチック製で重量が抑えられ、ロックも気持ちの良いフィーリングで逆付け時も安定感がある。
操作性
フォーカスリングはやや固めで、細かく刻まれた凹凸が微妙なピント合わせを可能にする。
鏡胴のAF/MF切り替えスイッチは絶妙な位置に配置されているため、親指での感覚的な操作ができるのが心地よい。スイッチも固めで、誤操作しにくい点も安心だ。AF時、MF時でスイッチ部分のカラーが替えてあるのも視認性が高い。
AF
AFは静かでピント合わせもスムーズ。MC-11と組み合わせての使用時と比較すると、ひと呼吸早く、かつエレガントに進化した印象。迷いのない高速・高精度AFはシャッターチャンスを逃さない点では非常に重要。高性能のレンズで高いレスポンスが得られる。
また、MC-11との組み合わせでは使用できなかったAF-Cモードにも対応。ファストハイブリッドAFと併せて、高い被写体追従性能を実現している。
AFでピントを合わせた後に手動で微調整できるダイレクトマニュアルフォーカス(DMF)も使用できるようになった。
作品
ほぼ最短撮影距離の40cmでわずかに絞って撮影。水滴の反射が円形ボケとなり、柔らかい表現をしつつもラベル部分に付いた指紋までくっきりと描き出している。直射日光が当たっている部分も白飛びせず、程よいコントラストがシグマらしい。
キャンピングカーの内部。周囲の情報も入れたかったのでF2.8で撮影した。金属の質感は手触りを感じられそうなほどリアル。ポットの赤、遠景の女性のドレスの赤、それぞれの色の微妙なトーンの違いもしっかりと表現している。
フェスの会場で知人を絞り開放で撮影。被写界深度は浅く左の瞳にピントを合わせているが、焼けた肌の質感や西陽を反射した髪の輝きを忠実に表現している。
会場内を歩いていると色合いのきれいなブランケットを発見。少し寄ってF5に絞り撮影したが、順光の色が抜けたような色味にはならず、鮮やかな色彩そのままに描き出している。
いかにも湘南らしいTシャツのデザインを発見したので後ろ姿を撮らせてもらった。F2.8前後の描写は嫌味がなく見事。髪や布地の描写はもちろんだが、手前の人間の背中も妙にボケすぎず、自然な表現。
男性2人のポートレートだが、ミラーサングラスに周囲の状況が写り込んだ楽しい1枚となった。やや絞って撮影しているが、周囲から浮かび上がるような立体感がある。
ライブのような動きの激しい場面でも、高精度なAFによりしっかりとしたピント合わせが可能。フラッグにピントを合わせることにより会場の盛り上がりを写しとることができた。MC-11使用時では撮れなかった場面である。
波でさらわれたのだろうか。落とし物のキャップがそっと杭にかぶせてあった。杭の朽ちた様子やキャップに付いた砂の1粒1粒まで緻密な表現。空間に浮かび上がっているような立体感がある。
夕暮れ時、浜の上空を飛ぶカラス。とっさの場面でも迷いなく被写体を終えるAF性能には驚かされた。速いAFだけでなく、夕陽に照らされて透ける羽根の描写にフレアやゴーストに対する対策がしっかりなされているのがよくわかる。
まとめ
日頃から同レンズのキヤノンマウント用をマウントコンバーターMC-11と組み合わせて使用していたため、描写力には絶対の信頼があったが、ソニーEマウント用としてしっかりとチューニングされていて正直驚いた。
AFの高速性能や精度はもちろんのこと、ピントを合わせたい場所に吸い付くようにぴたりとピントが合うフィーリングの良さはMC-11の使用では決して味わえないものである。
描写にはさほど差はないだろうと思っていたが、専用マウントでは立体感がより強調される印象を受けた。圧倒的な描写性能と大口径レンズならではの美しいボケの表現。そしてレンズそのものの美しさ。様々な場面に持ち出したくなる、非常に完成度の高い、信頼のフラッグシップレンズである。