交換レンズレビュー
Panasonic LEICA DG VARIO-ELMARIT 50-200mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.
400mm相当とは思えない小型・軽量の超望遠ズーム
2018年6月4日 07:48
パナソニックから35mm判換算100-400mm相当の超望遠ズームレンズが登場した。この「LEICA DG VARIO-ELMARIT 50-200mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.」(H-ES50200)は、性能とコンパクトさを高い次元で両立させた同社の「LEICA DG Lens F2.8-4.0 シリーズ」の1本で、独ライカカメラの厳格な光学基準をクリアした描写を誇る。
防塵防滴・耐低温仕様となり、別売の1.4倍および2倍テレコンバーターにも対応する。
発売日:2018年5月24日
実勢:税込21万8,300円
マウント:マイクロフォーサーズ
最短撮影距離:0.75m
35mm判換算での焦点距離:100-400mm相当
フィルター径:67mm
外形寸法:約76×132mm
重量:約655g
デザイン
デザインは直線的かつシンプルだ。パナソニック製ライカブランドレンズの流れを汲み、重厚感と品位を感じられる仕上げになっている。
100-400mm相当の超望遠ズームレンズなので大きく重たいのではと思われそうだが、フード装着時でも約700gとほどよい重量感だ。ソリッドでスリムな形状なので、カメラとのマッチングもよくカメラバッグへの収まりも良好である。
フードもロック機構つきで確実にレンズにフィックスでき、また逆付けも可能なので携行時にもスペースを取ることがない。超望遠ズームなのにスリムかつ軽量コンパクトなので、気軽に旅行に持ち出せる頼りになる1本だという印象を受けた。
テレコンバーター
本レンズは2種類のテレコンバーターに対応する。1.4xテレコンバーター(DMW-TC14)、2.0xテレコンバーター(DMW-TC20)だ。
それぞれ最高560mm、800mmまで焦点距離を伸ばすことができる。カメラバッグにこの小さなテレコンバーターを忍ばせておけば、いざというときに被写体をグッと引き寄せて撮影することが可能になる。
操作性
操作性は素晴らしい。フォーカスリング、ズームリングのスムーズな動きと適切なトルク感は、微妙なフレーミングを決める場合や、とっさの画角変更の場合でも意図した通りに動かすことが可能だった。この軽すぎず重すぎない絶妙な転がり感は撮影していてとても心地よく、被写体を追うことに専念できた。
レンズ鏡筒側面にはオートフォーカスの「AF/MF」切替スイッチと、手ブレ補正機能の「ON/OFF」スイッチが備えられている。どちらも節度がしっかりとあって不用意に動くことはなかった。
AF
AFのスピードと精度はなかなかのもの。立ち上がりもよく、動体への追従性もしっかりとしており、風景からポートレート、スポーツなどあらゆる被写体にも対応できると感じた。
ただフォーカスリミッターを装備しないので、フォーカス域を設定しての撮影ができないのが残念なところ。
作品
このレンズと2種類のテレコンバーターを持ち東海地方へ旅に出た。周遊きっぷを使ってのブラブラ撮影だ。カメラはLUMIX G9 PRO。
神社の池にいるカモをテレ端で狙う。水面を細かく動き回っていたが、オートフォーカスは的確に追従してその様子を捉えた。羽毛の精細感が素晴らしい。
三嶋大社の屋根をグッと引き寄せて撮影した。家紋部分に施された金箔の質感、そして瓦部分の重厚感など、このレンズは歴史あるやしろの趣を余すところなく写しとってくれた。カメラ側の手ブレ補正機構と連携する「Dual I.S.2」によって、ファインダー内の像がピタリと静止するので、手持ちでも厳密なフレーミングが可能なのがうれしいところである。
本レンズは100-400mm相当の焦点距離となる。今回はこれ1本だけ持って旅に出たが、意外とこのくらいのズームレンジは使いやすい。見知らぬ街をブラブラと歩いていて、通りの反対側の目印を撮ったりとか、港を進む船を撮ったりとか旅というシチュエーションでは望遠域が必要になるからだ。
「旅」の目線は「望遠」なのである。そしてその描写が素晴らしく、開放絞り値がF2.8-4と明るく、手ブレ補正機能も強力ときていればシャッターを切る回数も増えるというものだ。
これだけの超望遠ズームレンズとなれば、手ブレが心配になってくる。しかし「Dual I.S.2」のおかげでそれは無用だ。
「Dual I.S.2」とはカメラのボディ内手ブレ補正(B.I.S.)と、レンズ内手ブレ補正(O.I.S.)をリアルタイムで連動させ手ブレ補正機能をコントロールするもの。スローシャッター時や超望遠域だけでなく、駿河湾で揺れる船内でも鮮明な写真を撮ることができた。
船に乗って三保の松原にやってきた。浜辺を先端まで歩いて行くと、そこには富士を写生する男性の姿があった。その様子を背後から霊峰をぼかしつつ捉える。LUMIX G9 PROのジョイスティックでAF測距点を男性に合わせてフォーカスし、適切なトルク感があるズームリングで狙ったとおりの構図でシャッターを切る。優しいボケの中に男性が浮かび上がった。
清水港入り口にある灯台を撮っていたら、視界にカラフルな船体が入ってきた。清水と土肥を結ぶ駿河湾フェリーである。フォーカスを灯台に合わせたまま、LUMIX G9 PROでシャッターを切り続ける。
気温が高かったためやや像が揺らいでいるが、鮮やかな船体のカラーリングをこのレンズはしっかりと再現してくれた。なお駿河湾フェリーは2019年3月末で廃止になる予定だ。撮影を考えているなら急いだ方がいい。
浜を歩いていると強風でバタバタと音を立てて旗が揺れていた。意地悪く太陽を入れてその様子を狙ったが、ナノサーフェスコーティングのおかげで不自然なゴーストも出ず撮ることができた。クリアかつ旗のちぎれかけたところの描写が印象的である。
周遊券で再び船上の人となる。デッキで駿河湾の風を感じながら富士を眺めた。平日とあって貸切状態である。なのでいろいろ撮影して玉ボケを楽しんだ。9枚羽根の円形虹彩絞りなのでキレイな玉ボケが美しい。約127mm相当でのカット。
港に到着して清水に上陸すると目の前には巨大な観覧車がそびえ立っていた。すかさず1.4xテレコンバーターをレンズに装着。ゆっくりと動くゴンドラをテレ端でシューティングした。
1.4倍の280mmという焦点距離だが、35mm判換算だと560mm相当だ。F値は1段暗くなるが、この焦点距離をこの軽量コンパクトさで振り回せるのなら問題ないだろう。マスターレンズほぼそのままのシャープさを保った描写が実に嬉しい。
次は2.0xテレコンバーターを装着して停泊中の船舶を狙った。気温が高く空気が揺らいでしまったためややシャープさに欠ける絵となったが、船体の質感、ノズルの立体感、舵に浮いた錆の描写などは申し分ない。
このテレコンバーターがあれば、同社のLEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm / F4.0-6.3 ASPH. / POWER O.I.S.と同じズームレンジで撮影できるのは大きい。
次は山あいの峠道にやってきた。昔ながらの佇まいが残る集落をブラブラと撮り歩く。一般的にこのクラスの超望遠ズームだとかなりの重量とサイズになるが、本レンズならスリムでとても携行しやすく、重さも全く苦にならないサイズ感だ。
街道と街並みを見下ろせる場所からL.モノクロームで撮ったカットだが写りは実にシャープで、石畳から女性の服、そして歴史を感じさせる屋根瓦、静岡らしい茶畑まで緻密な描写だ。しかもF値も明るいのでオールマイティに活躍する1本だろう。
このレンズはテレマクロ的な使い方も可能だ。テレ端で風になびく植物を撮ったが、その綿毛の細かいディテールまでこのレンズは見事に写しとってくれた。最短撮影距離は75cmなのでテーブルフォトやポートレートなど、旅先での様々なシチュエーションに対応できるはずだ。
旅の醍醐味と言えば「食」と「酒」だが、日が暮れかけたので静岡名物のおでん街に繰り出した。ここは横丁に何軒も「静岡おでん」を出す店が並んでおり、暗くなると提灯がたくさん揺れて実にフォトジェニックなのだ。
ビールで一杯やりたいのを我慢して(笑)、手持ち1/50秒でシャッターを切った。このレンズとLUMIX G9 PROとの組み合わせは実に素晴らしく、手ブレ補正機構「Dual I.S.2」によってボディ側5軸とレンズ側2軸を連動させて三脚いらずの撮影が可能だ。
まとめ
LEICA DG VARIO-ELMARIT 50-200mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.をブラブラ旅に持ち出してインプレッションしたが、実に頼りになる超望遠ズームレンズだと感じた。
まずはライカ基準の写りである。ワイド端テレ端問わず、絞り開放からシャープかつクリアな像を結び、メリハリのある描写と高い色再現性なのだ。
それでいて軽量コンパクト。しかも手ブレ補正機能はバッチリだし、防塵防滴・耐低温仕様、別売の1.4/2倍テレコンバーターにも対応ときている。AFも高速かつ正確だし、レンズ自体の造りもしっかりしている。
このレンズに同じシリーズのLEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm / F2.8-4.0 ASPH.、LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm / F2.8-4.0 ASPH. / POWER O.I.S.を加えれば、完璧なラインナップが完成する。これはとても魅力的だ。ぜひ、多くのマイクロフォーサーズファンに試して頂きたいと思う。