交換レンズレビュー
美しいボケ味と高解像度を両立 GFX用の大口径中望遠レンズ
GF110mmF2 R LM WR
2017年6月20日 07:00
富士フイルムの中判ミラーレスカメラ、FUJIFILM GFX 50S用の中望遠レンズ「GF110mmF2 R LM WR」が登場する。
GFX用レンズとしては、GFX 50Sと同時に既発された標準レンズGF63mmF2.8 R WR、中望遠マクロレンズGF 120mmF4 R LM OIS WR Macro、そしてワイドズームレンズGF32-64mmF4 R LM WRの3本に次いで、GF23mm4 R LM WRと同時に今回発売されたレンズとなる。
35mm判換算値87mm相当で明るい開放絞り値F2というのは、風景その他の撮影用途にも勿論なのだが、特にポートレート撮影向けには大活躍と思われるスペックだ。早速、実写ポートレート撮影を中心に行ってみた。
発売日:2017年6月22日
希望小売価格:税別35万9,500円
マウント:富士フイルムG
最短撮影距離:0.9m
フィルター径:77mm
外形寸法:約94.3×125.5mm
重量:約1,010g
デザインと操作性
レンズ鏡胴全体は、GFX 50Sと合った質感のマットブラックのシリーズで統一されたシンプルで美しいデザインとなっている。レンズ前玉部分はスッキリとしたデザイン。バヨネット部分は専用フードが装着するためのもの。
球面収差や色収差抑制のため、EDレンズを4枚も使用。ボケ味にも影響する絞り羽根は9枚羽根の円形絞りという設計だ。
インナーフォーカスの採用とフォーカス用レンズの軽量化および、リニアモーター駆動によってAF動作は静かで高速。実際の使用においてAFの駆動音はほとんど気にならず、ファインダーの中のフォーカスポイントに対して素早く合焦してくれるので心地よく撮影が進んだ。
絞りリングも備えており、銀塩フィルム時代から中判カメラを使ってきた身としては、直感的な操作が確実にできる操作性には大きな安心とメリットを感じる。このあたりの設計は、日頃から実際に写真を撮っている人間でないとわからない大切な部分だと思う。
富士フイルムのレンズは、APS-Cセンサー用のXマウントレンズも一部ズームレンズやパンケーキレンズを除いて絞りリングが備わったレンズが多いが、Gマウントレンズは発売中もしくは発売予定のレンズはすべて絞りリングが備わっている。レンズ交換の際などパッと見ですぐわかるように手前に焦点距離表示があるのもありがたい。
絞りリングにはCポジションが設けられて、カメラ本体のコマンドダイヤルで絞り設定が可能。CポジションとA(絞りオート)ポジションにはロック機構があるので不用意に絞りリングが動くのを防げる。
レンズのリア部は、マウント部分の仕上げまで丁寧になされているのがわかる。余計な入反射光を防ぐ仕切りがイメージサークルに沿って備わっている。
純正フード付きのGF110mmF2R LM WRをGFX 50Sに装着。内面反射を抑えられる造りのフードは、耐逆光性はもちろんだがホールディングも良くなる。
作品
ポートレートで多用されるであろうバストアップショットを開放絞りでストレートに表現してみる。後方の木々のボケはソフトな描写だ。
同じく開放F2での撮影。風にさらわれた髪の毛も止まっている部分と動いてボケている部分との質感がリアルに再現されているのがわかる。
手前に小さな花を入れ込んで前ボケを作りながら肌の質感や背景のボケ味も比較しようとしてみるが、このくらい至近距離ではボケ具合が大きすぎて……(笑)
やはり開放値F2で撮影。
しばらく続くF2の絵柄(笑)。
F2ばかり続いてそろそろ叱られそうなので(笑)、コチラは中間絞りともいえるF5.6。カメラから20mくらい離れているモデルだけにはビシッと合焦している。前ボケのために入れた手前の葉っぱがボケるのは勿論だが背景までも美しくボケながら立体感を感じる画質だ。
再び開放値F2でのクローズアップ。上の中距離とは逆のシチュエーション、紫陽花の花びらに思いっきり寄って撮影。合焦部からわずか数mm前後でさえ美しくボケるのがわかる。
ブランコから5m程度離れていても浅い被写界深度で煩雑な背景からは隔離できる。
開放絞り。モデルの瞳だけに合焦。
このくらい離れた距離からの撮影でもモデルの前後の壁面や階段はなめらかにボケている。これが開放F2の強みだろう。
4段分絞ったF8で撮影しても背景からは十分に分離している。
フィルムシミュレーションをアクロスに設定してアスペクト比1:1で撮影。
モノクローム表現で往年の6×6判フィルムカメラの気分で楽しめる。
同じシチュエーションでもカラーでは違った表現になる。
F11まで絞っても深い立体感を感じるレンズだ。
合焦部とボケ味の両立という明るい中望遠レンズ独特の空気感が味わえる。
素早い動きに対しても迅速に追従してくれるAF性能。
ハマヒルガオの咲く砂地。至近距離からF5.6で撮影。
堤防の上から顔にフォーカスしての撮影では、肩から下の脚や砂地は美しくボケる。
絞りF8でも美しいボケを出しながら、アロエの質感は高解像度でリアルに写し出す。
手のひらに付着した砂の粒までも克明に描写。
波打ち際を走ってもらいながらモデルをコンティニアスAFで追従撮影。何度か繰り返したがほぼ正確に合焦していた。
夕暮れが近づいてきたフラットな光線。
日没が近づき、暗くなりがちな岩蔭の植物などの部分も濁りが少ないクリアな描写で、肌や髪の毛の質感も保たれている。
浅い被写界深度の中、逆光線でも少ないフレアで高解像の実現。玉ボケの輪郭描写も美しく難しい光線条件での結果も素晴らしい。
リアルな描写で解像感の高さとボケ味の美しいやわらかさという、難しい条件を克服している。
まとめ
GF110mmF2 R LM WRを実際に使ってみてとにかく驚いた。まったくお世辞抜きに言うが、美しいボケ味と高解像度が両立したおそろしいほど魅力的な表現ができるレンズだ。ご覧いただければわかるように、今回は絞り開放値F2での作例を中心にF4~F11まで絞り込んだものも数点撮影してみた。
絞り開放でもほとんど迷うことなく静かでスムーズに合焦する。合焦させた部分はビシッと決まる高解像画質。それでいて、フォーカスが外れた部分は気持ちが良いくらいにやわらかなボケ味を醸し出す魅力あるレンズだ。
逆光にも強くフレアやゴーストも少ないので、ポートレート以外の風景撮影などの現場でも絞り込んでも高解像力かつ立体感溢れるユニークな表現ができるのではないだろうか。
モデル:佐藤望美