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中判ミラーレス「FUJIFILM GFX 50S」発表会インプレッション

中判デジタルユーザー、写真家HARUKIさんの印象はいかに?

GFXとは?

デジカメ Watchでも再三お伝えしている富士フイルムのGFX 50S。35mmフルサイズセンサーより大きな、約44×33mmの有効約5,140万画素CMOSセンサーを搭載するミラーレスカメラです。

1月21日・22日に京都で行なわれたイベント「FUJIKINA 2017」では、このGFXのタッチ&トライに大変な数の人が押しかけたとのこと。デジカメ Watchでは前日の内覧会場を取材しましたが、そこで発見した写真家・HARUKIさんがノリノリでGFX 50Sを試していたので、その印象を綴ってもらいました。

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http://dc.watch.impress.co.jp/backno/pickup/20270.html

中判デジタルユーザーで、GFXに興味深々のHARUKIさん。はたしてその感想は?(編集部)

HARUKIさんの中判カメラ歴は?

最初に出会った中判(ブローニー)カメラは家にあったもので、小学校高学年の頃に初めて触りました。ピントも絞りも固定式で、A、Bの順番にレバーを動かして撮影するオモチャのようなプラスチック製カメラでした。それがフジペットという6×6カメラ。おそらく10歳上の兄が持っていたものかと思います。

中学生になってちゃんと写真を撮り始めてから手入れたのは、ニッコール75mmレンズ付きのゼンザブロニカS2。高校へ入った頃にアサヒペンタックス6×7を入手しましたが、16歳の時に友人たちと出掛けたはじめての北海道旅行で巻き上げレバーが壊れてしまいました。

大学生時代には、当時としては夢のカメラだったハッセルブラッド500C/Mを入手。その後プロになり、ハッセルブラッドをメインに使いながら、マミヤRB67、フジGW670とフジGSW690の中判レンジファインダーセット、レンジファインダー中判としてはNewマミヤ6を使い、その後もマミヤRZ67、ローライフレックス・2.8F プラナー、ローライフレックス・2.8 GXなども使いました。中古も含めると何十台かを売り買いしながら使ってきたはずです。

1990年代半ばからは一部ネガ付きポラロイドを除いては全てをネガカラーフィルムで撮影して自家カラープリントで反射入稿するようになり、銀塩フィルム撮影を終了する2007〜8年頃までの中判カメラ機材は、ハッセルブラッドの各種ボディ6台、66と645合わせて20数個フィルムマガジンとレンズセット。他にペンタックス67 IIボディ数台セット、ペンタックス645 NⅡボディ3台セット。最終的には10年ほど前に銀塩フィルムでの撮影を全て終了して、デジタルへと移行した後にほとんどを手放してしまいました。

中判デジタルも使っていましたよね?

ハッセルブラッドVシステムのデジタルバックや、H3D、H4DなどのHシリーズも時々借りて使っていました。

自分で購入した中判デジタルカメラは、ペンタックス645Dと後継機のペンタックス645Zでした。645Dから645Zになり、画質や完成度は上がりとても満足して使っていましたが、レンズ数本と合わせて持ち歩くには大きくて重く、体力的に難しくなってきました。

GFXを手にしたらどんな風に使いたいですか?

テザー撮影はそれほど多くはないので、(デジタルバックではなくて)ロケに向いているスタンドアローンタイプが自分には向いているなと思います。

そこで次なる中判カメラは少しでも軽くてコンパクトに持ち運べるシステムじゃないと今後は難しいなと考えていました。

GFX 50Sはコンパクトなので、中判カメラであることを意識しないで街へ繰り出してスナップショットを撮ったり、それいでいてイメージセンサーの大きさに由来する薄い被写界深度や、空気感を利用したポートレートを撮ってみたいですねえ。

GFX 50Sのボディの大きさ・重さは?

想像していたよりも全然小さくて、既存の35mm判フルサイズ・デジタル一眼レフカメラと比較してもほとんど変わらない大きさです。むしろ重量的には、GFXの方が若干軽いくらいでビックリしています。

しかしミラーレスで小型軽量化されたとは云えども、やはり中判カメラはズシリとくるので欲を言えばボディ内手ブレ補正機構があったらなーとも。

デザインはどうですか?

これまでの中判デジタルカメラは前後に胴長なタイプだったのに、GFXは35mm一眼レフカメラをやや大きくしたような形状。昔の銀塩フィルム時代の例に例えるなら、ペンタックス67のような感じでしょうか。正面からパッと見では、10年ほど前に登場したマミヤZDにも若干似ている気もしますが、もちろんより洗練されています。

同社のAPS-C機、X-T2とも全体や細部が似ており、並べると親子みたいです。

持ちやすさ・構えやすさは?

ボクの手は比較的小さいほうなので、大きなカメラは持て余してしまうことがあります。ですが、GFX 50Sは指の配置も含めてしっかりとホールドできます。

カメラを縦位置に構えた時にも自然体のままで違和感がなく使えそうです。別売の縦位置グリップも試してみましたが、これを装着するとさらにホールディング性が向上します。

操作ボタン/スイッチ類の位置、配列は?

実際に撮影してみないと判断できませんが、ダイヤルなどの動きは滑らかで気持ちいいですね。

ストラップの取り付け方式もハッセルブラッドや昔のペンタックス67シリーズなどと同じ。これも取り付け・取り外しがしやすくて良いと思います。小型カメラでもそうですが、特に中判カメラでは風景やスタジオで三脚を使う撮影など、ストラップが邪魔になる場合が多いのです。簡単に外したり、また取り付けたりできるタイプが断然便利です。

起動・AFのレスポンスは?

起動もAFともに、機敏な動きでレスポンス良さそう。メモリーカードを入れての実写ではないので、実際の撮影とは違うでしょうが、テンポの良い撮影が期待できそうです。

AFポイントも多く、中央以外でも使えると、構図にも自由度が広がります。

EVFはどうですか?

実は最初に驚いたのが、EVFの見え方でした。こればかりは前情報やスペックではよくわからない部分でしたが、ファインダーを覗いて見た瞬間に「あ、スゴイ!!」って思わず声に出してしまいました。あまり期待していなかったせいもあってか(失礼)、本当に良い意味で期待を裏切られて素晴らしい見え方です。動きも滑らかなので、おそらくストレスを感じないで使えるのではと。

ボクは遠近両方+極度の乱視なので、この10年はテザー撮影時やゆっくり撮れるブツ撮りなど以外では、ほとんどオートフォーカスに頼っています。ですが、この表示品質なら、もしかしたらマニュアルフォーカスでも使えるかも知れないなと思いました。一般的な視力の方なら完全に大丈夫なレベルでしょう。

EVFは取り外し式です。外して背面液晶モニターだけで撮影すれば、ボディはさらにコンパクトに。その場合は、EVF用端子を覆うフラットなカバーを装着します。

別売のEVFチルトアダプターEVF-TL1も優れものです。ボディとEVFの間に装着することで、ウエストレベルや斜め位置など、いろんなアングルからの撮影ができるようになります。

タッチパネル式の背面液晶モニターはどうですか?

視認性が良く、俊敏な反応でメニュー配置も使い易そうです。縦方向だけなく、横方向にも動くのは、ウエストレベルでの撮影で便利だと思います。

縦位置グリップも用意されていますが。

パワーブースターグリップVG-GFX1は、望遠レンズやマクロ撮影時に使ってみたいです。このグリップの素晴らしいのは、縦位置でもカメラボディだけの時と同じ感覚で撮影ができるところ。シャッターボタンの位置などが、縦位置・横位置ともレンズの光軸に対して同じ位置になります。もちろんグリップ部に電池が入るので、もバッテリーの持ちも良くなります。

シャッターフィーリングはどうです?

耳障りな感じがまったくしない、柔らかい音質です。シャッターの感触も軽すぎず、重すぎずといったところ。おそらく押し込む深さや重さを何度も繰り返しテストしたのでしょうと想像させますね。製品版ではどうなるかですが。

レンズのラインナップについてひとこと。

ボディと同時発売予定のGマウントレンズは3本。その後から追加で3本が年内に発売予定となっています。

3本とも絞りリングが備わっていますが、目で見たまま操作できるのは大変ありがたいです。絞りリングが気に入らなければ、C(コマンド)ポジションにすることで、ボディ側のコマンドダイヤルによるF値設定が可能です。

最初のラインナップだけでも、たいていの撮影シーンに対応できるでしょう。ただし3本セットで揃えると、それなりの出費と覚悟が必要ですが(笑)

GF63mmF2.8 R WR

標準レンズです。コンパクトで重量も405gと軽いので、常用レンズとして使い勝手が良さそうですね。

GF32-64mmF4 R LM WR

35mm判換算でワイド側が25mmから望遠側が51mmという広角〜標準焦点域のズームレンズです。風景やスナップ撮影には重宝しそう。

GF120mmF4 R LM OIS WR Macro

倍率0.5倍のマクロレンズです。35mm換算値で約95mmということは、ポートレート撮影にも使えそう。手持ち撮影でも威力を発揮する手ブレ防止機能を搭載していて、フォーカスも静かでスムーズな動きです。

画質は?

実際に撮影してみないとわかりませんが、FUJIKINA 2017では、様々な国のフォトグラファーたちが撮り下ろした作例写真のパネルが展示されていました。それを見る限り、とても期待できそうです。どの写真を見ても高画質で緻密さに優れていることは一目瞭然でした。

これは中村成一さんの作品。GF120mmF4 R LM OIS WR Macroで撮影されています。

どんなジャンルに向いていそうですか?

風景、ファッション、商品、スナップ、建築、ポートレートなど、どの分野でも35mmに近い感覚で使用できるのではないでしょうか。

ボクの場合は? と考えてみましたが、やはり人物ポートレート撮影。風景の中に人物を浮き立たせるような表現の撮影をしてみたいと思いました。かつて銀塩時代には大判カメラや中判カメラで撮られていたはずの“王道の肖像写真”なんかも良いかも知れませんね。解像度はもちろんですが、それよりも優先したいのはセンサーサイズの大きさから生まれる立体感や空気感といった雰囲気描写に興味があります。

アクセサリー類で興味を覚えたのは?

別売のマウントアダプター(H Mount Adapter G)を使用することでかつての銀塩フィルム中判カメラGX645AF用のレンズやコンバーターが使用できます。ただしAFは使えず、マニュアルフォーカスになります。ミラーレスカメラらしいアクセサリーです。

4×5カメラなどのビューカメラに、GFXカメラボディを装着できるビューカメラアダプターVIEW CAMERA ADAPTER Gも用意されています。コレを使うことで、レンズシャッターやティルトやシフトなど蛇腹煽り操作での撮影も可能になります。プロのスタジオユースを考えたアクセサリーと言えそうです。

今後の展開や可能性について。

やはりGマウントレンズのラインナップを揃えてシステムを完成させることでしょうね。中判デジタルバックの状況を見るに、上位モデルのGFX 10Sにも期待したいですね(笑)。あと、これだけの画素数なので無理を言いづらいのですが、個人的にはRAW+JPEGで約5〜6コマ/秒の連写性能があるとうれしいです。

いずれにしても小型軽量化された防塵防滴ミラーレス中判カメラという位置付けから、プロもアマチュアも関係なく、多くのフォトグラファーが発売を待っていることでしょう。ニューカマーの登場はカメラ業界全体にもうれしい動きだと感じました。

HARUKI

(はるき)1959年広島生まれ。写真家。ビジュアルディレクター。九州産業大学芸術学部写真学科卒業後、上京しフリーランスで世界各国でのスナップショットやポートレートを中心に活動。第35回・朝日広告賞・表現技術賞、100 Japanese Photographers、パルコ ”第3回・期待される若手写真家展” などに選出。プリント作品は国内外の美術館などに収蔵。著書に写真集 「The Human Portraits ~普通の人びと ~1987-2007~ 」、「遠い記憶。」、「Automóvil Americanos “Cuba Cuba Cuba”」。 個展、グループ展多数参加。長岡造形大学非常勤講師。日本写真家協会(JPS)会員。

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