私はこれを買いました!

“気になる写真”で魅力発見。ライカと共にある1本

フォクトレンダー「NOKTON Vintage Line 75mm F1.5 Aspherical VM」(赤城耕一)

年末恒例のお買い物企画として、写真家・ライターの皆さんに、2021年に購入したアイテムをひとつだけ紹介していただきました。(編集部)

写真を見直して気づく魅力

新型カメラやレンズのレビューの仕事をしていますが、機材返却までの短い時間に多種多様な条件での撮影は不可能です。責任を逃れようとするつもりはありませんが、とくにレンズの描写は光線状態、撮影距離やモチーフにより異なる印象になることも珍しくありません。真の描写がわかるまでは、時間を要するレンズもあります。だから、はた目からご覧になるよりそれなりに苦労(笑)しているんですよ。

また何度か同じレンズを借りては返却することを繰り返すうち、当初は強い印象は持たなかったけれど、写真を見直すうちに、最初の評価のだけでは解釈できない異なる魅力があるのではないかと気づかされるレンズもあります。

これがコシナ・フォクトレンダー NOKTON Vintage Line 75mm F1.5 Aspherical VMでした。先日、仕事の残データを整理していたところ気になる写真を見つけたのです。あれ?この写真はどのレンズで撮ったのかなと調べてみると、このレンズだったのです。

こうなるともう何としてもウチにお越しいただくしかありませんのでカメラ店に走りました。

ライカMシリーズのようなレンジファインダーカメラで大口径望遠レンズを使うのは精度的に不安はありますが、今は機種によってはライブビューやEVFも使用できますからレンズの実力を最大限に引き出せます。描写は素晴らしいものでした。ルックスがよく、見かけより軽量であり、今やライカを使う撮影ではフィルムとデジタル、仕事も私事も関係なく常に携行するレンズとなりました。

「絞り開放からシャープでボケが美しい」というのは筆者のような浅学非才で語彙の少ない三流レビューワーの常套句ですが、先に述べた“気になる写真”の条件というのは、こうした常套句だけでは説明できない“画の強さ”とか“画の厚み”と解釈してください。多くの人に満足をもたらす秀逸な性能のレンズであることは間違いないでしょう。

開放絞りで撮影。向かって左側の目にフォーカスしています。右目、鼻のアタマ、髭は当然、被写界深度外になりますが、個性ある立体感を感じる描写になりました。
ライカM(Typ240) NOKTON Vintage Line 75mm F1.5 Aspherical VM(F1.5・1/250秒)ISO 1600

近況報告

ギャラリーの閉鎖で大阪の巡回展示が宙に浮いた拙作の写真展「録々」が実現します。場所はリコーイメージングスクエア大阪ギャラリーで、会期は2022年1月27日〜2月7日です。

リコーイメージングさんに感謝する意味もあり、大阪の展示は作品の思想を破り、GR IIIxとPENTAX K-3 Mark IIIでフォーマットを正方形に設定して撮影したり、正方形にトリミングした作品も数点混ぜてしまいました。プリントテストでは、フィルム6×6カメラで撮影した写真の中に紛れ込ませても違和感ないのです。困るよね、こういうの。当初の作者の思想が崩れてしまうじゃないですか(笑)。関西方面の皆さま、どうぞよろしくお願いいたします。

赤城耕一

写真家。東京生まれ。エディトリアル、広告撮影では人物撮影がメイン。プライベートでは東京の路地裏を探検撮影中。カメラ雑誌各誌にて、最新デジタルカメラから戦前のライカまでを論評。ハウツー記事も執筆。著書に「定番カメラの名品レンズ」(小学館)、「レンズ至上主義!」(平凡社)など。最新刊は「フィルムカメラ放蕩記」(ホビージャパン)