私はこれを買いました!

AF、手ブレ補正、お値打ち感と3拍子揃った超広角レンズ

TAMRON SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD G2(井上六郎)

今年、デジカメ Watchでレビュー系の記事を複数執筆していただいた写真家・ライターの皆さんに、2018年に購入したカメラ系の製品(新品に限る)を1つだけ挙げていただきました。(編集部)

手ぶれ補正付の超広角レンズを求めて

今年も「これ買い」の時期かと師走の冷たい北風に当たりながら、1年が経つのは早いものだと原稿の素案を巡らした……。

ミラーレスのための新マウントの登場がキヤノン、ニコン共に重なった2018年は、フルサイズミラーレス元年と言ってもいい。でも、その話題の「R」や「Z」は触れてはみたものの、ソニーα9に及ばないAF、電子シャッターの壮大なローリングひずみでは、私の中での活用方法が見出せないと判断。もちろん、新大口径マウントの因果でもある開放でも隅々まで結像するレンズ性能には惹かれるが、登場間際のラインナップにはまだ欲しいレンズはない……、と今モデルはパスした。

昨年の「これ買い」で挙げたニコンD850は今年もコンスタントにメイン機材として動いてくれ、それに装着するレンズもあれこれと試してみた。10年前頃のモデルと比べ、相当に進化した手ブレ補正機能も試せば試すほどに特性が見えて随分と楽しめた。本番の撮影現場では、スローシャッターでの撮影や手持ち動画撮影といった手ブレ補正の必要性を故意に高めて試していたが、こと超広角レンズに関しては手ブレ補正機能搭載モデルが極端に少ないことにも気が付いた。

それまでに使用していた超広角レンズはAF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR。コンパクトで使いやすいものの開放F値はF4。手ブレ補正も付いているがこの頃の新世代に比べれば劣る性能。そして至近で動く被写体へのAFの遅さが残念でならなかった。さらに不可解なことに、搭載されたVR機構のせいでD850と組み合わせでの高感度や長時間露光には「お勧めできない」とニコンのHPに出ている……。AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDも一時期所有していたがバランスの悪さや非VRでは活用場面も限られる。SIGMA 14-24mm F2.8 DG HSM | Artの評判も耳に入れていたが、手ブレ補正非搭載は無念そのもの……。

というわけで今年の「これ買い」に挙げるのは、タムロンSP 15-30mm F/2.8 Di VC USD G2。

G2へとモデルチェンジを果たした15-30mmを試す機会を得ると、様々な撮影現場に持ち込んだのだが、これがなかなか良い。やっぱり、もう少し望遠側が欲しいな……とか、やっぱり、出目金スタイルにプラスVC(手ブレ補正)搭載ともなると、“なり”がデカイな……とか、それなりに不満は残るものの、それでもこのF2.8クラスでの手ブレ補正付きは一眼レフカメラでは唯一の存在。

歪曲収差の補正はCamera Rawのプラグインソフトに任せれば解決できるし、コストが掛かるハズの出目金レンズとしては値ごろ感があるし、サードパーティながら期待を裏切らないAFの速さとVCの補正結果も支障はないし、昨年の散財が原因での緊縮財政ではリーズナブルな値付けが背中を押すし、そして、その値ごろ感のお陰でおどおどせずに積極的に使おうと思うメンタルも導入の決め手となったのであった。

作例

石垣御神埼灯台。天の川が灯台の上に来る時間を狙って車を走らせた。三脚を使っての13秒露出だが、開放絞りから星々の結像が見られ、星にレンズを向けることのなかった私に「夜空の撮影」という楽しみを伝えてくれた。

ニコンD850 / タムロン SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD G2 /15秒 / F2.8 / ISO 4000 / マニュアル露出 / 15mm

プロフィール & 近況報告

来春発売の『今すぐ使えるかんたんmini 飛行機撮影 魅力を引き出す 基本&応用ハンドブック』(技術評論社)の執筆が大詰め。大晦日も三が日もキーボード前から逃れらそうにもなく、今から憂鬱……。では春に本屋さんで会いしましょう!

井上六郎

(いのうえろくろう)1971年東京生まれ。写真家アシスタントを経て、出版社のカメラマンとして自転車、モーターサイクルシーンなどに接する。後、出版社を退社しフリーランスに。マラソンなどスポーツイベント公式カメラマンも務める。自転車レース、ツール・ド・フランスの写真集「マイヨ・ジョーヌ」を講談社から、航空機・ボーイング747型機の写真集「747 ジャンボジェット 最後の日々」を文林堂から上梓。日本写真家協会、日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。