イベントレポート

Inter BEE 2021会場レポート(映像編):キヤノンEOS R3やステレオ魚眼レンズ、DJI「RONIN 4D」など。映像スイッチャーはテレワーク需要も

プロ向け映像/音響機器の展示会「Inter BEE 2021」(国際放送機器展)が11月17日〜11月19日に幕張メッセで開催された。主催は電子情報技術産業協会(JEITA)。このレポートでは、個人レベルでも使えそうな映像関連アイテムを紹介する。後編として音声機材編も掲載する予定だ。

新型コロナウイルス感染症の影響により、Inter BEEがリアル開催されるのは2年ぶりとなる。2019年に比べて出展規模は縮小しているが、初日のオープン前には数十人が入場待ちの列を作るなど、リアル開催への関心は依然として高いようだ。

なお、オンライン会場は12月17日まで開いている。

開場直後の様子
開場時の待機列

EOS R3や3D VRレンズ(キヤノン)

発売前の新製品としては、ミラーレスカメラの最上位モデルとなる「EOS R3」が展示されていた。11月27日に税込74万8,000円(直販価格)で発売する。

従来よりも動画性能をアップさせており、プロレベルの動画カメラとしてもアピールする。“EOS Rシリーズで最高レベル”というAF性能は、動画撮影でも利用可能とのこと。30分までの連続記録制限が無くなったほか、内部の温度上昇による録画停止が回避された。熱問題に関しては外部の環境にもよるが、4K60pで1時間以上の連続撮影が可能という。ドキュメンタリーやインタビューといった長回しが必要なシーンでも実用的と説明していた。

動画撮影を意識したセッティングでの展示

交換レンズの新製品は、ステレオ魚眼レンズこと「RF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYE」が12月下旬に税込27万5,000円(直販価格)で発売される。180度で3DのVR映像が撮影できるというレンズで、対応カメラはEOS R5のみ。会場ではVRゴーグルを使って視聴体験ができた。

付属のフロントキャップ
シートフィルターのホルダーを備える
カメラの背面モニターでの表示

従来こうした撮影を行うには複数のカメラが必要で、カメラごとの色の不一致などが課題だったが、これによりカメラ1台で3Dの収録が可能になった点をメリットとして訴求する。フォーカスはMFのみ。リア側にシートフィルターが装着できる。VR動画の調整や簡易編集を行うソフトや、Adobe Premiere Pro向けの調整用プラグインもそれぞれ有償で提供する予定だ。

DJIのジンバル一体型カメラ(SYSTEM5)

SYSTEM5のブースではDJIの新型カメラ「RONIN 4D」が展示されていた。6Kモデルが12月に税込86万9,000円で発売される。また8Kモデルのリリースが予告されている。

ジンバルとデジタルシネマカメラを一体にし、「ワンオペ」での撮影を念頭に置いたというシステム。従来のジンバルよりも安定して撮影できるという。また拡張性の高さも特徴で、グリップを着脱してのリモート操作などが可能となっている。

LiDARによってピント位置を可視化するなど、先進的な機能も盛り込んだ。電動のフォローフォーカスなどオプションも充実している。

レンズの上にあるのがLiDARユニット

ミラーレスカメラ対応の新型三脚(平和精機工業)

Libecブランドで三脚を展開する平和精機工業は、業界初という軽量カメラでの完全バランスを実現した三脚「HS-150」を展示していた。2022年春の発売で価格は未定。新しくなったのは、「H15」と呼ばれる雲台部分。

HS-150の雲台「H15」

完全バランスとは、カウンターのバネがカメラの重量とバランスすることで、どの角度に傾けて手を離してもカメラが静止する機構のこと。完全バランス型雲台は、軽量のカメラを乗せた際にバネが強すぎて押し戻される欠点があったが、今回それを解消した。ミラーレスカメラ+レンズという軽量構成でも、完全バランスを実現している。

また、完全バランス型雲台の多くに見られる「設定したバネの強さがわからない」という問題にも対処した。今回新たに、バネの強さを表示するメーターを搭載。数字を覚えておけば、セッティングの際にバネの強さを簡単に再現できるようになった。

完全バランスを実現しているところ
バネの強さを示すメーターが付いた

低価格のケーブルカム(イメージビジョン)

イメージビジョンは、8月に取り扱いを開始したWiral Technology(スウェーデン)のケーブルカム「Wiral LITE」のデモを行っていた。税込5万3,900円と比較的安価となっている。ケーブルカムは、空中に張った紐に沿って電動で動くカメラサポートシステム。ドローンが使えない場所や、室内での撮影で注目されているという。

セット内容

カメラ機材は1.5kgまで搭載可能で、ミラーレスカメラにも対応する。リモコンで操作できるほか、スマホアプリでのスピード調節や、指定した2点間の移動なども行える。また、タイムラプス撮影にも対応。50mのケーブルが付属するが、オプションで100mのケーブルも用意する。

動画編集向けPC(マウスコンピューター)

マウスコンピューターは動画編集に適するPCを展示していた。一般的なモデルに比べてハイパワーになっているほか、ノングレアタイプで色域も広い液晶モニターを搭載するなどクリエイターを意識した構成になっている。

動画編集にお勧めというノートPCが、9月に発売した15.6型の「DAIV 5P」。CPUが高性能になっていることなどから、同社製品では14型モデルよりも15.6型モデルのほうがより動画編集に適するそうだ。

Core i7-11800H、GeForce RTX 3050 Laptop、16GBメモリーなどを搭載し、価格は税込18万6,780円から。エフェクトなどを多用する場合は、GPUが上位の機種にすると良いとのこと。

GoPro用フィルターなど(銀一)

銀一では、Tiffenのアクションカメラやドローン向けフィルターの取り扱いを11月に開始した。Tiffenはアメリカの老舗フィルターメーカーで、ハリウッド映画で採用されるブランドとして知られている。

一例としてGoPro用はHERO10ブラック、HERO9ブラック用でオリジナルのマウントに合わせて装着できる機構になっている。ND8/16/32の3枚がキットになっており、価格は税込7,040円。

マウントに対応した形状になっている
装着したところ

また、DJIのアクションカメラOSMOシリーズや、ドローンのMAVICシリーズ用のフィルターもラインナップする。

米Sprigも新取扱のブランド。「Cable Management」は、リグなどの穴に装着してケーブルを機材に沿って配線できるというアクセサリー。ケーブルを引っかけてしまうトラブルを防ぐ。回さずに差し込むだけで装着できる。1/4タイプ(6個入り)と3/8タイプ(3個入り)があり、各税込2,530円。発売は11月26日。

蓄光タイプを含む各色を用意する
オプションでホルダーもある(1/4タイプのみ)

もう一つの新ブランドどして、英FILMSTICKSの製品を12月に発売する。目を引いたのは「クラッパーボード ナノ」(税込8,470)。手のひらほどのカチンコで、持ち運びがしやすい。バー部分には磁石が入っており、しっかりとした音が出る。マルチカメラ収録の際にこの音を記録しておくと、編集ソフトでの同期がより確実になる。現場の雰囲気作りにも一役買うかも知れない。

FILMSTICKS製品には、大きなカチンコ、ケーブルタイ、六角レンチ、カラビナ、カチンコ用ペンなどもある

安価な4入力スイッチャー(KPI)

ケンコープロフェショナルイメージング(KPI)では、中国FEELWORLDの映像スイッチャー「LIVEPRO L1」を展示していた。税込5万2,800円で近日に発売する。

使用時には液晶モニターに映像が表示される

HDMIの4系統入力をスイッチングして1つのHDMI端子から出力できるほか、USB出力でPCの配信ソフトなどに映像を入力する事も可能。4入力タイプとしては比較的安価となっている。

本体に2インチの液晶モニターを備えており、4つのソースの内容を表示できる。トランジション時のエフェクトなども利用可能となっている。

シンプルなスイッチャーの進化版(ローランド)

ローランドでは、9月に発売したビデオミキサーの新モデル「V-02HD MK II」を展示した。価格は税込5万円前後。映像ソースを切り替えたり、ピクチャーインピクチャーができる装置。2入力限定で操作が簡単なことから、テレワークで人物と資料画面を切り替えるといった用途でも引き合いがあるという。

使用例

新たにUSB映像出力が追加されたことで、PCにダイレクトに接続可能になった。従来はHDMI出力のみで、別途キャプチャー装置が必要だった。また、マイク入力端子も新たに搭載した。

次会の「Inter BEE 2022」は、2022年11月16日~18日に開催されることが決まっている

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。