新製品レビュー

Nikon Z 6(外観・機能編)

画素数をはじめバランスの良さが魅力

ニコン Z 6は有効2,450万画素のCMOSセンサーを搭載したFXフォーマットのミラーレスカメラ、俗にいう35mm判フルサイズミラーレスカメラである。

Zマウントを採用したフルサイズミラーレスカメラとしては本機が2機種目。9月28日には同じZシリーズの初号機として有効4,575万画素のニコン Z 7が発売されている。

Z 6はどんなカメラなのか。先行して発売されたZ 7との違いにも注意しながら見ていこう。

ライバル

同クラスのフルサイズミラーレスカメラといえば、ソニーのα7 III、キヤノンのEOS Rが挙げられる。

すでに3世代目に突入しているソニー、約3,000万画素のいくらか高画素なキヤノン、といった違いこそ見られるが、価格帯がほぼ同じということもあって、真っ向勝負でぶつかり合う正真正銘のライバル機といって間違いないだろう。

さらに詳細はまだ不明であるが、Lマウントアライアンス2社(パナソニック、シグマ)もまた、フルサイズミラーレス市場に参入することを表明している(ライカはすでに参入している)。4,000万画素オーバーの上位機種の存在もあるものの、実際に多くのユーザーが手にする機会が多いであろう、このクラスのミラーレスカメラ市場は、今後ますますの激戦が繰り広げられてゆくに違いない。

ボディデザイン

Z 6のボディサイズは約134(幅)×100.5(高さ)×67.5mm(奥行)となっており、これは上位機種のニコンZ7と同じ。ソニーα III(約126.9×95.6×62.7mm)よりやや大きく、キヤノンEOS R(約135.8×98.3×84.4mm)より少し小さい印象だ。

ミラーレスカメラというと、小さく軽いことが注目されがちであるが、特にニコン Z6のような本格的なフルサイズ機では、いたずらに小ささを求めすぎるとボタンやダイヤルなどの操作性が損なわれてしまうこともある。

その点、Z 6のサイズ感にはニコンF3などの往年の銀塩MF一眼レフカメラを手にした時のような"ちょうど良さ"があり、個人的には非常に好印象である。カメラを構えた時に覚える、しっかりとした剛性感にも心地よいものがある。

デザインは直線と平面を基調とした質実剛健なものであるが、そこに大きなレンズマウントとグリップがほどよく曲線をプラスしているため、全体的によく調和がとれた精悍なイメージに仕上がっている。

Z 7とともに、新マウントを採用したニコン初のフルサイズミラーレスカメラということもあって、一眼レフカメラとはまったく異なるデザインになるのは当然だが、それでも違和感なくニコンらしさを醸し出しているあたりはさすがと言えるだろう。

そして、Z 7とはサイズも、重さも、デザインも、まったく同じである。

操作部

カメラ上面のボタン・ダイヤルは、基本的に同社の現行デジタル一眼レフカメラと同じ配置となっている。ニコンのデジタル一眼レフカメラからミラーレスカメラに移行しようという人でも、迷うことなくこれまで通りの操作ができるだろう。

上面右側(カメラを構えた状態で)には、シャッターボタンと同軸の電源スイッチ、露出補正ボタン、ISOボタン、動画撮影ボタン、メイン/サブコマンドダイヤルが並んでいる。

上面左側には撮影モードダイヤルが配置されており、その斜め下に再生ボタンと消去ボタンがある。撮影モードダイヤルは押しながら回すタイプのロックボタンが装備されており、誤操作で勝手に撮影モードが変わってしまわないように配慮されている。

ミラーレスカメラだからと表示パネルが省略されてしまっていないのは嬉しいところ。露出値やISO感度、バッテリー残量といった基本情報は、背面の液晶モニターよりも見やすく分かりやすい。しかも黒地に白文字で情報が表示されるため、なお見やすく親切だ。

面白いのは静止画/動画切り換えレバーの中のボタンが、デジタル一眼レフカメラのLvボタンからDISPボタンになっていること。EVFや画像モニターでのライブビューがデフォルトとなるラーレスカメラだけに、右手親指の掛かりがよい位置で素早く情報表示を切り換えられるように、という配慮だろう。

よく使う機能を割り当て、素早く呼び出すことのできるFnボタンが、レンズマウント左側基部(カメラを前から見た状態で)に2つ配置されている。ニコンのデジタル一眼レフカメラと同様の仕様であるが、カメラ全体のデザインが大幅に異なる関係で、独特な形状になっている。

背面ボタン類は画像モニターの右側に集中して配置されている。左側にもボタンが並ぶデジタル一眼レフカメラと異なっているところだ。

中でも特徴的なのが、レリーズモードを設定するためのボタンが新たに設定されていることだ。レリーズモードダイヤルを装備していないZ 6の場合、単写や連写、セルフタイマーなどの設定はこのボタンで操作する。

グリップは大きく握りやすい。小型化、薄型化したミラーレスカメラのZ 6が、一眼レフカメラと同等のホールディング性と操作性をもっているということは、この秀逸なサイズとデザインのグリップによるところが大きい。

撮像素子と画像処理関連

撮像センサーは有効2,450万画素の裏面照射型CMOSセンサーを搭載している。Z 7の有効画素数は4,575万画素で、Z 6との最大の違いになっていることは言うまでもないが、最新の35mm判フルサイズセンサーが採用されているという点では同じである。

画像処理エンジンはEXPEED 6であり、これもニコン Z 7と同じ。ただし、デジタル一眼レフカメラのD850の画像処理エンジンはEXPEED 5なので、Zシリーズの開発にあわせて画像処理エンジンも最新のものに更新されているというわけだ。

そして、これらの撮像素子を収めているレンズマウントが、フルサイズミラーレスカメラ・Zシリーズのために新たに開発されたZマウントである。ボディからはみ出しそうなほどに大きなマウントの内径は55mmで、フランジバックが16mm。一眼レフカメラに採用されているFマウント(内径44mm、フランジバック46.5mm)より格段に大きく、Zシリーズカメラの特徴的なデザインにも一役買っている。

この大きな新レンズマウントによって、F0.95など、それまでのFマウントでは難しかった大口径レンズを実現することが可能になった。と、いう話がZマウントでは真っ先に語られるが、レンズマウントに余裕があるということは、レンズ設計にも余裕があるということで、大口径のみならずレンズの高画質化全般に対して有利に働くということである。新規レンズマウントを立ち上げるというのは大変なことのはずであるが、ミラーレスカメラの将来性を見越すのなら、小さなボディに大きなマウントを採用したことは英断と言えるに違いない。

撮像素子と画像処理エンジンは、ISO感度の性能に直結する要素である。ニコン Z 6の常用感度はISO 100~51200。常用最高がISO 51200というのは、同クラスと比べて相当に優れており、ニコン Z 7の常用最高ISO 25600よりも1段分高い。ただ、ニコン Z 7は常用最低がISO 64なので、これは画素数の違いによる画素ピッチの差が、ISO 感度特性の違いとして表れたと考えた方がよさそうだ。

AF

ニコンFXフォーマットのデジタルカメラとしては、初めて像面位相差AFセンサーが搭載されたこともZシリーズの特徴。Z 6のフォーカスポイントは273点で、AF領域は画面全体の90%に及ぶため、被写体が画面の端にあるような場合でもAFで正確にピントを合わせることができる。

Z 7のフォーカスポイント数(493点)より少なく、微妙に差別化を図られているような気になるが、273点というのは十分多点であり、実際の撮影で困るようなことはほとんどないだろう。

AF速度の速い位相差AFに対し、より高精度なピント合わせが可能なコントラストAFももちろん搭載しており、状況に適した方式をカメラが自動的に切り換えるようになっている。

連写性能

前述のレリーズモードボタンを押すと、1コマ撮影、低速連続撮影、高速連続撮影、高速連続撮影(拡張)、セルフタイマーの各モードが表示される。

このうち、低速連続撮影モードでは最高約5コマ/秒、高速連続撮影モードでは最高約5.5コマ/秒の連続撮影が、AF/AE追従で可能となる。高速連続撮影(拡張)モード時は最高約12コマ/秒の連続撮影が可能であるが、この場合、AFは追従するがAEは1コマ目で固定される。

AF/AE追従の最高速度が約5.5コマ/秒というのはやや残念に思えるが、AE追従を割り切って考えれば、AF追従の約12コマ/秒の高速連写というのはなかなか立派な連写性能だ。ちなみに、Z 7の高速連続撮影(拡張)モードは約9コマ/秒である。

ファインダー

電子ビューファインダー(EVF)には約369万ドットの有機ELパネルが採用されており、映し出される映像は非常に滑らかで精細感が高い。光学系の品質も高くファインダー倍率は約0.8倍と、同クラスのEVFと比べても視認性が高く、被写体が大きく見える分、ピント合わせもやりやすい。

視度調整ノブは大きく操作しやすい上、高級感もある。ノブを引き出して調整するロック機構がついているため、誤操作で視度がずれてしまうようなことはない。

また、機能を一覧表示してダイレクトに設定変更できる「iメニュー」を、ファインダーにも表示できる。ファインダーから目を離したくない場合や、画像モニターが見にくい屋外撮影時などで便利だ。

画像モニター

液晶モニターには約210万ドットの3.2型液晶が採用されており、電子ビューファインダーと同じく高解像で大きく、画像の確認がしやすい。

上下にチルト可能な可動式であることとタッチパネルの採用により、ライブビューでの撮影も快適である。

動画機能

フルフレームでの4K動画(3,840×2,160ピクセル/30fps)の撮影、記録に対応している。全画素読み出しによる豊富な情報を活用しており、モアレやジャギーの少ない、高解像な4K動画画質を得ることが可能だ。

通信機能

Wi-Fi機能を内蔵しており、SnapBridgeアプリをスマートフォンやタブレット端末にインストールすれば、静止画や動画を無線で転送したり、リモコンとして使用したりすることができる。新しくなったSnapBridge Ver.2.5アプリは、従来のBluetoothによるペアリングを必要とせず、Z 6の内蔵Wi-Fiで直接接続が可能なので、ますます気軽にSnapBridgeを楽しめるようになった。

端子類

端子類はボディ左側にまとめられており、ヘッドフォン出力端子、外部マイク入力端子、USB Type-C端子、HDMI端子、アクセサリーターミナルが備えられている。

記録メディアスロット

記録メディアスロットはボディの右側にあり、XQDカードのシングルスロットとなっている。

「XQDカードだけか!」と思う人は正直多いと思うが、現状最速で440MB/sの転送速度は、一度使ってみると圧倒的な快適さに感激してしまうので、将来性を見据えたZシリーズカメラの選択肢として悪いものでは決してないと思う。

ニコンからもXQDカードの発売が発表されたこともあって、一般化が進めば価格の低下も期待できるのではないだろうか。

バッテリー

バッテリー室はボディ底面に独立して備えられている。電池はLi-ionリチャージャブルバッテリーEN-EL15bを1個使用。Zシリーズカメラの発売に合わせて登場した新型のバッテリーだが基本的な仕様は従来品と同じなので、手持ちのリチャージャブルバッテリーEN-EL15aやバッテリーチャージャーMH-25aも使うことができる。

撮影可能コマ数は、ファインダーのみ使用時で約310コマ、画像モニターのみ使用時で約380コマ(CIPA規格準拠)と、同じ電池を使うデジタル一眼レフカメラに比べると少ない。撮影が長時間になる場合などでは、予備の電池を1~2個用意しておいた方が安心だろう。

まとめ

先に高画素機であるZ 7を出してから、今回紹介のZ 6を出すという、人によっては悩ましい発売順序だった。我慢しきれずZ 7を買ったという人も多いと思うが、それはもちろん間違いではない。しかし、多くの人にとってはデータ容量も価格も(比較的)優しい、2,450万画素のZ 6こそが本命なのではないかと思う。

同じシリーズのカメラの場合、画素数以外の部分、例えばファインダーや画像モニターの品質が少し落とされていたり、部材が金属製から樹脂製になっていたりと、製品に差別化が図られていることが多い。これを心配して、Z 6でも造りや仕様をよくよく確認してみたのだが、筆者が感じた限りでは、撮像素子の画素数とISO感度や連続撮影枚数以外の違いは「まったく」なかった。

つまり、Z 6は40万円超の高級カメラ(Z 7)と、ボディの品質は同じということになるわけだ。実際、これは凄いことだ。もし、どうしても高画素機が欲しい、あるいは必要でないのならば、これほどお得感の高いカメラを手に入れられるチャンスは、そうないだろう。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。