イベントレポート
新機能の発表で盛り上がった「Synology 2018」レポート
写真整理のための新パッケージが登場
2017年11月1日 01:07
NASメーカーのSynology Inc.は10月25日、自社主催のイベント「Synology 2018」を開催した。
同社およびパートナー企業の製品・サービスを展示するイベント。会場内ステージでのセッションも実施した。企業・ビジネスユーザー向けの第1部と、一般ユーザー向けの第2部からなる2部構成。本記事では、第2部の模様をお伝えする。
第2部の主な内容は、登壇者によるセッションと来場者参加の抽選会、クイズ大会。セッションは、Synologyの新製品および今後追加される新機能を紹介する前半と、実運用上のコツを紹介する後半の2つ。
自動画像仕分け「Moments」が登場
前半のセッションを担当したのは、Synology製品の国内販売代理店をつとめる株式会社フィールドレイクの小川将司営業企画部長。小川さんはNASの新機能として、近日提供開始予定の写真自動仕分け機能「Moments」や既存の3パッケージを統合した「Synology Drive」、仮想PC管理機能「Virtual Machine Manager」などを紹介した。
このうち写真の自動仕分け機能「Moments」に関しては「従来より提供しているパッケージ「Photo Station」に並ぶ新たな写真管理方法」と紹介。ディープラーニングを用いて、人物やテーマを自動的に判別し、仕分けをして表示する。Photo Stationの置き換えではなく、別機能扱いとのこと。
Photo Stationとの最も大きな違いは「全自動」である点。Momentsでは専用のフォルダに保存した写真の被写体を自動判別し、対象ごとに作成したアルバムにまとめていく。仕分けされた写真は特定の人物ごと、あるいは写っているテーマ、場所、時間ごとに整理されて閲覧できる。例えば猫を撮影した写真であれば、「主題」(テーマ)の中に作られた「猫」アルバムの中に集積されるといった具合。自動的に仕分けされるテーマは現在のところ300程度としており、アップデートにより増やしていくという。
なお、Photo Stationでは個別のタグ付けや手動でのアルバム管理、編集が可能だが、Momentsでは全自動で仕分けされた後から手動でアルバムを操作することはできない。
小川さんはMomentsを「タグ付けやアルバムの管理を自動化したいユーザー向けの機能」と説明しており、「放り込むだけ」である程度までまとめてくれる利便性をアピールした。また、仕分けやタグ付けまで自分で行ない、すべての写真をきっちりと自分の管理下に置きたいユーザーに対しては、引き続きPhoto Stationの利用を勧めている。
ファイル操作の使い勝手が向上
Synology Driveでは、従来から提供していたファイル管理機能「File Station」、クラウド同期管理機能「Cloud Station」、ドキュメントファイルの共同編集機能「Synology Office」の3パッケージ(機能)を1つに統合し、1つのパッケージのUI上からファイル操作を行なう際の使い勝手向上を図っている。従来は、それぞれの操作を行なう際に、対応したパッケージを立ち上げる必要があった。
NASの運用をわかりやすく
後半のセッションでは、NAS運用上のTipsや使いこなし術を指南する「NASのやっておくと便利なちょい足しレシピ」を実施。登壇者は僚誌Internet Watchでも記事を執筆している清水理史さん。
清水さんが紹介した「レシピ」のテーマは「ネットワーク速度」、「アクセシビリティ」、「二段階認証」、「証明書」、「容量管理」の5つ。
ファイルの転送は、ネットワークがより広い帯域を持っているほど快適になるが、ネットワークの状況によっては思ったような速度が出ないこともある。清水さんはそのような場合でも転送速度を確保するための手段として「Link Aggregation」の利用を勧めている。
これはローカルネットワーク内にある複数のネットワークインターフェイスを結合してNASが使える帯域を増やす機能。"複数車線"使えることで、クラウドストレージへのバックアップなど大きなトラフィックが発生しているときでも、ほかのトラフィックへの影響が小さくなるように、ネットワーク速度を上手く振り分けられる点にメリットがあると話した。
NASへのアクセスには通常、ブラウザによるWebインターフェイスを用いる。アクセス時にはポートの指定が必要になる場合があるため、清水さんは「カスタムドメイン」を設定して、より簡単にアクセスする方法を紹介した。
カスタムドメインを設定するメリットのひとつは、同じネットワーク内で複数のNASを運用している際に、わかりやすい名前(ドメイン)を付けて区別しやすくできること。これは部署名などを付けるなど、企業内で特に有用な設定だという。
二段階認証については、ユーザーアカウント設定からQRコードを発行し、認証アプリですぐに利用できるという簡便性に言及した。
NASに保存したファイルをWebリンクから共有する場合、httpsでないと相手の環境によっては警告画面が出てアクセスできない場合がある。httpsでアクセスさせるためには証明書の発行が必要。清水さんはこの場合に使う認証局として、「Let's Encrypt」の利用を勧めていた。
なお証明書発行の際にはドメインの指定が必要だが、SynologyのNASで使う場合は「synology.me」が使えると説明している。
長期間にわたってNASを運用していると不要なファイルが増えてくるため、容量管理が必要になる。清水さんはこうした場合に便利なパッケージとして、NASの利用状況を確認できる「ストレージアナライザー」を挙げている。「どこのフォルダに」、「どのユーザーが」、「どの程度の容量を保存しているか」といった使用状況のレポートを作成可能で、古いバージョンのバックアップや重複ファイルの洗い出しに役立つので、何を削除すべきかの指針になるという。
会場の製品展示エリアでは、SynologyがラインナップしているNASおよび無線LANルーターの現行モデルが陳列されたほか、NASを使ったファイルのネットワーク管理デモも実施していた。パートナー企業としてはbox、Micron、Seagate、Western Digitalが参加しており、NAS向けのHDDやメモリ製品、半導体のウェハーなどを展示していた。