イベントレポート
【CP+】【インタビュー】NASの写真利用をアピールするSynologyブース
本社担当者&写真家イルコさんにインタビュー
2018年3月2日 18:20
ユーザーの様々なニーズに対応
多彩な機能を誇るDiskStationだが、写真関連の機能として代表的なものは「PhotoStation」と「Moments」が挙げられる。
写真のバックアップ機能という点は共通だが、Momentsでは専用のフォルダに保存した写真の内容をAIが認識、自動でフォルダへ仕分ける点が特徴。仕分けられた写真は人物、テーマ、場所、時間ごとに並べ替えて閲覧できる。
PhotoStationとはさらに、ファイル管理方法と検索・分類方法、データ共有時の権限設定内容が異なる。具体的には、PhotoStationでは個別のフォルダ単位で個々の写真ファイルを細かく管理できる一方、Momentsでは自動的に仕分けられた写真を操作できない。
また、Moments使用時はファイル検索時にテーマや場所などのキーワードが使えるが、EXIF情報を検索条件として設定できない。
そしてファイル共有時は、PhotoStationでのみ公開期限などの制限を付けられるようになっている。
Synologyでは両機能の使い分けについて、「Moments」はひとまず写真を一箇所で保存して全自動で楽をしたいユーザー向け、「PhotoStation」はファイル単位まできっちり写真を管理したいヘビーユーザー向けとそれぞれ位置付けている。
今回、Synologyのブースで体験できるMomentsは、2017年の晩秋よりDiskStationシリーズのNASで使えるようになった新機能だ。
SynologyがMomentsを追加した背景や、使いこなし方のコツ、そして今後追加したい機能などについて、Synologyのプロダクトスペシャリスト Jenn Yehさんと国内代理店フィールドレイクの取締役 倉石敬介さん、マーケティングマネージャーのTracy Sungさんにお話を聞いた。
――実際に目のあたりにしてみると、Momentsはとてもシンプルな使い方の機能だと感じますが、その一方で、写真の管理機能として、PhotoStationは既に十分な機能を持っているようにも思えました。ここにきてMomentsという新機能を追加した意図はどこにあるのでしょうか?
Jennさん:最近は、カメラで写真を撮る人よりも、スマートフォンで写真を撮る人の方が多いですよね。でも、すべての方が写真をストレージにバックアップして、管理しているかといえば、必ずしもそうとは言えません。PhotoStationは、写真の整理・管理という面では十分な機能を備えていますが、自分できっちり仕分けをしなければならないので、少し敷居が高い部分もありました。
Momentsは、写真のバックアップや管理はしたいけれども、あまり時間を取られたくない方々のために用意しました。撮ってすぐNASに保存しておけば、あとは自動で仕分けをしてくれている、というソリューションです。ターゲット層を拡げる目的があります。
――実際にMomentsを使ったユーザーからの反応はいかがでしたか?
Jennさん:まずは「PhotoStationよりもユーザーフレンドリーだ」ということで好調なすべり出しです。今はアップルやグーグルも、ストレージに保存した写真の個人認識を提供するようになってきていて、Synologyとしてもリソースをそちらの方向に多く振り分けています。
Momentsで使っている仕組みは、Synologyが用意しているほかのソフトウェアとも連携するので、例えばMoments上で設定したタグはMoments専用というわけではなく、検索などでほかのアプリケーションでも扱えます。今後はタグだけでなく、個人の顔情報やテーマ情報、場所情報なども使えるようにする予定です。
――今はクラウドストレージを使っている方もたくさんいると思いますが、NASというかたちでローカルに存在するプライベートなストレージを使うメリットは、どういったところにあるのでしょうか。
倉石さん:シンプルに、クラウドストレージ並みか、それ以上の容量を使えるところが大きいですね。もちろん無制限というわけにはいきませんが、スマートフォンアプリなどを導入していただければ、体感的にクラウドストレージと同等にファイルを扱うことも可能です。
SynologyのNASはファイルのバージョニングにも対応しているので、例えば共同作業で同じファイルを頻繁に編集している場合でも、最大で32回まで作業履歴を遡れます。RAW現像ソフト「Lightroom」のカタログファイルを共有して、似たようなことをやっているユーザーさんもおられるようです。もちろん、ファイルを外部のクラウドサービスにも転送できるので、「バックアップのバックアップ」を取ることも可能です。
あとは、クラウドサービス側からのトラブルを防げる点が一つのメリットとして挙げられると思います。例えば以前、クラウドストレージに自分の子どもの写真をアップロードしたら、クラウドサービス側に児童ポルノと認識されてトラブルになったというケースがありました。これは少し極端な例かもしれませんが、そのようなサービス側からの検閲によって生じるリスクも回避することができます。
――ちなみに、DiskStationを使う中で、Jennさんお気に入りの機能は何かありますか?
Jenn:写真というよりは映像なのですが、録画したコンテンツを、アップルTVに流す機能がお気に入りです。マルチスクリーンでどこでも楽しめるので便利ですよ。
――写真・映像関係で、今後使えるようにしたい機能はありますか?
Jennさん:360度写真・映像の管理・閲覧機能を入れたいですね。夏頃に発表できたらいいなと思っています。
業務利用でも十分なパフォーマンス きっかけはCP+
インタビューの際、写真家のイルコ・アレクサンダロフさんがブースに来場したのでお話を伺った。イルコさんはSynologyのNASを使い始めて1年足らずだが、すでに業務でも使いこなしているヘビーユーザーだ。
――普段、仕事でNASを使う中で、どのあたりが便利だと感じますか?
イルコさん:一つの場所に置いたデータに、いつ、どこからでもアクセスできるというのはやはり便利ですよね。僕は仕事に集中しているときは月に5日くらいしか家に帰らなかったりすることもあるので、宿泊先とかでデータを扱うことがほとんどです。なのでデータのバックアップはもちろんですが、それだけではなく、仕事でクライアントに写真を見せるときに、URLを発行してシェアする機能も頻繁に使っています。
――NASを使い始める前は、写真データをどのようにして管理していたのですか?
イルコさん:2TBのHDDを10個持ち運んだりしていましたね。動画や静止画のRAWとかJPEGも全部入れていたので、必要なものだけでも、そのくらいになってしまっていました。で、HDDがいっぱいになったら、買い足していました。
――撮影したデータは全部残しているんですか?
イルコさん:作品のデータは全部残していますね。仕事で撮ったものは、消すものもありますけど、基本的にあまり消しません。
というのも、レタッチや現像のスキルは成長するので、ある時点では納得のいく結果が得られなかったとしても、その後習得したスキルを使って、数年後にきちんとした作品として仕上げられる可能性があるからです。だからRAWファイルは、できるだけ残しておきたいんです。それでも、結構削ってるんですよ。例えば500枚撮ったら平均で250枚くらいまで削ります。1枚あたり0.2秒で捨てる、捨てない写真を判断してます。さすがに明らかに失敗してる写真はわかりますからね。でも多いときは1カ月の間に70〜80回くらいは撮影があったりするので、量は膨大になります。
――NASを使い始めたきっかけはなんですか?
イルコさん:去年のこのイベントで、このブースに通りがかったのがきっかけです。見ていたらお声がけいただいて、色々ご説明いただいたので、じゃあということで、自分で買って使いはじめました。買ってよかったなぁと思ったポイントは、やはりすべてのデータにどこでもアクセスできるところと、iOSデバイスへの対応がきちんとしているところですね。アプリが結構いい感じなんです。
――では、使っていて、もっと改善の余地があると感じるところはありますか?
イルコさん:まあでも、基本的に文句はないですね。強いて言うなら、PCからアクセスしたときの設定がもっと簡単にできたらいいかな、くらいですね。
基本的にユーザーフレンドリーな作りにはなっていると思うし、ところどころ難しいところはあるかもしれないけれども、それ以上に便利なアプリがたくさんあるし、僕もまだまだ使いこなせてないところはいっぱいあります。人それぞれ何を必要としているかは違いますが、実際に使ってみれば割とすぐ慣れられると思います。一度使ってみるといいと思いますよ!
――ありがとうございました。
イルコ・アレクサンダロフさんは、3月3日(土)のCP+プレゼンテーションステージで、撮影とストレージの2セッションを予定している。また、3月4日(日)にはSynologyのブースにも登壇する予定だ。