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「PENTAX K-3 Mark III」ファインダー開発の苦労を聞く
リコーイメージングが創る"一眼レフの未来"とは?
2020年12月24日 12:00
リコーイメージングは12月22日、2021年2月下旬の発売を目指して開発中のAPS-C一眼レフカメラ「PENTAX K-3 Mark III」の動作機を関係者向けに初公開した。その場で担当者から聞いた話を踏まえ、続報をお届けする。
どのようにファインダー倍率を高めたか
K-3 Mark IIIは、APS-Cセンサー搭載機でありながら、同社の35mmフルサイズ機並みというファインダーの見掛け視界の大きさを特徴としているデジタル一眼レフカメラ。スペック的には、K-3 IIやKPで約0.95倍だったファインダー倍率が、K-3 Mark IIIでは約1.05倍に高められた。それには使用するペンタプリズムを素材から変更し、大幅な再設計が必要だったという。
一般的にこうした光路設計は、機種が変わっても基本的に共通する部分が多いそうだが、今回はファインダー倍率アップのためにペンタプリズムを新開発のものに置き換えるというイレギュラーがあったため、「やり直し」というレベルでの再設計が行われたという。
具体的には、ファインダースクリーンやハーフミラーの位置、ミラーの大きさも見直す必要が生じた。K-3 Mark IIIが特徴のひとつとしているAFシステムの進化を支える新しいAFセンサーも、そのデバイス自体が大型化したため、そこへ光を導くサブミラーの配置も最適化が必要だったそうだ。
K-3 Mark IIIの新開発ペンタプリズムは、従来より高い屈折率を持つ硝材(ガラス材料)を使用したことがトピック。一眼レフカメラのペンタプリズムというと、カメラ好きの方は「BK7」という呼び名のガラスを聞いたことがあると思うが、ペンタックスもK-1 Mark IIやK-3 IIには、そのBK7と呼ばれる一般的な特性のガラスを用いている。
この素材変更によりペンタプリズムの加工難度が高まったことも、K-3 Mark IIIの開発において苦労したポイントだという。高性能な交換レンズを設計・製造する際のエピソードとして、特殊なガラスを用いると加工が難しくなることや、歩留まりを高める苦労について語られることがあるが、それがペンタプリズム製造にも起こるというわけだ。
また、倍率アップのみならず、ファインダーの明るさもK-3 II比で10%アップしているという話も聞いた。計測値のため実際の体感とは異なるかもしれないとのことだが、注目したいのは、K-3 Mark IIIのファインダーには(ファインダー像を暗くすると言われる)透過液晶が組み込まれているということだ。それでも透過液晶のないK-3 IIより明るいファインダーを実現したというのは、今後K-3 Mark IIIを評価する前提情報として押さえておきたいポイントと言えるだろう。
ほかにも、いわゆるファインダーの"見え"の部分においても進化があり、ピントのヤマが掴みやすく、遠くの被写体のピントも従来より見やすくなっているそうだ。これにはコーティングの選択などが影響するそうで、詳しくは機会を改めてじっくり聞いてみたいと思う。また、今後タッチ&トライの機会があれば、従来機を使い込んでいるペンタックスユーザーの感想も聞きたいところだ。
こうした要素が絡み合い、K-3 Mark IIIではファインダー周りだけでも"足掛け何年"というレベルの開発が行われてきたという。それも全ては「(一眼レフにおけるファインダーは)ロマンとして欠かせない要素」と位置付け、注力したからに他ならないそうだ。
このように「最新の一眼レフカメラはどうあるべきか」という課題設定において、K-3 Mark IIIでは光学ファインダーが注力のポイントとなったことは想像に難くない。ペンタックスはそんな一眼レフカメラへの敬意として、内部機構やデバイスのブラッシュアップにより、一眼レフカメラによる撮影体験そのものの質を高めるアプローチを取った。
これには一眼レフカメラを実用性・多機能性でミラーレスカメラと比較される立場から脱却させ、スマートフォンの普及により"生活必需品"としての役目を終えつつあるカメラ専用機の中で一段上の豊かな存在に引き上げ、一眼レフであること自体をアイデンティティとして今後も長く存在させようという意思が読み取れる。まさにそれが、リコーイメージングの掲げる「一眼レフの未来を創る。」ということなのだろう。