赤城耕一の「アカギカメラ」
第4回:PENTAXの一眼レフ宣言によせて(デジタル編)
2020年8月20日 06:00
銀塩35mm一眼レフの話題はこちら→第3回:PENTAXの一眼レフ宣言によせて(銀塩編)
PENTAXの35mmデジタル一眼レフでは最初に何を使い始めたのかは少し記憶が薄くなりつつあるんだけど、*ist Dかなあ。この頃からすでに旧来のM42マウントのレンズやPENTAXのレンズを使うとどんな写真ができるのかと話題になっていましたが、Kマウントはユニバーサルマウントという性格もあり、デジタルカメラでのクラシックレンズ遊びの黎明期みたいなところもありますね。
でも一眼レフだから、あまりマウントアダプターでどうのという話は少なかったと思いますね。ニコンと並び、PENTAXは基本マウント規格を変更しなかったわけだから、旧いM42マウントのレンズとか、タクマーやKマウントレンズを所有している人はデジタルだとどういう評者をするのかという興味が湧いて当然だよね。
そしてPENTAXはデジタル一眼レフを「K」の冠ネームで製品展開するようになります。特別にぶっとんだ機構を採用したカメラはなく、なかなかの安定性をみせてきました。「SR」と名づけられた手ブレ補正機構はセンサーシフト方式でクラシックレンズを使う場合にも効果があるというのが売りでした。
2012年にはすごく驚く出来事がありまして、いきなりミラーレス機のK-01というのが登場します。もうこれはたまげましたよ、いろんな意味で。その前にミラーレス機にはPENTAX Qというのがありましたが、K-01はAPS-Cフォーマットのセンサーを搭載し、マウントはKマウントを採用していて、一眼レフとフランジバックも同じ。ベースはPENTAX K-5らしく。
K-01の凄さは「ミラーをなくしてしまえばミラーレス機なんだろ? 何か文句ある?」といわんばかりの設計。果たしてこれをどう評価すべきか悩みました。ファインダーも内蔵されていないんですぜ。ライブビュー撮影すればさ、一眼レフじゃなくてもべつにいいわけだろ? みたいな極端な割り切り方なの。すごいなー。たしかに「ミラーレス」機には違いありません。
レンズを外した時には、マウント面からシャッターまでの異様ともいえる暗い空間が広がります。当然ですね。あるべきはずのミラーがないのですから。ボディの中で小型のクワガタくらいは飼えそうです。
同時に登場した交換レンズDA 40mm F2.8 XSにもびっくり。その薄焼きの塩せんべいみたいなデザインがすごい。ボディの厚みを薄くできないんだから、レンズを薄くすりゃいいんだろ、みたいなコロンブスのタマゴというか逆転発想というか、マウントをボディより前にせり出せばボディを薄くみせられるだろ、というライカMデジタル的な発想をレンズ側に持ってきたんじゃないのか。あ、断っておきますが、このレンズ、ものすごくよく写ります。
K-01にはうちにもお越しいただきました。間違いなく歴史に残る一台ではないかと考えたからです。さすがにアサインメントの撮影には使ったことはないけど、おにぎりを握ったような感触がけっこういい。
今でもプライベート撮影にK-01を持ち出して、周りの反応を見ていますが、そこそこにウケます。個人的には記録メディアを交換するために、柔らかいグニャグニャした貼り革を剥いてゆくあの感じがイヤかなあ。気になった箇所はそれくらい。コントラストAFだからAFは遅いけど、まあ仕方ないし、フォーカシングはもちろん正確だし。マーク・ニューソンのデザインも好きですよK-01。残念ながら後継機の話もなくK-01は静かに退場してゆきましたが、今後も使い続けることを約束します。
そして35mmフルサイズへ
デジタルカメラはフォーマットサイズにこだわらないし、自由でいいという考え方なんだけど、フィルム一眼レフ時代からデジタル時代を迎えても、交換レンズやアクセサリーを共通化しているカメラメーカーは35mmフルサイズカメラを1台は用意することがメーカーの矜恃ではないかと考えているわけ。旧来のレンズのポテンシャルをすべて引き出したいと思うのは当たり前だし。フィルム時代からの変わらぬユーザーのためにもそうあって欲しい。理由は積極的ではないにしろ、フィルム時代に感じた印象をそのまま残したいと考えるのは当然のことですよね。
そして2016年、お待たせしたけどついに出てきました35mmフルサイズフォーマットのセンサーを搭載したPENTAX K-1。ペンタプリズム部の三角屋根が良い感じで主張しているし、たっぷりしたボディの厚みさえも自分自身のカラダを見ているようでむしろ親近感を覚えます。ただ本体重量で1kg超えってのはあまり感心しないけど、使ってみるとさほど気にならないのは謎。横幅を抑えていてバランスがよく、ボディの高さも適切だからか。
後ろのグニョグニョ動くフレキシブルチルトとか呼ばれる液晶モニターは使い方がよくわかりませんが、まあいいでしょう。SR(手ブレ補正)もちゃんと内蔵しているしね。センサーシフトを使ったリアル・レゾリューション・システムも搭載だけど、これはレビュー仕事以外に使用経験なし。というか自分には必然性がないわけ。
AFは相変わらずパワフルな動作。うちには絞り環のないPENTAXレンズはほとんど存在していないので、ほぼボディ内モーター駆動のAFの動作となり、レンズによってはギャーッ(うちのレンズの油が切れているのかもしれん)っとすごい動作音を立ててAFが動作するんだけど、私の撮影にはあまり関係ないノイズだし、それも一興なんですわ。
それにしても、PENTAXの一眼レフはクラスによらず、すべてのボディにAF駆動用モーターが内蔵されているのはすごいですよねえ。クラス分けでモーターを省略しちゃうニコンとの大きな違いがあるよなあ。新しいレンズを古いカメラに使うことには責任持たないけど、古いレンズは全部面倒みちゃいますよ、基本的に。という思想はもっと高く評価されるべきだし、リコー自身も声高くアナウンスするところじゃないんですかねえ。会社の姿勢が謙虚なのかなあ。
よく35mmフルサイズの新しいPENTAXレンズの種類が少ないって言われるけど、別に多少古いレンズだって普通によく写りますよ。文献の緻密な複写とか、K-1でしないでしょ? 多少、色なんか残っても、後からパソコンでちゃちゃっと手を入れておけばいいんじゃないかなあ。ダメですか。
やはり一眼レフにこだわるというのならば、先に述べたようにファインダーの性能。K-1は立派でした。視野率100%。ただ透過液晶型はマット面の切れ込み的になんか疑問なんですよね。好みにもよるけど個人的にはファインダースクリーンを交換式にしてもらったほうがよかったかなあ。かつてのミノルタα-9みたいにMF専用スクリーンでも用意してもらったら大感激しちゃうと思いますね。
K-1は改良されて2018年にK-1 Mark IIになるわけですが、変わったのはリアル・レゾリューション・システムが手持ちで撮れるとかなんとか。あーこれはいらねえかなあと思ったんだけど、K-1を有償だけどK-1 Mark IIにアップグレードしてくれるサービスが提供されたことには驚きましたねえ。必然はないんだけど、デジタルカメラはちょっとでも新しいものの方がいいやってことで私もお願いしました。面倒見が良すぎるぞリコー。
一眼レフは生き続ける
ここまで長ーいことPENTAXのことを書いてきて、結局オマエは何を言いたいのかと、問題はそこですよね。
K-1ではライブビュー撮影も動画記録も当然できるけど、コントラストAF方式なんで少々速度が遅し。これが一番の不満なわけですよ。将来的に像面位相差AFは搭載されないのかしら。でもね、K-1にこうした要望を自分で書くようになるとは思わなかったんですよね。ただ、先の宣言に触れて、K-1を使う本気度というかステージが上がったんですよね。
「レンズと光学式ファインダーを通った現実の光を見て、感じながら撮る。」というのは多少感傷的な感じもするわけだけど、長いこと一眼レフを使ってきた私にすれば、なかなかに良い表現なわけですね。これを読んで、ヒザをパシパシたたいてるもん。たたきすぎてヒザが赤くなってカユいし。でもミラーレス機ならではの機能や厳密なフォーカシング精度も優れていて捨てがたいわけですよ。
その昔、一眼レフをライブビューに切り替えて撮影するやつはどうもだらしない感じがするとか書いたことがありました。いま、この発言は撤回します。すみません。ごめんなさい。
しっかりとしたライブビュー機能を内蔵した一眼レフカメラは、ミラーレスカメラの機能を内蔵していると考えてもいいんじゃないかと思うわけ。ハイブリッド的なカメラとして使えるのではないかということなわけです。これはPENTAXに限らずなんだけどね。
きたるPENTAXのAPS-Cフォーマットのフラッグシップ機は、新開発の硝材を使用したプリズムが採用されて、その見え方はすごいんだぜとものすごく期待できるアナウンスが公式に行われていて、一刻も早くファインダーを覗きたい衝動にかられている私ですが、同時にですね、ライブビュー撮影時には高速の像面位相差AFが機能するなど、こちらを本気にさせるスペックになっていると、これはマジでPENTAX一眼レフをまた買っちゃうぜ的なことになるのではないかなあと思っているわけです。あー、楽しみだなあ。