Nikon Z 7IIに決めた理由
階調表現と色再現、そして絞り開放の画質がポートレートを進化させる…立花奈央子さん
2021年3月12日 07:00
2020年12月11日に発売となった「Nikon Z 7II」(以下Z 7II)。有効約4,575万という高画素数はそのままに、連写性能や瞳認識AFといった諸機能がより強化され、さらにCFexpressおよびSDカードのダブルスロットを搭載。「Nikon Z 7」からさまざまな強化が加えられたフルサイズミラーレスカメラのフラッグシップ機だ。さらにNIKKOR Zレンズのラインナップも充実してきた。
今回はD850とNikon Z 6を仕事で使う写真家の立花奈央子さんにZ 7IIを使ってもらい、その感想を存分に語ってもらった。主にポートレート撮影をおこなう立花さんは、Z 7IIにどのような印象を持ったのだろうか。(写真・キャプション:立花奈央子)
立花奈央子
1982年生まれ、千葉出身。フォトグラファー、イベントオーガナイザー、元芸能プロデューサー。フォトグラファーとして一般個人広告・雑誌・CDジャケット撮影、写真集制作、技術コラム執筆等をおこなう。
女装ポートレートから写真の道へ
——立花さんが写真家になられたきっかけを教えてください。
前職は堅めのOLで、退職してフリーランスのライターになり、取材・執筆と同時に撮影もおこなっていました。取材する中で女装を趣味とする人たちに出会い、自分の「好き」を全力で表現している部分に惹かれ、2010年に女装専用の写真スタジオを作ったのが、写真家としての活動の始まりです。
私自身は異性愛者で性的マイノリティではないのですが、幼い頃から「女の子らしく振る舞わなきゃいけない」という空気に息苦しさを感じていました。そういった過去もあり、同じような思いをしている人たちに光を当てて、写真を撮り、何かのきっかけや刺激を与えられればと思っています。
——カメラを始められたのはいつごろからでしょうか?
撮影会のモデルの経験もあったため、撮影現場の経験はそれなりにありました。友だちにモデルになってもらって私がスタジオや小物、背景なども考えて、作品撮りを始めたのがきっかけです。
——立花さんがカメラに求めることはなんでしょうか。
しっかり写ることですね。これに尽きます。スタジオにいらっしゃるお客さんを撮影することが多いので、ざっくり撮影してもピントがずれない、スタッフが使っても安定して撮れる、ロケに行っても同じように使える、アクセサリーが充実している、などです。自分が思った通りの絵が撮れている、お客さんがイメージする写真に近い、という感覚的な部分も含みます。
——ニコン製カメラを使い始めたのはいつからでしょうか?
以前レズビアンパーティに出入りしていたころに舞台を撮影していて、暗所撮影に強いカメラとして導入したのがD300でした。それ以前は他社のカメラを使っていたのですが、当時、高感度画質はニコンが一番ということで、切り替えたのです。それ以来メインカメラはずっとニコンですね。
とにかく「絵がいい」
——現在はD850とNikon Z 6を併用する立花さんですが、今回の撮影ではZ 7IIを使っていただきました。
Nikon Zのデザインと機能を見たとき、「これは使える」と思いました。フルサイズ一眼レフが洗練されたようなデザインですよね。全体的に高級感があり、しかも小さくて軽い。本体やレンズが軽ければ他の機材を持っていけるので、その分写真の幅も広がり、写真を撮るのがさらに楽しくなりました。
——持った時のグリップ感はいかがでしょうか?
グリップが深くて持ちやすく、長時間の撮影絵も手が疲れないですね。持っている時には大きな満足・高揚感があります。
——ポートレート撮影だと、しっかりした見た目のカメラでないとモデル側が不安になる、といった話もよく聞きます。
Nikon Zのボディは小さいのですが、見た目がカメラらしいためそういった不安を与えることもないですし、写真を見せれば納得してもらえます。お客さんにカメラに詳しい人は結構いらっしゃいますね。「自分で現像するのでRAWデータをください」という人もいます。女装が好きな方は自撮りで作品を作る方も多いので、お客さんとの間でカメラ談義をすることも多いですよ。
——いつもの撮影設定をお聞かせください。
露出モードはマニュアルです。ピクチャーコントロールは基本的に「スタンダード」、まれに「ビビッド」を使います。ホワイトバランスはよく変更します。ストロボ撮影の時は色温度指定をしますし、ストロボがない時は「自然光オート」がお気に入りです。通常の「オート」も細分化されて親切になりましたよね。ポートレートに限らない話だと思いますが、カメラが作り出す色はとても重要だと思います。わずかな違いで人物の印象がまるで変わりますし、特に肌色が被写体の印象を左右します。
——Z 7IIの画質はいかがですか?
単純にいうと「絵がいい」ですね。ボディのRAW現像で暗所を持ち上げても、階調の破綻などなくなめらかに表現できます。背景の白、机の白、洋服の白など、同じ「白」でも豊かな階調が見られます。窓際で逆光気味に撮影した写真なども、明るいところと暗いところのグラデーションがなだらかに溶け込むように表現されていました。解像感も一眼レフよりアップしています。髪の毛も細かく表現できるので、写真の空気感が伝わりますよね。
——今回はアイレベルでの撮影が多いようですが、ポートレートで背面モニターをチルトさせて撮ることはあるのですか?
ローアングル、ハイアングルの時はもちろんあります。そんなときは背面モニターをチルトさせます。同時にカメラを持ち上げたり下げたりするのですが、一眼レフから軽くなって便利になりました。それまでは筋力で解決してきたので(笑)
——シャッターフィーリングはいかがですか?
ミラーが動く一眼レフとは違いますが、特に不満はありません。サイレント撮影もよく使いますね。コロナ禍でオンラインセミナーが増えたのですが、現場のスチール撮影は意外と需要があり、そんなときにサイレント撮影をします。
——AFの設定は?
もちろん「瞳認識」です。画角内に顔さえ写っていればバッチリあってくれますね。「瞳認識」「顔認識」は完全に信頼しています。ピントに使ってていた神経を構図、露出、色などに使うことができるのはありがたいです。今回の撮影ではほとんど絞り開放のF1.8にしました。被写界深度が浅くシビアな撮影が求められますが、それでもバッチリピントが合っています。
——瞳認識を使うことで変わったことはありますか?
構図ですね。以前は中央に合わせてからフォーカスロックをしていましたが、それだとどうしても被写体が真ん中によりがちです。瞳認識は、顔が画面内にさえあれば自動でピントを合わせてくれるので、最初から顔を画面の端に配置して撮影できます。おかげで構図の自由度は格段に上がりました。
——ミラーレスカメラということで、バッテリーの持ちが気になることはありますか?
一眼レフと同じとはまではいえませんが、ずいぶん持ちが良くなったと思います。特に感じたのがライブ撮影です。1時間のライブで約1,000枚の撮影をしますが、一度もバッテリー交換をすることなく最後まで持ちました。その安心感や安定感は心強く、撮影に集中できると自分のテンションも上がります。
——CFexpressカードはお使いですか?
はい。読み込み/書き込みが速いので、私の撮り方でしたらRAWで頻繁に撮影してもバッファがいっぱいになり、記録を待つ必要はありません。ずっと撮影し続けられるので、テンポよく撮影できます。デュアルスロットになったのも良いですね。同時にバックアップも取れるので、安心感があります。
良い機材は撮影者とモデルの関係性を良くする
——今回使用したレンズは、「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」と「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」の2本です。
どちらも「軽い!」が第一印象でした。軽いだけでなく、絞り開放で撮影した時の画質が優秀です。髪の毛やまつ毛の中でボケ味の違いが出て、かつなめらかなボケになる。瞳認識のおかげでAFの心配はないので、安心して絞り開放で撮影できたことが楽しかったです。
——確かに、現場の楽しさが伝わってくるような作品ですね。
ボディとレンズの描写や性能など、Nikon Zにはいろんな機能がバランスよく詰まっていると思います。操作性が良くて撮りやすく、撮影結果も申し分ない。すると、撮影している私の気分が盛り上がってきます。その空気はモデルさんにも伝わり、モデルさんも察してくれて、撮影者とモデルの両方の気分が良くなってくるんですよ。そうなれば初対面でも打ち解けることができます。
ポートレート撮影はカメラマンとモデルの関係性がとても大事ですが、Z 7IIやNIKKOR Zレンズはそれをアシストしてくれる撮影機材だと思います。
制作協力:株式会社ニコンイメージングジャパン
モデル:永友春菜(WALK)