カメラ旅女の全国ネコ島めぐり

日本の島で暮らす幸せな猫を求めて(猫島あれこれ総集編)

カメラを持って日本の島をめぐり、たくさんの猫たちに出会ってきました。日向で寝転がり、ふわふわの毛が太陽の光で柔らかく煌めいていたり、寒い日には体を寄せ合って猫団子になっていたり、猫たちの日常に出会い、シャッターを押す瞬間はいつも幸せを感じてきました。

カメラがなければ、そして猫たちがいなければ、日本の島めぐりはまた違ったものになっていたかもしれません。

今回は、これまで訪れた島で出会った猫たちの中から、印象的な猫写真をご紹介していきます。写真から、スロウな島時間を感じ取っていただけたら嬉しいです。この連載でとりあげていない島の猫も紹介します。


日本一の猫密度を誇る青島

今や世界中の猫好きが渡島する日本屈指の猫島といえば、瀬戸内海に浮かぶ青島。愛媛県大洲市の伊予長浜港から船に乗って35分で着きます。

ここは、港からたくさんの猫が出迎えてくれる奇跡の島。

ご飯をくれる観光客や地元の方に、猫はすっかり懐いていて、肩や膝にのってくる猫も少なくありません!

人が歩けば、猫たちもぞろぞろと歩く。

青島のような猫密度の島や地域は、他に知りません。

猫が穏やかに暮らしていけるには、島の人の存在があってこそ。ただ、現在人口は6名、猫は200匹以上だそう。

すでに全島避妊・去勢が行われましたが、人と猫のバランスが崩れている今、さまざまな問題が起きているのも事実。

今後、どうなっていくのか静かに見守りたい島です。

日本一の猫の楽園 秘境“青島”へ! 遠い道のりの末に猫にまみれる(青島・前半)
なかなか行けない猫の楽園で、猫と人の愛おしい関係に出会う(青島・後半)


瀬戸内海屈指のアートの島、直島

同じく瀬戸内海で、3年に一度開催される瀬戸内国際芸術祭の島の一つとして、世界中に名を馳せるようになった香川県の直島にも、猫は暮らしています。

観光客で賑わう一角を外れ、住宅地のほうへと足を運べば、人馴れした猫たちに出会えるかもしれません。

アートスポットではなくても、そこに猫の姿があれば、アート作品のように「絵」になると思いませんか?

直島はフォトジェニックで、撮影も楽しいと思います。


意外と猫が多い東京の島、伊豆大島

東京都内の竹芝桟橋から東海汽船のジェットフォイルに乗れば、1時間45分で全く東京とは思えないような大自然に出会える伊豆大島。

火山の島らしい地層や海岸線などは、まさに日本ジオパークたる風光。

一方、島の中では意外や猫と出会える機会が多くて、「隠れざる猫島?」と嬉々としてシャッターを切りまくりました。

人馴れした猫も多くて、とくに岡田地区や波浮地区で多く見かけます。

波浮地区では、港から上につづく階段を、猫と一緒にくだって行きました。とっても人懐こくて、私が止まれば猫も止まってくれる感じです。

古きよき街並が残る岡田地区で、幸運を招く“猫道”を歩く(伊豆大島・前半)
ここが東京!? 猫のいる宿からはじまる日本唯一“砂漠”までの旅(伊豆大島・後半)


黄昏猫がいる神秘的な雰囲気漂う、加計呂麻島

奄美群島の一つ、奄美大島の南に位置する加計呂麻島。

初夏にはデイゴの花が咲く諸鈍で、黄昏猫に出会いました。金色に照らされた海は、どこか神秘的。

その浜辺をパトロールする猫さんは、島の守り猫のように見えました。

猫の毛や肉球が砂まみれになっていましたが、これぞ島猫らしといえる写真が撮れました。

海の果てにあるニライカナイからやってきたみたいに、猫も神秘のオーラに包まれている気がしました。

神の島にある宿で暮らす、仲良し猫たちの日常に出会う(加計呂麻島・前半)
行けば行くほど猫に出会い、島に一歩踏み込む島歩き(加計呂麻島・後半)


三河湾のアートで猫の島、佐久島

今年、動物写真家の岩合光昭さんが初監督された『ねことじいちゃん』の舞台となった三河湾の島々の一つ、佐久島。

原作の漫画にあるように、猫と人がのんびりと一緒に暮らしています。

ただ、「最近は、ずいぶんと猫が減ったかもねえ、人が減っているから」と島のおばあさんが言っていました。

それでも、民家には猫がいて、家のおばあさんから「どうぞ、どうぞ、猫の写真撮っていいわよ」と優しく迎え入れてもらえました。

そんな穏やかな昼下がり、猫たちは寝たり、遊んだり、おばあさんに甘えにいったり、いろいろな顔を見せてくれました。

集落を歩いていると、「にゃーん」と向こうからやってきてご挨拶してくれる猫も。

ところで、佐久島は「元祖アートの島」の一つとも言える、昔から島にアート作品を点在させて、島おこしを頑張ってきた島です。そうしたアートを楽しみながら猫と出会えるのも魅力ですね。

三河湾に浮かぶアートとネコと、ばあちゃんの島へ(佐久島・前半)
三河湾に浮かぶアートとネコと、ばあちゃんの島へ(佐久島・後半)


猫と鹿が仲良し? 南の島、座間味島

沖縄県の離島で、慶良間ブルーと称えられる青い海がと〜っても美しい慶良間諸島の一つ、阿嘉島。

慶良間諸島のなかでも、とくに規模が小さくて、のんびりとした時間が流れているところ。

ここにはケラマジカという野生の鹿がいて、島を歩いていると、あちこちで見かけます。

猫がたくさんいる民宿のおじさんとお話していると、鹿と猫たちが集まりはじめました。

人馴れしたケラマジカ(とはいえ警戒心はある)と猫。この絵が撮れる島は、そうそうありません。

民宿の猫たちも、仲良く日向ぼっこ。みんな、とっても眠そうです。

そんななか、ひょっこり猫さんも!

ネコとウミガメ、満天の星を求めて(座間味島・前半)
ネコとウミガメ、満天の星を求めて(座間味島・後半)


五島列島いちばんの猫島、黄島

長崎県は日本でもっとも島数の多い県で、五島列島だけで大小合わせて140以上の島があります。

そのなかで、猫の多い島が黄島です。

のどかな島で、人口30名ほど、猫のほうが多いくらいだそう。

石垣の残る情緒的な街並みに、猫がおのおの自由きままに過ごしています。

猫の日常をみると、島の人の日常に重なって見えます。

「今日はどうだい?」

「ぼちぼちかにゃあ」

なんて。


日本のベネチア的港が美しい、保戸島

港にぎゅっと立ち並ぶ家並みが、「日本のベネチアみたい!」と思う大分県の保戸島も、猫が多い島です。

平らな土地の面積が少ないため、山の斜面に沿って家が立ち並んでいます。かつて、マグロの遠洋漁業で栄えたため、大きな4階立ての家なんかもありますが、集落を歩けば細い道が入り組み、冒険感があります。

そして、猫にばったりと出会います。

狭い路地に猫がいると、写真的に収まりが良くて、雰囲気のある写真が撮れます。

集落にも港にも猫がいて、街並みを楽しみながら猫と出会うのに楽しい島だと思います。

私が行った日は、おじいさんが猫たちにご飯をあげていました。

見ているだけで、とっても癒される島旅でした。


猫が暮らす塩飽水軍の本拠地、本島

瀬戸内海の塩飽諸島は、かつて塩飽水軍が活躍していた地域です。幕府の御用船方の水夫を勤めたり、物資や人を運んだり、さらに昔は海賊として戦ったり。

本島は塩飽水軍の本拠地と呼ばれ、かつて「塩飽島」という名前だったそうです。

そんな水軍の末裔にあたるのは、猫たちもでしょうか。

本島の笠島は、塩飽大工が建てた建造物が立ち並ぶ、時代劇の舞台のような地区。

ここに猫たちもいて、いっそう舞台を引き立てています。


東日本最大の猫の島、田代島

猫好きの方ならご存知の宮城県田代島は、国内外から「猫を見に行く」ことを目的とした観光客が押し寄せる島。

島のあちらこちらで、歩けば猫を見かけます。

猫神社という神社まであり、猫好きは島の中からも。古来、猫は大漁の守り神として大切な存在だったそうです。

普通はあまり見かけない山道でも、猫の衛兵が観光客をパトロール。

猫検問所で「ごはんをみせなさい」と言われます。

日本でもっとも猫が多い楽園で、1匹の黒白猫と出会う(田代島:前編)
1匹の猫との出会いで、島とつながり、旅の記憶は深まる(田代島:後編)


カメラを持って猫島に行こう!

さて、いかがでしたか?

まだまだ、たくさんの島で、猫たちは暮らしています。

私は、愛らしい猫たちに出会う島旅で、旅がいっそう豊かになっていると確信しています。

猫と人の共生はときに難しい問題で、各地域によってさまざまなお話を聞きます。だから、むやにあたらに猫を追い求めるのではなくて、「いたらいいな〜」くらいの気軽な心構えが大切かもしれません。

でも実際、島のほとんどでは、「ああ、ネコ? そこらへんいいるんじゃない?」というのんびりとした声が返ってきます。

旅する理由は人それぞれですが、カメラを持って、新年にぜひ猫に出会う旅をしてみてはいかがでしょう?

小林希

旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』で作家に転身。著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』や『美しい柄ネコ図鑑』など多数。現在55カ国をめぐる。