カメラ旅女の全国ネコ島めぐり

神の島にある宿で暮らす、仲良し猫たちの日常に出会う(加計呂麻島・前半)

奄美諸島の一つで、奄美大島の南部に位置する加計呂麻島。

煌めく美しい海と、青い空、カラフルな花が咲き誇り、南国らしい華やかさを放ちながらも、どこか神々しさが漂う島です。

カメラを持って、写真を撮りたくなるようなシーンが、たくさんあります。

リアス式海岸の島は、入り組んだ入江に集落があり、全部で30ほどあります。一つひとつの集落は、少しずつ装いや雰囲気が異なります。


これまでのねこ島めぐり

島をゆっくりと車でドライブすると、約2時間かかりますが、気が向いたどこかの集落で車をとめ、のんびり散歩をしてみると、あれれれ、猫がのほほ〜んと、気持ちよさそうに寝ています。

カメラを向けても、知らん顔でごろん。

加計呂麻島は、ゆっくり散策すると、思いのほか猫と多く出会います。人なつこい猫も多く、飼い猫が外で寛いでいるのかもしれません。

今回は、私が毎度泊まる宿の飼い猫たちと、ご近所猫の日常をご紹介したいと思います。

みんなひさしぶり!

奄美大島の空港からバスを乗り継ぎ、約2時間かけて南の港街、古仁屋に到着。

古仁屋から、加計呂麻島行きの船「フェリーかけろま」や乗り合いの海上タクシーが発着しています。

天気が良い日、ここは、フェリー乗り場とは思えない、今すぐ泳ぎたくなるほど、海が透明です。

奄美、加計呂麻島は、宝石のように煌めく、青とも緑とも見えるグラデーションの美しい海が魅力の一つ。

さて、古仁屋からフェリーかけろまで、約25分。加計呂麻島の瀬相港に着岸しました。

港では、宿の女将さんが迎えに来てくれています。

「こんにちは! みなさんお元気でしたか〜?」と聞くと、
「元気だよ!」と女将さん。

もちろん、“みんな”のなかには、猫たちもしっかりと含まれています。

瀬相から車で約10分、勢里という集落に宿はあります。

宿に着いて荷物を置いて、さっそく猫たちにご挨拶。

肢体がシュッと美しい三毛猫のミー(♀)、ぷよぷよのお腹をした黒猫ロール(♂)、しっぽがウサギのようにまんまるな三毛猫チビ(♀)。

まるで三兄妹のような猫たちは、血縁関係はまったくありませんが、仲良しだったり、喧嘩したり、本当の兄妹のようです。

三兄妹の猫を追いかけて、写真を撮っていると、それぞれの性格が見えてきて面白いでです。

ミーはツンデレで、いつもクール。

ロールは、のんびり屋さんで、お客さんが一番触りやすいので、まさに「宿のアイドル」。

チビは、とっても怖がり。

もともと宿にきたとき、ガリガリに痩せていたそうです。女将さんが保護して、仔猫なので「チビ」と名付けたら、実はもう一歳だったとか。

いつも、柱の陰から片目で宿泊者を観察しているチビを撮るのが、私は大好きです。

猫たちの日常で、ときに愉快な出来事も。

三毛猫ミーは、奄美方言でトビンニャという貝が大好物。

ある時、他の宿泊者と一緒に、海で大量にトビンニャを拾って帰りました。

人間たちの夜ご飯にしようと思っていたのです。

宿のご主人が、大きな鍋にトビンニャを入れて、ぐつぐつと煮詰めはじめました。

その様子を、ミーが監視しはじめました。

「ミーはねえ、トビンニャが煮えた時に、“お父さん、もう食べれるよ”って教えてくるよ」とご主人が言っていました。

トビンニャの鍋当番をしているミーを、ロールがじっと見つけていたので、撮ってみました。

そして、本当に、鍋がぐつぐつと煮えてくると、ミーは、お父さんのところへ「もう食べれるんじゃにゃい〜?」と、呼びにいくのです。

お父さんにまとわりついて、「トビンニャちょうだいにゃ〜」とすり寄るミーが、たらふくもらって、満足げに居眠りするところまで、しっかり写真に撮ってみました。

ちなみに、私も、トビンニャが大好きです。

ミーの写真を撮っては、「お父さん〜私も食べたい〜」と、どさくさに紛れてトビンニャをもぐもぐ。

仲良しなご近所猫たち

勢里は人口11人ですが、猫は5匹くらい暮らしていて、ご近所猫とも、ときどき遭遇します。

よく、宿にもやってくるのが、隣の家の飼い猫“おいちゃん”です。

体の大きなオスの茶トラ猫ですが、信じられないくらい、可愛い声でなきます。

三兄妹とおいちゃんは、ライバル関係のようで、よく、「ふー!」とか「シャー」とか喧嘩します。でも、お互いの存在を認め合っている感じです。

普段大人しいロールも、ときにミーとおいちゃんが喧嘩していると、猛ダッシュでミーを助けにいきます。

「え! あの、ころころロールが、猛ダッシュ!?」と不思議に思うほど、やるときはやる、オス猫ロールなのです。

私は、実をいうとおいちゃんが大好き。

とても甘えん坊なのに、お仕事で家を空けがちな家主にたっぷり甘えられないストレスを抱えていることもわかっているので、ついつい相手をしたくなります。

それに、とっても人なつこいので、好きなだけ写真を撮るらせてくれるのが、嬉しい。

「おいちゃん?」と声をかけると、必ず、「にゃーん」と可愛くないてくれます。

おいちゃんがいると、ミーやロールは警戒しますが、私はなんだかんだ、みんなで仲良くやっているように見えます。

宿の敷地内に、たまにおいちゃんがやってきますが、基本的に喧嘩するようなことはなく、お互い「じーーーっ」と見つめ合っているだけ。

やがて、みんなまた、それぞれ好きなところへ散らばっていきます。

ロールは、海がよく見える場所へと、のそのそと歩いていきました。

美しい海に、もうすぐ雨がふって、少し色味が変わりそうです。

(続く)

小林希

旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』で作家に転身。著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』や『美しい柄ネコ図鑑』など多数。現在55カ国をめぐる。『Oggi』や『デジタルカメラマガジン』で連載中。