カメラ旅女の全国ネコ島めぐり

行けば行くほど猫に出会い、島に一歩踏み込む島歩き(加計呂麻島・後半)

奄美諸島の一つに、奄美大島の南部に位置する、静かな加計呂麻島があります。

あまり観光地化されておらず、圧倒的な自然のなかで、人がひっそりと、自然に寄りそって暮らしているようです。

地元の人は、「ここは神様の島」というふうに言ったりしますが、私もはじめて来島したときは、そこはかとない神々しさの漂う島の雰囲気に、もしかしたら、自然のなかに神様が宿っているのかな、なんて思ったりしました。

実際、地元の人にとって、古くから自然は神様だと言われてきたようです。


これまでのねこ島めぐり

さらに私は、加計呂麻島は、「猫島」と言っていいのではと思っています。30ほどある島の集落では、のんびりと暮らす猫たちに出会うことができます。

外猫もいますが、飼い猫も外へ出入りしているみたいです。人慣れした可愛らしい猫に出会うのは、加計呂麻島を旅する楽しみの一つです。

いざカメラを持って、猫を探しながら、加計呂麻島を散策しました!

旅でもっとも贅沢な時間

加計呂麻島は入り組んだリアス式海岸になっており、集落はその入江にぽつぽつと、30程あります。

集落の規模も、人口も、雰囲気も、それぞれ異なっていて、散策していると写真を撮りたくなるようなシーンにたくさん出会い、ワクワクします。

私がとくに好きな集落は、加計呂麻島の東部にある諸鈍(しょどん)という集落。

ここは、デイゴ並木が広がり、その目前には美しい海が広がります。

日中、島内を走る加計呂麻バスが、デイゴ並木の横を走る光景は、ノスタルジックで、幼い頃の夏休みの記憶を思い出します。

バスが来る時間を見計らい、シャッターチャンスを狙ってみるのも、楽しいです。

集落では猫たちが外でのんびりとしていることが多いですが、諸鈍では、浜辺で可愛らしい、人なつこいキジトラ猫が、ぴょんぴょん遊んでいました。

観光客のあと追いかけて、浜辺を走りまわっているので、まだ仔猫なのかもしれません。

観光客が去ってしまったあと、私が近づくと、「にゃーん」と傍に来てくれました。

「海辺で猫と過ごす時間」は、私にとって、旅でもっとも贅沢で、好きなことでもあります。

太陽が傾き、猫と過ごしていると、次第に海も浜辺も、黄昏色に染まっていきます。

猫のふわふわとした毛並みが、ゴールドの光に照らされて、気持ち良さそうにみえます。

膝に乗ってきた猫を抱きしめ、くんくんとニオイをかぐと、お日様のニオイがしました。

猫がいるいつもの風景

それから別の日、西安室という集落で、マリンスポーツの手配をしてくれる「ととろまりん」にお願いして、ダイビングをしたあと、カメラを持って散策しました。

黒白柄の猫が、石垣の前で毛繕いに精を出して、私のことなんてお構いなし。

近くで、子供たちが数人、鬼ごっこしていたので声をかけると、

「この猫、うちの猫だよ!」と言って、嬉しそう。

それから、自然とみんなで港のほうへと向かいました。

そこで、釣ったばかりの魚を捌いている観光客のおじさんがいました。

先に目をつけたのは、さきほどの黒白猫くん。

「どれどれ、何を釣ったのか、見せてもらいましょうにぇ〜」

とことこ、一直線に、釣り人に向かっていきます。

しかし、子供たちも負けてはいません。

「なになに、何釣ったの?」

その勢いに、黒白猫くんは、すごすごと避難。

兄妹なのか、キジトラ猫も「おや、何か釣れたかにゃ?」とやってきましたが、あっという間に、子供たちに囲まれます。

すでに、こっそりと陸にあげられた小舟の下に隠れていた黒白猫くん。

彼も子供たちに見つかってしまいました。

まるで、一緒に隠れんぼして遊んでいるようで、微笑ましい。

「みんな、またね〜」

ただ猫を撮るだけでなく、猫が溶け込む平穏な日常そのものを、こうして写真に撮ることができるのは、とても魅力的です。

加計呂麻島でいつも泊まる宿がある、勢里という集落では、前半でも猫たちの日常をご紹介しましたが、運がよければ、可愛らしいベンガル猫に出会えます。

もちろん、飼い猫ですが、外にいることもあるので、見つけたらチャンス。

飼い主さんが傍にいたので、一声かけて撮影させてもらいました。

美しい柄が、くっきり。加計呂麻島の大自然に映えます。

加計呂麻島は、行けば行くほど、可愛らしい猫たちに出会う気がします。

でも、車でドライブするだけでは、なかなか出会えません。

なにより、猫たちを探そうと、集落をゆっくり散策して歩いたとき、実は、猫だけではなくて、今まで知らなかった素敵な島の風光に出会えたり、思いがけない出会いがあったりします。

それが、楽しいなあといつも感じます。

これからもカメラを持って、猫を探す旅をしながら、島の魅力を知っていきたいです。

小林希

旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』で作家に転身。著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』や『美しい柄ネコ図鑑』など多数。現在55カ国をめぐる。『Oggi』や『デジタルカメラマガジン』で連載中。