カメラ旅女の全国ネコ島めぐり

三河湾に浮かぶアートとネコと、ばあちゃんの島へ(佐久島・後半)

愛知県の三河湾に浮かぶアートとネコで人気の佐久島へ行ってきました!

島には、情緒的な家並みが続く西集落と東集落があって、人口は230人。歩いて回れるほどの小さな島ですが、レンタサイクルで効率よく島巡りできるのも魅力。

観光客もほどほどに多くて、島中に点在しているアートをみながら、ふとネコたちの穏やかな日常を垣間見てほっこりします。

岩合光昭さん初監督の「ねことじいちゃん」のロケ地となった島ですが、「ねことおばあちゃん」の写真もたくさん撮れて、大満足!

前半は島の西側を散策したので、2日目は東側へ移動して、ふたたび散策したいと思います!


【これまでのねこ島めぐり】

しっかり観光、しっかりネコ探し!

佐久島の東側には、東集落と、佐久島と桟橋でつながれた筒島、大島があります。東集落のほうが宿や商店が多いため、観光客が来島する玄関口でもあって、港は船の乗降船をする人たちで賑わっています。

それでも、船が出港すると、港は静かになって心地よく、ネコたちが姿を現して我が物顔で行き交っています。

この時期、仔ネコも多くて、観光客がばらけた後は、ネコ家族の姿も!
ゆったりとくつろぐネコたちの時間を壊さないように、望遠レンズでパチリ。

まずは佐久島の東の端っこにある、筒島へ向かいました。その途中にある集落へ少し入ってみると、パッと目が合いました。ハチワレネコさん。

人馴れしているのか、怪しげな人間をじっと観察してはいたものの、警戒心はなさそうでした。ご挨拶して、1枚撮らせてもらいました。

港沿に戻って歩くと、漁船のそばにネコがいて、「今日はお魚もらえないのかにゃあ?」とでも思っているのか、ちらりちらりと船を覗いていました。

「漁船とネコ」の図。島らしい1枚が撮れました。

長い桟橋を渡って、いよいよ筒島へ上陸。

筒島は、島自体が弁財天社になっており、聖なるスポットです。ここでは「願い石の奉納」が行われていて、石に願い事を書いて奉納すると願いが叶うと言い伝えられています。

筒島で見たかったのは、兜岩。

兜をした形の岩を祀っているのですが、その昔、武田信玄が追っ手を迎えうつために立てこもり、ここに兜を脱いで置いたと言われています。
この場に武田信玄がいたのかと思うと、歴史の重要な場面にぽつりと立たされている気がして、不思議な気持ちになります。

筒島は島を半周できる歩道があり、竹林が広がります。緑豊かな竹林の中を数分歩くだけで、心身がすっきりとしました。お天気がよかったら、さらさらと風によそぐ葉の間から木漏れ日がさして、また幻想的な空間となりそうです。

筒島から佐久島のほうへと戻り、右手に続く歩道を行くと、渥美半島を見渡す高台にアート作品「佐久島の秘密基地アポロ」がありました。

雑木林のなかで、島の人にも忘れかけられていた建物は、人類初の月面着陸を成し遂げたイーグル(月面着陸船)に形が似ているため、アポロと名付けられ、アートとして蘇りました。

島で出会ったネコ好きおばあちゃんも、「アポロはぜひ見てね」と言われていたので、外から、中からとじっくり堪能しました。アポロの中にある窓から見渡す海は1枚の絵のようでした。

仔ネコたちバイバイ!また来るね!

さて、東集落の中へと場所を移します。

その前に、お腹が空いたので、名物「大アサリ丼」」を食べてみました。ふわっとした衣のほうが味濃くて、アサリの味がよくわからなかったけれど、アサリの大きさにはびっくり。ハマグリよりも大きなアサリでした。

アサリ漁は、老若男女関係なく、老人も女性も実力あるものが多く収穫していたようで、島のみんなにとっての「ふるさとの味」なのです。

食堂の近くに白茶トラさんがいました。

お天気もあまりよくないし、ゆっくりお昼寝かな?

近づいて撮らせてもらっても、香箱座りでリラックスしておりました。

集落の中心にある八劔(はっけん)神社へ向かうと、鳥居の先に郵便局がありました。生活圏と聖域が溶け込んでいる珍しい光景です。

1663年に建立された歴史のある神社で、さまざまな島の行事も執り行なわれているようです。

くねくねとした、迷路のような小道を歩くと、「にゃーーーーん」という愛らしい声がしました。

前方から、勢いよく黒ネコが歩いてきました。

「こんにゃちはーーー」とご挨拶に来てくれたのでしょうか。首には飾りがしてあって、どこかの家のネコさんのようです。

雨上がりで、ネコさんも嬉しいのかな?

歩くと一緒に歩いてくれて、止まれば写真を撮らせてくれる、好奇心旺盛なネコさんにメロメロになってしまいました。

なんといっても、情緒的な家並みに、ネコの姿の似合うこと!

レトロな看板の前に立てば、どこかの広告のよう?

それにしても「ファンタ」の文字がレトロで、しびれました。錆びついた味のある茶色の看板に、黒ネコさんのシルエットが綺麗に映えます。

「もっと写真撮ってもいいにゃん」

なんていう素ぶりで、あちこち移動してはモデルポーズを決めてくれて、ネコ好き・カメラ好きを喜ばせてくれるのでした。

船の時間も迫ってきたので、東側で代表的なアートを見にいきました!

東港の船着場のすぐ横から大島へと続く桟橋の途中にある、「イーストハウス」という作品です。

西集落にあった黒色の「おひるねハウス」の対岸にあり、対照的に真っ白な建物。階段を登ってみたり、中に入ってポーズを決めたり。

制作年は2010年。まだまだ「インスタ映え」などのない時に、このような体感型で写真映えするアートを展示しているとは。

長い歴史のなかで、過疎化・高齢化の波をうけ、島の良さを残しながらも、現状のままに止まらずに変化を遂げていった佐久島は、とても魅力的だと感じました。

イーストハウスを楽しみながら、大島へ上陸。

大島には、釣り人が楽しむ釣りセンターがあるほか、アート作品も。ここで面白かったのは、「佐久島のお庭」というアート。佐久島にある4つの山をモチーフとして、小道には島民が使っていたお皿がタイルのようにはめ込まれ、島の小さな縮図を表現しているそうです。

ところで、佐久島には、かつて古墳が50基ほどあったことが確認されていて、縄文土器の破片や弥生時代の貝塚なども見つかっています。とても歴史の古い島が、現代アートで島を活性化させていることが、「進化」の証のような気がしました。

船の出港前になんとか東港に戻りました。

港の前の草むらでは、仔ネコたちがいて、「またにゃん」とお見送りしてくれました。

「あなたたちが大人になる頃に、また島に来るから、会おうね」

一方的な約束ではありますが、次の楽しみを心にしまって、船に乗り込みました。

ネコとアートを通してみえた佐久島は、歩いて回るほどに奥が深く、まだまだ行けなかったところもたくさんあります。

面積にすれば東京ディズニーランド3個分の広さですが、きっと何度きたとしても、新しい発見がたくさん隠れている島だと思います。島の器なる大きさというのは、物理的な大きさではないのだと改めて感じました。

ネコたちに会いに、島をもっと深く歩きに、また来たいと思います!

小林希

旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』で作家に転身。著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』や『美しい柄ネコ図鑑』など多数。現在55カ国をめぐる。『Oggi』や『デジタルカメラマガジン』で連載中。