赤城耕一の「アカギカメラ」

第24回:あれから40年!「ミノルタCLE」再検証

Mマウント互換機AE化の意義と、その意味するところ

リコーGR LENS 28mm F2.8をL-Mリングを介してミノルタCLEに装着しました。 うちのフィルムGRはすべて調子が悪いか、液晶のカウンターが欠けたりしてモチベーションが落ち気味でしたが、ついにこのレンズの出番がやってきました。28mmフレームがしっかり観察できて良い感じです。

前回のライツミノルタCLに続いて、今回はミノルタCLEのお話をしようかと思いますが、執筆にあたって、資料をひっくり返していたのですが驚きました。綾小路きみまろさんじゃないですが、「あれから40年!」な、わけです。CLEの登場は1981年です。

驚愕です。1981年など、つい先日のことだと思ってしまうところが自分がジジイになった証拠でありまして、いまちょっと落ち込んでいるところです。1981年の40年前といえば1941年ですから、太平洋戦争の始まった年になります。こう考えると「40年」という時間はそれなりに長くて重たいものがあります。今このような「お気楽なカメラ話」ができる平和な世の中であることを感謝せねばなりません。

この、登場から40年を経たミノルタCLEですが、先日久しぶりに持ち出したはいいのですが、撮影をはじめてしばらくしたのち、まったく動かなくなってしまいました。

ライツミノルタCLはフルメカニカルカメラなのでいまだに修理できる余地があるのですが、CLEのような骨董品に近いAEカメラは電子部品もないだろうし、まず絶望的だと、半ば諦めていたのです。ところがネットで探してみると、四国の香川県に「ミナミカメラサービス」(http://mcs-web.jp)というミノルタCLEの修理専門店があることがわかり、こちらに修理を依頼したところ、見事に復活し帰還しました。感謝感激です。とてもありがたいことです。CLEが復活したことで、前回のライツミノルタCLと今回のミノルタCLEのお話をしたくなったこともあるのです。

ところで、なぜ、「ライカ」あるいは「ライツミノルタ」ではなくてミノルタCLEになってしまったかといえば、諸説あるようです。

ライツミノルタCLが登場したとき、後にAE化したモデルを出すとライツがアナウンスしていたという話もあったようですが、どういうわけかミノルタ単独のカメラとしてCLEは登場しています。

ライツと提携していたミノルタがこのようなカメラを単独で作ることに対して、ライツとしては、軒先を貸したら母屋を奪られるかのごとくにはならないにしても、あまり面白いものではなかったのではないかと想像するわけです。

だって、CLEの仕様を踏まえると、ライカよりミノルタの方が先に世界初のMマウント互換レンジファインダーカメラのAE化を達成してしまうわけです。しかもそのネーミングもCLの後継機、もしくは兄弟機として否応なく見られてしまいますよね。この時、ミノルタが本気を出したら、ライカM7に匹敵するような優れたAEレンジファインダーカメラができてしまうかもしれませんし、両社の関係はこじれてしまいそうです。

この当時のライツ社は、Mシリーズよりも一眼レフのRシリーズに力を入れていたこともあって、R3以降は当然自動化も進んでいました。もっともRシリーズの自動化、AE化に関しては、ミノルタの協力なしでは難しかったわけですし、Mシリーズにおいては、どこかでライカとミノルタの間にはお互いに一線を超えないような線引きが行われていたと考えるのが妥当かもしれないですね。ただ、ライカとミノルタではカメラの価格が思い切り違いますよね。

ミノルタCLEと同年に登場したライカはM4-Pであり、これはAEどころかメーターすら非内蔵でした。単純にいうと、M4-2にブライトフレームを追加した、という程度の認識です。TTLメーターを内蔵したM5はこの時すでに現行機ではなく、M4-PにTTLメーターを仕込んだ仕様のM6が登場するのは1984年のことになります。

当時のライツ社は経営状態こそよろしくなかったけど、当然プライドがあって、AEのミノルタCLEが登場しても、ライカの地位が脅かされることはあるまいと考えていたのかもしれません。あ、ここまでのお話は私の勝手な推測なので本気にしないでください。

ライツミノルタCLは小さいくせに底蓋取り外し式です。現在のデジタルMも底蓋取り外しのギミックを使うなど、過去のライカに毒されているのですが、この使いづらさもライカの矜持というものなのでしょう。CLEは蝶番の開閉タイプでオーソドックスです。こちらのほうが使いやすく安全ですが、ライカに毒されていると、これをつまらないと感じてしまいます。嘘です。

そういえばミノルタCLEが発売された当時、私の周りの人々のライカに対する印象って、あまり良いものではなかったですね。私もこの当時は写真を専攻する大学生ということで、先達や先生方は機材についてもいろいろな話をしてくれました。真面目な写真表現者はライカの悪口を言うところから始めねばならないのだという風潮すらありました。

いや、こういう風潮はライカに限らず高級なカメラ全てに及びます。高級なカメラを使うヤツは体制側についているとでも言いたいのかしら。「若いヤツがライカなんかにうつつを抜かしていては、ロクなものにならん」ということらしいです。つまり、そんなものに払うカネがあるのなら、フィルムを1本でも多く買って写真を撮れとか、そういう意味なのでしょう。「ライカレンズの味」とかいうと完全に無視されちゃうくらいです。

こういう真面目な写真表現者への対応が面倒なのは、ご想像のとおりです。ただ私もまだ若かったので、先達たちがそういうのだから同調しないといじめられるか、仲間外れにされてしまう可能性があるので表向きは同調して静かにしておりました。

でもね、その当時、私の好きな写真家のカルティエ・ブレッソンも、リー・フリードランダーもエド・バン・デル・エルスケンも木村伊兵衛も土門拳も濱谷浩も高梨豊も立木義浩(敬称略)もみんなライカを使ってましたけどね。口応えするとさらに面倒なことになるのでこれも黙っていました。

もっとも、ただ一つ当たったことがあります。現在の自分自身をみればわかるとおり、たしかに「ロクなものにならなかった」ことです。自覚もしております。ただし「若いころからライカにうつつを抜かした」ことだけが原因だけではないとも思います。真相は、はたしてどうでしょうか。私にもわかりません(笑)。

兄貴分のライツミノルタCLとミノルタCLEを比較。品格という意味ではCLに軍配が上がりますかねえ。サイズと重量はCLが121×78×32mm・498g、CLEは124.5×77.5×32mm・480g。CLは受光素子のCdSがレンズ最後部のすぐ後ろに位置することになるので、これこそがホンモノの“ダイレクト測光”なのではないかと。CLEのSPDはマウント内の下部に隠されたように存在しますが、その目はシャッター幕面の乱数パターンに向いています。つまりシャッター幕の反射光を測光しているわけです。

で、このミノルタCLEですが、個人的にはかなり入れ込んでいた機種でした。ライカの強力なヘビーユーザーからみれば、パチもののライカみたいな許せない存在だったようですが、Mマウント互換の実像式ファインダーを備えたレンジファインダーカメラだったわけで、先のライカを否定する先生方や、写真表現者さんたちからも注目を集めていたことを記憶しています。ライカはダメで「ミノルタ」なら許されるのかよと。なんだかより面倒だぜ。

CLEのボディ外装カバーはエンジニアリングプラスチックであり、MシリーズライカどころかCLにもその質感は及びませんでした。価格は当時の国産のミドルクラス一眼レフカメラ並みでしたから、コンパクトカメラみたいな質感では許されない感じもします。姿カタチからすれば、価格相応ではないとして、一部からは叩かれたり不満の声も聞かれました。それでも当時としては唯一無二の存在のカメラなのですから、ある程度高価なのはやむをえないんですよね。おそらくミノルタも主流の一眼レフと比較して、そう売れるとは考えてはいなかったのでしょう。

個人的にはCLEのデザインもけっこう好きです。ファインダー窓や距離計窓には、CLよりも絶対に基線長を長くしてやるんだ、という強い思想を感じるのがいいですね。ただしボディ前についたメインスイッチとか、セルフタイマーの赤ランプとか、デザイン面では一部許せないところもなきにしもあらずですが、これには目をつぶることにします。

機構的に興味深いのは、CLEはミノルタ初の「TTLダイレクト測光」を採用したカメラだということです。このためレンズを外すと、オリンパスOM-2のような「乱数パターン」が目に飛び込んできます。ちょっと“ハスコラ”みたいでキモいのですが、まあいいでしょう。これは高速シャッター時にシャッター幕面を測光するためにあります。用意された専用のスピードライトもTTL調光で制御されますが、GNが小さくスローシンクロができないなど、やや簡易的な存在であることは否めません。

CLEのシャッター幕面。ツブツブ模様がハスコラみたいで気持ち悪くないすか。レンズ外すたびにこれ見ないといけません。オリンパスOM-2のほうがカッコよかったよなあ。ピアノの鍵盤を並べたみたいで。色をグレーにしても問題ないんじゃないかと思うんだけどなあ。
電池室を開けてみます。スライド式です。電池はSRあるいはLR44を2個使います。フィルムカメラ時代には一般的な電池でしたが、最近のデジタルカメラにはまったく関係ないものですよね。グレーのB.Cボタンを押してセルフタイマーの赤ランプが点灯するとバッテリーはOKですが、ランプの造形は少し品がない感じがします。

CLEのシャッターや回路の設計は、エントリークラスの一眼レフであるミノルタXG-SとかX-7とほぼ同じものということです。コスト削減のためだと思います。これら2機種はダイレクト測光を採用したカメラではないのに、素人考えでは、なぜ回路設計が同じようにできてしまうのかはわからないのですが、シャッタースピードダイヤル周りのデザインなどはXG-Sに酷似していますし、布幕横走りシャッターという点も似ています。

また、マニュアル露出に切り替えると露出計が使えなくなることも同じです。兄弟機というのは大袈裟ですが、スピンオフ企画的なニュアンスは感じます。OEM用の一眼レフがレンジファインダー機に転用され、コシナのフォクトレンダー・ベッサになったことと経緯が似ています。

ただCLのシャッター音と比較すると、「ジャッ」と聞こえる特異な動作音がしますが、一眼レフのそれとは違います。いかにも電子制御的なニュアンスも感じます。もうちょい音が小さかったら嬉しかったのですが。

残念なのが、CL同様にフィルム巻き上げを小刻みで行えないことですね。一作動式は、ライカと共用していると個人的には違和感があるわけです。

シャッターダイヤル周り。エントリークラスのミノルタXG-EとかXG-Sと似たデザイン。これらのカメラと共通部品もあるためか、ここもデザインを同じにしました。コストを少しでも抑える狙いなんでしょう。マニュアル露出にするとメーター表示は切れてしまいます。これ、けっこう評判悪いんですね。

CLEでいちばんお金がかかっているのは、ファインダーでしょう。基線長は49.5mmと長くなり、ファインダー倍率は0.58倍だから、有効基線長は28.7mmmになります。CLの18.9mmよりも長くなりました。これは90mmレンズのフォーカシング精度を高めるためでしょうけど、レンジファインダーカメラは広角から標準系のレンズの使用が多いので、さほど注目されなかったようにも記憶しています。

CLEのファインダーは新たに28mmのフレームが内蔵されましたが、このフレームがクリアで見やすいのです。実像式のファインダーで、もちろんパララックスも自動補正します。二重像部分(パッチ)の面積は視野全体に対して少し小さい感じがする小判型ですが、この形はなるべく距離計の中央部分でフォーカシングしてもらうことで瞳の位置による誤差を小さくしようという配慮だと想像します。CLのように周囲のエッジが明確なので、二重像合致の他、上下像合致方式でも使用することができます。35mm判の国産レンジファインダー機でこうした距離計を搭載したカメラは、ヘキサーRFやコシナのベッサシリーズやツァイスイコンくらいと少ないのです。

「長野重一さん」赤城耕一撮影
ミノルタCLE使いといえば写真家の長野重一さん(1925年3月30日〜2019年1月30日)のことを真っ先に思い出します。主にミノルタCLE+Mロッコール28mm F2.8を愛用されていました。ライカよりも軽いのがお気に入りだったそうです。同機材を主に使用した独自の距離感を持つ東京のスナップ「遠い視線」という作品が有名です。1986年には伊奈信男賞を受賞されています。同名の写真集もIPCから上梓されました。この写真はミノルタCLE+Mロッコール40mm F2で撮影した長野さん。写真家が主に愛用するカメラと同じカメラでポートレートを撮影するというレギュレーションを独自に設定したシリーズの一枚です。
ミノルタCLE Mロッコール40mm F2(F4・AE)トライX

ライカM4-PでもM型ライカとして初めて28mmのフレームが新たに内蔵されましたが、裸眼でファインダーを覗きつつ、眼球を一周させるように動かさないと全体を確認することは難しいのです。眼鏡をかけているとまず不可能です。CLEは眼鏡をかけていてもほぼ不満なくざっくりと28mmフレームを見渡すことができるわけです。ただ、28mmフレームはどの焦点距離のレンズを装着しても常に出たままです。一番外側にあるので気にはならないのですが。

レンジファインダーカメラの視野率は撮影距離によっても変化し、多くは至近距離が最も高くなります。個人的な印象では、おおむね90%くらいと考えて良さそうです。あまり視野率の正確さをうるさくいうと、レンジファインダーカメラを使用する意味すら問われかねません。なおCLには標準50mmフレームがありましたが、CLEにはないので、これだけは少し残念に感じています。

CLE用に新たに用意された交換レンズは、Mロッコール28mm F2.8、40mm F2、90mm F4の3本ですが、CL用の40、90mmが傾斜カムだったのに対して、ライカ純正レンズと同様に平行カムが採用されているため、他のMマウント互換カメラにも安心して使うことができます。カムの特性については前回のCLのところで述べていますので参照してください。

Mロッコール40mm F2は所有していないので、コシナ・フォクトレンダーのノクトンクラシック40mm F1.4 SCを装着してみました。内蔵の40mmフレームをきちんと活かそうという試みです。ただし専用フードをつけると距離計窓がわずかにケラれます。
CLEには40mmのフレームが内蔵されており便利ですが、残念ながら純正のフードでは距離計窓がケラれてしまいますので、フードを外さねばなりません。社外品のフードにはケラれずに使えるものもあるようです。このレンズ、球面収差の影響でしょうか、至近距離で出てくるハイライトの滲みが好きです。
ミノルタCLE コシナ・フォクトレンダー ノクトン クラシック40mm F1.4 SC(F1.4・AE)フジクロームプロビア100

3本の交換レンズの中でも一番のウリは、このCLEのために新しく用意されたMロッコール28mm F2.8です。このレンズ、性能面ではエルマリート28mmレンズに匹敵するくらい素晴らしいうえにルックスもよく、金属製のスリットフードを用意するなどこだわりもありました。後玉が干渉することもないのでCLにも使うことができます。ただし、大きな欠点がありました。

一つは、28mmフレームを内蔵したMシリーズライカにこのレンズを装着しても28mmフレームが自動出現しないこと。それと、もう時効でしょうから書いてしまいますが、数年ほどの経年変化でプツプツと泡が浮いたようにレンズが腐食したり、クモリが生じたり、コバの墨の部分に腐食したようなムラが生じることです。

CLEが現行品だった時代は、保証が切れていた個体でもミノルタは無償で28mmのメンテナンスを引き受けたこともあったのですが、さすがにそれはもうかないません。私の所有していた個体も数回のメンテナンスを行いましたが、しばらくすると同じ症状が出始めます。現在は潔く諦めて、28mmレンズはミノルタTC-1に採用されたレンズをそのままライカスクリューマウント化して限定販売された「Gロッコール28mm F3.5」を主に使用しています。

ミノルタTC-1に搭載された高性能のGロッコール28mm F3.5を単体レンズとして組み上げたもので、カラーはシルバーのみです。L-Mリングを介して装着しました。TC-1が修理できなくなっても、このレンズさえあれば、写りはずっと楽しめるわけです。
コンパクトな外装に似合わない信頼の性能です。Gロッコール28mm F3.5はコントラストが高く非常に優秀なレンズであり、Mロッコール28mm F2.8よりも薄くて嬉しいのです。
ミノルタCLE Gロッコール28mm F3.5(F8半・1/250秒)フジクロームプロビア100

これもミノルタ純正レンズになるわけですので、CLEと整合があると考えています。性能面でも素晴らしく、安心して使うことができます。ちなみにライカスクリューマウント、Mマウント互換の28mmレンズは調べてみると種類も多いので、“純正ロッコール”レンズにこだわらない人はいろいろと試してみるといいと思います。

28mmに限らずCLEはMマウント互換機だから、さまざまなライカレンズやアダプターを使用してライカスクリューマウントレンズを装着することができますが、ライツミノルタ同様にライカレンズでも沈胴タイプのものなど、装着できないものものあり、また後玉がマウント内の突起やガード部分に干渉しないことを装着前に十分に確かめておかないとレンズもカメラも痛めてしまうことがあります。CLと異なりCLEは「ミノルタのカメラ」ですから、ミノルタとしてもレンズ装着の種類別の可否は公式にアナウンスはしていなかったと記憶しています。

また気をつけなければならないのは、後玉が長いレンズを装着することができても、SPDの受光素子の前を遮ってしまうこともあります。こうなると正しい露出を得ることができません。

CLEの販売期間は1981年からおよそ10年ほどですが、真実かどうかはわかりませんが、当初はライツから販売台数の上限が設けられていたという話も聞きました。それでも販売台数は総計で約3万台ほどといわれています。これでは採算を取ることは厳しいものがあります。成功とは言い難いのですが、誰もが知るカメラになったことは確かで、ライカや他の一眼レフと併用されることも多かったと思います。販売終了になってから、カメラ雑誌で「復刻して欲しいカメラ」というアンケートを募ると、常に上位に来たのはCLEなのですが、現役時代はコアなファンはいたものの、先の製造台数が現実をすべて示しています。

当時CLE開発に携わったミノルタのエンジニアにも取材した経験がありますが、「それほど人気があるなら、現行品の時に買ってくださればいいのに」と真剣にお話をしてくださったことが今でも忘れられません。

今回は久しぶりにCLEにカラーリバーサルフィルムを装填して、AE撮影を主に行ってみたのですが良好な結果になりました。AEで使わないと、せっかくのCLEが泣いてしまうではないかという判断で試してみたわけです。CLE現役当時はモノクロフィルムを装填することが多かったので、AEの露光精度をさほど重視していませんでしたから。今さらながらこの結果に喜んでいます。

多分割測光でもないし、ややハイライトの影響を受けやすい特性には感じますが、経験値を加味して露光補正したものはだいたい“当たって”いました。確かに私はヒトとしてはロクなものにはなりませんでしたが40年の年月は伊達ではありませんでした。自画自賛しちゃいますが今さら何の意味がありましょう(笑)。

輝度差がそれなりにあるので露出決定に迷ったのですが、CLEはどう解釈するか、お任せのAE撮影してみましたが、なかなか良いところを突いてきました。
ミノルタCLE Gロッコール28mm F3.5(F5.6・AE)フジクロームプロビア100
前回のライツミノルタCLの時に紹介しましたキヤノン25mm F3.5です。半世紀以上も前のレンズとは思えない再現性です。
ミノルタCLE キヤノン25mm F3.5(F8・AE +1/2補正)フジクロームプロビア100

フィルムカメラの時代はカメラの発展とは自動化を意味することでありました。モータードライブ内蔵+AE+AFでいちおうの自動化の完成をみたわけです。でもMシリーズのライカの初のAE化はM7からで、これは2002年のことです。CLE登場から20年以上かかったわけです。同じMマウント互換機のAEレンジファインダー機「ヘキサーRF」も1999年に登場しています。

AE化はたしかに撮影に利便性をもたらしましたが、写真の“適正露出”は撮影者側の表現意図や被写体によって変わるので必ずしも一定ではないことをライカ社が示そうとしたため、MシリーズライカのAE化は遅れたのでしょうか。それとも単に機能開発の順番が遅かったためでしょうか。

デジタル化されたライカMの登場後は、AEの露出制御のことなど話題にもなりませんが、いずれにせよレンジファインダーカメラは極端に機能的な発展を目指さない方が写真を制作するという意味においては楽しめるようにも思います。デジタル化したMにもこれは当てはまりそうです。

CLEが本家ライカよりもちょっぴり先にお手本を示した“MシリーズライカのAE化”という未来志向が、その存在感を示した理由のひとつになっていることはたしかですが、個人的にはその姿とカタチを重要視しています。

前回でも述べましたが、すでにデジタルの「ライカCL」は存在しています。けれどMマウント互換レンジファインダー機のCLあるいはCLEのデジタル化したモデルはありません。そういえば2004年にエプソンからR-D1という小型のMマウント互換のレンジファインダーデジタルカメラが登場しました。Mマウント互換のデジタルカメラという意味では世界初でした。現在はもう続いていませんが、このカメラ、今でも思想的に正しかったモデルではないかと個人的には考えています。

多くの機能は望まず、少し簡略化したファインダーでもいい。小型軽量、廉価なライカMマウントレンジファインダーデジタル機が欲しい。フォーマットはAPS-Cでいいと思います。将来的にこれを期待してはいけませんか? ライカ社さん、作るのが大変だったら、ミノルタに代わって、ライカ社と熱い関係にあるパナソニックさんに作っていただくというのはどうでしょう?

ズマロン35mm F2.8を装着。ライツミノルタCLを作っていたくらいですから、Mマウントは純正規格のオリジナル加工ではないかと。装着はスムーズです。35mmフレームは内蔵していないので外付けファインダーをつけました。
ミノルタのカメラなので“ロッコール”以外を装着したくないアナタにはスーパーロッコール5cm F1.8はいかがでしょう。これもL-Mリングを介しています。50mmフレームを内蔵していないので、外付けファインダーを装着しました。あまり紹介したくないのですが、ものすっごくよく写ります。早く忘れましょう。
赤城耕一

写真家。東京生まれ。エディトリアル、広告撮影では人物撮影がメイン。プライベートでは東京の路地裏を探検撮影中。カメラ雑誌各誌にて、最新デジタルカメラから戦前のライカまでを論評。ハウツー記事も執筆。著書に「定番カメラの名品レンズ」(小学館)、「レンズ至上主義!」(平凡社)など。最新刊は「フィルムカメラ放蕩記」(ホビージャパン)