20周年企画

デジタルカメラニュースの20年を振り返る/第14回(2017年)

ミラーレスで積層型CMOSセンサーが実用化 コンパクトデジカメ最後の花火

ご覧いただいている「デジカメ Watch」は本年9月27日(金)に、サイト開設から20年を迎えます。日々ご愛読をいただきました読者の皆様に厚く御礼申し上げます。

この小特集では、筆者の印象に残っている過去のニュース記事を1年ごとにピックアップしてまとめています。個人の感想にはなりますが、その年の出来事を追体験していただければ幸いです。

今回は2017年の記事を紹介します。

デジタルカメラニュースの20年を振り返る
https://dc.watch.impress.co.jp/docs/column/20th/


スポーツ報道写真への挑戦 積層型CMOSセンサーが実用化

パナソニックが1月に発表した「LUMIX GH5」は、4K60pでの動画記録に対応するなど、前モデル「LUMIX GH4」(2014年発表)に続いて動画機能に注力した1台。ローパスフィルターレスの有効2,030万画素イメージセンサーを搭載するなど、同社マイクロフォーサーズ機における動画のフラッグシップを名乗ります。お得意の協調手ブレ補正も「LUMIX GX8」から引き継ぎました。

その頃は小規模な動画制作などでLUMIX GHシリーズが人気を博しており、それを受けてこの年、パナソニックが初のカメラ系プロサービスを開始します。ソニーも2014年に始めたプロサービスを地道に継続していました。ミラーレスカメラがプロに浸透する日が近づいてきます。

「サイバーショットRX100 IV」(2015年発表)、「RX100 V」(2016年発表)に続き、ソニーはミラーレスαへも積層型CMOSセンサーを初搭載します。それが「α9」です。

採用するのは、35mmフルサイズ相当・有効2,420万画素の積層型CMOSセンサー「Exmor RS」。AE/AF追従で最高20コマ/秒を実現するなど、これまでの製品を圧倒する高速性能を身につけました。EVFのブラックアウトフリーもこの製品からです。

スポーツ撮影といえばデジタル一眼レフカメラのプロ機が強く、キヤノン・ニコンの独壇場ともいえる分野。そこにソニーがミラーレスカメラを持って打って出たかたちになります。「Z9」ニコンが、「EOS R1」でキヤノンがプロ機をミラーレス化するのは、まだ先のことです。

動体特化の「α9」を発表したソニーは、続いて高解像度モデル「α7R III」を投入します。高解像度モデルといっても、約4,250万画素ながら約10コマ/秒の連写速度を達成。それまでの区分を見直さざるを得ない進化となりました。連写後に操作できなくなる欠点も解消されています。

なお本機から、オリンパスの「ハイレゾショット」やペンタックスの「リアル・レゾリューション・システム」に類する連写合成機能「ピクセルシフトマルチ撮影」が搭載されました。

富士フイルムは9月、フラットボディの新モデルとして「X-E3」を発表します。「X-E1」(2012年発表)から始まるこの系列は、ハイブリッドビューファインダーを備える「X-Pro」系のスリム版といった位置づけで登場。しかしその軽快感やモデルサイクルの早さから、本家を越える人気シリーズになりました。

動画の世界で人気を博した「LUMIX GH5」に続き、パナソニックは「LUMIX G9 PRO」を11月に発表。こちらは「静止画のフラッグシップ」という触れ込みでした。「LUMIX史上最高画質」をアピールし、このときから絵作り思想として「生命力・生命美」を標ぼうしています。

ボディ内手ブレ補正の効果はクラス最高水準の6.5段分。いまだコントラストAF(空間認識AF)のみの同社でしたが、AF合焦速度も世界最高を謳うにまで向上しました。ソニーの「ピクセルシフトマルチ撮影」に続き、画素シフト合成による「ハイレゾモード」も搭載しています。

11月にライカが発表したAPS-Cミラーレスカメラが「ライカCL」。まさかこの名前がしれっと復活するとは思いませんでした。同じくAPS-Cセンサーを採用する「ライカTL2」(2017年発表)との1番の違いは、EVFを搭載すること。また、「ライカTL2」は一体成形のアルミ削り出しボディでしたが、本機は3ピース構成のボディとなっています。ただし上下カバーがしっかりアルミ削り出しなのは、さすがライカといったところです。

いよいよ完成を見た? ミドルクラスのフルサイズデジタル一眼レフカメラ

キヤノンの小型フルサイズモデル「EOS 6D」(2012年発表)に、約5年ぶりの後継機「EOS 6D Mark II」が出ました。有効約2,620万画素、DIGIC 7、デュアルピクセルCMOS AFといったスペックを持ち、「EOS 5D Mark IV」とはバリアングル液晶モニターやファインダー性能などで差別化しました。

一方ニコンはフルサイズの中核機ともいえる「D850」を発表しました。有効4,575万画素という高画素モデルでありながら、本体のみで約7コマ/秒という連写速度を両立。成熟が進んだ結果、1台で何でもできる最終形態へと進化した様相です。本機は現行モデルとして、いまもラインアップに残っています。

フィルムカメラの再現に近づいた「ライカM10」

「ライカM8」(2006年発表)に端を発するデジタル版M型ライカですが、もととなったフィルムのM型ライカに比べると。ぼてっとしたボディが残念がられていました。撮影フィールが重視されるM型ライカだけに、ユーザーにその差をまったく意識するな、とはいえません。

そうした中でこの年登場した「ライカM10」のボディ厚は、フィルムの「ライカM」「ライカMP」の38mmに近い38.5mmを実現。半ば諦めていたファンの目の色を変えました。このときのボディはその後も、「ライカM」の名で継承される新モデルに引き継がれていきます。

キヤノン渾身の4/3センサーモデル

この年からコンパクトデジタルカメラの新製品がぐっと減ります。目立つのはタフネス系の製品と高倍率ズーム機くらいです。

そんな中でキヤノンが発表した「PowerShot G1 X Mark III」は、APS-Cセンサーを同社のレンズ一体型モデルで初めて搭載。しかも同クラスで初めてズームレンズを備えたことでカメラファンを驚かせました。一眼レフカメラで評価の高い像面位相差AF「デュアルピクセルCMOS AF」も採用するなど、進化の先に行き着いたような製品でした。

ただし残念ながら一部のカメラユーザー以外の話題に上らず、この系列も本機で終焉を迎えます。1型センサーの「PowerShot G7 X」系は生き残りましたが……

「ソニー流」アクションカメラ?

ソニーが9月に発表した「RX0」は、約6cm幅の小さな防水・耐衝撃ボディに、1型センサーと24mm相当のレンズを搭載した製品です。一見すると枯れた技術を組み合わせたソニー発のアクションカメラに見えますが、同社はそれを否定。1型センサーがもたらす画像品質をはじめ、別ベクトルの製品であると説明しています。

複数の「RX0」をスマートフォンアプリの「PlayMemories Mobile」や純正の有線カメラコントロールボックスから一括操作できるようにするなど、プロの映像作品制作を意識した製品でもありました。

デジカメがチェキと出会ったなら

富士フイルムから愉快なデジタルカメラが登場しました。デジタルカメラにチェキプリンターをくっつけた「instax SQUARE SQ10」です。同様のコンセプトの製品を同社は現在「ハイブリッドカメラ」として展開していますが、このとき出たののは正方形の「instax SQUARE Film」を使う、いまでいう「INSTAX SQUARE SQ」シリーズの先祖ともいえるものでした。もっとも(ややこしいことに)いまのSQはデジタルではなく、アナログのインスタントカメラですが。

撮像素子は1/4型CMOSイメージセンサーで、レンズは28.5mm相当F2.4。3型の液晶モニターも備えていました。その場でプリントする楽しさをシンプルに引き出す設計で、ユーザーインターフェースなどにも独自の工夫が見られました。

手作り前提の「宙玉レンズ」が立派な工業製品に

当サイトの連載「おもしろ写真工房」の筆者、上原ゼンジさんが考案した「宙玉レンズ」が製品化されました。もとはナビスコチップスターの筒の先にビー玉を吊り下げるという手作り感あふれるものでしたが、それをオリンパス「STYLUS TG-4 Tough」「同TG-3 Tough」のレンズ前に装着できるようにしたもの。簡単に扱えて効果も安定するので、「宙玉写真」が再び盛り上がりました。

クライミングロープを思わせるストラップ

この年くらいから、クライミングロープと同じような素材・編み方のカメラ用ストラップが一定の人気を得るようになってきます。シンプルな素材感でヨリが出にくく、頑丈なイメージも。どちらかといえばM型ライカ用として展開されていましたが、ミラーレスカメラで使用する層も見られました。

ニコンが創立100周年

この年、ニコンが創立100周年を迎えるということで、記念モデルやグッズが同社から発表されました。スワロフスキー・クリスタル製のニコンI型や「D5」の100周年モデルなど、どれも個性的かつマニア受けしそうな品々でした。CP+2017にも参考出品されていたので、見かけた方もいらっしゃるかもしれません。

【2024年9月22日】「α9R III」を「α7R III」に修正しました!ご指摘いただきありがとうございました。

本誌:折本幸治