特別企画
最新ミラーレス「ライカTL2」実写レポート
ラオス・ルアンパバーンの彩りを捉える
2017年8月30日 07:00
ライカのAPS-Cミラーレスカメラで3代目となる「ライカTL2」をテストした。1kgのアルミの塊から削り出した美しく強固な骨格が、ライカらしく、斬新さも感じさせる。基本となるスタイリングは2014年の初代から継承しつつ、ライカTL2はイメージセンサーなどを最新デバイスに一新。大きな液晶モニターをタッチ操作で扱うなど、徹底してシンプルを極めている。
その使い心地は、ある意味で独特だ。しかし彼らの物作りを想いながら、まずはその操作体系を理解することに努めた。スマホのような操作性の新時代カメラに最初は驚きもしたが、APS-Cフォーマットではあるものの、レンジファインダーカメラのM型ライカにはないズームレンズや近接撮影の長所があり、コンパクトで十分な高性能を有していて、作品づくりや取材に重宝するカメラといえる。海外ロケで多くの気に入った作品を残すこともできた。
2本から始まったレンズラインナップも現在は6本となり、システムカメラとしても充実しつつある。カメラとしてさらに磨かれた部分とその描写を試すべく、ライカTL2と4本のレンズを携え、今回はラオスへ撮影に向かった。
今回試用したレンズ
- 大口径標準:ライカ ズミルックスTL 35mm F1.4 ASPH.
- 広角ズーム:ライカ スーパー・バリオ・エルマーTL 11-23mm F3.5-4.5 ASPH.
- 標準ズーム:ライカ バリオ・エルマーTL 18-56mm F3.5-5.6 ASPH.
- 望遠ズーム:ライカ アポ・バリオ・エルマーTL 55-135mm F3.5-4.5 ASPH.
SUPER-VARIO-ELMAR-TL 11-23mm F3.5-4.5 ASPH.
35mm判換算で約17-35mmに相当。周囲の状況を広く取り入れたい旅先では、こうした超広角ズームがとても有用だ。比較的コンパクトで開放F値も暗くなく、最短撮影距離も0.2mと使いやすい。ズーム全域でシャープかつコントラストの高い画像が得られる。
ラオスルアンパバーン空港。飛行機をタラップで降りたら、高く澄んだ空に雲が流れていた。夏は雨季となるラオスだが青空に迎えられ、いい旅の予感。隅々までシャープで、歪みも感じられない。超広角らしい広がりある1枚となった。
綺麗な布が並んだ街の仕立て屋さん。いくつかの布を購入し、話をしているうちに打ち解けて写真を撮らせてもらった。暗い室内ながら、広角端の11mmでは1/13秒も手ブレをしない領域。積まれた布や部屋の様子を超広角で欲張って納めた。
林を進むうち、光を得ようと競うがごとく背を伸ばす木々の中にいた。社会科で習った"熱帯雨林"という言葉が浮かぶ。木々の勢いを表そうと、超広角レンズで遠近感を誇張した。WBはタングステンに設定し、林の薄暗さを青白く見せている。
SUMMILUX-TL 35mm F1.4 ASPH.
美しい仕上げのレンズとフードを組み合わせると、ライカTL2と見た目の相性は抜群。あちこちで「いいカメラですね!」と声をかけられる。もちろん写りも抜群で、全てをこのレンズで撮りたくなるほど。見慣れたスマホ写真とは別格の写りを開放絞りのF1.4で狙う。
寺院内を歩く僧侶の後ろ姿。少し距離があっても、開放F1.4なら寺院や参拝者でなく僧侶に注目した撮影意図が伝わる。背景が主張せずに主体が浮かび上がるような、大口径レンズらしい1枚。
人を乗せずに佇むトゥクトゥクタクシー。旅の間に何度もお世話になり、身近な存在になった。犬とトゥクトゥクは街に多くいる代表格だ。色も姿もフォトジェニックで、ピントをヘッドライトに合わせて自然なボケを使っている。
朝ごはんを食べていたら、いつの間にか猫が足元に。私もいろんな街に出かけるが、猫が逃げない街は、つまり意地悪をするような人がいないということ。ふわりと柔らかな写真になるようにと優しさをもって、絞りは開放のF1.4。
旅先では現地の料理も食べて、撮って、楽しむ。以前ラオスはフランスの統治だったためフランス料理屋さんが多くあり、ちょっとした料理でもサーブにセンスがある。俯瞰の構図にして、ここでも開放F1.4のボケを使って立体的に。
VARIO-ELMAR-TL 18-56mm F3.5-5.6 ASPH.
ライカの代表格といえばM型だが、ズームレンズがない。また、近接撮影も難しい。ライカTL2にはコンパクトで高画質なズームレンズがあり、とても重宝する。この1本だけで旅に出てもいいくらいだ。
ルアンパバーンの観光では欠かせない、クアンシーの滝。訪れた雨季は水量が豊富で、大迫力の流れ。じっくり撮ろうと絞りを絞って、滝口から手前までを縦の構図の中に収めた。飛沫のハイライトから木陰のシャドーまで、階調もいい。
林で足下に注目した。近接撮影で、見つけた美しいものを大きく写し取る。露出はアンダー目に補正し、重厚さを表現。絞りは開放で、背景のボケ感も取り入れた。
泊まった格安ホテルの朝ごはん。生春巻きとサラダがきれいに盛られて、その美意識の高さに感心する。デイリーライカと呼びたくなるライカTL2に気難しさはない。Wi-Fi内蔵なので、このままスマホ経由でSNSに投稿したくなるヒトサラだった。
泊まったホテルから眺めるルアンパバーンの街。撮影旅行中は街を俯瞰できるような部屋に1泊するといい。中心街なのに人通りも少なく、高いビルはなく、ヤシの木が印象的な街の様子がわかる。
APO-VARIO-ELMAR-TL 55-135mm F3.5-4.5 ASPH.
およそ80-200mmに相当する望遠ズームレンズは、長さ110mm・重さ500gとコンパクトで旅には欠かせない。M型ライカでは得がたい望遠領域も、ライカクオリティーで写真を撮れる。高感度に強くなったライカTL2との組み合わせで魅力が増すレンズだ。
夕方の寺院。大勢の僧侶がお堂で経をあげていた。子供から年配の僧までいて、取り組む姿もさまざま。尊敬される僧になるためには大変だ。私は尊敬の念を持って、ISO3200にセットしたカメラで、暗い堂の中まで覗かせていただいた。
早朝の托鉢を見せてもらった。僧にお供えを渡すと、それは先祖に届くことになるらしく、女性たちは炊いた御飯を手で渡している。望遠レンズを使い、遠くから敬意を持って撮影。こんな場面ではシャッター音の静かさが活きる。
名瀑クアンシーの滝。そのほとばしる勢いを見せようと、新搭載の高速シャッターを試してみた。1/26,000秒では、人の目には確認できない粒々のしぶきがはっきり分かる。メカシャッターを動かさない電子シャッターなので、シーンによってはほぼ無音での撮影も可能。
ホテルの池では早朝に蓮が咲く。日が高くなると閉じてしまい、托鉢を見た後に咲く蓮が、僧と合わせて尊いものに思えていた。旅の重要な光景と考え、岸から離れた蓮を撮るために望遠レンズを選び、望遠端の202mm相当で撮影。
まとめ
オートフォーカスや撮影操作の反応スピードが上がり、タッチパネルもスマートフォン並みの機敏な反応となって、使い勝手が良くなった。ともかくそれが最大のポイントである。最初は面食らった独特な操作性も、ライカを扱うひとつの楽しみといえる。
ライカMシリーズは"名機・名玉"だが、扱うにはそれなりに敷居も高い。ファーストライカ、デイリーライカとしては、このライカTL2がおすすめできる。大型の液晶モニターは見やすく、ラオスでは言葉が通じない相手にモニターで撮影画像を見せまくって、コミニケーションをとった。
写真の仕上がりは、やはり他のカメラたちと何かが違う。"ライカカラー"というのか、写真にライカならでは色がある。それは他のライカでも共通で、ひと味違う何かにハッとするのだ。それをライカTL2は簡単にもたらしてくれる。Wi-Fi機能を内蔵するため、スマホアプリを経由してSNSでも楽しめる。
ライカの世界観をもたらし、高画質な写真を手軽に撮れる美しいカメラは、共にいて楽しい。旅行中の朝から晩まで、ずっとライカTL2は手放さなかった。