特別企画

ケンコー「ZX C-PLフィルター」を試す

60周年記念モデルの実力は? NDとの重ね付け時もより高画質に

ZX C-PLフィルター

2017年9月21日、創立60周年を迎えた株式会社ケンコー・トキナーから新たなフィルター、ZX(ゼクロス) C-PLフィルターが発売される。

ゼクロスシリーズといえば、ZXプロテクターや、以前レポートしたZX NDフィルターがすでに発売されており、既にお持ちの方もいるだろう。そのゼクロスフィルターのラインナップにPLフィルターが加わった。

その特徴とは?

ゼクロスフィルターといえば、新開発のフローティングフレームシステムを基軸としたフィルターで、従前のフィルターに比べて平面性が飛躍的に優れていることが特徴だ。

ガラスへの負担をゼロに近づける特殊弾性緩衝剤を採用することで平面性を向上させ、レンズ本来の性能を損ねることなく描写することができる。

フィルターの平面性が問われることになる細密な描写力が得られる多画素モデルではとくに効果的なフィルターだ。

PLフィルターとは?

ここで、PLフィルターについて簡単におさらいしておこう。

PLフィルターとはPolarized Lightフィルターの略で、偏光フィルターとも呼ばれる。その名の通り偏光膜を利用して、被写体の反射などを取り除くことができるフィルターだ。

回転枠構造のフィルターをレンズに装着し、前枠を回転させることで効果量を調整する。アウトドアでの撮影が多い風景撮影では使用頻度も多い。

風景撮影でのおもな使い方としては、湖沼や渓流の水面や濡れた岩肌などの余計なテカリを取り除くといった余分な反射の除去や、青空のコクを引き出す、紅葉などの葉の表面の反射を抑えて被写体本来の色合いを引き出すなど、被写体を色鮮やかに再現する効果などが挙げられる。

また、虹の色彩を色鮮やかに強調することもPLフィルターでできる効果だ。

水面と岩肌の反射を抑え、緑の色あいを鮮やかに再現する。

PLフィルター有り
PLフィルター無し

青空のコクを引き出し、紅葉の色合いを鮮やかに表現できる。

PLフィルター有り
PLフィルター無し

ZX C-PLフィルターの特徴

さて、本題に戻ろう。今回発売されたZX C-PLフィルターは、ゼクロスシリーズならではの平面性が高いことは言わずもがなのこと。

それだけにとどまらず、さらに従来のPLフィルターにはない特徴として、新開発の高透過偏光膜の採用による透過光量の増大とカラーバランスの最適化が達成されていることが特徴だ。

このZX C-PLフィルターは、通常の偏光膜を使用した従来のPLフィルターに比べて約1EVほど明るい。装着してもファインダーが従来品より暗くならないため、視認性もよい。さらに、後述する従来の高透過偏光膜による黄色みがかった色被りも大幅に改善されている。

後枠が大きく、着脱が容易

艶消しのブラック塗装に金色の「ZX」のロゴと文字がなんとも美しく映える。

ZX C-PLを装着したところ

被写体側となる前枠の先端には面取りローレット加工が、レンズ側となる後枠には全面ローレット加工がそれぞれ施されている。わずかに後枠側が前枠より大きめのサイズとなっており、レンズへの装着も容易に行えるのは心憎い配慮だ。

また、面取り加工されている前枠も、スムーズに動きながらも軽すぎす、不意に動いてしまう心配も少ない。

適度なトルク感があるので、効果量をファインダーで確認しながらピタリと決めることができる。また、70-200mm F2.8クラスの大口径望遠ズームレンズでフードを装着したままでも、無理なく動かすことができる。

明るいファインダー像 手ブレ防止にも

ところで、従来のPLフィルターに対して高透過型PLフィルターはどのようなメリットがあるのだろうか。まずはファインダーが暗くならないことが挙げられる。

ZX C-PLフィルターは従来のPLフィルターに比べると1EV程度の明るさが確保されている。快晴の青空など日中の明るいシーンならさほど問題にならないが、薄暗い渓流や滝、森の中での撮影なら、できるだけファインダーが明るく見えるほうがよい。

光学ファインダーモデルならその恩恵をダイレクトに預かることができるし、電子ビューファインダ―モデルでも不必要に高感度で表示されることも少なくなるはずだ。

見かたを変えると、従来のPLフィルターよりも約1段分ほどの高速シャッタースピードが得られる。三脚による撮影はともかく、手持ち撮影の場合はそのメリットが大きい。

たとえば50mmの焦点距離で撮影する場合、1/30秒でシャッターが切れるか1/60秒で切れるかで手ブレを起こすリスクが大きく変わる。同じF値、ISO感度で撮影するなら高速シャッタースピードが得られるほうが圧倒的によいことは明白だ。

色被りも少ない

そんな、従来製品よりもメリットの多い高透過型PLフィルターだが、これまでの高透過型PLフィルターには黄色がかった色被りが認められた。

雲の浮かんだ青空や滝や渓流などの白い水流などを撮影すると、わずかながら黄色みがかってしまい、たとえ午前中の撮影であっても、どこか午後のようなニュアンスに感じられてしまうことがあったのも事実だ。

白い台の上で色被りをチェック
左:ZX C-PLフィルター、右:従来の高透過型PLフィルター

そんな、これまでの高透過型PLフィルターに見られた黄色がかった色転びを抑え、ニュートラルなカラーバランスを実現した高透過型PLフィルター、それがZX C-PLフィルターである。

冒頭で述べたように、創立60周年を迎えた株式会社ケンコー・トキナーがその節目として発売するフィルターなだけに「現在発売されている全てのPLフィルターの中で、最もカラーバランスに優れたPLフィルター」であると自負している。

ZX C-PLとZeta EX C-PLの比較

ZX C-PL
Zeta EX C-PL

実際に撮影したカットを比較すると、なるほど、黄色味がかったような色被りは大幅に減少していることがわかる。

白い雲はすっきりとした白として表現され、青空のヌケもよい。午前中に撮影したカットだが、午前中らしい光のニュアンスとしてしっかり表現してくれることがわかる。最もカラーバランスに優れたPLフィルターであるというのは決して伊達ではない。

重ね付け時の解像力は?

PLフィルターは水面の反射を取り除いたり、虹を強調する効果が得られることはすでに述べたとおりだ。だが、PLフィルターだけを装着したのでは表現できないシーンがある。たとえば、日差しのある日中の滝や渓流だ。

滝や渓流を撮影するとき、その流れの流麗な姿を写しとめるにはスローシャッターの選択が欠かせない。

だが、日中の光があたる滝や渓流は案外光量が多いため、低感度を選択し絞りを絞っても十分なシャッタースピードが得られない。高透過型PLフィルターを装着しても2/3〜1段くらいのシャッタースピードの低下では太刀打ちできないことも多い。

そのようなシーンではPLフィルターに加えてNDフィルターとの重ね付けを余儀なくされる。NDフィルターとは減光効果をもつフィルターのことで、レンズを通して入る光の量を減少させる効果を持つ。

ZX C-PLとZX ND16を重ね付けしたところ

NDフィルターそのものには偏光効果がないので、偏光効果を必要とするシーン、たとえば滝に出現する虹を強調して撮影するといったシーンでは、PLフィルターにNDフィルターを重ね付けして撮影する必要がある。
そこで、今回はゼクロスシリーズのZX NDフィルターと重ね付けして撮影することにした。

ZX NDフィルターはZX C-PLフィルター同様、平面性に優れているため重ね付けに強いフィルターだ。詳細は前回のレビューで紹介しているので詳細はそちらをご覧いただきたいが、重ね付けするならゼクロス同士のほうが、より解像力の低下を防ぐことができるはずだ。

そこで、フィルターなし、ZX ND16のみ、ZX C-PLとZX ND16との重ね付けでそれぞれ撮影した。絞りはすべてF11、感度はISO64を選択している。

ZX C-PLとZX NDの重ね付け

フィルターなし(赤枠内を等倍で表示)
ZX ND16のみ(赤枠内を等倍で表示)
ZX C-PL+ZX ND16(赤枠内を等倍で表示)

画像周辺の岩の苔などを等倍に拡大してチェックしても、重ね付けによる明確な解像力の低下は認められない。重ね付けをするなら平面性の高いゼクロス同士を使うべきだ。

反射率をさらに低減 撥水・撥油コートも

限りなくフィルター装着による画質劣化を防ぐこと、そのためZX C-PLはZRコートを採用し、ガラス面の反射率を0.3%以下に抑えている。

これまでのPLフィルターの低反射コートの反射率が0.6%であったことを考慮すると、大幅な性能向上となっている。

また、撥水・撥油コーティングが施されていることも風景撮影ではありがたい。

いうまでもなくPLフィルターは渓流などの水辺や飛沫の飛んでくる滝で使うことも多い。雨天でも余計な反射を取り除くために使用することもある。そのようなシーンでフィルターに水滴が付着してもブロアーで吹き飛ばすことも容易だ。

もちろん、装着時に指紋がついても簡単に清掃できる。常にクリーンにしておくことができることは、多画素カメラの解像力の維持にもつながるというものだ。

まとめ

風景写真に限らずいつの時代であってもフィルターワークは欠かせない。中判デジタルカメラやデジタル一眼レフカメラの多画素モデルはいまや5,000万画素クラスが主流だ。ミラーレスカメラの一部もセンサーシフトなどの技術によって従来以上の解像力が得られるようになっている。

そんな時代の申し子ともいえるフィルターがゼクロスシリーズといえる。風景撮影では欠くことのできないPLフィルターがラインナップされたことはとても喜ばしいニュースだ。

もちろん、PLフィルターを単独で使用するときのメリットは計り知れないものがある。だが、重ね付けを余儀なくされることの多い風景写真では、解像力を維持することのできる、より平面性が高いZX C-PLを使うほうが圧倒的に有利だ。

もちろん、重ね付けを考慮すればPLフィルター、NDフィルターともにZXフィルターで統一したほうが圧倒的によいことはいうまでもないことだ。

気になる価格だが、77mm径を例にとると実売で税込1万7,000円を切るようだ。これだけの高性能を有しながら価格が抑えられており、コストパフォーマンスに優れているといえるだろう。

特に細密描写にこだわりたい多画素モデルのユーザーは、選択すべき唯一無二のPLフィルターだ。

ZX C-PLフィルターギャラリー

順光方向で使用したカット。黄色に転ぶことなく奥に見える白い雲が際立ち、青空のヌケもよい。手前に広がる森の緑も色鮮やかに表現された。順光では積極的に使用することをお勧めする。

D810 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 55mm / 絞り優先AE(F8、-0.3EV) / ISO100 / WB:太陽光

PLフィルター有り
PLフィルター無し

半逆光で撮影したカット。手前に見えるシャクナゲの葉のテカリが除去されていることがわかる。余計な反射を取り除いて葉の色合いを引き出せる効果だ。

D810 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 38mm / 絞り優先AE(F8、-0.3EV) / ISO100 / WB:太陽光

PLフィルター有り
PLフィルター無し

完全に逆光となる方向で撮影したカット。作業用の轍とキャベツのテカリが除去され、みずみずしく色鮮やかに再現することができた。

D810 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 66mm / 絞り優先AE(F11、-0.3EV) / ISO100 / WB:太陽光

PLフィルター有り
PLフィルター無し

水面と葉の反射を取り除くことで、水面を黒々と表現し白いスイレンを浮き立たせている。シャドウをしっかり締めて、葉の鮮やかさを引き出す効果だ。

D810 / AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR / 125mm / 絞り優先AE(F8、-0.3EV) / ISO100 / WB:太陽光

PLフィルター有り
PLフィルター無し

虹を強調するときにもPLフィルターを使用するとよい。使用していないカットと使用しているカットではその差が歴然。見た目以上に鮮やかでくっきりと表現することができる。

D810 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 75mm / 絞り優先AE(F11、-0.7EV) / ISO64 / WB:太陽光

PLフィルター有り
PLフィルター無し

ZX C-PLフィルターとZX NDフィルターを重ね付けして撮影したもの。滝の虹は強い光の順光方向で出現する。そこで、スローシャッタースピードを得るためには重ね付けが必要となる。ZXシリーズ同士なら解像感の低下を気にすることなく撮影できる。

D810 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 75mm / 絞り優先AE(F11、-0.3EV) / ISO64 / WB:太陽光

PLフィルター、NDフィルター有り

白樺の森の中に入り込んで撮影。晴天では光が森の中に差し込み、葉の表面がテカってしまう。それをZX C-PLフィルターで除去すれば、コクのある美しい緑を表現できる。

D810 / AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR / 55mm / 絞り優先AE(F11、+0.3EV) / ISO64 / WB:太陽光

PLフィルター有り
PLフィルター無し

国際フィルターコンテスト2017-2018 秋冬セッション応募受付中!

株式会社ケンコー・トキナーが主催する「国際フィルターコンテスト」では、フィルターを使用した作品を募集しています。

今年度は「春夏セッション」と「秋冬セッション」の2度のチャンスが設けられ、10月1日からは「秋冬セッション」の申込みが始まります。

フィルターならではの表現を取り入れて、個性的な作品に挑戦してみましょう。

国際フィルターフォトコンテスト2017-2018 公式サイト | TOP | IFPC - International Filter Photo Contest
http://sg-g.jp/photocontest/filtercontest2017ss/

萩原俊哉

(はぎはらとしや)1964年山梨県甲府市生まれ。浅間山北麓の広大な風景に魅せられ、2008年に本格的に嬬恋村に移住。カメラグランプリ選考委員 ニコンカレッジ講師 日本風景写真家協会(JSPA)会員。