オールドデジカメの凱旋

コニカミノルタDiMAGE A200(2004年)

 この「オールドデジカメの凱旋」では、初回のソニーサイバーショットDSC-R1を皮切りに、いくつかの高性能タイプのコンパクトデジタルカメラを購入してレポートしてきた。そのサイバーショットDSC-R1は、APS-Cサイズに迫る大型センサーの採用が大きな話題になったが、多くの高性能コンデジには2/3型や1/1.7型もしくは1/1.8型の“少し大きめサイズ”のセンサーが採用されていた。

 搭載レンズ(ズームレンズ)の画角に関しては、製造時期の新旧や、そのモデルの志向(広角側重視か、望遠側重視か、など)によって違ってくる。たとえば、第3回のオリンパスCAMEDIA C-5050 ZOOMの「35-105mm相当」や、第7回のキヤノンPowerShot G6の「35-140mm相当」などは、“広角端が35mm相当”というスペックに時代を感じる。いやぁ~、いくら高画質設計で開放F値が明るいズームレンズでも、広角端が35mm相当だと絵作り的にキビシイよね、今の感覚だとさ。

 しかし、キヤノン PowerShot G6の約半年前に発売された同社のPowerShot Pro1には、広角と望遠の両方に強い「28-200mm相当」の光学7倍ズームレンズが搭載されていた。もちろん、高画質設計だし(コンパクトデジカメ唯一の「Lタイプ」レンズ)、開放F値も「F2.4-3.5」とかなり大口径である。このズームレンジと開放F値……今見ても、けっこう魅力的だと思う。

 今回、見つけて購入した「コニカミノルタDiMAGE A200」も、PowerShot Pro1と同様に“高性能な高倍率ズーム”が特徴のモデルである。また、レンズ鏡筒部が長めで電子ビューファインダーを搭載する一眼レフ風のスタイルも、PowerShot Pro1と共通するポイント。

 今回見つけたのは「カメラ本体(レンズキャップ、アクセサリーシューキャップ付き)、レンズフード、ACコード+充電器、充電式リチウムイオン電池(なんと、2個付き!)」という簡素な内容物。そのぶん、販売価格は「7,000円」と安かった。発売時の価格は「10万円前後」だったからねー。

 2004年11月に発売されたDiMAGE A200は、前述のとおり広角28mm相当から望遠200mm相当までの光学7倍ズームを搭載する高性能コンパクトデジタルカメラである。この7倍ズームレズ、開放F値も「F2.8-3.5」と明るいが、広角側はPowerShot Pro1よりも少し暗い。だが、このDiMAGE A200には、シャッター速度約3段分の補正効果が得られるCCDシフト方式の手ブレ補正機能「Anti-Shake」が搭載されている。このあたりは、ブレ補正機能を搭載しないPowerShot Pro1よりも魅力的なポイントである。

「F2.8-3.5」と全体的に明るい28-200mm相当の高性能「GTレンズ」が、このモデルの大きなウリ。……といっても、DiMAGE7から継承してるレンズだけどね。
広角端
望遠端

 露出モードは、プログラムAE、絞り優先AE、シャッター優先AE、マニュアル露出。この基本4モードに加え、撮影モードダイヤル上には、4種類のシーンセレクター(ポートレート、スポーツ、夕景、夜景ポートレート・夜景)と、自動設定でカメラまかせの「AUTO」と、登録呼び出しの「MR」が配置されている。

 シャッターは電子シャッターとメカニカルシャッターの併用で、速度は30秒~1/3,200秒(モードによる)。ISO感度はISO50~800の1EVステップ。電子ビューファインダーは、0.44型・23.5万画素。液晶モニターは1.8型・13.4万画素のバリアングル方式。記録媒体はCFもしくはマイクロドライブ。RAWとJPEGの同時記録も可能だ。動画はMotionJPEG(MOV、モノラル音声)。ボディサイズと重さは、114×80×115mm、約505g(本体のみ)。

記録媒体は、CFもしくはマイクロドライブ。使用電源は充電式リチウムイオン電池専用「NP-800」で、撮影可能枚数は約260枚

 一眼レフ風スタイルで28-200mm相当のズームを搭載する高性能コンデジは、コニカミノルタ以前(経営統合前)のミノルタDiMAGE7シリーズ(7、7i、7Hi)などが発売されていた。そこで採用されていたレンズの「GT LENS 7.2-50.8mm F2.8-3.5 APO」は、以降のモデルにも継承された。そして、製品名の後半部分を変更したミノルタ「DiMAGE A1」では、CCDシフト方式の手ブレ補正機能「Anti-Shake」の搭載が注目ポイント。さらに、メーカー名称が変わったコニカミノルタ「DiMAGE A2」では、CCDの画素数を従来の500万から800万に引き上げている。でもなぁ、ここから前面ロゴの文字数が増えて、何だか煩雑な印象になってくるんだよなぁ~(笑)。

 そして、A2の次に発売されたA200では、基本的なスタイルや機能を踏襲しつつ、約15%の小型軽量化を実現し、画像処理エンジンや画像処理技術が進化している。ただし、電子ビューファインダーと液晶モニターの自動切り換え機能が省略され、ファインダー接眼部のチルト機能(上方向)も省略されている。上面の表示パネルもなくなった。

 こういった機能の省略や割り切り、またボディ材質の違いなどを見ると、DiMAGE A200は“A2の廉価版”という位置付けのモデルになる。だが、液晶モニターの可動方式が上下チルトからバリアングルに変更されたことで、ポジションやアングルの変化に対応する機動性はより高まっている。

液晶モニターは、カメラを縦に構えた際にも有効なバリアングル方式
ポップアップ式の内蔵ストロボ
1.8型の液晶モニターの表示。液晶ビューファインダー横の「i+」と書かれた表示切り替えボタンを押すと、表示内容が切り替わる(4パターン)。そして、液晶モニターの右上にあるファンクションボタンを押すと、各種の設定(ISO感度、カラーモード、フラッシュモード、測光モード、フィルター効果、彩度補正、コントラスト補正)を変更することができる

 ……実は今回のA200、以前に所有していた。全体的に小振りなボディながら、28-200mm相当という実用的な画角をカバー。ワイドマクロよりもテレマクロに秀でたマクロモードなど、こういった仕様は日常的に花のクローズアップ撮影をおこなうボクにとっては、まさに打ってつけのカメラだったのである。……とか言いながら、実際には“自宅でのブツ撮り専用カメラ”のポジションに収まっていた(笑)。

 ボクが所有していたDiMAGE A200はそういう不遇(?)にあったので、せめて今回のDiMAGE A200にはアウトドアでの撮影を体験させたやりたい(一種の罪滅ぼしかも)。そうだ、高倍率ズームを搭載するカメラには“旅の撮影”が似合うかも! ……ということで、このコニカミノルタ DiMAGE A200を手にして「小江戸」と称される川越に出かけてみた。西武新宿駅から特急「小江戸号」に乗ってゴー!!

本川越駅から蔵造りの町並みを目指して歩いている際に見かけた、観光用のタイル。DiMAGE A200 / 3,264×2,448 / ISO50 / F5.6 / 1/400秒 / 7.2mm(28mm相当)
こちらは液晶モニターのバリアングル機構を利用して、カメラを頭上から構えて撮影してみた。う~ん、上から見下ろすと絵柄がわかりやすい。DiMAGE A200 / 3,264×2,448 / ISO50 / F6.3 / 1/400秒 / 7.2mm(28mm相当)

 か~なり微妙な車窓風景(笑)を堪能しつつ、45分で終点の本川越駅に到着。都心のターミナル駅とは違う人口密度の低さに心地良さを覚えながら、蔵造りの町並みを目指して歩くことにした。川越を訪れるのは2年半ぶりくらいである。

昼ご飯を、記念&記録的に撮影。バリアングル機能を活用すれば、こういったシーンも立ち上がらずに撮影できる。まあ、「素直に立てよ」という説もある(笑)。DiMAGE A200 / 3,264×2,448 / ISO200 / F2.8 / 1/5秒 / 8.1mm(31mm相当)

 基本的なスタイル(ボディフォルム)は、DiMAGE7シリーズやA1やA2を踏襲しているが、前述のとおり小型軽量化されたボディは、小さめのボクの手には“収まりの良さ”が感じられる。DiMAGE A1やA2も使った事があるけど、それらよりもグリップ部が小さいし(それでも十分なホールド感が得られる)、チルト機構を排したことでファインダー接眼部の出っ張りも抑えられている。

 電子ビューファインダーと液晶モニターの自動切り換え機能がないのは正直不便だが、ファインダーとモニターのどちらを優先的に撮影するかを決めて臨めば、そのうち慣れてくる。まあ、現在でもそういう(自動切り換え機能ナシ)のモデルは多いからねぇ。そのファインダーとモニターの見え具合に関しては、ファインダーは「倍率は良好、精細感はイマイチ」、モニターは「倍率はイマイチ、精細感は良好←サイズが小さいから」……といった印象。

AFによるピント合わせのAFフレームのモードは、ワイドフォーカスフレーム(左)、ローカルフォーカスフレーム(中)、フレックスフォーカスポイント(FFP、右)の3種類。十字キー中央の実行ボタンを押し、グリップ上部のダイヤル操作でモードを切り替える
マニュアルフォーカスモードは、ボディ側面のフォーカスモードボタン「AF/M」を押してMFを選択する。そして、フォーカスリングを回転させると画面の一部分が拡大されるので(全画面上の枠で囲まれた部分)、その拡大表示を見ながら手動でピント合わせをおこなう。画面右下にピント位置までの距離(目安)が数値で表示されるあたりが通っぽい!

 ミノルタDiMAGE7が登場した2001年と、コニカミノルタDiMAGE A200が登場した2004年とは約3年の差しかない。だが、この短期間の間に、低価格をウリにするデジタル一眼レフのキヤノン「EOS Kiss DIGITAL」やニコン「D70」が発売され、コニカミノルタからも「α-7 DIGITAL」が発売された(DiMAGE A200と同日発売)。そういう背景もあり、この3年間で高性能(そして高価)なコンデジの価値や役割は大きく変わってしまった。

 それでも、ボクはDiMAGE A200のような高倍率ズームを搭載した高性能コンデジが好きだ。センサーへのゴミ付着を心配しなくてイイし、一眼レフのように“ファインダーを覗いてレンズ鏡筒に手を添える”というスタイルも、撮影に対する意識を高めてくれる。でもまあ、実際には理屈抜きに好きですわ(笑)。

撮影後の画像再生は、メインスイッチ外側の「モード切り替えレバー」を再生モードに合わせておこなう。再生画像の拡大やサムネイル表示は「拡大/縮小レバー」の操作で変更する。拡大倍率は1.1~10倍の範囲
今回の川越散策で、最後に訪れた「喜多院」の境内にて。

実写サンプル

・画角と近接撮影

広角端(28mm相当)
望遠端(200mm相当)
F3.5(開放絞り)で撮影
F5.6で撮影
ズームの広角端と望遠端に近いポジションでは、マクロ切り替えレバーにより「ワイドマクロ」と「テレマクロ」モードになる。このマクロモード時の撮影距離は、ワイド端が30~60cm、テレ端が25~60cm(いずれもCCD面からの距離)。そして、テレマクロではズームの微調整も可能。
直径約3cmのポーチュラカの花をテレマクロで撮影
200mm相当の画角で25cmまで近づいて撮れるテレマクロ機能は、小さな花の撮影に最適! F3.5という開放F値の明るさも有難い。また、ISO感度の最低値が50と低いので、絞り開放時でも露出オーバーになりにくい。

・感度

ISO50
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
どちらもISO100で撮影したもの。薄暗いお稲荷さんのお堂内のシーンだと、日陰部分や床の部分のノイズが目立つ。……が、手水所のシーンでは、ノイズが目立つ部分は少ない。

・RAWとJPEG

右は「SILKYPIX Developer Studio Pro5」でRAW現像。画像処理技術の進化により、色再現性や階調再現が良好に制御され、被写体の質感が忠実にされる。……とのことだが、現在の感覚(というかボク自身の感覚)だと、ちょっと地味な印象の絵作り。そこで、RAW現像で緑や青空の彩度を高め、シャドー部は少し明るめに再現してみた。左は同時記録JPEG。

・作例

DiMAGE A200 / 2,448×3,264 / ISO50 / F3.5 / 1/100秒 / 7.2mm(28mm相当)
DiMAGE A200 / 2,448×3,264 / ISO50 / F5.6 / 1/500秒 / 26mm(101mm相当)
DiMAGE A200 / 3,264×2,448 / ISO50 / F3.5 / 1/125秒 / 7.2mm(28mm相当)
DiMAGE A200 / 3,264×2,448 / ISO50 / F5.6 / 1/320秒 / 7.2mm(28mm相当)
DiMAGE A200 / 3,264×2,448 / ISO50 / F3.5 / 1/800秒 / 50.8mm(200mm相当)
DiMAGE A200 / 3,264×2,448 / ISO50 / F5.6 / 1/160秒 / 7.2mm(28mm相当)
DiMAGE A200 / 3,264×2,448 / ISO80 / F5.6 / 1/40秒 / 7.2mm(28mm相当)
DiMAGE A200 / 3,264×2,448 / ISO50 / F4.5 / 1/200秒 / 7.2mm(28mm相当)
DiMAGE A200 / 3,264×2,448 / ISO100 / F3.5 / 1/100秒 / 50.8mm(200mm相当)
DiMAGE A200 / 3,264×2,448 / ISO100 / F4.5 / 1/50秒 / 7.2mm(28mm相当)

吉森信哉