オールドデジカメの凱旋

コニカミノルタ「DiMAGE A2」(2004年)

大口径7倍ズーム、チルト式EVF……当時の気合いを伝える高級モデル

しばらく前に、新宿の中古カメラ店で「コニカミノルタ DiMAGE(ディマージュ) A2」の“元箱・備品完備”という物件を発見し、思わず買ってしまった。あ~、また買っちゃったよ。以前には、後継モデルの「コニカミノルタ DiMAGE A200」を購入して、数年後に売却したというのに……。

「いや、DiMAGE A2にはA200とは違う魅力があるンだからネっ!」……と、鼻白んで力説しなくてもイイか。長年“カメラ道”を歩んでいると、よくある事だから。ちなみに、DiMAGE A200の方は、2013年に当コーナーでレポート済み

かくして、元箱・備品完備で4,000円で売られていた「コニカミノルタ DiMAGE A2」は、自分の手元にやってきた。

35mm判換算で28-200mm相当をカバーする、光学7倍ズームの大口径GTレンズを搭載。ミノルタ時代のDiMAGE7シリーズからお馴染みのレンズである。
DiMAGE A2は左手側の側面がカッコイイが、上面部もなかなか。存在感ありまくりのチルト式の電子ビューファインダーと、イルミネーター機能付きのデータパネルがいかす。
右手でホールド。あ~、この“ほど良い”大きさ&グリップ感がたまりませんね。

このDiMAGE A2が発売されたのは、2004年2月。35mm判換算28-200mm相当の光学7倍ズーム、シャッター速度約3段分の補正効果が得られるCCDシフト方式手ブレ補正機能「Anti-Shake」、どちらもチルト機能付きの電子ビューファインダーと液晶ディスプレイ……といった機能を備えていた。これらは、ミノルタ時代の「DiMAGE A1」から継承されたもの。また外観も、前面(内蔵フラッシュの前)のメーカーロゴ以外はDiMAGE A1に酷似している。

DiMAGE A1から変わった点は、2/3型のCCDセンサーの有効画素数が、約500万画素(2,568×1,928)から約800万画素(3,272×2,456)へと増えたこと。そして、前述のチルト機能付きの電子ビューファインダーが23.5万画素から92.2万画素の「Super Fine EVF」へと大幅に高解像度化されたことなどである。もちろん、現在のカメラの電子ビューファインダーほどの精細感やメリハリは望めないけど(経年劣化もある?)、14年も前のカメラとしては上出来だと思う。

このDiMAGE A2の魅力をあらためて考えると、今述べた“チルト機能付きの高解像な電子ビューファインダー”と“大口径光学7倍ズーム”。この2つの要素が大きいと思う。28-200mm相当(実際の焦点距離は7.2-50.8mm)の光学7倍ズームは、ミノルタ DiMAGE 7から受け継がれてきたレンズなので新鮮味はない。だけど、当時としては広角側も望遠側も満足できる画角だし、開放F値が「F2.8-3.5」と望遠側があまり暗くならないのが素晴らしい。

2004年の発売……か。この年は、デジタル一眼レフだと、キヤノンEOS 20DやニコンD70などが発売された年になるな。これらのデジタル一眼レフが注目されて人気を博す一方、コニカミノルタDiMAGE A2やキヤノンPowerShot Pro1のような結構高価な高級コンパクトデジカメは、存在意義が少々薄らいできた時期でもある。まあ、それでも自分は“高級コンデジ”が好きだったけどね。

記録メディアはCF(Type IIやマイクロドライブにも対応)。「古いカメラだから1GBくらいのカードで良かろう」と高を括ったら、撮影可能枚数の少なさに焦る(62枚とか)。800万画素のRAW対応モデルをナメたらイカンよ。ということで、4GBのカードを使用。
内蔵フラッシュを搭載しているが、外部フラッシュも使用可能。ただし、シューのタイプは独自の「オートロックアクセサリーシュー」になる。
28mm相当から200mm相当にズームすると(手動操作)、鏡筒がミョ~ンと伸びる。と、言っても3cmくらいだけど。それにしても、左手側の側面の操作パーツの形状や配置、カッコイイなぁ~。
レンズ鏡筒の側面に配置される「マクロ切り替えレバー」。マクロに切り替えると、望遠側だと多少ズームできる。だが、広角側は広角端に固定される。

作例:マクロ切り換え

通常撮影時の最短撮影距離は50cm。だが、マクロ切り替えをおこなうと、広角端は30~60cmまで、望遠端は25~60cmまで。この範囲でピントが合うようになる(いずれもセンサー面からの距離)。

テレマクロ(25cm付近)。DiMAGE A2 / ISO100 / F4 / 1/60秒
ワイドマクロ(30cm付近)。DiMAGE A2 / ISO64 / F4 / 1/60秒

現在、高性能な高倍率ズームレンズを搭載するデジタルカメラには、キヤノンPowerShot G3 X、ソニーサイバーショットRX10 III、同RX10 IV、パナソニックLUMIX FZH1、同TX2などがある。そのうちPowerShot G3 X以外のモデルは電子ビューファインダーを搭載していて、ボディ形状も一眼レフカメラ風。でもなあ、超望遠域までカバーするRX10 IVやLUMIX FZH1は重さが1kg前後になるし、200mm相当までのサイバーショットRX10 IIも800g以上になる。正直、結構かさばるし、重くを感じるカメラなんだよねぇ。

その点、DiMAGE A2はレンズ鏡筒が細めで全体的にコンパクトな印象で、本体の重さも約565g(バッテリーとCF込みだと655gくらいか?)で、さほど重くは感じない。それでいて、ミドルクラス一眼レフ並の大きなグリップや、全体的に剛性感のあるボディは安心感が高い。また、各操作パーツ(ダイヤル、ボタン、レバー、シンクロターミナル)を集中配置したボディ左手側の側面部も、強烈にソソられる。

……で、トドメはやっぱ、チルト機構付きの高解像な電子ビューファインダーだよねぇ、やっぱり。このポイントだけでも“ハイグレードな機種”という印象を受けるから不思議だわ。もちろん、単なる印象だけではない。ローポジションやローアングルの時にファインダーを上から覗いて撮影できれば、画面を見る際の集中力や、カメラの安定感が違ってくる。その撮影スタイルで得られる集中力や安定感は、可動式(チルト式やバリアングル式)液晶モニターを使った撮影とは違う「様式美」があると思う。少し大げさかもしれないが、中判カメラの名機、ハッセルブラッド(500シリーズとか)にも通じる感覚が得られるのでは?

電子ビューファインダーは、上方向90度までの間で角度調整できる。
液晶モニターは、下方向20度から上方向90度の間で、自由に角度を調整できる。
電子ビューファインダーの右側にある「モード切り替えレバー」や、その下の「ディスプレイ切り替えレバー」などが、このカメラの特徴的な部分。十字キーの右下にある「手ブレ補正ボタン」の点灯もカッコイイ!
セットアップメニューの一部。おっ、ダイヤル操作のカスタマイズ機能とかも搭載されとりますなぁ。
画質設定は、さくさくテンポ良く撮るなら「ファイン」あたり。だけど、より上質な仕上がりを得るならRAW+JPEG。ということで、これ以降の作例写真は、すべてRAW+JPEGで撮影して、後からRAWデータを現像したモノになる。しかし、TIFFモードとか懐かしいなぁ。

比較:最新ソフトのRAW現像とカメラ内JPEGの絵作り

カメラの“撮って出し”のJPEGだと、色再現とか階調とか、いろいろ不満を感じることも多い。そこで、RAWデータをAdobeの「Lightroom Classic CC」を使って現像。「階調」を自動補正、「明鐐度」を少し上げ、青空の基準に「ブルー」の色相・彩度・輝度を調整。あとは、「シャープ」、「ノイズ低減」の輝度とカラー、「色収差の除去」。…まあ、こんな感じに調整してみた(以降のカットも含めて)。

Lightroom CCで現像したJPEG。
カメラの撮って出しJPEG。(※3:2記録)

14年前に発売された「DiMAGE A2」を持って、撮影に出かけてみた。サイズ的には、大き過ぎず小さ過ぎず。重さも、キヤノンEOS Kiss X90やニコンD3400などのライト級一眼レフに標準ズームを装着した程度。だから、ストラップで首に掛けても、ほとんどストレスは感じないんだよね。

AFによるピント合わせも快適である。通常は、中央とその周辺で自動的にピント位置が決まる「ワイドフォーカスフレーム」が便利。でもって、画面内の任意の位置にピントを合わせたい時には「フレックスフォーカスポイント」に切り替える。その切り替え操作も、十字キー中央の実行ボタンを少しだけ長押しする、という非常に簡単な方法。そして、表示される「+」マークを、十字キーの上下左右で移動させる。で、実行ボタンを再度長押しすれば、ワイドフォーカスフレームに戻るのである。めっちゃ明快!

問題なのは、レリーズ後のデータ書き込み待ちだろう。画質モードをRAW+JPEGに設定すると、レリーズして10秒くらい待たないと次の撮影ができないからねぇ。まあ、このあたりが14年前のカメラらしい部分とも言える。でも、前述のとおり、より上質な仕上がりを得ようと思ったら、待ち時間があってもRAW+JPEGに設定したいところ。結論。街中でスナップ的に使うのはツライけど、風景や花などを“じっくり撮る”なら、そんなに問題はなさそう(←そのうち少し慣れる)。

道路沿いのプランターのチューリップ。電子ビューファインダーを上方向にチルトさせて、しゃがんだ状態で撮影した。DiMAGE A2 / ISO64 / F2.8 / 1/320秒
通常のAF撮影では「ワイドフォーカスフレーム」を使用。そして、ピンポイントに狙う場合は、一時的に「フレックスフォーカスポイント」に切り替える。……というのが、自分のピント合わせの流儀。
使用時には、手で引き上げる内蔵フラッシュ。そして、使用後は手で押し下げる。ミノルタ製フィルム一眼レフの時代から受け継がれる完全手動方式。
購入した個体に付属していたレンズキャップ。なぜかソニー製。
200mm相当の望遠&F3.5開放で、背後の白梅をぼかす。DiMAGE A2 / ISO100 / F3.5 / 1/125秒
「ワビスケ」と呼ばれるピンク色のツバキが、地面に落ちていた。手前にある花や葉を前ボケに入れて、その落ちた花を狙った。DiMAGE A2 / ISO100 / F3.5 / 1/80秒
親戚のおばちゃんに何となく似てた(笑)。DiMAGE A2 / ISO64 / F2.8 / 1/160秒
拾われないまま流れていくサッカーボールが寂しい。DiMAGE A2 / ISO64 / F5.6 / 1/125秒

レリーズ後のデータ書き込み待ちや、高精細だけどメリハリのない電子ビューファインダーの表示品質など、いくつかの重要な部分で古さを実感する「コニカミノルタ DiMAGE A2」。だけど、前モデルのDiMAGE A1よりも高画素化されていて、後発モデルのDiMAGE A200よりも“風格”を感じさせるフォルムや造り。その仕様や機能、そして完成度の高いデザインに“高級コンパクト作りの気合い”を垣間見た気がする。

歴史を感じさせる古い町並みや、穏やかで美しい日本庭園……。そういった所で使いたくなるカメラかもね、この「コニカミノルタDiMAGE A2」は。

吉森信哉

1962年広島県庄原市出身。東京写真専門学校を卒業後、フリー。1990年からカメラ誌を中心に撮影&執筆を開始。得意ジャンルは花や旅。ライフワークは奈良・大和路の風景など。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。カメラグランプリ2018選考委員。