オールドデジカメの凱旋
リコーCaplio GX100(2007年)
Reported by 吉森信哉(2013/7/1 00:00)
フィルムカメラの頃から、単焦点レンズ搭載の高性能コンパクトカメラ「GRシリーズ」を発売してきたリコーは、デジタルカメラでも同様のコンセプトのカメラを発売し続けている。つい先日(5月下旬)には、APS-CサイズのCMOSセンサーを搭載する「GR」がペンタックスリコーから発売されたばかり。
だが、リコーの高性能コンパクトは、単焦点のGRシリーズだけではない。ズームレンズを搭載する「GXシリーズ」もある。現行の「GXR」は、レンズとセンサーと画像処理エンジンを一体化したユニットを交換する“ユニット交換式”という独特な方式のカメラだが、それ以前には、スタンダード(?)なズームレンズを搭載する高性能コンパクトの「GX200」や「Caplio GX100」を発売していた。なお、ボクは一般的に使用される「高級コンパクト」という呼称があまり好きではないので、ここでは「高性能コンパクト」という呼称を使うことにした。
今回購入したモデルは、「リコーCaplio GX100」である。別にGXシリーズを探していた訳ではないが、行きつけの都内中古カメラ店で、1万円弱の価格で売られていたのを発見し、思わず買ってしまったのである。残念ながら、液晶ビューファインダーや他の備品は付属していなかったが(専用バッテリーと充電器は付属していた)、9,000円台ならイイか!
ところが、帰宅して操作して致命的なトラブルを発見した。マクロモードは問題ないのだが、一般撮影(マクロモードを解除)だと、まったくピントが合わないボケボケ状態なのである。なんで? 落ち着いてカメラをチェックすると、最前部のレンズ鏡筒の横にへこみと亀裂を発見。あ~、これは相当のダメージを受けてるよ。ピントが合わない原因はコレだわ。いや、店頭チェックで気づけよ(苦笑)。そういえば、店頭では馴染みの店員との会話に夢中になり、動作チェックはササッとマクロモードを試したくらいだった。反省……。
そういう訳で、このCaplio GX100は数日後に返品&返金した。それ以降、この行きつけの店も含めて、都内のいろんな中古カメラ店を巡ったが、「オールドデジカメの凱旋」に相応しい(と思われる)カメラには、なかなか巡り会えなかった。
それから約半月後。自宅近くのパソコンショップに出かけた際に立ち寄ったリサイクルショップで、あの「Caplio GX100」を発見した。何という偶然! しかも、今回発見したのは、元箱や備品も揃った状態の、液晶ビューファインダー同梱の「リコー GX100 VF KIT」である。価格は1万4,700円也。ただし、このCaplio GX100にも少し難点がある。ボディの一部に小さな亀裂が見られるのだ。……ということで少し悩んだが、動作や描写には問題なさそうなので、思い切って購入することにした。ま、これも何かの縁だから(笑)。ちなみに、このリサイクルショップは、昨年はじめにレポートした「富士フイルムFinePix F10」を発見して購入した店である。
「リコーCaplio GX100」は、2007年4月20日に発売された、広角24mm対応のズームレンズを搭載した、高性能コンパクトカメラである。撮像素子には1/1.75型有効1,001万画素のCCDセンサーが採用されていて、35mm判換算24-72mm相当の3倍ズームレンズを搭載している。手ブレ補正機能には、CCDシフト方式を採用。
また、「広角側で1cmまで、望遠側でも4cmまで」という、リコーが得意とするマクロ能力の高さも健在。オプションには、超広角19mm相当の画角が得られるワイドコンバージョンレンズなどが用意されていた。そして、着脱式の液晶ビューファインダー「VF-1」に対応する(約20.1万ドット相当)。
露出制御方式は、プログラムAE、絞り優先AE、マニュアル露出。この基本4モードに加え、オート撮影モード、シーンモード、動画モード、マイセッティングモード(MY1、MY2)をダイヤル上に配置。絞りは7枚羽根の虹彩絞り。シャッター速度は180~1/2,000秒と低速側を充実させた仕様。露出補正は±2EVまで(1/3EVステップ)。ISO感度は、ISO80~1600(基本1EVステップ)。液晶モニターは2.5型・約23万ドット。
実は、この機種は以前に所有していた。記録を調べてみたら「2008年4月購入」となっていたから、発売当初から注目していたというより、いつものように「おっ、ようやく価格がこなれてきたナ。そろそろ買いかも?」とか思いながら、軽いノリで買ったのだろう(笑)。その年のGWには実家周辺の草花や昆虫などを積極的に撮影したのを覚えている。
Caplio GX100はボクが買った最初のリコーのデジタルカメラだが、そのカメラが発売される約3年前には、GXシリーズの第1号モデル「Caplio GX」を仕事で使っている。このカメラには、35mm判換算28-85mm相当の3倍ズームレンズと、1/1.8型有効513万画素のCCDセンサーが採用されていた。たしか、その仕事はカメラ誌の「旅カメラ」特集で、静岡県の大井川鐵道とかに行ったよナァ……。
単焦点レンズ搭載の「GR DIGITAL」と比べると、内蔵ストロボ部のデザインやボディ材質などが違うが、全体のサイズ感やグリップ部の形状などは割と似ている(横幅が少し長いけど)。そんなCaplio GX100は、液晶ビューファインダーの装着で一眼レフカメラような構え方で撮影できるという、GR DIGITALとは違う魅力を持つ。そして、広角24mm対応の光学3倍ズームやCCDシフト方式の手ブレ補正機能を搭載するなど、GR DIGITAL以上に“実用度の高い高性能コンパクト”でもある。
液晶ビューファインダーを装着した外観や手にした時の感覚に、な~んとなく懐かしさを覚える。いや、懐かしいと言うよりは“ホッとする”という感覚に近いかな。ボディとのバランスが絶妙な液晶ビューファインダー「VF-1」がイイ感じだし、「RICOH」と刺繍の入ったネックストラップを装着して首からぶら下げると何だか楽しくなってくる(このネックストラップは別売品だが、今回の中古品に含まれていた)。
現在の基準で見れば、液晶モニターサイズは小さめで、表示文字も粗くて少々見づらいが、ADJ.レバーの形状や配置、そのレバーを押し込んで行なう常用機能の選択&設定のスタイルなどは、基本的に現在の「GR DIGITAL Ⅳ」や「GR」などと同じ。だから、2008年にCaplio GX100を購入して以来、何台かのGRやGXのシリーズを使ってきたボクにとっては、おなじみの操作方法&操作感である。
最近になって、シグマDPシリーズやニコンCOOLPIX A、またリコーGRといった、APS-Cサイズの大型センサーを採用する高性能コンパクトが活況を呈してきた。しかも、1/1.7型クラスの小さな(一般的なコンパクトよりは大きいが)センサーを採用するモデルと比較しても、ボディの大きさや重さがそう大きくは変わらない。そんなリコーGRなどを見ていると「従来の高性能コンパクトは、存在価値が低くなったのかも」という時流も感じざるを得ない。まあ、そのセンサーサイズの違いによる描写の差(ボケ効果、細部ディテール、高感度耐性)は、決定的とも言える違いだからねぇ……。
でも、ボク自身は1/1.7型クラスの高性能コンパクトの魅力や存在価値がなくなったとは思わない。現在のところ、1/1.7型クラス並の大きさや重さのAPS-Cサイズ機はどれも単焦点モデルである。このセンサーサイズでズームレンズを搭載しようとすると「ソニーNEX+16-50mm」のようなサイズになるのでは? まあ、それでも十分にコンパクトだと思うけど、だったらNEXでイイじゃないってコトになる。
それに比べれば、もっとコンパクト&軽量なパッケージで、画角や倍率にこだわった高性能ズームレンズが搭載できる……かも。このあたりの可能性が1/1.7型クラス機の大きな魅力だと思う。それに、センサーサイズが大きいと同条件(画角、撮影距離、絞り値)でのボケ効果は大きくなるが、個人的には「大きくボケた方が偉いんかい!?」という思いもある。それに、1/1.7型クラスのカメラで日常的に「レンズ先端から1~2cmまで」という大胆なマクロ撮影を楽しんできた者とっては、ニコンCOOLPIX AやリコーGRの「レンズ先端から10cmまで」というマクロ性能は決して満足できる性能ではない。広角域で被写体に肉薄して得られる臨場感……。あれこそが、コンデジによる表現の真骨頂だと思う。
広角側の画角にこだわった24-72mm相当の高画質設計(しかもズーム全域で寄りに強い!)のズームレンズを搭載し、小振りな液晶ビューファインダーを装着して一眼レフ感覚でも撮影できる。……そんな今回のCaplio GX100は、今後の高性能コンパクトカメラの“ひとつの道標”のように思える。後継モデル「GX200」以降途絶えているGXシリーズ(このタイプの)を復活させて欲しい! そういう思いが湧きあがってくる、思い出のカメラとの再会だった。
実写サンプル
- ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・ISO感度
ノイズの発生具合からすると、実用レベルはISO200くらいまでか。ただし、それ以上の感度でもイヤらしい感じのノイズではない。また、細部描写は高感度でも良好。……とはいえ、ISO800以上は避けたいところ。
・画角
・マクロ
広角マクロ(最短1cm)と望遠マクロ(最短4cm)の描写比較。リコー機らしく、撮影倍率は望遠マクロの方が上。臨場感なら広角マクロ(影が被る部分が出てくるけど)、自然な描写なら望遠マクロ。
・画質設定
・作例
【12時20分】記事初出時、露出モードにシャッター優先AEを搭載と記述していましたが、実際には非搭載のため該当部分を修正しました。