新製品レビュー

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II(実写編)

一眼レフを超えたか?約18コマ/秒連写でのAF追従性能を見る

オリンパスから発売される「OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II」は、同社の展開するミラーレスカメラOM-Dシリーズの最高級機であるOLYMPUS OM-D E-M1の後継機である。

外装にマグネシウム合金を採用した堅牢なボディはプロユースを想定した作りであり、オリンパスが得意とする高い防塵防滴耐低温性能もE-M1から引き継いでいる。これにより厳しい条件下での撮影でもトラブルのリスクを最小限に抑えてくれる。

またE-M1からは解像度や高感度特性といった基本性能も向上されており、特に手ブレ補正機能やAFに関する性能の改善には目を見張るものがある。今回は実写編でその実力を検証していこう。

描写

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROを装着し絞りをF5.6まで絞り撮影。2,037万画素となった新Live MOS センサーと新画像処理エンジン「TruePic VIII」の組み合わせにより、1,628万画素であったE-M1より解像力を上げると同時に精細感も向上させることに成功している。

E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO / 1/500秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 14mm

木々の枝葉が細かく分離しており、紅葉の赤や黄といった色飽和しやすい葉もきちんと描写されていることがわかる。

高感度

北海道夕張の炭鉱施設に併設された旧発電所内。限られた光の中、感度をISO6400に上げて撮影。高感度撮影特有の色ノイズもほぼ見られず、ノイズリダクションによるディテールの喪失も非常に少ない。

E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO / 1/10秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO6400 / 絞り優先AE / 12mm

この作例の撮影時は三脚を使用せず手持ちで撮影しているが、ISO6400の高感度とE-M1 Mark IIの強力な手ブレ補正機能の相乗効果により、1/10秒という低速シャッターだが手ブレを起こさずに撮影できている。

続いては拡張感度域であるISO25600で撮影。常用感度と比べるとさすがにノイズも見られるが、E-M1 Mark IIが持つ最高感度であることを考えれば十分に使用に耐えられる画質といえる。これまでマイクロフォーサーズは高感度に弱いと言われてきたが、もうその常識は当てはまらないレベルとなっている。

E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO / 1/250秒 / F8 / +0.3EV / ISO25600 / 絞り優先AE / 40mm

ハイレゾショット

E-M1 Mark IIには、PEN-Fにも搭載されている「ハイレゾショット」機能が搭載されている。本来は20Mピクセルであるイメージセンサーを、撮影時に0.5ピクセル単位でセンサーを動かしながら8回撮影し、それら画像を重ね合わせ画像処理することで、50Mピクセル相当の画像を得るというものだ。

炭鉱の竪坑遺構を50Mハイレゾショットで撮影。E-M1 Mark IIの通常の撮影画像サイズは20Mの5,184×3,888ピクセルだが、50Mハイレゾショットの画像は8,160×6,120ピクセルとなる。大伸ばしのプリント作成などには解像度の高い画像が画質の点で有利となる。

E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO / 1/640秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 22mm

PEN-Fに搭載されているハイレゾショットでは、草木や水面の波紋など、動く被写体はときとして複数の縞模様のように写ってしまうことがあった。E-M1 Mark IIではそれを画像処理によって、より自然に見えるブレの軌跡として表現できるよう改善したということだ。

手ブレ補正

E-M1 Mark IIでは手ブレ補正機能も大きく進化している。ボディ内に搭載された手ブレ補正の為のセンサーおよびユニットが刷新され、また補正のアルゴリズムも最適化された。

これによりシャッタースピードにして約5.5段分の補正性能を得ることができるようになった(E-M1は4段分)。さらに新発売された高倍率ズームレンズM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROと組み合わせでは「5軸シンクロ手ぶれ補正」となり、シャッタースピードにして6.5段分の効果を得られるという。

作例はオフィスビルの夕景。金色に輝く窓1つ1つに、そこで働く人々の存在を感じながらシャッターを切る。ISO800まで上げるも、F5.6に絞っているため1/6秒というスローシャッターであったが、E-M1 Mark IIの5軸手ブレ補正機構のおかげで、手ブレすることなく手持ち撮影ができている。

E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO / 1/6秒 / F5.6 / 0EV / ISO800 / 絞り優先AE / 17mm

AFと連写

E-M1 Mark IIの大きな特徴のひとつとして、AF機能と連写能力の大幅な改善が挙げられる。AF機能はC-AF時に使用する像面位相差AFのポイント数が、E-M1では37点であったものが、E-M1 Mark IIでは、ほぼ画面全域に広がる121点となった。

さらに全AFポイントがクロス測距となっており、測距精度が大幅に高まっている。また連写性能もメカニカルシャッターである[連写H]では秒間最大15コマ/秒(E-M1は秒間最大10コマ/秒)、電子シャッターとなる[静音連写H]では秒間最大60コマ/秒(E-M1には非搭載)と大幅なアップとなっている。

加えて、C-AFとの組み合わせで被写体にAF/AEを追随させることができる[連写L]では秒間最大10コマ/秒(E-M1は最大9コマ/秒)、[静音連写L]では秒間最大18コマ/秒(E-M1には非搭載)での撮影が可能だ。

[静音連写L]の秒間最大18コマ/秒という連写の速さはミラーレスカメラおよび一眼レフカメラのいずれにおいても、AF/AE追従連写としては最速となる。(本記事執筆時)

E-M1 Mark IIのドライブモード[静音連写L]、C-AFでレーシングカートを連写撮影した。カートコースのなかでも一番スピードが出るストレートコースを、全速力でカメラに向かって走ってくるカートをシャッター優先AEで撮影した。

AFターゲットモードは9点グループターゲットにして1コマ目でドライバーに合わせて、約3秒間の間シャッターボタンを全押しして52コマを連写撮影した。

※共通設定:E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 1/1,000秒 / +0.7EV / ISO400 / シャッター優先AE / 150mm。キャプションはコマ番号

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1コマ目から22コマ目まではフォーカスがしっかりとドライバーのヘルメットに合っており、23、24、25コマ目はカート前部の番号へフォーカスが移る。26コマ目はカートより手前に一瞬フォーカスが移るも、27コマ目では再びドライバーのヘルメットへフォーカスが復帰。

その後はカメラ直前の50コマ目までフォーカスをドライバーのヘルメットに合わせ続けて、51コマ目で一瞬後ピンになるが52コマ目では再びドライバーへとフォーカスが復帰している。

完全なアウトフォーカスなのは26コマ目と51コマ目の2枚だけで、他のコマは実用的にはほぼ問題ないレベルだ。これらのうち実際に使用画像としてセレクトされるであろう42~47コマ目の6枚の画像にはきっちりとフォーカスが合わせられており、実戦力の観点から見ても十分に、速いスピードで向かってくる被写体を捉えられるカメラであることがわかる。

また1~11コマ目は絞りがF3.5だが12~52コマ目まではF4となっていることから連写中もAEによって露出が制御されていることがわかる。

誌面の都合上、ここでは1セットのテスト画像のみを載せているが、実際のテストではこれを25セットほど行ったうえで平均的な判断としている。

筆者は過去にキヤノンのプロ機であるデジタル一眼レフカメラEOS-1D X Mark IIのレビューにて同様のテストを行っているが、今回のE-M1 Mark IIでの連写撮影は、感覚的にEOS-1D X Mark IIでの連写撮影能力に肉薄するほどの仕上がりとなっているとさえ感じる。これはミラーレスカメラとしては驚異的な進化だ。

また電子シャッター撮影時の弱点である「ローリングシャッター歪み」は、カメラ真横をカートが通過する際に数コマ、背景の柵と赤白バリアに現れただけと非常に少ない。これは従来機にくらべてE-M1 Mark IIでは電子シャッターの幕速が約3倍の速さとなっていることによるものだ。

さらに特筆すべきは、EVFを使用しての連写撮影でも、ファインダー画像が見えなくなる、いわゆるブラックアウトや画像の遅延がほとんど無いということだ。これまでEVFの欠点とされてきたこれらの現象は、とくに動きものの撮影時には大きな問題となっていたが、E-M1 Mark IIでは光学ファインダーでの見え方にかなり近づいている。またEVFのフレームレートも最高で120fpsまでアップできるので、より速い動きをする被写体にも対応可能だ。

プロキャプチャーモード

これはシャッターボタンを全押しする前の、最大14コマ分の画像を遡って記録できるというものだ。つまりこれを利用すれば、わずかな差で撮り損ねていた、鳥が飛び立つ瞬間などを遡って記録できるというものだ。

ドライブモードを[プロキャプチャー連写L]にセットして、カートがコーナーに入る手前でシャッターボタンを半押ししAFをスタート。フォーカスをカートに合わせ、カートがコーナーの頂点に達した瞬間に合わせてシャターボタンを全押しして撮影を開始させた。

※共通設定:E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / 1/1,000秒 / +0.3EV / ISO400 / シャッター優先AE / 40mm。キャプションはコマ番号

1(シャッターボタン半押し)
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15(シャッターボタン全押し)
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シャターボタンを全押しした瞬間から遡り14コマ分の画像が記録され、その後はC-AFによる通常のAF追尾連写となっていることがわかる。つまりシャッターボタンを半押しした瞬間から、カメラ内のキャッシュメモリーに画像を一時的に記録し始め、シャッターボタンを全押しした瞬間に過去14コマを保存、それ以外の画像キャッシュは消去される仕組みだ。

作品

石造りの建物を背景に人物を撮影。レフ板は使用していない。半逆光によるハイライトからシャドウ部へかけての階調も自然。さらにレフ板を併用すれば肌の色もくすむことなく表現できるだろう。背景の石壁のディテールも細部まで見事に表現されている。

E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO / 1/1,250秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 40mm

重厚な石造りの旧日本郵船小樽支店を[ピクチャーモード:ラフモノクロームII]で撮影。E-M1 Mark IIはプロユースを想定した最上位機だが、エントリー機にも採用しているアートフィルターを搭載しているので、エフェクトを活かした雰囲気を重視した撮影も可能だ。

E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO / 1/400秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / Creative / 21mm

なお、PEN-Fに搭載されたカラー/モノクロプロファイル機能は用意されていない。ただし、OLYMPUS Viewer 3でRAW画像にカラー/モノクロプロファイルを適用後・現像し保存することは可能だ。

炭鉱施設に併設された旧発電所の廃墟。閉鎖後、長年にわたり北海道の厳しい環境にさらされた建物は風雪の跡をその壁面に刻んでいく。そこに余計なノスタルジーは必要なく、客観的に記録するための解像力の高いカメラとレンズの組み合わせこそが重要となる。

E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO / 1/80秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / 絞り優先AE / 19mm

かつての炭鉱の山に放置されたまま朽ちる重機。錆びついた車体の質感をE-M1 Mark IIはしっかりと描写する。天気もあまりよくなく、日の出ていない曇り空での光の状況だったが、程よいコントラストと補正をかけ過ぎないオートホワイトバランスの組み合わせが撮影時のリアルさを引き出している。

E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO / 1/60秒 / F5.6 / +1EV / ISO200 / 絞り優先AE / 12mm

まとめ

筆者はこれまでのオリンパスのフラグシップ機であったE-M1を発売当初から愛用しており、その実力もウイークポイントも熟知している。それだけに一眼レフカメラとの如何ともしがたい差も十分に理解している。

だが、このE-M1 Mark IIの登場で本質的な差はすでに無くなったと言わざるを得ないだろう。これまでは「ミラーレスカメラだから」と割り切っていたところもあったが、今回試した印象をもとにすると、個人的には対等な存在として見極める必要があると感じた。

それ故に、ミラーレスカメラはさらなる高画質と高性能を求められることになるだろう。しかし現時点において、E-M1 Mark IIはミラーレスカメラを革新する、新世代へと踏み込んだカメラであることは間違いないと断言できる。

モデル:夏弥
撮影協力:木更津サーキット
撮影協力:小樽フィルムコミッション
撮影協力:清水沢プロジェクト



礒村浩一

(いそむらこういち)女性ポートレートから風景、建築、舞台、製品広告など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーの講師を担当。デジタルカメラの解説や撮影テクニックに関する執筆多数。近著「オリンパスOM-Dの撮り方教室 OM-Dで写真表現と仲良くなる」(朝日新聞出版社)、「マイクロフォーサーズレンズ完全ガイド」(玄光社)、「一眼カメラの選び方がわかる本 2016」(晋遊舎)など。カメラグランプリ2016選考委員。