特別企画

自然と史跡に恵まれた南大東島・北大東島を訪ねる

海、森、夕日、星空…多彩な被写体で楽しめた9日間

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 1/800秒 / F8 / -0.3EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 7mm

いろいろある写真の楽しみ方のひとつに、旅行先で出会った光景をカメラに収めるというものがある。初めて訪れた場所で出会った、感動するほどに美しい風景や美味しい食べ物、あたたかに迎えてくれる人々など、それらを写真に収めていくのはとても楽しい。

そして写真を仕事や趣味としていると、旅先であってもやはり高画質なカメラやレンズで撮影したいと思ってしまうものだ。しかし、高画質なカメラやレンズとなると、おのずと大きく重い機材となってしまうのがこれまでの常識であった。

ところがここ数年のミラーレスカメラの高画質化によって、その状況も大きく変わってきている。「カメラの大きさ=画質の高さ」ということにはならなくなってきたのだ。

つまり画質の良いミラーレスカメラをきちんと選択すれば、小型軽量と高画質を両立することができるようになったのだ。そこで今回はミラーレスカメラを携行して、沖縄県の離島へと旅に赴いてきたレポートを、実際に撮影した作品と共にご覧いただこうと思う。

沖縄の離島 南大東島・北大東島へ

今回の旅の行き先は、沖縄の離島である「南大東島・北大東島」の2島である。沖縄本島よりおよそ360kmほど東に離れた大東諸島に位置する小さな島だ。

飛行機では那覇空港から琉球エアーコミューター(RAC)で片道およそ1時間5分、船便は那覇泊港から貨物兼用の大東海運フェリーが片道およそ15時間で就航している。

マップを見ていただけるとわかるように、周囲300km四方に陸地のない、まさに絶海の島である。そもそも明治時代に入植されるまでは無人島であったほどで、日本の中でもへき地と呼ばれる場所のひとつといえる。

今回の撮影地として南大東島・北大東島を選んだ理由は実にシンプルだ。とにかく「人があまりいったことがないところに行きたい!」と思ったからだ。

旅の荷物とカメラ機材のせめぎ合い

今回の目的地のように、交通機関に制限がある旅では、持っていく荷物の量はできるだけ抑えたい。そこで今回の旅の撮影機材に選んだのが、マイクロフォーサーズのミラーレスカメラであるOLYMPUS OM-D E-M1 Mark IIとマイクロフォーサーズレンズだ。

最小限の大きさで、できるだけ高画質な撮影が可能なシステムを選択することで、旅のなかで出会う光景を高いクオリティで撮影したいと考えたからだ。

今回の撮影で使用した機材は以下の通り。

  • OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
  • M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II

M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II以外は防塵防滴対応のPROレンズなので、多少の雨や土埃りでも心配なく撮影を進めることができる。

本当はM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROを持っていきたいところだが、サイズと重量を抑えるために今回はM.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 IIを選択した。

軽量コンパクトながら、35mm判換算で600mm相当までの超望遠であること、画質もPROレンズに負けず良いところがセレクトの理由でもある。

なお、今回のレポートにて掲載している写真は、すべてこれらのカメラとレンズにて撮影したものである。

いざ!南大東島・北大東島へ!

今回の旅では南大東島・北大東島へは、那覇港から出港する定期船「だいとう」に乗船して向かうこととした。

貨物船も兼ねるフェリーなので、甲板には多くのコンテナや島へ運ぶ軽トラックなどが満載されている。那覇港を17時ごろに出港し、大東諸島に到着するのは翌日の早朝と、一夜を船上で過ごすことになるため、乗客には2段ベッド式の寝台が割り当てられる。

外洋を航海するため、ときには天候が崩れ海が荒れることもあり、そのときの船の揺れはかなりのものとなるらしい。幸いにも私が乗船した夜は波風も静かで船酔いになることもなかった。

南大東島・北大東島へ向かう貨客船「だいとう」。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / 1/1,600秒 / F5.6 / 0EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 15mm

那覇港を出航して夜を徹して東へと向かう。島に到着するのは翌早朝。この日の航海ではまず北大東島に先行し、一部の乗客と貨物を下ろしたのちに南大東島へと向かう。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / 1/1,250秒 / F8 / +0.7EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 28mm

午前7時ごろ、那覇港を出航して約13時間が経過。まずは北大東島に到着。岸壁に備え付けられたクレーンで貨物を手早く荷揚げする。

貨物には島の人々が使用する生活物資も含まれており、時折海が荒れたときにはこれらの物資が陸揚げできずに、島では品不足になってしまうこともあるとのことだ。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / 1/1,600秒 / F4 / -0.3EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 13mm

南大東島・北大東島はつねに波が高く、入江もないためフェリーが接舷できる港がない。そのため貨物に加え乗客も、乗客用の鉄製カゴに載せられ、港に用意された大型クレーンによって陸揚げされる。

カゴに載り大型クレーンに吊られて上陸・乗船する。まるで遊園地のアトラクションみたいだ。結局、今回の航海では那覇を出航して北大東島を経由、南大東島に上陸するまでは約18時間を要した。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 1/250秒 / F5 / +1.3EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 7mm

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 1/640秒 / F8 / 0EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 9mm

南大東島の広い空と赤い土

南大東島には島をまるごと包むような青い空と、広々とした赤土の農地が島一面に広がる。島を訪れた2月半ばは、日中の気温も20度前後と比較的過ごしやすく、また天候も穏やかな日々が続いていた。

まずは島でいちばん高いといわれる日の丸山展望台に上り島全体の様子を確認する。

とはいえ、それほど高い展望台でもなく、また島のつくりが周縁部が高く盛り上がり、中央部に向かうにつれ低地となるお盆型であるため、周縁部の内側に建つ展望台からは海を眺めることができない。かわりにサトウキビ畑の穏やかな風景が視野一面に広がる。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 1/800秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 7mm

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 1/640秒 / F8 / +0.3EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 7mm

かつては原生林で覆われた無人島であった南大東島は、明治時代以降に入植した人々によって開拓された島だ。サンゴ礁が隆起し島となり、のちに石灰岩に変化した土壌は、決して恵まれた土地ではなかったが、先人たちによる土壌改良の努力により、いまでは農作物にも恵まれた土地となっている。

島のおよそ60%が農耕地である南大東島には広大な農地が広がる。島の表面は石灰岩が変質してできたともいわれる、赤土に一面覆われており、それが青い空とのコントラストとなる。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 1/1,250秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 7mm

島を周遊する道路の表面は、畑から風で飛ばされてきた赤土でうっすらと覆われており、真っ青な空とは対照的でどこか現実味がない。

島は車で30分も走ると1周してしまうほどの広さ。自分は島に滞在した9日間に何周したかもわからないほど走り回った。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / 1/1,250秒 / F5.6 / 0EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 12mm

南大東島はサトウキビの島だ。島の農地の大半がサトウキビ栽培に充てられており、収穫されたサトウキビは島唯一の大規模工場である製糖工場に運ばれ砂糖の原料となる。

訪れた2月はサトウキビ収穫の最盛期であり、島のあちらこちらでハーベストと呼ばれる巨大な農機が、バリバリと迫力の音を立てて背の丈ほどもあるサトウキビを刈り取っていた。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 1/1250秒 / F8 / +0.3EV / ISO 400 / 絞り優先AE / 31mm

沖縄では1月から3月にかけてがサトウキビの花が咲く季節。収穫を控えたサトウキビ畑では、銀色の花と深い緑の葉が島の風に緩やかになびく。しばし時間の流れを忘れる。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / 1/800秒 / F5.6 / 0EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 7mm

離島の深く青い海と険しい断崖に心揺さぶられて

南大東島・北大東島は約4,800万年前、現在のニューギニア諸島付近で火山島として誕生したのちに再び海面下に沈下、その後サンゴ礁を堆積させながら約600万年前に再び隆起し、その後フィリピン海プレートに乗る形で現在の沖縄近海に移動してきたと考えられている。

その成り立ちゆえに、島の周縁は険しい岩場と断崖に囲まれており、そこに大海の荒い波が常に打ち付けている。

さらに台風が発生すると島の近海を進むことが多く、その際には海は大きく荒れ、島は暴風に晒される。実に厳しい自然の只中に在る島だ。

島の海岸は険しい岩場に囲まれており、常に荒々しい波が打ち付ける。しかしそこに広がる深くも鮮やかな海の美しさは、まさに絶景だ。

島の周囲を岩場に囲まれた南大東島には浜辺がなく、子供達が海で泳ぎを覚えることができないとのことから、いくつかの岩場に人工的な海水プールが作られている。南大東島東側の海軍棒と呼ばれている海岸には、岩場を大きくくり抜いたプールが作られている。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 1/1,000秒 / F8 / -0.3EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 7mm

島の海岸線はどこまでも荒々しい岩場が続く。この急峻な岩場が、かつて島の開拓を志した人々の上陸を拒み続けたという。午後に入り西風が強くなると、海の表情も変わり鋭角な白波が目立ってくる。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / 1/800秒 / F8 / -0.7EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 54mm

大東諸島はまさに台風の通り道。夏から秋にかけてはいくつもの大きな台風が島と沿海を暴風雨とともに駆け抜けていく。

島には開拓以来、船が自力で入れる漁港がなく、台風の際にもクレーン車で陸に引き上げていた。そこで平成元年より国と県の事業として、周辺海域の退避港としての役割も持つ大型漁港の新設を進めてきた。そのスケールの大きさは見るものの度肝を抜く。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 7mm

北大東島の海岸。それまで晴天であった空が急に暗くなり、海岸を吹き抜ける風が強くなる。岩場に打ち付ける波は荒々しくなり、穏やかだった海が一気に険しい表情を見せてくる。明るく青い海だけが離島の魅力ではない。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II / 1/800秒 / F5.6 / -1EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 75mm

どこまでも続く島の夕空と漆黒の空に輝く星々

大東諸島の周辺は約360km四方にわたり陸地がない。水平線はどこまでも真っ直ぐで、夕日はまさに海の向こうへと沈む。日没後しばらくすると辺りは漆黒の闇に包まれ空は満天の星空で占められる。本物の夜がここにはある。

フィリピン海に沈む夕日を塩屋海岸から望む。南大東島から見る水平線は四方どこをみても真っ直ぐで、姉妹島である北大東島以外の陸の影は見えない。まさに絶海に浮かぶ島だ。

穏やかな日没のひと時を、波の音を聞きながらひとり静かに迎える。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 60秒 / F16 / 0EV / ISO 200 / マニュアル露出 / 7mm。ハーフフィルターKANI SOFT GND0.9使用

離島の夜はまさに「鼻を摘まれても気がつかない」程の闇に包まれる。カメラを三脚に据え付けレンズを空に向けると、そこには数えきれないほどの星々が輝く。冬の淡い天の川も肉眼でわかる程だ。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO / 30秒 / F1.8 / 0EV / ISO 1600 / マニュアル露出 / 8mm

画面左下から中央部の天の川にかけて伸びている淡い光は、黄道光と呼ばれるものだ。黄道光とは、天球上の太陽の通り道とされる黄道にそって帯状に見える光のこと。

天の川よりも淡い明るさのため、暗くて条件の良い夜空でなければ観測することが難しい。南大東島の暗い空は天体撮影にも最適な空だ。

特異稀な環境が育んだ島の自然

大東諸島は沖縄県の島でありながら、その成り立ちは沖縄本島や周辺の島とはまったく異なる。そのため島には特有の植物や動物などが繁殖し、学術的にも貴重な島となっている。

さらに現在に至っても、フィリピン海プレートの動きに合わせ1年に5〜7cm程、沖縄本島方面に移動を続けていると言われている。

南大東島の北端には、バリバリ岩とよばれる原生林が広がっている。長い年月をかけて現在の場所に移動してきた南大東島は、地球の地殻が動く大きな力で三方向に引っ張られているという。

その力で島の大きな岩が割かれて、その名の通り「バリバリ」と裂け目ができたところに、原生林が繁ったものという。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 1/15秒 / F4 / +0.7EV / ISO 400 / 絞り優先AE / 7mm

島の原生種ダイトウビロウが、割れた岩の間にいく本も繁る。まさに南の島のジャングルだ。なお南大東島・北大東島には沖縄に多くいる猛毒をもつハブは生息していないといわれている。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 1/50秒 / F4 / +0.3EV / ISO 400 / 絞り優先AE / 7mm

バリバリ岩の裂けた大岩の間を進むと、まるで洞穴に入っていくような階段が現れる。この階段は戦時中に軍隊が弾薬庫として利用していたころに作られたとの説もある。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 1/5秒 / F4 / -0.7EV / ISO 400 / 絞り優先AE / 7mm

裂けた岩をさらに奥に進むと、行き止まりには祠のような空間がある。神域として祀られている場所ではないが、長い年月をかけて今日のような姿となった経緯を思うと、どこか畏怖を感じられずにはいられない。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 2.5秒 / F5.6 / +2EV / ISO 400 / 絞り優先AE / 7mm

島には多種多様な渡り鳥がやってくる。海沿いの岩場で遊んでいた2羽のムナグロ。他にも固有種のダイトウコノハズクやダイトウメジロ、ダイトウヒヨドリ、ダイトウカイツブリなども生息しているとのことだ。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / 1/2,000秒 / F4 / -0.3EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 100mm

南大東島には大小の鍾乳洞が多数存在する。そのなかでも最大規模で、かつ一般見学ができるように整備されているものが星野洞だ。

周囲に広がる畑の中に入り口があり、見学者は入場料を支払いガイド用のタブレット端末と懐中電灯を貸りて鍾乳洞に潜る。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / 1/1,250秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 12mm

星野洞のなかはとても広い空洞の地下鍾乳洞となっている。要所用要所には鐘乳石のライトアップがなされており、ダイナミックな鐘乳石の姿を見ることができる。

見学コースはしっかりとした足場が組まれているが、湿度100%にもおよぶ鍾乳洞内は、足元も常に濡れているので滑らないように十分に気をつける必要がある。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 3秒 / F2.8 / 0EV / ISO 400 / 絞り優先AE / 14mm

鍾乳洞の最深部まで下りると長い時をかけて石柱となった鐘乳石も間近に見るとこができる。普段目にすることのない異形な姿に圧倒されつつも、自然の成す不思議な造形に目を奪われる。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / 1/4秒 / F4 / 0EV / ISO 1600 / 絞り優先AE / 15mm

星野洞は現在、照明の工事などで不定期に営業されているので、見学を希望する場合は事前に管理事務所への確認を行う必要がある。また撮影を行う場合も事前確認を怠らないようにしたい。

洞内はライトアップがされているので、他の見学者の迷惑にならないように、撮影は地明かりを活かしたノンフラッシュで行おう。

南大東島・北大東島の産業遺構と史跡

南大東島・北大東島は明治時代の植民以来、農地の開拓や鉱石の発掘、太平洋戦争による疎開や戦争被害、米占領軍政府による統治など、多くのでき事により変革が起こってきた。

島内にはこれまで厳しい環境と生活の中で人々が暮らしてきたことを伝える、史跡や遺構が現在も残っている。

南大東島の西港にいまも残る旧ボイラー小屋の遺構(1920年代に建設)。港に着いた船からの荷揚げや台風が来たときに船舶を陸に揚げるために使用していたクレーンの動力源としてボイラーが使われていた。現在は廃墟となり珊瑚石灰岩で乱積みされた壁体のみが残る国指定登録有形文化財。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 1/3,200秒 / F3.5 / +0.3EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 8mm

旧ボイラー小屋は天井が全て崩落しており戸口から中を覗くと青い空が見える。崩壊の危険があるため建物内には入れないが、石組みの壁から往時の様子を想像することができる。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 1/400秒 / F8 / 0EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 7mm

南大東島・北大東島ともに開拓の第一歩が刻まれた上陸地を、島の大切な史跡とし上陸公園として保全している。この荒々しい岸壁を特別な装備もなく上陸してきたことを想像するだけでも驚愕に価する。

この写真は北大東島の上陸公園のもの。当時に敷かれた荷役用のレール跡も残っている。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 7mm

北大東島では、戦前戦中にかけて島に豊富に埋蔵されていた燐鉱石を大量に採掘産出していた時期があった。最盛期は年間2万2,000t以上もの鉱石を産出しており、島外の出稼ぎ労働者が集まり島の人口が3,000人近くにまで増えるほどだったという。

北大東島の西港には、燐鉱石を保管していた貯蔵庫の建物などが、長い年月による崩壊を続けながらも現在にその姿を残している。

燐鉱石採掘に関する遺構は現在北大東村により管理されている。建物内は崩壊の危険があるため立ち入りが禁止されているが、建物自体は自然に任された状態であり、立ち入り禁止の柵も設けられていない。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / 1/60秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 54mm

かつて島の経済的基幹にもなっていた燐鉱石採掘施設は、いまは人の気配もしない廃墟となっているが、夜空には当時と変わらぬ星空が輝く。北極星の低さに南の島に来ていることを再認識させられる。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 30秒 / F2.8 / 0EV / ISO 1600 / マニュアル露出 / 7mm

ローカルエアラインも離島の魅力のひとつ

南大東島・北大東島へ向かう空路は、那覇空港からの双発ターボプロップ旅客機が就航している。南大東島と北大東島の間も那覇空港との三角ルートで飛行しており、両島間のフライトは日本一短い約15分間の空路として、航空ファンの間では有名な路線となっている。

1997年に現在の南大東空港が開港するまでは、島の中央部に位置する旧南大東空港が島の玄関口として活躍していた。現在は島の特産品ともなっているラム酒の生産工場として、施設が再利用されている。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 1/1,000秒 / F5.6 / 0EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 7mm

旧空港施設内に設置されたラム酒の生産施設。ラム酒の原料は島内で収穫されたサトウキビだ。工場は見学が可能(要事前申し込み)。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / 1/13秒 / F5.6 / 0EV / ISO 800 / 絞り優先AE / 12mm

空港施設をそのまま工場として活用しているので、ところどころに空港だった頃の趣が残る。時折、航空ファンも訪れ見学しているそうだ。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / 1/20秒 / F5.6 / 0EV / ISO 800 / 絞り優先AE / 12mm

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / 1/80秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO 800 / 絞り優先AE / 23mm

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / 1/60秒 / F5.6 / +2.7EV / ISO 800 / 絞り優先AE / 14mm

工場見学のあとはラム酒の試飲も可能(クルマの運転手は試飲不可)。もちろんラム酒の購入もできる。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / 1/320秒 / F16 / -0.3EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 14mm

ローカル空港では施設外からでも比較的近い距離で飛行機を撮影することができる。望遠撮影に強いマイクロフォーサーズの利点も活かして、離島に就航している小型機の撮影を行うのも良いだろう。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II / 1/2,000秒 / F6.7 / -0.3EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 300mm

空港の周囲には一般車両が通行できる道路もあるので、安全に配慮し適切な停車をしたうえで、離着陸する飛行機を撮影するというのも楽しい。大きな空港では制限区域も広く、迫力ある撮影を行うのはなかなか難しいので、離島の小さな空港ならではの撮影ポイントといえる。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II / 1/800秒 / F6.7 / 0EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 300mm

小型の飛行機ではあるが、いざ目前にするとなかなか迫力のある姿を撮影することができる。航空ファンのなかには日本一短い空路への搭乗と、空港外からの飛行機撮影を目的に島を尋ねる人も多いとのことだ。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 75-300mm F4.8-6.7 II / 1/640秒 / F6.7 / 0EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 300mm

青く広い空に駆け上る小型旅客機ボンバルディアDHC-8-Q400CC(カーゴコンビ)。大型のジェット旅客機にはない、優しさを感じる姿が島の風景に溶け込む。そしてこのあと私の旅も北大東島発の航空便に搭乗し、那覇へと向かい終わりを迎えた。

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO / 1/640秒 / F8 / 0EV / ISO 200 / 絞り優先AE / 7mm

南大東島・北大東島への島旅を終えて

今回の旅では南大東島・北大東島に合わせて9日間滞在した。島内の移動は軽自動車のレンタカーを借りて、まさに朝から晩まで島を何周も走り回り撮影を行った。

どちらの島も宿は比較的島の中心部であることから、宿を拠点に島じゅうを回りやすく、どこに行くにも15分程度もあれば到着できるというスケール感が、思い立ったら撮影に向かうというスタイルにはとても都合がよかった。

幸いに天候も安定しており蒼天や星空にも恵まれた旅であったのが印象的だ。後に判ったことだが南大東島・北大東島の晴天率は沖縄本島よりも高めだということだ。青い海・青い空を満喫するには最適な島なのである。

ただし台風の季節になると大荒れになり、過去には最大風速65m/sという恐ろしいほどの強風を記録したことさえあるそうだ。

ここで思い出したのが「だいとうじま」という音の響きについてだ。おそらく多くの方がどこかで一度は耳にしていることと思う。

それは台風時期の天気概況で読み上げられる「だいどうじま、南南西の風、風力3」といったアナウンスである。

実は南大東島には大東諸島を管轄とする「南大東地方気象台」が設置されていて、台風が日本列島に接近した際のニュース等で、大東地方の概況をアナウンサーが読み上げているのだ。

そのため多くの人にとって「名前だけは聞いたことがあるるけど、行ったことがない南の島」となっているのが南大東島・北大東島なのである。そんな島をこの目で見てみたいと思ったのが、この島旅に出かけようと思い立ったおおきな理由のひとつだ。

この思いつきから始まったともいえる島旅は、じつに様々な出会いと驚きに満ち溢れた旅だった。それを語り尽くすにはもっと誌面が欲しいところだが、それはまた次回の楽しみとしよう。

私としては島で出会った人々との再会を含め、できるだけ遠くない時期にふたたび島を訪れたいと望んでいる。それほど島の魅力は大きく、そして深いものを感じている。

また、この記事をご覧になり南大東島・北大東島に興味を持たれた方がいらっしゃれば、ぜひとも両島への旅を検討していただきたい。きっと興味深い旅と撮影ができるはずだ。

最後に、この南大東島・北大東島への撮影旅を支えてくれたのが、ミラーレスカメラのOM-D E-M1 Mark IIとマイクロフォーサーズレンズのシステムだったという点にも注目したい。

ご覧いただいた一連の作品のように、画質はどのシステムのデジタルカメラにも負けないほど優れ、夜間の星撮りにおいても、明るい開放絞り値を持つマイクロフォーサーズレンズとの組み合わせは、期待以上の高いパフォーマンスを発揮してくれる。

そのうえで船舶や小型旅客機など、限られたサイズや重量の荷物しか携行できない旅撮影においても、写真の仕上がりに妥協することのない機材セレクトが可能だ。

また今回は掲載しなかったが、島で出会った人々を捉えたスナップ撮影などでは、コンパクトサイズのカメラならではの、カメラを向ける際に与えるプレッシャーの少なさという利点もある。

まさに一期一会の旅撮影にはぴったりなシステムであると言えるだろう。これらの理由から、私は今後の旅でもマイクロフォーサーズシステムのカメラを携えて赴きたいと思っている。

撮影協力:北大東村
撮影協力:南大東村
撮影協力:南大東村観光協会
撮影協力:星野洞
撮影協力:株式会社グレイスラム
撮影協力:安里デザイン

礒村浩一

女性ポートレートから風景、建築、舞台、製品広告など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーの講師を担当。デジタルカメラの解説や撮影テクニックに関する執筆も多数。近著「被写体別マイクロフォーサーズレンズ完全ガイド」(玄光社)、「家電批評 一眼カメラの選び方がわかる本 2017」「家電批評 デジカメ&ビデオカメラの選び方がわかる本 2018」(晋遊舎)など。EIZO公認ColorEdge Ambassador。