新製品レビュー

ソニーα6500(実写編)

撮りすぎるくらいサクサク快適な連写性能

装着レンズは、Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS

ソニーα6500は、APS-Cサイズの2,420万画素センサーを搭載したミラーレスカメラだ。昨年3月に発売されたα6300の基本コンセプトを受け継ぎながら、5軸手ブレ補正の内蔵や液晶モニターのタッチパネル化、バッファメモリの増強、シャッターユニットの改良、メニューUIの一新などを図っている。

新製品レビュー:ソニーα6500(外観・機能編)~待望のボディ内手ブレ補正とタッチパネル操作に対応!http://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/newproduct/1033926.html

画質面では、撮像素子のスペックは既存モデルα6300と同じながら、画像処理アルゴリズムの最適化によって向上した、中感度から高感度域の描写に注目だ。前回の外観・機能レビューに続き、今回は実写レビューをお伝えしよう。

手ブレ補正

同社APS-Cミラーレスでは初めて、光学式5軸手ブレ補正をボディに内蔵したことは、α6500最大のトピックだ。

手ブレ補正非搭載のレンズ装着時は5軸のすべてをボディ側で補正し、手ブレ補正搭載レンズ装着時は、角度ブレ(ピッチ/ヨー)をレンズ側で、残り3軸をボディ側で補正するようになっている。

ここでは、手ブレ補正搭載レンズである標準ズームVario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSSを使用して、その効果をチェックしてみた。

α6500 / Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS / 1/4秒 / F4 / 0EV / ISO400 / マニュアル露出 / 70mm

結果は、両手でしっかりとカメラを構え、慎重にシャッターを押した場合、焦点距離16mm側でシャッター速度1/2秒を、70mm側でシャッター速度1/4秒をそれぞれブレなしで撮影できた。条件によって違いはあるが、3.5~4.5段分の効果は確実に感じられた。

高感度

感度をISO6400にセットし、ショーウィンドウを眺める2人の後ろ姿をスナップ。高感度ノイズリダクションは初期設定の「標準」を使用。暗部から中間調にかけて、ザラザラとした輝度ノイズが生じているが、高感度スナップの写りとして特に気になるほどではない。筆者の用途では実用レベルだ。

α6500 / Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS / 1/400秒 / F5.6 / 0EV / ISO6400 / 絞り優先AE / 23mm

最高感度(拡張設定)のISO51200で撮影。かなり暗い水槽だったが、1/30秒のシャッター速度によって被写体ブレを最小限に抑えることができた。画質はノイジーで細部はつぶれ気味だが、掲載サイズが小さな用途なら役立つときもあるだろう。

α6500 / Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS / 1/30秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO51200 / 絞り優先AE / 16mm(アクアパーク品川で撮影)

動画

動画は、画素加算のない全画素読み出しによる4K記録に対応。サイズは3,840×2,160ピクセル、フレームレートは30pまたは24p、最大ビットレートは約100Mbpsで、ファイル形式はMP4となる。実写では、精細感が高く、奥行きを感じる4K映像を堪能できた。(アクアパーク品川で撮影)



新機能として、動画からの静止画切り出しに対応した。4K動画の場合、約800万画素相当の静止画をカメラ内で生成できる。操作は、動画を表示した上で、再生メニューの「動画から静止画作成」を選んで行う。また、付属ソフトPlayMemories Homeを使って切り出すことも可能だ。

4K動画から切り出した静止画(アクアパーク品川で撮影)

作品

ドライブモードを連続撮影に、シャッター速度を1/60秒にそれぞれセットし、馬の動きをぶらして躍動感を強調。最高速の連続撮影「Hi+」(約11コマ/秒)では画面表示がワンテンポ遅れるが、連続撮影「Hi」(約8コマ/秒)なら、タイムラグなしで映像を表示しながら連写ができる。こうした横方向に移動する被写体などフレーミング重視の撮影では、Hiモードのほうが使いやすい。

α6500 / Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS / 1/60秒 / F14 / 0EV / ISO100 / シャッター優先AE / 70mm(馬事公苑で撮影)

乱舞する鯉を高速連写し、その中から配置のバランスのいいカットを採用した。高速連写はとても便利だが、調子に乗って多用しすぎると撮影後のセレクトに結構な手間がかかってしまう。無駄撃ちは避けたい。

α6500 / Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS / 1/2000秒 / F4 / 0EV / ISO800 / シャッター優先AE / 28mm

標識の上に歩行者が重なるタイミングを狙って真俯瞰から撮影。レリーズタイムラグが比較的短いので、意図した瞬間を捉えることは容易だ。

α6500 / Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS / 1/320秒 / F4 / +1EV / ISO1600 / シャッター優先AE / 70mm

中華様式の装飾扉をズームのワイド端で切り取った。小さなキズやホコリまできっちりと再現され、立体感のある描写が得られた。持ち運びが楽な小型軽量ボディなので、こうした散歩スナップ用にもうってつけだ。

α6500 / Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / マニュアル露出 / 16mm

液晶モニターのチルト可動機構を生かし、展示車のホイールにローポジションから迫った。タッチパネル操作によって、AFエリアをダイレクトに移動できる点も便利だ。タッチの反応はやや鈍いが、その分不用意にAFエリアが切り替わるなどの誤操作は少ない。

α6500 / Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS / 1/125秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / マニュアル露出 / 16mm

シャッター音が小さくなり心地よい

連写はAE/AF追従で最高約11コマ/秒と高速。しかも、連続撮影可能コマ数は、JPEGエクストラファインで233枚、RAWで107枚と非常に多い。実際の使用では、書き込みに待たされることがまったくなく、極めて快適に高速連写を楽しめた。

連写とAFが高速なだけでなく、各種のボタンやダイヤルの反応、メニュー操作、液晶表示、EVF表示など操作全般がきびきびとしている点が気に入った。

加えて、シャッター音が従来よりも静かで、シャッターショックが小さく抑えられていることも操作の心地よさにつながっている。

液晶モニター上の情報表示を完全にOFFにできないことや、個人的に使いたい機能をボタンに割り当てできない点など操作の細かい部分に要望はあるものの、全般的な使い勝手は良好といえる。

背面操作部がやや窮屈であることは、機動性重視のカメラであることを考えれば納得できる。一方、グリップの大型化によってホールド性が向上したことはありがたい。

画質は、被写体のディテールまでを正確に再現する細部表現力と、暗部から明部までの滑らかな階調性、ナチュラルで見栄えのいい発色を確認できた。今回の使用レンズVario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSSは周辺画質にややもの足りなさが残るが、中央部のシャープネスは高く、取り回しにも優れている。

高感度については、ノイズが目立たないように低減されており、APS-Cサイズセンサー機としては良質な写りだ。35mmフルサイズ機に比べると、高感度画質が一歩劣るのは仕方ないところ。

その代わり、フルサイズ機のα7シリーズよりも一回り小さくて軽いボディと、よりスピーディな操作レスポンスはα6500ならではの大きな価値だ。スピードと画質、機動性の3つをすべて重視する人にとっては、選択の有力候補になるだろう。

撮影協力:アクアパーク品川
撮影協力:馬事公苑

永山昌克

広告スタジオを経て、1998年よりフリーランスのフォトグラファー。以後、主に雑誌やウェブ、広告の分野で活動。得意分野は都会のスナップ。写真展に「チャイニーズ・ウエスタン」(銀座ニコンサロン)、著書に「写真の構図&アングル練習帳」(ソーテック社刊)などがある。