交換レンズレビュー
SIGMA 135mm F1.8 DG HSM | Art
Artシリーズで最高レベルの解像感 寄れるのも◎
2017年5月8日 07:00
今年のCP+のシグマブースで話題となっていたSIGMA 135mm F1.8 DG HSM | Artが発売された。実は筆者も早々に手に入れている。今回はポートレート作品で本レンズの魅力に迫ってみたい。
発売日:2017年4月7日
実勢価格:税込15万円
マウント:キヤノンEF、シグマSA、ニコンF
最短撮影距離:87.5cm
フィルター径:82mm
外形寸法:91.4×114.9mm
重量:約1,130g
デザインと操作性
135mmの単焦点レンズというと、今では手にされたことがない方も多いだろう。しかしちょっと前まで、135mmレンズは望遠レンズの入門的な焦点距離として位置づけされていた。
それだけ望遠レンズとして扱いやすく、それでいて、中望遠とは違う“望遠的”な効果が得られる、ということだ。
ではポートレートでは……というと、ポートレートでも使い易い焦点距離だと思う。使い初めこそ戸惑うし、85mmレンズに馴染んでいる方ほど、そう感じることが多いと思うが、望遠系に属しながら、200mmレンズほどモデルとの距離を取らずに、また開放F値もF2前後の大口径が揃い、大きなボケの中でモデルを浮かび上がらせることができ、ポートレート撮影での相性はいい。
となると、ポートレートでは85mmか135mmか、という選択に迫られることになる。
結論から申すと、状況説明となる背景を残してのボケを取り入れての作画意図なら85mmが向いているだろう。また85mmなら、ある程度モデルと近距離を保てるため、コミュニケーションをとり続けることができる(もっとも、こうした使い勝手の良さが、85mmの“ポートレートレンズ”と呼ばれる所以ではあるが)。
一方、圧縮効果を効かせた大きなボケ感の中でモデルを浮かび上がらせたい時は135mmだ。背景がごちゃごちゃした場所での撮影で、背景をスッキリ整理したい時も135mmがいい。このように用途によって使い道が別れるので、一概にどちらか、とは決めかねる。ただ、どちらも撮影者が欲するパフォーマンスを見せてくれるので、正直申すと「どちらも欲しい!」だ。
そして今回の135mmF1.8 DG HSMだが、開放値F1.8の大口径。フィルター径は82mmと鏡筒自体も大きい。重量は1,130gと、135mmレンズとしてもかなり重い部類(ちなみにSIGMA 85mm F1.4 DG HSMも同じ1,130g)。
しかし、レンズ全体にウエイトがかかる感じでフロントヘビーな感覚はなく、今回撮影に使用したEOS 5D Mark IIIとのバランスはよい。縦位置グリップを装着した方がバランスそのものはよくなるのだが、カメラ+レンズの総重量が増えてしまうこともあり、私はグリップなしでも撮影したが、苦に感じなかった。
デザインは、これまでのArtシリーズと同様のデザインを踏襲。AF/MF切替スイッチとフォーカス切替スイッチは左側に配置。
同梱フードは丸型フード。装着するとそれなりの迫力だ。
ファインダーを覗いて飛び込む大きなボケがモデルを一層清々しく浮き立たせる様は、シャッターを切ることを楽しくさせてくれる。
レンズ構成は10群13枚。特殊低分散ガラスであるSLD(Special Low Dispersion)ガラス、FLD(“F”Low Dispersion)ガラスを前群に、各2枚づつ使用。特にFLDガラスは分散性が極めて小さく、異常分散性が高い「蛍石」と同等の性能を持つ、透過率に優れた低分散ガラスだ。これらを適切に配置し、優れた描写性能を引き出している。
作品
まずは中央部の画質から見ていくことにする。絞りはF4に絞って撮影した。一言で申せば「抜群のキレ」だ。ピントが合っている中央のニットの部分を繊細に写し出している。画面隅に目を移して、ボケの間から覗く上着の柄や隅の葉もきちんと解像されていて素晴らしい。
街角でスナップ風に撮影。絞りは開放F1.8。こうした建物の影に入って、やや光の乏しい条件でも、開放F1.8のおかげで、低感度のまま撮影できる。望遠らしい圧縮感の中に見える大きなボケだ。背景のボケの質は柔らかで、なめらか。ピント面はシャープで被写体をキリッと浮き立たせるので、このレンズで撮影すると、いっそうモデルが浮かび上がって見えてくる。
奥行きのある場所で、葉のボケ具合を観察しながらの撮影。絞りはF1.8開放。ピントはモデルの手前の目(彼女の右目)に合わせている。135mmなので前ボケも大きいのは当然、後ろのボケ同様の柔らかなボケが味わえる。前ボケで距離感を作るにはもってこいだ。
最短撮影距離である87.5cmで撮影。絞りは開放F1.8。135mmでここまで寄れるのはありがたい。ちょっとしたマクロ的な撮影も可能だ。ただ深度が浅いので、すぐにピントが外れてしまう。ライブビューか、最短撮影距離にセットしたまま、撮影者自身が前後に体を動かして微調整するのがいいだろう。ピント面はとても確認しやすい。そのピント面はシャープだがギスギスした感じはない。
絞り開放からきちんと解像され、その上で大きなボケの中で被写体を浮かび上がらせることができる。薄氷のような薄いピント面ではなく、厚みがあるピント面なので、開放でもしっかりとピントが合っている印象に加え、ファインダー内でもそれを確認できる。仕事では、そのことが撮影上とても重要。開放でこれだけ撮影できると、とても使いやすいのだ。
全身を入れながら背景を取り込む構図で撮影。望遠らしく全身いっぱいの構図だと、状況を説明するには背景がボケすぎてしまう。これだけの余裕を持って全身を取り込むと、望遠らしい圧縮感で背景を引き寄せて、ボケ+状況説明の中、モデルが浮かび上がる。絞りは開放F1.8。
点光源をボカしての玉ボケを意識。画面周辺部は流石にレモン型になるものの、許容範囲だろう。ポートレートにおいては、マイナスには感じない。玉ボケそのものは均一的で、縁取りは全く見られない、綺麗なボケだ。
まとめ
描写はこれまでのArtシリーズ同様、透明感溢れるもの。絞り開放からシャープでキレがあり、解像感は非常に高い。やや厚みのあるピント面なので、ファインダー内でピントを確認しやすく、開放から使い易くなっている。
逆光時の撮影でもゴーストやフレアは感じられず、不満はなかった。AFはとても静かで正確。撮影中はもちろん、撮影後にPCで改めて画像を見直しても、不満らしい不満は全くと言っていいほど見つけられなかった。
褒めすぎと言われてしまいそうだが、これが使用しての実感だ。現在ラインナップされているArtシリーズの中でも、解像感は最高と言っていい。
135mmという焦点距離は、ポートレートでは85mm時よりも背景を狭く写し込むので、背景をどう「一部的」に切りとれるかが作画の鍵。不慣れなうちは戸惑うも、しばらく使いづつければすぐに感覚をつかめるはず。そうなるとレンズそのもののポテンシャルは猛烈に高いので、撮影が楽しくなる。ファインダーを覗きながら、撮影のテンションがとても高くなるレンズだ。
モデル:鈴木海那