ミラーレス向けZEISSレンズ、その魅力と実力を探る
第1回:ZEISS新潮流「Batis」「Loxia」とは
AF vs MF、有機EL vs 距離目盛…キャラクターの違う2シリーズを俯瞰する
(2016/5/12 08:00)
歴史あるレンズブランドとしてご存知のCarl Zeiss。Carl Zeiss(以下ZEISS)には現在、ミラーレスカメラ向けに4つのレンズラインナップを揃えている。
1つ目は、ソニーブランドで販売されるSony/ZEISSのEマウントレンズ。
2つ目は、APS-Cフォーマットの“Touit”と呼ばれるシリーズ。ソニーEマウントとフジフイルムXマウント向けがラインナップされている。
3つ目が、35mmフルサイズ対応の“Batis”と呼ばれるEマウント向けシリーズ。
そして4つ目が、同じく35mmフルサイズ対応の“Loxia”。こちらもEマウント向けである。
この連載ではこれらのうち、35mmフルサイズ対応のBatisとLoxiaシリーズを見ていくことにする。
シリーズ名 | フォーマット | マウント | AF/MF |
Touit | APS-C | Eマウント Xマウント | AF |
Batis | 35mm | Eマウント | AF |
Loxia | 35mm | Eマウント | MF |
実写には、ソニーのα7R IIを使用した。
多彩なレンズを楽しめるソニーα7シリーズの魅力
ソニーのα7シリーズは、世界で初めて35mmフルサイズセンサーを搭載したレンズ交換式ミラーレスカメラだ。ベーシックなα7、高画素のα7R、高感度のα7Sという3機種体制を確立し、現在ではそれぞれ2世代目となるα7 Ⅱ、α7R Ⅱ、α7S Ⅱへと進化を遂げている。
ミラーレス特有のフランジバックの短さから、マウントアダプターを介して多彩な他社製レンズを楽しめるのも特徴。35mmフルサイズ対応のレンズを、35mmフルサイズの画角のまま撮影できるのだ。ミラーレスカメラで多いAPS-Cセンサー搭載モデルやマイクロフォーサーズボディでは味わえない特色であり、交換レンズ好きにはたまらないシリーズといえるだろう。
また本連載で扱うBatisやLoxiaのように、ソニー純正のレンズではないものの、Eマウントを採用し、マウントアダプターを使わずそのまま撮影が楽しめるレンズも増えてきた。しかも2世代目のα7 Ⅱ、α7R Ⅱ、α7S Ⅱは、いずれもボディ内手ブレ補正機能を搭載。手軽にフルサイズの世界を味わえるミラーレス機となっている。
Batis……Zeiss独自の有機的デザインにAFを搭載
Batisシリーズは、特徴的なデザインを持つEマウント用AF単焦点レンズだ。マウントアダプターを使うことで数多くのレンズを装着できるα7シリーズだが、ソニー純正以外の35mmフルサイズ対応レンズでAFが使えるのは、このBatisだけとなる。
また、レンズ情報をボディとやりとりしており、収差の補正にも活用されているのはもちろん、きちんとExifにも情報が記録される。この点も、マウントアダプターを介した撮影では実現できない。
斬新なスタイリングとα7ボディとのマッチングも良好で、意外にも手に馴染み撮影しやすい。
実際にボディに装着して手に取ると、レンズ鏡筒の上にある有機ELディスプレイに目がとまることだろう。電源をオンにするとZEISSロゴが浮かび上がり、撮影時は合焦距離を表示するほか、被写界深度も数字表示で示してくれる。遠い被写体の場合は被写界深度をカメラからの距離で、近い被写体は合焦したポイントからの距離で表示する。
表示設定は、フォーカスリングを回転させて行う。最短撮影距離から時計回りにリングを1回転させると、表示の単位をm(メートル)とft(フィート)に切り換えることが可能。無限遠の位置から反時計回りに1回転させるなどして、表示モードのオンオフや、MFおよびDMF時だけ表示するよう設定できる。
面白いのは、遠距離と近距離とで被写界表示が異なるところだ。遠距離では被写界深度の範囲を表示し、近距離では合焦位置からの深度範囲を距離で表示するのだ。
ここからは、先日発表されたBatis 2.8/18を含め、3本のBatisについて簡単に解説する。
Batis 2.8/18
Batis 2.8/18は、対角99度を誇るシリーズ中最もワイドなレンズだ。
フィルター径は77mm。フードを装着すると大柄のルックスになるが、実際に手にすると約330gの重さを感じない。
光学系はDistagonタイプの10群11枚構成となっており、特殊低分散ガラスレンズ、非球面レンズを用いて良質の写真を手にすることができる設計だ。
シリーズ共通の防塵防滴の金属鏡筒、マウント部のシーリング、有機ELディスプレイも施されている。
発売日 | 2015年5月20日 |
希望小売価格 | 19万4,000円(税別) |
焦点距離 | 18mm |
開放F値 | F2.8 |
レンズマウント | Eマウント |
AF機構 | あり |
レンズ構成 | 10群11枚 |
最短撮影距離 | 0.25m |
フィルター径 | 77mm |
外形寸法 | 78×95mm(ピントリング最大径×レンズキャップ含む全長) |
重量 | 330g |
Batis 2/25
25mmというZEISSらしい焦点距離を持つ本レンズは、Distagonタイプの8群10枚構成。対角82度という画角は、ストリートフォトグラフィーから風景まで幅広く活躍しそうだ。明るい開放値F2もうれしい。
発売日 | 2015年8月6日 |
希望小売価格 | 15万1,000円(税別) |
焦点距離 | 25mm |
開放F値 | F2 |
レンズマウント | Eマウント |
AF機構 | あり |
レンズ構成 | 8群10枚 |
最短撮影距離 | 0.2m |
フィルター径 | 67mm |
外形寸法 | 78×92mm(ピントリング最大径×レンズキャップ含む全長) |
重量 | 335g |
Batis 1.8/85
開放値F1.8の明るい中望遠レンズだ。ポートレートからスナップショットまで、印象的なボケが楽しめるだろう。光学系はSonnarタイプの8群11枚構成で特殊低分散ガラスレンズも採用。フローティング設計となっている。
このレンズのウリは、光学式手ブレ補正機能を搭載しているところだ。光量が少ないシーンでも安心して撮影できるのが心強い。もちろん、ボディ側の手ブレ補正機能にも対応しているので、α7 Ⅱシリーズとの組み合わせで威力を発揮する。
発売日 | 2015年8月20日 |
希望小売価格 | 14万500円(税別) |
焦点距離 | 85mm |
開放F値 | F1.8 |
レンズマウント | Eマウント |
AF機構 | あり |
レンズ構成 | 8群11枚 |
最短撮影距離 | 0.8m |
フィルター径 | 67mm |
外形寸法 | 78×105mm(ピントリング最大径×レンズキャップ含む全長) |
重量 | 475g |
Loxia……Exif情報やボディ内補正に対応する技巧派MFレンズ
Loxiaも3本のレンズがラインナップされている。同じZEISSのミラーレスカメラ用レンズながら、キャラクターはBatisと大きく異なる。
Loxiaは、MFを採用したコンパクトなEマウント用レンズ。絞りリングを搭載しているので、ピントと同様に絞りもダイレクトに操作でき、撮影する楽しみを味わえる。写真を撮る、という行為を大切にしたいフォトグラファーに、ピッタリのレンズシリーズである。
一見オールドレンズのようなルックスなのだが、キチンとレンズ情報をボディとやりとりしているので、Exif情報の記録にも対応するほか、ボディ内で設定する各種収差補正にも対応する。フォーカスリングを回すと自動的に視野が拡大するところも、オールドレンズとは異なる現行Eマウントレンズならではの利便性だ。
Loxiaシリーズは動画撮影にも配慮して、絞りリングのクリックを滑らかにすることが可能だ。バヨネットにある調整ネジを付属のツールで操作すればスムーズに絞りの操作ができるようになる。
Loxia 2.8/21
コンパクトながら凝縮感のあるレンズ本体は、いかにも写りが良さそうなオーラがでている。
11枚9群構成のDistagonタイプで、異常部分分散性の特殊ガラス製レンズと非球面レンズを多用。
軽すぎず重すぎないフォーカスリングは適度な粘りがあり、じっくりと正確なフォーカシングを可能にしてくれる。
ボディに装着してフォーカスリングをいじくっているだけでもいい気分になれるはずだ。
発売日 | 2016年1月22日 |
希望小売価格 | 19万4,000円(税別) |
焦点距離 | 21mm |
開放F値 | F2.8 |
レンズマウント | Eマウント |
AF機構 | なし |
レンズ構成 | 9群11枚 |
最短撮影距離 | 0.25m |
フィルター径 | 52mm |
外形寸法 | 62.1×85mm(ピントリング最大径×レンズキャップ含む全長) |
重量 | 394g |
Loxia 2/35
約63度というやや広めの画角を持つLoxia 2/35。オールマイティに使える画角と明るさが心強い。
光学系はBiogonタイプで、レンズ構成は6群9枚のとなっている。ソリッドでZEISSらしいレンズのルックスからは、硬派なイメージを受ける。
発売日 | 2014年12月12日 |
希望小売価格 | 13万6,300円(税別) |
焦点距離 | 35mm |
開放F値 | F2 |
レンズマウント | Eマウント |
AF機構 | なし |
レンズ構成 | 6群9枚 |
最短撮影距離 | 0.3m |
フィルター径 | 52mm |
全長 | 62.1×66mm(ピントリング最大径×レンズキャップ含む全長) |
重量 | 340g |
Loxia 2/50
F2という明るさを持つ標準レンズだが、非常にコンパクトにまとまっている。50mmということもあり、ポートレートからスナップ、そして風景まで活躍の場は広そうだ。
他のLoxiaと同様に適切なスムーズさを持つフォーカスリングと、節度感のある絞りリングを備える。ともに指がかりがよく、フォトグラファーの入力に対してしっかりと応えてくれるような仕上げがうれしい。
発売日 | 2014年10月24日 |
希望小売価格 | 9万7,300円(税別) |
焦点距離 | 50mm |
開放F値 | F2 |
レンズマウント | Eマウント |
AF機構 | なし |
レンズ構成 | 4群6枚 |
最短撮影距離 | 0.45m |
フィルター径 | 52mm |
外形寸法 | 62.1×66.2mm(ピントリング最大径×レンズキャップ含む全長) |
重量 | 320g |