特別企画
ついに国内発表!「ZEISS Batis 2.8/135」最速レビュー
鮮烈な解像力を誇る魅惑の中望遠レンズ AFや手ブレ補正も検証
2017年4月20日 14:34
カールツァイスからシリーズ4本目の”Batis”が登場した。この35mmフルサイズのソニーEマウント用レンズ「ZEISS Batis 2.8/135」は、手ブレ補正機構を内蔵するAFレンズだ。この記事でとりあげるBatis 2.8/135の市場投入によって「Batis 2.8/18」、「Batis 2/25」、「Batis 1.8/85」と、カールツァイス画質をAFで超広角から望遠まで味わえるようになった。
フルサイズEマウントレンズとしての機能をフル装備
35mmフルサイズのソニーEマウント用レンズとして登場した”Batis”シリーズ。前述のとおり、超広角の「Batis 2.8/18」、広角の「Batis 2/25」、中望遠の「Batis 1.8/85」、そして今回お目見えとなる焦点距離135mm、解放F値2.8のBatis 2.8/135とラインナップを拡充してきた。
このシリーズはソニーフルサイズEマウント用レンズとして専用設計され、高速かつ正確なAF、防塵防滴構造、そして斬新でユニークな有機ELディスプレイ採用の距離指標と、ハイパフォーマンスながら独特な存在になっている。
Batis 2.8/135はアポ・ゾナー設計。高次元な14枚/11群のレンズ配置と特殊低分散ガラスレンズ採用、フローティング機構とあって絞り開放から安定した描写と高次元の色収差補正を実現した。
フィルター径は67mmで、全長は120mm(レンズキャップ含まず)、重量は614gとハンドリングしやすいサイズ感だ。最短撮影距離は0.87m。
今回のインプレッションではソニーα7R IIに装着して撮影したが、ソニー純正レンズと同等のフィーリングでAF撮影ができた。測距エリアやコンティニュアスAF、そして瞳AFにも対応し快適にシャッターを切ることが可能だった。
また手ブレ補正機能も同様で、角度ブレ(Pitch/Yaw)の補正はレンズ側で、シフトブレ(X/Y)と回転ブレ(Roll)の補正はボディ側で制御されるので、低照度下での撮影もISO感度を上げずにクリーンな写真を得る事ができる。
Batis 特有のデザイン・機能も継承
レンズ外観はすでにおなじみとなったフォルム。先端部方向に緩やかに放たれるような独特のルックスだ。ひと目で新世代のカールツァイスレンズだと認識できる美しいデザインとなっている。
手にしてみると意外なほど軽い。ボリューム感があるのでズッシリと重たいのではないかという印象を受けたが、いい意味で裏切られた。
フォーカスリングはホールド性が高いラバーが施してあり、マニュアルフォーカス時でも適切なフォーカシングが期待できる。トルク感もいい案配で好感が持てる。
マウント部にはラバー製のスカートが装着されている。これによりマウント部からの水分やホコリの侵入が防げるのだ。あらゆる環境で撮影できるのがBatisシリーズの特徴でもある。
距離指標はこのシリーズの特徴ともいえる有機ELディスプレイを採用している。電源ON時に”ZEISS”と表示されるのがニクい。デフォルトではマニュアルフォーカス時に距離などが表示されるようになっているが、フォーカスリングを回して、ON/OFFや表示内容を変更することが可能だ。詳しくは過去記事を参照していただきたい。
フードは樹脂製。確実な節度感があってしっかりとレンズに装着でき、フード部分を持っての撮影でも外れる心配はなさそうだ。
フードを装着すると大きく重たく見えてしまうが、実は意外と軽量なBatis 2.8/135。α7R II単体に装着してもバランスがいい。フード付け根部分をホールドすれば難なく手に馴染み、被写体を追うことができる。
ポートレートなど縦位置で瞳AFを多用する場合は、縦位置グリップVG-C1EMを装着するとシックリくる。バッテリーも2本挿入できるし、長時間の撮影もラクラクだ。
検証……ソニーαの機能をどこまで引き出せるのか?
その2:瞳AF
バストアップのモデル撮影などではα7R IIの瞳AF機能を使用した。同機能をコントロールリング内の中央ボタンに割り当て、それを押しながらシャッターを切れば、モデルの瞳にキチンとフォーカシングしてくれた。まるで純正レンズかのように違和感なく動作するBatis 2.8/135はとても心強かった。
焦点距離135mmがもたらす画角とは
135mmは望遠域独特の望遠および圧縮効果を活かした絵作りが楽しめる。中望遠の85mmとあまり違わないのではないか? という印象を持たれるが、実は50mmの差が大きい。ググッと凝縮された描写は、望遠レンズのそれである。
被写体によって劇的な効果を生むことができるだろう。咲き誇る桜の木々を撮ったが圧縮効果はもとより、花々の解像感や立体感もすこぶる良好である。
135mmでのモデル撮影はとても楽しい。全身をフレーム内に収めると、背景との距離にもよるが、グッとモデルが浮き出して撮れるからだ。もちろん絞りを開くという条件がつくが、Batis 2.8/135ならば開放でも描写力が高く、正確なAFでピントもバッチリである。
桜をバックにジャンプするモデルの躍動感を見事に捉えてくれた。衣装の質感も見事だ。
咲き誇る桜の中にモデルに立ってもらった。手前には大振りの枝、背景には桜と緑を配置。絞り開放で瞳AFを使ってシャッターを切る。ススッと正確に合焦し、手前および背景もスムーズなボケ味で撮れた。Batis 2.8/135はハイライトが粘るので、明るめな作風をイメージ通りに演出しやすいのがいい。
単焦点の135mmというと使いどころが難しいという印象を持たれがちだが、モデル撮影はもちろん、風景やスナップまでオールマイティーに活用できる。街に溢れる風景を切り取って楽しんでもらいたいものだ。
カールツァイス魅惑の描写を、フルサイズでAF、かつ手ブレ補正機能付きで堪能できるのだから、ソニーα7系ユーザーは幸せである。
そしてZEISSの描写力
Batis 2.8/135はボケ味も美しい。フォーカス面の緻密な葉脈の描写とリアルな色再現も見事だが、背景のスムーズで優しいボケ味も魅力的である。被写体と背景との距離をコントロールして、上質なボケ感を味わえるのが楽しい。
絞り開放でも周辺光量の低下はあまり見られないが、このカットのようにF5.6まで絞ってやれば、ほぼフラットでクリーンな描写を見せてくれる。フォーカスを合わせた新緑の葉と、工事現場の対比をクールに写しとることができた。
色再現も良好である。小雨がぱらつく生憎の天候だったが、公園内に咲く花々の鮮やかな様子をキャプチャーできた。濁りもなく印象通りの再現力だ。絞り開放のカットだがシャープでクッキリ感溢れる描写がいい。このような静物、テーブルフォト撮影でも威力を発揮することだろう。
Batis 2.8/135 は逆光にも強い。モデルにソックスとローファーを脱いでもらい、川の中に入って自由に遊んでもらった。川面が太陽を反射する逆光のシーンを連写で狙ったが、AFの精度と、やや収差が出るもののコントラストが低下しない写りがうれしい。T*コーティングの恩恵だ。クリアな反射が入った脛部分の肌、チェックのスカートのパターン、ブラウスの繊維感など安定の写りだ。反射の玉ボケも清涼感を演出してくれた。
絞り開放から安心して使えるBatis 2.8/135だが、1〜2段絞るとより描写性能が極まってくる。コントラストと色味が高まり、まるで視力がとてもよくなったかのような描写を見せるのだ。
大木に寄り添うモデルをやや遠目から狙う。トンネル効果になるよう手前に木々と草を入れて前ボケを作った。このくらいのワーキングディスタンスになると、望遠および圧縮効果とともにググッと被写体が浮き出してくる。これが135mmの醍醐味である。Batis 2.8/135 ならこのシチュエーションで夕方まで粘り、よりドラマチックな写真を撮ることも可能だろう。なによりもよく効く手ブレ補正機能と、確実なAF、そしてヌケ感のある描写があるからだ。
まとめ
Batis 2.8/135は全方位的にスキのないレンズだという印象を持った。俊敏なAF、効果抜群の手ブレ補正機能、極まった解像感とシャープネス、これらを35mmフルサイズのソニーEマウントで楽しめるのは素晴らしい。しかも防塵防滴構造である。どんな被写体、シチュエーションでも135mmならではの描写を、誰でも味わえるような性能がうれしい。
少し長い視線のレンズを手に入れて、深い写真表現を探求してみてはいかがだろうか。いや、合計4本となったカールツァイスのBatisシリーズを、超広角から望遠まですべて揃えて撮影を楽しんでみるのもいいかもしれない。
制作協力:カールツァイス株式会社