特別企画
OMDS新レンズ実写レビュー「12-40mm F2.8 PRO II」&「40-150mm F4.0 PRO」…そして赤城耕一が感じたOM-1の魅力とは?
2022年3月19日 07:00
満を持して発売されたOMデジタルソリューションズのフラッグシップ機OM SYSTEM OM-1。まもなく2つの新しいM.ZUIKO DIGITALレンズも発売される。
そこで今回は当サイトの連載、赤城耕一の「アカギカメラ」でおなじみの赤城耕一さんに、2本の新レンズとOM-1を実際に触って感じた魅力を解説してもらった。
※本企画はデジタルカメラマガジン2022年4月号より転載・加筆したものです。
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人気の大口径標準ズームが現代仕様に改良
1本目は、II型となったコンパクトな大口径標準ズームレンズ。9群14枚(EDレンズ2枚、EDAレンズ1枚、HRレンズ2枚など)のぜいたくなレンズ構成。小型ながらも優れた描写力を発揮。傷や汚れが付きにくいフッ素コーティングを最前面のレンズに採用していることでクリーニングしやすい。
35mm判換算で24-80mm相当の画角をカバー。F2.8でも十分にコントラストが高くシャープな描写で、完全な実用になる。テレ端ではボケ味も生かせる。
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街角スナップには理想的な焦点域であり、これ1本で完結できてしまう。大きさは35mmフルサイズ用の標準レンズよりも小さいのではないだろうか。
絞りや撮影距離に関係ない描写力。PROシリーズレンズの共通した思想でもあるが、II型に進化したことでさらに信頼度が高くなった感がある。
ズーム全域で最短撮影距離が20cmというのも素晴らしく、撮影倍率は最大で0.6倍相当(35mm判換算)だから簡易マクロ表現も可能。深度合成にも対応する。フォーカスクラッチ機構を内蔵することもスナップ派にはうれしいが、不要ならメニューからクラッチを無効にすると思わぬトラブルを防げる。
最大撮影倍率0.6倍相当というのはハーフマクロの世界だ。実焦点距離が短いからこそ実現するマイクロフォーサーズ用レンズの特性でもある。マクロレンズキラーと呼ぶべきか。
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軽快に扱える80-300mm相当の望遠ズーム
もう1本は、小型の望遠ズームだ。筆者が愛用しているM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROと焦点域は同じ、明るさこそF4に抑えてあるが、全長約99mm(使用時約124mm)、重さはF2.8 PROの約半分の382gと大幅な小型・軽量化を達成したのが本レンズだ。ズーム全域で開放F4の望遠ズームレンズでは世界最小・最軽量という。
防塵・防滴・-10℃耐低温性能。レンズ構成は9群15枚(EDレンズ2枚、スーパーEDレンズ1枚、HRレンズ1枚など)とコンパクトなのに豪華だ。
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街スナップで望遠レンズの使用頻度が少ないのは重たいし目立つから。携行に便利なレンズは新しい世界を見せてくれる。階調のつながりの良さはOM-1とレンズ描写の協力によるものか。
焦点距離的に室内撮影には向かないと思われるかもしれないが、最短撮影距離は70cmだから問題なく使用可能。FL-900Rフラッシュを窓越しに発光。ハイライトの描写が美しい。
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROと組み合わせると、35mm判換算で24mmから望遠300mmまでズーム全域F4.0のコンパクトなシステムになる。
使用しないときは鏡胴を沈胴させればさらに短くなり、収納、携行性が良くなる。使用時はインナーズーム方式を採用しているので全ての焦点域で長さの変化がない。どの焦点距離を使っていてもホールディングバランスに優れていることは特筆すべき点だ。
実焦点距離が短いため望遠域でも被写界深度は深く、パンフォーカスを得やすい。優れた描写力だ。コンパクトで気持ちにも余裕ができる。
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長足の進歩が引き出すマイクロフォーサーズの魅力
これは原点回帰というものであろうか。自分と常に共にある魅力的なカメラとは何か。その本質を根本から見直すのだという気構えを感じとることができたのが、このOM SYSTEM OM-1だ。
1972年に登場したオリンパス OM-1(発売当初はM-1)は従来の一眼レフの大きく重い、シャッターショックが大きいという三悪の欠点を克服した画期的なカメラとして登場した。この栄光のカメラと同名を冠した、21世紀のOM-1も、高画質、高性能化追求の名のもとに肥大化してしまったカメラたちとは異なり、マイクロフォーサーズフォーマットの特性を最大限に生かした方向性を打ち出すことで個性的で美しい小型軽量のミラーレスカメラとなった。
片手でグリップしただけでそのホールディングバランスから道具としての魅力が伝わる。新しい「裏面照射積層型」へと進化したセンサーに高性能の画像処理エンジン、長足の進歩を遂げたOM-1は、間違いなく驚異的な進化を見せていた。
道具としての実用性と撮影領域を広げる多機能性を兼ね備えた1台
従来からのOM-DあるいはPENシリーズユーザーなら、この新しいOM-1は高感度だけでなく通常撮影時の画質向上も実感できるはずだ。画素数は変わらないはずのE-M1XやE-M1 Mark Ⅲと画像を比較しても、クリアでかつ繊細な雰囲気を感じるのであるのは素晴らしい。
個人的にも高画素の追求は無駄とは言わないまでも、筆者の仕事では大きなアドバンテージを感じないこともあるが、高画素だから高画質であるという単純な考え方で画像を評価しない方が良いのではないかと考えている。どうしても高画素が必要ならば、本機では三脚ハイレゾショットで撮影することで、撮影条件は限られるものの、約8,000万画素相当の超高解像度による撮影も可能なので必要な人は適宜利用すれば良いだろう。
感激したのは手ぶれ補正が最高8段になったこと。肉眼で見られる状況ならば、おおげさではなく、三脚は不要ではないかと思えるほど。大口径レンズを使えば星景さえも手持ちで撮れるのではと思わせる。手持ち撮影の機動力を広く応用できることはすごいし、高感度ISO設定時の画質の大幅な向上で、撮影状況を選ばない万能性すら感じられるようになった。
手にした瞬間にこれはイケると思わせるカメラを手にしたのは久しぶりのことだ。OM-1は筆者の仕事ではオーバースペックだし、多機能なのですべてを使いこなせはしないかもしれない。撮影者があれこれ工夫をせずともすべてカメラが勝手にやってくれるように錯覚してしまうほど優れている。優れたカメラは仕事の道具として利便性と効率を向上させる装置であり、プライベートな写真制作では夢を拡張する装置である。
いずれにしろOM-1は使用することで間違いなく従来とは異なる写真制作ができるのはという期待が持てるのがいいし、その責を果たすはずだ。また OM-1はその始まりからフラッグシップである。今後のOM SYSTEM全体の拡充への期待も高めてくれる。
モデル:ひぃな
制作協力:OMデジタルソリューションズ株式会社