特別企画

Adobe Premiere Proでショートムービーに挑戦(編集編)

映像初心者向け 編集ポイントを過程を交えながら紹介

Adobe Premiere Pro(以下Premiere Pro)を使って「Vlog」編集に挑戦する本コーナー。前回はクリップの制作や撮影の過程に主眼を置いて説明していったが、後半パートとなる今回は、実際にPremiere Proをどのように活用して編集作業を進めていったのかをお伝えしていく。ただし、前編でも紹介しているとおり、筆者が動画編集初心者であることは予めお断りしておきたい。複雑な映像編集には不慣れであるため、動画制作初心者による、同じくこれから映像編集を始めていきたいと考えているスチルカメラマン諸氏に向けた内容・構成となっていること、また使用しているパソコン環境がMacであるため、Windowsとは若干インターフェスや操作内容が異なる可能性ががあることも併せてご了承いただければと思う。今回はVlogとしてショートムービーをつくっていったが、まさに編集作業は試行錯誤の連続だった。幸いにもアドビから正統な編集作業をレクチャーしてもらうこともできたので、実際の編集手順とともに筆者の苦悩を交えてお伝えしていきたいと思う。

制作の準備をしよう

ではさっそく始めていこう。まずはPremiere Proを起動し、ホーム画面(スタート画面)を立ち上げる。新たに編集を行う場合は、画面左側にある[新規プロジェクト]をクリックする。編集作業中であれば[プロジェクトを開く]をクリックすればOKだ。

新たに編集を行う場合は、ホーム画面(スタート画面)の左上にある[新規プロジェクト]をクリック。編集作業中であればその下の[プロジェクトを開く]をクリックすると編集画面に切り換わる

新しくプロジェクトをつくる場合は[名前]を記入する必要がある。プロジェクトのファイルを保存する場所を選んだ後で[OK]をクリックすれば、画面がワークスペースに切り変わり、同時に名前を付けたプロジェクトのファイルが設定した場所につくられる。今後このプロジェクトの編集を行う際は、ホーム画面上に表示されたプロジェクトリストから該当するプロジェクトをクリックするか、プロジェクトのファイルを直接クリックするだけで編集作業に遷移できる。

編集の土台が整ったので、続けて素材を並べていこう。手順はPremiere Proのワークスペース左下にあるプロジェクトパネルにこれから編集するクリップを入れていくだけ。事前にクリップをひととおり見て、どのクリップを使用するか、またクリップのどの部分を使用するかを記したメモをつくっておくと、頭の整理にもなるし、何より作業の進行がスムーズになる。

編集画面の左下にあるプロジェクトパネルに編集で使用するクリップや静止画を入れていく。ファイルを読み出す方法のほか、ドラッグ&ドロップでもパネルに入れることができる

クリップの配置とポイント

素材の準備が整ったら、いよいよ編集作業に入る。主な作業はタイムラインパネル上で進めていくことになる。

タイムラインとは、言ってみれば“メインの作業台”である。クリップをプロジェクトパネルからドラッグ&ドロップで直接タイムラインパネルに入れていこう。尺の長いクリップはワークスペース左上のソースパネルで適宜切り出してからタイムラインパネルに入れていくと、後々の工程が楽になる。

数本のクリップをタイムラインパネルに入れて、クリップの大まかな切り出しと繋ぎ合わせを行った

クリップの切り出しにはツールボックス内のリップルツールやレーザーツールなどを使った。タイムラインパネル上でトラックを調整し、使用する部分を切り出していく。作業時は都度プログラムパネル上に表示されるプレビューを見ながら、必要に応じて調整を加えることの繰り返しだ。ちょっと根気のいる作業だが、ツールやショートカットキーの扱いに慣れるに従い、作業の手際が良くなっていくことが実感された。

ツールボックスにあるリップルツールやレーザーツールなどを使い、タイムラインパネルのトラックを調整し、使用する部分を切り出していく。編集の基本的な作業だ

・リップルツール
複数の連続したクリップの内、いずれか一つの長さを変更すると、残りのクリップが自動的に移動して隙間をうめてくれる。これによりクリップとクリップの間に不要な間が入ることを防止できる
・レーザーツール
一つのクリップを任意の位置で分割できるツール。尺のあるクリップを分割したり、不要な部分をカットしたりしたい時に利用できる

視覚効果でアクセントをつける

ひととおりクリップを繋いだところで、クリップとクリップの間に入れる視覚効果「トランジション」を入れていった。

ワークスペース最上段にある[エフェクト]から[ビデオトランジション]を選択。さらに[ディゾルブ]を選択し、そのなかの効果をドラッグ&ドロップでトラックのクリップとクリップの間にひとつひとつ入れていけばOKだ。

クリップとクリップの間に入れるトランジションは、ワークスペース最上段にある[エフェクト]から[ビデオトランジション]を選択。さらに[ディゾルブ]を選択し、そのなかの効果をドラッグ&ドロップでトラックのクリップとクリップの間に入れていく

個人的にはシンプルで自然な感じのトランジションが好みなので(=あまり凝ったことができないので)、今回の映像では、ほとんどの部分で[ビデオトランジション]の[クロスディゾルブ]または[ディゾルブ]を使っている。トランジションの長さは細かく調整できるので、場面に応じて使い分けていった。操作はクリップ長さを調整する時の操作と同じように、トラック上のトランジションの帯をドラッグすることで調整できる。

トランジションを入れたトラック。キャプチャーでは[クロスディゾルブ]を入れている

今回、特に難しかったと感じたのがタイトルの挿入だった。文字入れ自体はワークスペース最上段にある[グラフィック]から行えるものの、クリップがうまくホワイトアウトせずに難儀してしまった。

気持ち的にはクリップの終わり近くにタイトルスーパーがあらわれ、クリップのみがホワイトアウト。そのまま白バックでタイトルが残り、しばらくして次のクリップがフェードインという流れにしたかったのだが、途中で画面が黒くなってしまうなど、どうにもうまくいかない。

対処方法を様々に試みていったところ、今回は真っ白のカラーマットをつくり、最初のクリップと次のクリップの間に挿入することで、何となく思っていたイメージに近づけることができた。これについては近いうちに映像関係者に実際の作り込み方を聞いてみようと思うが、出来上がった映像を見る限りでは、そう不自然な印象にはなっていないのではないかと思う。

タイトル部分のトラック。「海へ」の文字を入れた[グラフィック]を[クロスディゾルブ]でクリップにフェードイン。クリップは直後に[ホワイトアウト]し、白のカラーマットへ切り替わる。今度は文字がフェードアウトしていき、同時に次のクリップに切り換わる

静止画を動画中で印象的に使うには

映像のシメとして、今回は静止画を入れてみた。当初クリップとクリップの間に入れようかと思ったが、何となく無理やりな感じがしたので、映像の最後にまとめて挿入することにした。

こちらもクリップ同様、ドラッグ&ドロップで直接タイムラインパネルに入れていく。ここで一つ問題が発生。挿入した静止画がクロップされてしまうのである。原因は8,192×5,464ピクセルの画像を、3,840×2,160のシーケンスに挿入したためだ。

静止画を入れる場合、そのままだと解像度が合わず画面に入りきらない。そこでメニューバーの[クリップ]から[ビデオオプション]を選択し、さらに[フレームサイズに合わせる]をクリックすると画面に合ったサイズへと切り換わる

そこでタイムラインパネルの該当する静止画のトラックを選択した後、メニューバーの[クリップ]から[ビデオオプション]を選択。さらに[フレームサイズに合わせる]をクリックして、静止画を画面に合ったサイズにしていった。この操作と考え方は動画を挿入する場合でも同じ。ちなみに静止画と静止画のトランジションはクリップと同じ方法で挿入する。

静止画を入れたトラック。クリップ同様ドラッグ&ドロップで挿入する。同じくトランジションを入れ、スムースに静止画が切り換わるようにしている

ただ静止画をタイムライン上に配置しても単調になってしまうので、やはり静止画にも変化が欲しいと考えた。そこで、[エフェクトコントロール]から「モーション」に入り[位置]を使い、静止画の位置を動かしてみた。例えば右上から左下方向に静止画の位置を動かしたときは、[位置]にある2つ並ぶ数字を調整して行う。静止画1枚の尺の長さにもよるが、あまり大きく数字を変えなくても、それなりの効果が得られるように思えた。

静止画の位置を動かすには、[エフェクトコントロール]から「モーション」に入り[位置]を選択。最初に右の画面のトラックにある再生ヘッドを左に置き、◁○▷の○をクリックして開始地点とする。次に[位置]にある2つ並ぶ数字を変更。今回は大きくは変えてない。最後に動きの終了地点に再生ヘッドを置き、◁○▷の○クリックした後、◁○▷の右にある矢印をクリックし数字を元に戻す

映像のシメといえばエンドロールだ。入れ方は「グラフィック」から「エッセンシャルグラフィックス」を選び、あらかじめつくっておいたテキストを流し込むだけ。同時に「レスポンシブデザイン」の「ロール」にチェックを入れれば、“らしい”感じに仕上がる。

さらにエンドロールがはじまるのと同時に最初のテキストが出てきたり、最後の文字が表示されたままエンドロールが終わることのないようにしておくこともポイント。「オフスクリーン開始」と「オフスクリーン終了」にもチェックを入れておこう。文字の書体や色などはスーパーと同様だ。エンドロールの速さはタイムラインパネル内の同トラックの長さで調整する。エンドロールが出来あがったら、通しで動画をチェック。それらしい雰囲気になったことに安堵する。

エンドロールをつくる際は、[レスポンシブデザイン]の[ロール]にチェックを入れる。さらにエンドロールに最初の文字がいきなり出てきたり、最後の文字が表示されたままエンドロールが終わったりしないために、[オフスクリーン開始]と[オフスクリーン終了]にもチェックを入れる

音源選びはイメージを左右する

音入れに関しては、撮影した動画中によからぬ会話などが入っていることや風切音が酷かったことなどから音情報は全て削除し、「Adobe Stock」から音源素材(楽曲)を購入することにした。Adobe Stockはクラウド上にある、いわばストック素材集で、音源素材もそのひとつ。ライセンスフリーの素材なので使用に際して版権を気にする必要がないのも嬉しいポイントだ。

ちなみに、書体に関してもアドビでは版権フリーで使用できる「Adobe Fontsライブラリー」を提供している。日本語書体も豊富に揃っているので、都度挿入する文字にバリエーションをつけたい場合も活用できることだろう。

Adobe Stockに用意されている楽曲。[ムード]と[ジャンル]のなかにはそれぞれ楽曲が雰囲気などに応じて細かく分類されており、よりクリップに合った楽曲が選びやすい

それでは手順を紹介していこう。まずは元の音声を消去するところから。映像トラックの「鍵」アイコンをクリックし「ロック」をかけた後、音声のトラックを選択しdeleteキーで削除すればOK。次にパネル最上段の「オーディオ」をクリックすると、「エッセンシャルサウンド」というパネルが画面右に現れるので、その中から使いたい楽曲を選んで、タイムラインパネルまでドラッグ&ドラッグすれば、BGMが適用される。使用したいBGMが確定したら購入して使用が可能となる。

音声のトラックにも「オーディオトランジション」を使いトランジションを入れることができる。ここでは楽曲の始まりや終わりで適用して音を耳に馴染みやすくしていった。ここまでくるとほぼVlogは完成だ。あらためて全編を通してみると、筆者個人のスキルの低さによる物足りなさは感じるものの、楽曲を付加しただけでぐっと映像らしく感じられてしまうのは不思議である。

クリップと同様、音声にもトランジションを備える。[コンスタントゲイン]は一定の速度で音量が小さくなっていく。[コンスタントパワー]は音が小さくなる速さが次第に速くなるもので、よく使われるオーディオトランジション。「指数フェード」は音が小さくなる速さが次第に遅くなるもので余韻の残るフェードだ
ちょっと映画っぽく無音の部分もつくってみた。キャプチャーのとおり音声トラックがない

映像のプロやVloggerの立場からすれば拙いと思われるだろう動画となったが、筆者の動画編集のスキルと編集にかかった時間を考えると、これが今のところ自分の限界だろう。今後時間があればさらに編集を重ねていき、より効果の高い表現など仕込んでいければと考えている。もちろんその時は構成なども変わっている可能性はありそうだ。時間軸のある動画の編集は、静止画の編集作業にくらべて、はるかに複雑であり、またその方法、手順等は無限だ。そのため一筋縄ではいかず、編集ソフトの多機能なこともあり写真愛好家にとって難しく感じられるものである。

しかしながら経験を積み、さらにアドビ社をはじめ数多く公開されているチュートリアルビデオなどを参考にすれば、「Photoshop」の扱いに慣れたときのように、より多彩な表現の動画が楽しめるように思える。静止画用カメラのなかには今や超高精細な8Kに対応するものも存在する。この機会に動画の撮影と編集にトライアルしてみることをオススメする。

オマケ

本記事中でふれたショートカットキーの活用。以下に、覚えておきたいショートカットキーをまとめた。Premiere Proの体験版は1週間試用できるので、ちょっと触ってみようと思われたら、活用してもらえればと思う。

Adobe Premiere Proで覚えておきたいショットカットキー

再生および停止:「スペース」キー
1フレームバック:「←」キー
1フレーム進む:「→」キー
1クリップバック:「↑」キー
1クリップ進む:「↓」キー
早送り:再生時に「L」キーを押す(押すごとに加速する)
逆再生:再生時に「J」キーを押す(押すごとに加速する)
停止:「K」キー

制作協力:アドビ株式会社
モデル:亀井理那(ワンダーヴィレッジ所属)

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に専門誌等の記事を執筆する。