特別企画

Adobe Premiere Proでショートムービーに挑戦(撮影編)

ポートレート撮影をVlog風の演出に仕上げる

最近特に耳にする機会が増えてきた「Vlog」。ソニーやパナソニックなどからそれに特化した機能を持つカメラもリリースされ、“Vloger”から人気を博している。ご存知の読者も多いことと思うが、VlogとはVideo Blogの略で、その名のとおり動画版ブログのこと。動画でブログを配信する手法自体は以前からあり、そう珍しいものではないものの昨年からの新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた外出自粛などがきっかけで急速に認知が進んだジャンルでもある。今回は、そうしたVlog風の映像編集に挑戦する。アプローチは、多くの写真愛好家と同じようにスチルの撮影からスタート。合間あいまで動画の撮影をすることで素材をつくっていった。これらの素材をAdobe Premiere Proを使って、テーマに沿ったショートムービーに仕上げていくことが目標だ。前編となる今回は、撮影の道中記として、どのようなアプローチで静止画と動画を撮りわけていったのかを紹介していきたい。

なぜPremiere Proが必要なのか?

Adobe Premiere Proは、YouTubeクリエイターはじめ、最近では『シン・エヴァンゲリオン劇場版』など、国内はもとよりハリウッドの映画制作でも使われている映像編集の世界で定番となっているソフトだ。

インターフェースは以前紹介したように、映像編集ならではの操作体系となっているが、PhotoshopやLightroomなどと同じように柔軟に編集作業ができる点が大きな魅力だ。読者の皆さんもよくご存知だろう、これらAdobe Creative Cloud製品との連携の取りやすさも、今回編集ソフトとしてAdobe Premiere Proを選んだ理由のひとつとなっている。

また同ソフトを使うもうひとつの理由は、Adobe Stockという付帯サービスに版権フリーの音源が豊富に揃っていることにもある。編集の自由度だけではない、映像作品を手がける上では、音の存在も大きなポイントだからだ。これら音源は権利関係を気にすることなく使用できる。もちろん一貫して提供されているソリューションであるため、ソフト上から移動することなく様々に試せることも便利なポイント。ワークフローを妨げないという点でも、そのメリットは計り知れない。

後編では、編集自由度が高いが故に筆者が苦労した点や、映像制作に便利なサービスの使い勝手など、編集のポイントをお伝えしていく予定だ。

コンセプト

素材となるクリップの撮影に向けて選んだ撮影地は湘南。藤沢海岸や稲村ヶ崎など、海を主な舞台に撮影を進めていった。撮影のテーマは「サーファーガール」。と言ってもサーフィンをする女の子ではなく、サーファーの彼氏を持つ女性が、その彼氏のいる海辺へ会いにいくというストーリー、という想定。ここですでにブログぽくない内容だけれども、どうかそこは笑って大目に見てやってほしい。筆者自身Vlogerらしい軽快な喋りを苦手としているからだ。

撮影では、最初にモデルと打ち合わせ。筆者の考えている「サーファーガール」の構成らしきものを話し、イメージを共有してもらう。これは静止画撮影と同様に動画の撮影でも欠かすことのできないものだ。撮影テーマに関する認識をモデルに持ってもらうと表情や動きなど撮影意図に沿ったようなものとなりやすく、またこちらのリクエストに対しても的確に対応してくれやすいからである。なぜ「サーファーガール」としたかなど自分の考えなども伝え(話の内容は恥ずかしいのでここでは記さない)、十分にコンセンサスをとったうえで撮影に入った。

簡単なアイデアスケッチを用意しておくと、モデルとのイメージ共有もスムーズ。モーションの運び方なども提案してもらいやすい

撮影で使用した機材

今回の撮影では、静止画の撮影もいっしょにおこなっているので、フットワークを重視して一部の撮影シーンを除いて手持ちで撮影していった。

使用したカメラはキヤノンのEOS R5。その機能や完成度については、あらためての説明を要することはないだろう。レンズは単焦点レンズを中心にしている。RF35mm F1.8 MACRO IS STMとRF50mm F1.8 STM、RF85mm F2 MACRO IS STMといったRFマウントレンズ3本に加えて、EF16-35m F4L IS USMを用意。いずれのレンズも滑らかな映像をしっかりと描きだしてくれた。

記録画質と設定についても説明しておこう。編集の際にクロップすることも考えて記録は4Kにセット。最終的なアウトプットは再生機器を選ばないフルHDとすることが決まっていたが、クロップ使用であったり、映像の美しさを考慮(あくまでも個人的な印象ではあるけれども、4KからフルHDに書き出したほうが画像は綺麗なことが多いように思えたからだ)して、撮影自体は4Kで進行することにした。とはいえ、必然的にデータ量が大きくなるので、編集時にPC側に相応のパワーが求められるようになることには注意が必要だ。

撮影で特に意識したこと

さて、さっそく撮影の状況とともに、どのようなカットおよび映像を撮影していったのかを紹介していこう。

撮影で特に意識したのは、ハイキーとまではいかないものの明るめの画面としたことだろう。動画のタイトルのとおり海を舞台とする女の子をテーマとしている動画なので当然明るい画面が似合うだろうとするベタな考えからだ。白トビいっぱいの映像である。また、ピントやアングルも常にカッチリしたものではなく肩の力を抜いたアバウトなものに。カメラを手持ちしたことによる揺れ(手ブレ)とともにVlogでよくあるようなユルい写りとしている。なお、動画撮影の合間にインサートで使う静止画も撮影しているが、こちらも動画同様“白トビ警察”から怒られそうなハイキーな絵柄としている。

映像撮影の流れを紹介

映像は江ノ島駅に到着したシーンからスタート。ワクワクした雰囲気を演出。

駅から橋を渡って海に向かう。このときはまだ気持ち的に落ち着いた感じ。

地下道を抜けて地上へ。早く会いたい気持ちが一気に溢れ思わず走り出してしまう。

海に出た。ここで待ち人と合流する流れだ。

ようやく待ち人と出会え、これまでの思いを語る。

インサートする雑感(風景など)も押さえておく。

撮影日は暖かさがあり、多くのサーファーの姿がみられた。テーマに沿った映像でもあり、映像中のアクセントになる色も得られた。

デジカメWatch的にカメラを持つシーンも撮影。今回用意したカメラは富士フイルム「X-Pro3」。

湘南といえば江ノ電。アクセントして画面のなかに入れてみた。また、大きなボケを生かした絵をつくってみた。

動画撮影時のイメージづくりに向けて

静止画の撮影は、動画の撮影に夢中になるとついついおざなりになりやすかった。そのため撮影の後半では、最初に静止画を撮りその後動画を撮るようにしたが、結果的に静止画の撮影が動画の予行練習のような感じとなってよかったように思える。

前述しているとおり、静止画も動画同様ハイキーな仕上がりとしている。なお、EOS R5は静止画と動画がピクチャースタイルやホワイトバランスなど別個に設定できるため、両方の仕上がりの雰囲気を合わせたいときは気をつけておきたい。

制作協力:アドビ株式会社
モデル:亀井理那(ワンダーヴィレッジ所属)

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に専門誌等の記事を執筆する。