特別企画

ペンタックス「J limited 01」とはどのようなカメラなのか(その3)

ポートレート“ペンタキシアン”からみたフルサイズペンタックス

ペンタックス・J limitedプロジェクトチームによるカスタマイズ一眼レフカメラ「J limited 01」について、2回にわたって特徴やデザインを掘り下げてきました。では実際にペンタックス製一眼レフカメラを長年愛用しているフォトグラファーは、本機をどう評価したのでしょうか。J limitedプロジェクトチームにお話を聞いていった際にショールームを訪れた、ポートレートフォトグラファーの岡本尚也さんにお話を聞いていきました。K-1、K-1 Mark IIを愛用している岡本さんは、本機についてどのように考えているのでしょうか。

――J limited 01をはじめて見た時の印象をお聞かせください。

J limited 01の直線と曲線が交差したデザインには、イタリアの高級スポーツカーメーカー・ランボルギーニを連想させる印象を抱きました。まさに好みのデザインで、格好も良い。すぐにでも使ってみたいと感じました。

――実際にJ limited 01を手にしてみた感想をお聞かせください。イメージは変わりましたか?

K-1 Mark IIと同じ感覚で持ってみましたが、特徴的なグリップの形状からか、ホールド性もかなり良くなっていると思いました。バッテリーグリップなしの縦位置撮影での安定感も増していましたから、縦位置撮影が多いポートレートでは嬉しいポイントですね。

――岡本さんは、普段からK-1 Mark IIを愛用されています。一方でAPS-C機も複数使用されていますよね。35mm判フルサイズ機ならではの良さや楽しさ、魅力とはどういったところにあると考えていますか?

APS-Cセンサー搭載機ではPENTAX KPなどをメインに使っています。35mm判換算時の焦点距離が1.5倍となるメリットを活かしたいシーンや、フルサイズ機よりもひとまわりコンパクトになるサイズ感を活かしたい場面で使用しています。

対して、フルサイズ機のメリットは、やはりそのダイナミックレンジの広さにあると思っています。APS-Cセンサーと35mm判フルサイズセンサーでは物理的なサイズが異なりますから、ボケ味だけでなく、階調豊かな再現性を求めるシーンでは、K-1 Mark IIに頼りきりになっています。それに35mm判フルサイズセンサーならではの豊かなデータは、現像時にも安心して扱えるところも使い分けのポイントになっていますね。

あとは、レンズ本来の画角がそのままファインダーで見えることです。K-1 Mark IIの広いファインダーは構図の整理はもちろん、とっさのマニュアルフォーカスでもピントの山がつかみやすくなっています。歩留まりの良さも自然と高まります。これはJ limited 01でも共通していますが、円窓タイプのアイピースが標準でついてくるところも「わかっているな」と、使ってみたい感をくすぐりますね(笑)。

――K-1 Mark IIではどのようなレンズを愛用されていますか? 撮影カットも拝見したいです。

最近は、HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AWを多用しています。完璧といっても過言ではないヌケのよさ、コントラストのノリ、解像感に夢中です。頻度的にはほぼ付けっぱなしといっても良いほどです。小型かつ軽量なレンズが多数揃っているレンズラインアップの中でも、大きくて重い部類に入るレンズであることは確かですが、その描写を一目でも見てしまうと、そうしたネガティブな数字的な印象はなくなります。まさに一見の価値あり。事実、私は惚れこんでいます。

以下のカットは春早々に川の土手で撮影したものです。このレンズのヌケのよさと立体感が感じてもらえるのではないかと思います。

K-1 Mark II / HD PENTAX-D FA★85mmF1.4ED SDM AW / 絞り優先AE(F1.6・1/1.250秒・-0.3EV) / ISO 100

――J limited 01はデザイン面でも凝った仕様となっています。これに組み合わせるレンズだと、どのような製品がいいと思いますか?

D FA★などの最新のレンズも良いと思いますが、やはりFA Limitedシリーズのようなクラシカルな佇まいのものも似合うと思います。最近ですと、D FA★シリーズのレンズにシルバーカラーが追加されたことが記憶に新しいですが、ボディカラーにあわせて、ファッション感覚でチョイスするのも楽しいと思います。

スカーレットルージュにFA Limitedシリーズのうち、31mmのブラックカラーを装着した状態

――岡本さんが、ポートレート撮影で一眼レフカメラを、PENTAX機を使うワケとは?

PENTAXのカメラはフィルムの頃から使っています。デジタルになってからも一貫した操作性の良さを貫いていると感じていますし、手に合っていることが一番の理由です。そして何よりも、思ったとおりの“色”を出せるカメラであることにも手放せない魅力を感じています。PENTAXのカメラというと、とにかく風景写真に目がいきがちなところがありますが、ポートレートでも健康的な肌の調子を再現してくれます。そうした懐の広さを、ぜひたくさんの人に知ってほしいです。

――ポートレート撮影でJ limited 01を使う面白さとは、どのような点にありそうでしょうか。

何よりもデザインの奇抜さでしょうか(笑)。例えば二重のペンタ部カバー。カバーを外していくと、それぞれにカメラの印象が変わってきますから、モデルとのコミュニケーション時にも話のネタになると思います。

「あれ、またカメラ変えたんですか?」とか、「実は同じカメラなんだよー」なんて掛け合いが目に浮かびます。ちょっとしたことですけど、やっぱりカメラの印象が変わるって、撮影のテンポに直結します。そういった意味でも遊び心のある機材で、色も奇抜だったりすると、撮影の内容も変わってきそうな予感があります。

――色に関するお話が出ましたが、今回J limited 01は4カラーでの展開となっています。気になったモデルはありましたか?

最初に見た時はLX75 メタリックが実用的で良いかな、と思ったのですが、せっかく色を選べるのですから、思い切ってスカーレットルージュを派手に振り回してみたいな、と思います。最初に印象をお伝えした時にも触れたことですが、いかにもイタリア車って感じで(笑)。

――J limited 01では2名の写真家モードが搭載されています。ポートレート撮影でモードセッティングを搭載するとしたら、どのようなセッティングが良さそうでしょうか。

それでは、私が実際にK-1 Mark IIでポートーレート撮影をする時にどのような設定をしているのかをお話しましょう。

そもそもの部分なのですが、まずカスタムイメージのパラメーターは「ナチュラル」でも充分に健康的な肌色が出ます。「ポートレート」モードもありますが、衣装や背景によっては、かえって色が強く出てしまう場合があるので注意が必要です。

こうした点をふまえて、カスタムイメージ「フラット」を基本に設定を調整していきます。パラメーターの「コントラスト」のみ、スライダーを右側にスライドさせて、ちょうど「真ん中の位置」にします。これだけでも、健康的な肌色になりますし、現像時の調整もしやすくなります。

この設定は、例えばカスタムイメージ「ナチュラル」で撮影して、実際の見た目よりも紫色がキツめに再現されてしまうような場面でも有効。ポートレート撮影に限らずにニュートラルな色再現が得られますから、ぜひ参考にしてもらいたいと思います。

――スカーレットルージュは、赤の発色も良くて面白いですね。ところで、本当のところ、実際に使いたいモデルはどれでしょう。

やっぱり、スカーレットルージュ1択ですね(笑)。

――一眼レフカメラでポートレート撮影をする醍醐味とは?

ミラーレスカメラと違い「ちょっと一手間」かけるという意味では玄人的な喜びがあります。それに昔から染み付いているペンタプリズムを通った像をファインダーで確認するという行為は、撮影時の気持ちも盛り上げてくれます。撮影だけではなく、所有している喜びも得られるところも、EVFにはない魅力です。

――今回のモデルはJ limitedシリーズの正式な第一弾製品ということになります。今後期待したい展開をざっくばらんにお聞かせください。

やはり、K-3 Mark IIIのJ limited化ですね。後は、今でもレンズによってはブラック・シルバーが選べる製品もありますが、カラーバリエーションのあるJ limitedレンズとかも面白いんじゃないかな、と思います。

――読者に伝えたいPENTAX製品ならではの魅力を、ざっくばらんに語ってください。

フィルム時代からKマウントを貫き、最新のカメラボディでもオールドレンズを使えるところや、操作性も一貫していて初心者でも手軽に扱えるハンドリングのよいところ。

初級機から100%の視野率をほこるファインダーであったり、ボディ内手ブレ補正機構の搭載、防塵防摘仕様など、初級機でも盛り沢山に搭載しているところは、実にユーザーフレンドリーです。

ふつう、上級機とエントリー機ではつくり分けというか、機能的な差別化が図られることが当たり前になっていますが、PENTAXの一眼レフカメラは、どれをとっても頑固なまでにファインダーの良さなどが貫き通されています。そうした姿勢を崩さないメーカーだからこそ、私も含めて根強いファンが多いのではないかなと思います。

あとは、鮮やかな発色も特徴のひとつではありますが、カスタムイメージの使いこなしも醍醐味です。自分好みの色合いに仕上げていけるところも、大きな強みだと考えています。

最新光学系のレンズも揃い、他にはLimitedレンズなどの個性的なレンズも沢山あります。焦点域が若干被っていても、欲しい・使ってみたい、となる“道具としての魅力”は、やはりPENTAXならでは。これに尽きると思いますね。

本誌:宮澤孝周