特別企画
光の質はそのままに、スマホ連動で操作性が強化された「Profoto A10」
多彩な光と影を作り出すクリップオンストロボの定番新モデル
2020年10月28日 12:00
クリップオンフラッシュの世界では、長らくカメラメーカー純正のものが性能も信頼性も最高だと捉えられていた。その認識を全く変えてしまったと言っていいのが2017年に登場した「Profoto A1」だ。
信頼性の高い電波式のワイヤレスコントロールシステムが搭載され、チャージ速度は最大発光でも約1.2秒の速さ。これまでプロ用の大型照明を主力としていたスウェーデンのProfoto社が、初めてカメラに載せて使える小型システムとして発売したものだ。
丸型の発光部が美しい光を作り出すフラッシュとして定評を得た「Profoto A1」は2019年、各動作部部の精密感やバッテリー寿命を増し、チャージ速度を1.0秒に向上した「Profoto A1X」に進化。
iPhone撮影にも対応したクリップオンストロボ「Profoto A10」 - デジカメ Watch
https://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/1278517.html
特別企画:世界初の快挙!iPhoneでモノブロックストロボを発光させる「Profoto AirX」を試す - デジカメ Watch
https://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/special/1270628.html
そして今回紹介する「Profoto A10」は「Profoto A1X」の性能はそのままに、Bluetoothを搭載してiPhoneコントロールが可能なモデルに進化して登場した。今年7月に発表された「Profoto AirXシステム」が搭載されたわけだ。
今回は、この「Profoto A10」の進化ぐあいと魅力を確かめようと人物を撮影してみた。一般的なマンションの部屋で彼女をiPhoneおよびデジタルカメラで撮影するシチュエーションと、夜景をバックにiPhoneで撮影した例を掲載している。
シンプルなiPhoneでの撮影にストロボをプラス
「Profoto A10」の基本性能は、定評のある「Profoto A1X」と同じ。シンプルな操作性も、美しい光もそのままだから安心して撮影に臨める。今回足された機能はBluetoothによるiPhoneアプリからの操作「Profoto AirXシステム」なので、まずはiPhoneでの撮影を試してみた。
iPhoneでの撮影では、「Profoto」アプリをカメラアプリとして使う。「Profoto A10」の電源を入れ、iPhoneのProfotoアプリを立ち上げると自動的に認識され、iPhone画面に「A10」という文字が現れる。ここで「Connect」をタップするだけでBluetoothによるペアリング操作は完了。あまりの簡単さに拍子抜けするくらいだ。
次にProfotoアプリのメニューから「Camera」を選択するとiPhoneが専用のカメラ画面になる。このまま使えばただのカメラアプリと同じなのだが、嬉しいのはマニュアル機能が充実していること。ホワイトバランス、ISO感度、シャッター速度がシンプルなスライドバーの選択で各々、素早くセットできる。オートのままでも、自分好みの設定を追い込んだ状態のマニュアル設定のどちらでもProfoto A10を光らせた撮影が楽しめるのだ。
最初の1カットは、日光の差し込む部屋での撮影。昼の時間帯だから、自然光のまま撮りたいところだが、実際の撮影現場では消せない室内照明があったり、窓からの光も理想的でない。
現場の光そのままに撮影した①の写真でも適切な明るさが得られているが、眼に明かりが入っておらず、全体の雰囲気もどんよりとした印象。
そこで「Profoto A10」を発光させた②の写真は一見して爽やかな印象。眼にキャッチライトが入っていきいきとした表情が捉えられ、肌のトーンも柔らかさを保ちながら適度なコントラストを持っている。
この光の固さのコントロールは「Profoto A10」の光を壁にあて、その反射光を使う「壁バウンス」によって実現している。この時はカメラから向かって左後ろの壁に向けて「Profoto A10」を発光させた。基本的に「Profoto A10」を壁から離せば離すほど壁を照らす面積が大きくなり、光も柔らかくなる。自分好みの肌再現を、「Profoto A10」を置く位置で簡単にコントロールできた。
部屋の中で木漏れ日を再現してみる
ストロボでのライティングについてよく「光をコントロールする」というが、光があれば影の演出も楽しいもの。ここでは木漏れ日っぽい雰囲気を演出するため、黒ラシャ紙に穴を開けたものを持参した。部屋の壁にこのラシャ紙をテープで貼り付け、A10の発光部周辺のリングを回して照射角をいちばん狭めて直射するというセッテイングだ。
ここでのポイントは「Profoto A10」→ラシャ紙→モデルという3者の距離関係。簡単に言えば、モデルとラシャ紙が近く、ラシャ紙とA10が離れるほど影の形がはっきりする。
今回の撮影では、モデルとラシャ紙が80cmほど、ラシャ紙から「Profoto A10」までが3mほどの距離にセッティングして撮影してみた。フラッシュの光ではあるが、窓からの日光のような雰囲気が演出できたと感じる。
夜景を背景にiPhoneで撮影
次の例は夜の橋の上での撮影。iPhoneでモデルを撮影する際、「Profoto A10」でモデルに光を当ててみる。
暗い橋の上のモデルを夜景と共に撮影。端にはオレンジ色っぽい水銀灯のような照明があるのだが、ただ撮影すると顔が暗いうえに茶褐色に肌色が偏ってしまう条件だ。
そこで「Profoto A10」に別売りの「ソフトバウンス」というライトシェーピングツールをつけて撮影。マグネット式で着脱が容易なところは「Profoto A1」「Profoto A1X」と同様だ。片手にiPhone、もう片方の手で「Profoto A10」という撮影ではあるが、腕を伸ばせる距離だけでも光の方向性がコントロールできる。
2灯のバランスをアプリからコントロールする
ここまで読んで、「せっかくハイエンドのクリップオンフラッシュを手に入れたのなら、iPhoneだけでなくちゃんとしたカメラで撮影したい!」という方も多いのではないだろうか? そして新機能がBluetoothが追加されただけ(Profotoアプリと連動するだけ)というのなら、これまでの「ProfotoA1」「Profofoto A1X」と何ら変わりない! と考えても無理はない。
確かに「Profoto A10」を1灯だけでカメラと組み合わせて使う場合はこれまでとそんなに使い勝手は変わらない。ところが2灯以上使うとなると「Profoto A10」は俄然、その威力を発揮するのだ。
「Profoto A10」には単体での販売の他に、シンプルなコマンダーである「Profoto Connect」がセットされた「オフカメラ・キット」が用意され、こちらを購入すれば実質1万円前後でコマンダーを手に入れられる。
「Profoto Conect」は一切の表示部を持たないシンプルなコマンダーなのだが、複数のフラッシュの光量をコントロールする機能が搭載されていない。だが「Profoto A10」ならばiPhoneの画面で光量の調整が可能になる。
まずTTLオートで2灯を光らせ、テスト撮影。そしてマニュアルに切り替え、あとは手元のiPhone画面で2灯の光を好きなように微調整すればいい。
今回はメインライトとして白のアンブレラを取り付けた「Profoto A10」を上側にセットし、そして下からはトランスルーセントのアンブレラを透過するように「Profoto A10」を床置きしてみた。
「Profoto A10」は「Profoto Connect」をコマンダーにして多灯でTTLオート発光させた場合、どちらも均等の光量で光るが、つけているライトシェーピングツールが違うとモデルに当たる光量は違ってくる。今回の環境では下からの光が強くお化けライティングになってしまった。
そこで「Profoto A10」の光量をiPhoneで落とし、バランスよく撮影したのが⑧の写真となる。
複数のストロボを一つの画面で、しかも遠隔操作できるメリットは大きい。細かな調整が必要となるケースの場合は特に、Bluetooth機能を搭載した「Profoto A10」が力を発揮するだろう。「Profoto A1」「Profoto A1X」との大きな違いがこの点となる。
上位モデルと組み合わせてみる
使いやすく、美しい光が得られるProfoto製品だが、このブランドが本領を発揮するのはシステムを拡張した時。「Profoto A10」はスタジオ用の大きなジェネレータータイプのフラッシュやモノブロックなどと自由に組み合わせて使え、その場合の光の色温度や質がかなり均等に揃っているので混在させても違和感を覚えないのだ。
僕は普段の仕事ではバッテリー駆動のモノブロックストロボ「Profoto B10」を使う機会が多いのだが、「Profoto B10」にも「Profoto A10」と同じBluetooth接続の「Profoto Air Xテクノロジー」が採用されている。つまりiPhoneアプリからのコントロールが可能だ。
そこでちょっとしたアクセントが欲しい場合などは光量の大きい「Profoto B10」にプラスする形で「Profoto A10」を利用できる。また、「Profoto B10」には100種類を超えるProfotoのライトシェーピングアクセサリーをダイレクトに取り付けられるのも「Profoto A10」との違いだ。
今回は「Profoto B10」に純正のライトシェーピングアクセサリー「RFi ソフトボックス 120cm Octa」をつけて黒バックの人物アップを撮ってみた。
「Profoto B10」の1灯で狙い通りの肌の質感と全体の再現できたのだが、これが例えばヘアサロンのスタイル写真であるとしたら髪の毛が背景の黒に溶け込んでしまっていることが気になる。
そこで向かって左後ろから「Profoto A10」をアクセントとして追加。細かな光量の比率もiPhoneでコントロールし、よりヘアスタイルもわかりやすい写真を別のバリエーションとして残すことができた。
まとめ
もともと「Profoto A1」のユーザーである自分なので、その進化形という今回の「Profoto A10」に大きな期待とちょっとした疑問を持って撮影に臨んだ。iPhoneとシンクロ発光できる点にも大きな可能性を感じるが、個人的に気に入ったのはやはりシステム性。2台、3台と灯数を増やしたり大型のフラッシュと組み合わせたときの光の親和性、コントロールのしやすさはとても魅力的。早速、1台購入し、カメラバッグにいつも入れておく常備機材のひとつとなった。
価格改定により手に入れやすくなった「Profoto A1X」は、気軽にこの美しい光を手に入れるのに最適だし、将来的にシステムを拡張したいと考えている人にも好適。クリエイティブなライティングの世界に、またひとつ魅力的な選択肢が加わった。
協力:プロフォト株式会社
モデル:藤原瑞月(GATHER)
ヘアメイク:齊藤沙織