特別企画

“企業案内” “求人広告”をProfoto A10で撮るには?

オフィスワーク、プレゼン、ミーティング、VIP……さまざまなケースをレクチャー

クリップオンスタイルのストロボ「Profoto A1」の発売以来、アマチュアカメラマンにも知名度が広がっているProfoto。今回はプロカメラマンが会社案内などのビジュアルを撮影するケースを想定し、同社最新のストロボ「Profoto A10」がどのように役立つのかを見ていくことにしたい。

今回は、ウエディングや企業などの撮影を数多く行っているSHUNさんを迎え、実際の撮影を通してどのようにProfoto A10を活用していくかを見聞きした。プロカメラマンはもとより、これから企業ビジュアルなどの撮影にチャレンジしようという人の参考になれば幸いだ。

SHUNさんに撮影してもらったのは企業の内観、商品、オフィスワーク、重役の4つ。いずれもProfoto A10を1灯または2灯使用している。

Profoto A10

Profoto A10は、充電池による素早いチャージ、円形発光部による優れた光質、カメラ各社のTTL対応、スマホからのコントロール機能などを盛り込んだ製品だ。キヤノン、ニコン、ソニー、フジフイルム用があり直販価格はいずれも税込13万1,780円。

ちなみに今回の撮影は、プロフォト株式会社の社内でおこなった。

内観

内観とは室内写真のこと。室内と窓からの光の輝度差が大きいことから、一般的にはストロボを使わないとうまく撮影できない。

ストロボなし
EOS-1D X Mark III / EF24-105mm F4L IS II USM / マニュアル(F4・1/40秒) / ISO 1250

まずはスタンドに付けたProfoto A10を撮影者の背後に設置。斜め上方にバウンスする「壁バウンス」で室内を照らした。その際、ストロボと壁の距離をある程度離すことが重要。壁を大きく光らせたほうが柔らかい光が得られるからだ。ちなみに、蛍光灯は黒い壁面に不自然な反射を作ってしまうので消している。これだけできれいに内観写真を撮ることができた。

壁バウンス
EOS-1D X Mark III / EF24-105mm F4L IS II USM / マニュアル(F4・1/40秒) / ISO 1250

次にもう1灯のProfoto A10を奥の通路に設置。ドアの影が出るように照射することで、日光が差し込むイメージを作ることができた。先程よりも爽やかな印象に仕上がっている。

奥にもう1灯足す
EOS-1D X Mark III / EF24-105mm F4L IS II USM / マニュアル(F4・1/40秒) / ISO 1250

このようにストロボを使えば蛍光灯や日光などの定常光に頼ることがないため、写り込みがコントロールできるほか、夜でも同様に撮影可能ということだ。ストロボ光だけなので、色が揃うメリットもある。また定常光だと三脚が必要になるが、企業の撮影では時間がないことが多いので、手持ちで撮っていったほうが短時間で済ませられる。

ストロボの光量は撮影結果を見ながら調整していくが、離れた位置にあるProfoto A10の出力はBluetoothでつながったスマートフォンで遠隔コントロールできて便利だ。これも時間の節約につながる。


◇   ◇   ◇

商品

次に、現場でその企業の商品を撮影するというケースを再現してみた。大掛かりなセットがなくてもきれいに撮る方法がある。

まずは窓辺に商品をおいて自然光のみで撮影。これでも使えないわけではないだろうが、陰影に乏しく、立体感にかける。光に方向性がなく、つまらないとも言える。

窓からの光のみ
EOS-1D X Mark III / EF24-105mm F4L IS II USM / マニュアル(F4・1/160秒) / ISO 800

次にプラスする手軽な手段としては、壁バウンスということになる。商品を置いた机を白い壁の脇においてスタンドからProfoto A10を壁に向かって発光させる。このとき自然光の影響がない露出にしておく。

このセッティングだと商品にハイライトが入るほか、陰影が付いて形もくっきりと見やすくなった。色も鮮やかに出ている。加えて、机に明るさのグラデーションが入ったので変化に富んだ1枚になった。これだと外光の変化にも影響されないで撮影できる。

壁バウンス
EOS-1D X Mark III / EF24-105mm F4L IS II USM / マニュアル(F5・1/125秒) / ISO 400

もっと手軽なのがProfoto A10をカメラに装着しての撮影。Proforo A10のためのスタンドが不要なのでさらに簡単だ。ただし、そのまま壁バウンスすると、発光部からの光の一部が直接商品に当たってしまう問題がある。それを防ぐため、Profoto A10に装着したバウンスカードを光を切るための「フラッグ」として活用している。先程の壁バウンスとほぼ同じ仕上がりにできた。

オンカメラで壁バウンス
EOS-1D X Mark III / EF24-105mm F4L IS II USM / マニュアル(F5・1/160秒) / ISO 400

あいにくバウンスするための白い壁が無い場合はどうするか? 比較的簡単な方法としてはProfoto A10にアンブレラを組み合わせる手がある。ここではOCF アダプターを利用し、Profoto A10にアンブレラ ディープ トランスルーセント Mを装着してみた。机のグラデーションも再現でき、きれいに写すことができた。注意点はライトの高さで、机にグラデーションを付ける際は低めにすると良い。

アンブレラ ディープ トランスルーセント Mを使用
EOS-1D X Mark III / EF24-105mm F4L IS II USM / マニュアル(F5・1/160秒) / ISO 400


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デスクワーク

企業ビジュアルの定番が、仕事中の社員を写したもの。地明かりだけで撮ることも可能だが、やはり光がフラットで印象的な写真にはなりにくい。

ストロボなし
EOS-1D X Mark III / EF85mm F1.8 USM / マニュアル(F3.2・1/160秒) / ISO 320

そこで、アンブレラ ディープ トランスルーセント Mを装着したProfoto A10を用意。机越しにモデルに当てて撮ることにした。稼働中のオフィスなので蛍光灯は付けたままだ。蛍光灯と窓からの外光にストロボ光をミックスする形になっている。ストロボ光は窓からの光をイメージさせるために、窓と同じ方向で高さ2mにセッティングした。人物にハイライトが入り、爽やかな印象になった。

アンブレラ ディープ トランスルーセント M越しの光を当てる
EOS-1D X Mark III / EF85mm F1.8 USM / マニュアル(F3.2・1/160秒) / ISO 500

次はモデルを横から撮るショット。背中側を照らすためもう1灯を壁バウンスで追加している。このように、2灯あるとかなり対応力が高くなる。

2灯を使いモデルの横から撮影
EOS-1D X Mark III / EF85mm F1.8 USM / マニュアル(F3.2・1/160秒) / ISO 500


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プレゼン

ホワイトボードを使ってのプレゼン風景。この部屋は右側に窓があり、かなり強い日光が入り込んでいる。そのため、ストロボ無しだと画面右下が白トビしてしまう。

EOS-1D X Mark III / EF85mm F1.8 USM / マニュアル(F3.2・1/250秒) / ISO 100

そこで2mのスタンドにProfoto A10を付け、日光と同じ方向となる右側の壁でバウンスさせた。これで全体を明るく写せた。Profoto A10には同梱品のバウンスカードを装着。画面右下の太陽光のラインは敢えて残すセッティングにすることで、爽やかな感じを出している。

EOS-1D X Mark III / EF85mm F1.8 USM / マニュアル(F3.5・1/250秒) / ISO 100

続いては2灯を使ったバージョンだ。天気が悪い、あるいは夜を想定したもので、外光の影響をカットして撮影した。部屋の左と右にそれぞれ1灯ずつセッティングする。左の壁バウンスがメインだが、これだけだとフラットになってしまうので、右のアンブレラでアクセントを入れている。左側のメインストロボはバウンスカードをフラッグにして、モデルに直接光が当たるのを防いでいる。

外光のない環境で2灯を使用
EOS-1D X Mark III / EF85mm F1.8 USM / マニュアル(F3.2・1/160秒) / ISO 100

2灯撮影のバリエーションとして、右側のストロボをモデルの斜め後方から当てたもの。輪郭にハイライトが入り、よりシャープな印象になった。

モデルの斜め後ろから光を当てる
EOS-1D X Mark III / EF85mm F1.8 USM / マニュアル(F3.2・1/160秒) / ISO 100


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ミーティング

ここでは2人が向き合っているケースで、一方のモデルにフォーカスしたショットを撮る。

Profoto A10にはOCF アダプターを使用してOCFソフトボックス 60x90cmを装着。OCFソフトボックス 60x90cmを被写体に向けてセッティングすると一見良さそうだが、画面全体が明るくなって人物が目立たなくなってしまう。

OCFソフトボックス 60x90cmを下向けにセット
EOS-1D X Mark III / EF85mm F1.8 USM / マニュアル(F3.2・1/160秒) / ISO 400

そのため、ここではOCFソフトボックス 60x90cmを上に向けることで、フォーカスする人物の中心を照らすことができるようになる。上に向けるのは、光の芯を外してより柔らかい光を使う意味もある。誤解しないでほしいのは、天井や壁へのバウンスを狙っているわけではないということだ。

OCFソフトボックス 60x90cmを上向けにセット
EOS-1D X Mark III / EF85mm F1.8 USM / マニュアル(F3.2・1/160秒) / ISO 200

バリーションとして、手前の人物を大きくナメたショットを撮影する。ナメショットは人物の後ろから撮る必要があるが、スペースがない現場が多い。ここでは狭い室内を想定して、メインのストロボを壁バウンスにした。もう1灯は人物の輪郭にハイライトを入れる目的で、人物の奥側にセッティング。横顔や髪にハイライトが入り、より人物が目立つようになった。

バリエーション
EOS-1D X Mark III / EF85mm F1.8 USM / マニュアル(F3.2・1/160秒) / ISO 200

VIP

ストロボを使うと、社長など重役のプロフィール写真も印象的に撮影できる。ここではVIPらしい重厚なイメージを狙う。

OCFソフトボックス 60x90cmを付けたメインストロボを画面左側から被写体に近づけて設置する。このとき、OCFソフトボックス 60x90cmをやや下に向けることで、上半身を明るくして顔に目が行くようにする。

もう1灯はアンブレラ ディープ トランスルーセント Mを装着して、モデルを中心にメインライトの対角位置から照射する。これによってモデルの輪郭にハイライトが入り、立体感がでる。光がフラットにならないようにするのが人物撮影のコツだ。

OCFソフトボックス 60x90cm+アンブレラ ディープ トランスルーセント M
EOS-1D X Mark III / EF85mm F1.8 USM / マニュアル(F3.2・1/160秒) / ISO 100
モデル:プロフォト株式会社 オリアン・ペッテション社長


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まとめ

いくつかのシーンで作例をご覧いただいたが、ストロボの有無で写真の印象が大きく変わることがおわかりいただけたのではないだろうか。

1灯だけでも効果的だが、SHUNさんが強調していたのが「2灯あると安心」ということ。まず、1灯だけだと故障したときに困るので、予備の意味でも2灯はどうしても必要になる。

作画の面でも2灯あればできることが増える。SHUNさんがおすすめしていた考え方は、「メインの1灯を壁バウンスやOCFソフトボックス 60x90cmなどで大きめの光源にし、もう1灯を後方からのアクセントとして使う」というものだった。

SHUNさんによると、Profoto A10は光量も十分。スマートフォンでコントロールできる点も便利という。TTLモードの出力値をマニュアルモードに移せる機能もあり、今回もTTL+調光補正の値をマニュアルモードにして微調整という使い方をしたそうだ。

さらにOCF アダプターを使えば、同社のモノブロックストロボなどと同様の感覚で扱える。今回再現したような企業写真の現場の場合、Profoto A10を2灯用意することで十分対応できるだろう。

制作協力:プロフォト株式会社

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。