特別企画

ベルボンの新型雲台「FHD-66A」が野鳥撮影で使いやすい!

100-400mmや150-600mmクラスに最適 2万円台前半の価格も◎

ベルボンが10月に発売した超望遠レンズ・ビデオ兼用雲台「FHD-66A」を野鳥写真家の戸塚学さんに試して頂いた。

FHD-66Aは、昨今人気の100-400mmや150-600mmといった超望遠レンズに最適な雲台だ。これまでの高価な動画用雲台とはうって変わって、実売2万円台前半と買いやすい価格も実現している。果たしてその実力は?(編集部)

見た目とのギャップに驚いた!

FHD-66Aのファーストインプレッションは「なんだかなぁ……」だった。はっきり言って見た目がチープ。たぶんパン/チルト軸が同軸機構になっている樹脂製のホイールが大きく感じたためだろう。

さて使ってみると……見た目とのギャップに驚いた。いいのだ、すごくいいのだ。久しぶりに「欲しい」と思わせる雲台に出会えた!

これがそのFHD-66A。

500~800mmクラスの超望遠レンズを載せるための雲台は大きく重いこともあり、高価だがその分カウンターバランス機構やオイルフリュードで滑らかな動きと安定した使い勝手の物が多く、超望遠レンズには必要不可欠といってもいい。

しかしワンランク下のレンズ、それもズームレンズを使っているカメラマンにはちょうどいい雲台がなかったといってもよかった。その不満を持っているカメラマンにFHD-66Aはまさにぴったりの雲台になるはずだ。

100-400mmや150-600mmクラスに最適

推奨積載質量が5kgということは、私が使うキヤノンEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM+EOS 7D Mark IIで2,470g。

また最近よく使われているタムロンSP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2との組み合わせでも約2,920g、シグマの150-600mm F5-6.3 DG OS HSM|Contemporaryなら計2,840gとなり、十分耐荷重に余裕がある。

じつはこの余裕が撮影に大きく影響するので甘く見てはいけない。

EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMとEOS 7D Mark IIでの使用例。
SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2とEOS 7D Mark IIでの使用例。

FHD-66Aは滑らかな動きだけではなくしっかりと固定もできるので、岩の上で休息するオシドリのペアをスローシャッターで狙ってみた。被写体ブレを起こしやすいので、何枚も撮影してから後で選んだのがこれだ。

EOS 7D Mark II / EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM / 1/2秒 / F22 / -1.7EV / ISO 100 / 絞り優先AE / 400mm

あわせて、このクラスでカウンターバランス機構が付いていることがすごい! カウンターバランスとは雲台の中に特殊なスプリングが内蔵され、カメラが傾くのを打ち消す方向に働く。

要するに「カメラがお辞儀する」ことを防いでくれる。それだけでなくカウンターバランスの反発力が約3kgなので軽い機材や不要な場合はカウンターバランスをOFFにできる。

雲台底部にカウンターバランスのON/OFFスイッチを備える。

どういう風に使うかを書いておこう。まずレンズの三脚座にクイックシュープレートを装着。そして雲台にセットする。

この時点で機材が前か後ろに倒れないようにスライドさせてセットする。ズームレンズは一番伸びた状態でセットすると撮影がしやすくなる。うまくバランスが取れない場合は、三脚座にセットするシュープレートの位置を変えてみるといい。

シュープレートは機材の重心に合わせて調整可能。これは最も手前にしたところ。
こちらは最も奥にしたところ。シュープレートは、別売でロングバージョンも用意されている。
付属のシュープレートを外したところ。プレートの脱落防止機構も備わっている。

この「バランスがとれている」という状態を作っておくとパン/チルトを完全にロックさせなくとも「カメラがお辞儀する」=「三脚ごと倒れる危険性」を減らせる。

下の作品ではオシドリの群れを撮りたかったので、100-400mmズームを300mmあたりにズーミングして構図を決める。カウンターバランスは400mm側にしてあったが、少しトルクをかけることで安定した撮影ができるのだ。

EOS 7D Mark II / EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM / 1/125秒 / F5 / -1EV / ISO 400 / 絞り優先AE / 286mm

カウンターバランス付きの雲台といっても、収納時はご覧のようにスマートである。

秀逸なロック機構

カウンターバランスが利いていることにより「あのチープに見えた」でかいパン/チルト用の操作部が威力を発揮する。

ホイールの中にはパン用のレバーが付いているので、左手だけで2つの動作をスムーズに調整できるのだ。

何気なく思うかもしれないが今まではこれができないことでチャンスを逃したことが何度もあったことを思い出し、この素晴らしさにしびれてしまった!

外側のホイールがチルトロック、内側のレバーがパンロックとなる。
慣れると片手でチルトとパンのロックを一緒に調整できるのが特徴。

セグロセキレイの動きは素早いだけでなく、動きが読みづらい。こういう鳥の場合、パン&チルト同軸機構がとても使いやすい。左手でだけで調整ができるので歩く姿を連写したことで足を上げた瞬間を撮ることができた。

EOS 7D Mark II / SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2 / 1/1,000秒 / F6.3 / -1EV / ISO 400 / 絞り優先AE / 483mm

オシドリの群れが急にそわそわし出した。これは飛ぶかもと1羽に狙いを定めていると予想通り飛び立ち、飛翔する姿を撮ることができた。こういうシーンでもFHD-66Aはスムーズな動きが可能なので無理なく追うことができた。

EOS 7D Mark II / SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2 / 1/400秒 / F8 / 0EV / ISO 1600 / マニュアル露出 / 600mm

真上の鳥にも対応可能

野鳥を撮影するカメラマンはパン棒を嫌う。理由は上空を飛翔する鳥を撮る場合、真上近くの撮影にはパン棒が引っかかって邪魔になることが多いからだ。

本機では外すこともできるが、ハンドルポジションを変更できることで真上近くの飛翔姿まで狙うこともできる。もちろん邪魔だと感じれば外せばいいが、動画も一緒に撮りたい場合にはつけておいた方が断然有利になる。

標準のパン棒の位置。
上方の鳥を狙う場合はこのような位置にすると良い。
また、パン棒を横方向に出すようにすれば真上を向けても三脚に干渉しない。
パン棒は取り外すことも可能。
野鳥撮影では、パン棒を外しておけばとっさに真上を向けることもできる。

小鳥が木の実を食べに来るのを待っていると上空にクマタカが出現! 慌てて上にレンズを向けるとハンドル棒が脚に当たってしまった! すぐにハンドル棒のポジションを変えることができるので真上近くの飛翔姿をばっちり撮影できた。

EOS 7D Mark II / SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2 / 1/2,500秒 / F6.3 / +0.3EV / ISO 800 / 絞り優先AE / 600mm(トリミング)

カメラを含めた総重量は結構重く、手持ち撮影では疲れもあり手ブレを起こしやすくなる。こういう場合三脚で撮影するといい。今回はマガモの水浴びのシーンを連写で狙ったが、安定した雲台が付いていることで水しぶきを見事に写すことができた。

EOS 7D Mark II / SP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2 / 1/1,600秒 / F6.3 / -1EV / ISO 3200 / 絞り優先AE / 600mm(トリミング)

嬉しい「縦位置対応」

従来の2ウェイのオイルフリュード雲台は動画用のため、スチルで使う場合縦位置に苦労する。

望遠系のレンズであればレンズ側で縦位置にすることができるが、広角系レンズの場合、縦位置の時に困った経験もあると思う。そんな時、サイドチルトにより縦位置撮影が可能に!! こういう「かゆいところに手が届く」設定がたまらなくうれしい。

このように縦位置にも対応する。
マグネシウム製の本体はしっかりした作りのため、安定して縦位置にすることができる。

スチル用三脚がそのまま使える便利さ

本体に採用されているマグネシウムは軽いだけでなく、比強度、寸法安定度、振動吸収性にも優れているし、水準器が付いていることで水平をとりやすくなっている。

三脚取り付けねじはUNC1/4(細ネジ)になっているが、アダプターを交換することで、UNC3/8(太ネジ)にも対応可能となっている。

雲台の底部はフラットで、一般的なスチル用三脚にそのまま装着可能だ(本格的な動画用雲台は底部がお椀型で、一般的なスチル用三脚には装着できないものが多い)。

スチル用三脚が使えるということは、例えば撮影小屋の窓の高さに合わせる際にエレベーターで素早く調整できるといったメリットがある。本格的な動画用三脚はエレベーターが無いのが普通で、3本の脚の長さを変えなければならない。

トータルでこれほどコストパフォーマンスのいい雲台は無いと思う。野鳥の撮影にはぴったりといってもいいだろう。

制作協力:ベルボン株式会社

戸塚学

とづかがく:1966年愛知県生まれ。20歳の時、アカゲラを偶然撮ることができたことから野鳥を中心に撮影をする。「生き物の体温・ニオイを感じられる写真を撮りたい」と撮影を続ける。現在は、野鳥や生き物を取り巻く環境に目を向けた撮影も進行中。作品集は「鳥たちは今日も元気に生きてます!」(文一総合出版)など。

http://happybirdsday.jp/