写真家が監修したフォトグラファー向けPCが登場!
写真家 礒村浩一プロデュースPC「マスターズモデル」が3rdバージョンにアップデート
パワーとコストダウンを両立してより戦闘力をアップ!!
2017年12月1日 12:01
2015年にProject Whiteから発売された「ツクモeX.computer写真編集向けパソコン」シリーズは、プロ写真家の監修により写真編集用に最適化されたセミオーダーシステム(BTO)のパソコンである。
コストパフォーマンスに優れた若子ジェット氏監修「エントリーモデル」、価格とパフォーマンスのバランスを重視した桃井一至氏監修「スタンダードモデル」、そして筆者である礒村浩一が監修させていただいたハイパフォーマンスな「プレミアムモデル」と、モンスターパワーを実現したハイエンドの「マスターズモデル」の4モデルがラインナップされている。
おかげさまで発売以来、多くの写真愛好家から支持を得ており、さらに現在までにすべてのモデルがセカンドバージョンとなり販売が継続されてきた。
当初はここまで多くの方に受け入れられるとは思いもしておらず、その反響の大きさに今でも正直驚いている。そして初代マスターズモデル発売から2周年を迎える、2017年初冬のこのタイミングにて、ついに満を持して「マスターズモデル サードバージョン」が発表されることとなった!!
原点に立ち返りパーツを見直す!
さてここで、2年前にマスターズモデルをプロデュースした際の目標を改めて確認しておこう。
この企画をスタートするにあたりBTOメーカーであるツクモ(Project White)への要望の基準とさせていただいたものは、筆者がそれまで使用していたMac Pro(Late 2013)に匹敵するパフォーマンスをWindowsマシンでも実現するというものだった。
我々プロカメラマンの現場では日常的に数百から数千枚の撮影画像を取り扱い、さらにはそのRAWデータを一気に現像処理を行い保存する必要がある。
そのため、いかにストレスを感じることなく、また安定して作業を進めることができるかを何よりも重視する。そのためにはPCのマシンパワーは欠かすことができない条件だ。
ありていに言うと「サクッと表示できてドーンと一気に速く現像できシュッとレタッチが仕上げられるパソコンが欲しい!!」ということになる。
このわがままなオーダーに逃げることなく向き合ってくれて、それを実現してくれたのが、マスターズモデルを実際に構築してくれたProject White「ツクモeX.computer写真編集向けパソコン」プロジェクトチームであったというわけだ。
今回発売されるマスターズモデル サードバージョンでは、これまでのマスターズモデルの圧倒的なパワーはそのままキープしつつ、パーツの構成を見直すことでコストダウンも同時に図ることを目標とした。
PCの世界では2年の間にもどんどん新しい技術とパーツが出てきて、それに伴い価格も下がっていく。これをうまく取り入れていくことで、PC全体のコストパフォーマンスを上げることができるというわけだ。
まず見直しの対象として最初に検討したのが、パソコンの心臓部であるCPUである。
マスターズモデル ファースト&セカンドバージョンでは長時間の稼動や負荷においての信頼性を期待してIntel XeonプロセッサーE5を選択していた。Xeonプロセッサーは業務用のサーバーやワークステーションマシンにも採用されている高性能CPUだ。
ただXeonプロセッサーは生産量の多いIntel Core i7プロセッサーと比べてコストが高くなる傾向がある。またSkylake-Xというコードネームで呼ばれる次世代のCPUであるCore i7-7800Xが登場したことで、パフォーマンスを維持したままでのコストダウンができる見通しが立った。
これらの理由からサードバージョンではXeonプロセッサーからCore i7プロセッサーへの切り替えを決断した。
起動ドライブはNVMe対応のM.2接続SSDに
また、CPUを見直すと同時にマザーボードも新製品のASUS PRIME X299-Aを採用することとなった。
PRIME X299-Aはインテルの新ソケットLGA2066およびX299チップセットを搭載したマザーボードで、Core i7-7800Xとの組み合わせで高いパフォーマンスを発揮する。またBTOにより、さらに高性能なIntel Core i9プロセッサーを選択することも可能だ。
PCケースはこれまでのマスターズモデルと共通のツクモオリジナルATXタワーケース(EX1/598TA)。無骨なデザインではあるが拡張性に優れたケースであることで、中身のパーツが刷新されても問題なく対応可能であることから引き続き採用。サイドパネルには防塵フィルター付きの通気口もある。
背面。USB 3.0×4、USB 3.1 Gen2 Type-A×1、USB 3.1 Gen2 Type-C×1、USB 2.0×2、1000BASE-T LANポート×1、Optical S/PDIF out×1、オーディオ入出力ジャック×5、USB BIOS Flashback Button×1、そしてグラフィックカードに搭載されたMini DisplayPortコネクタ×4、無線LANカードに搭載されたアンテナソケットx3が搭載。
ケースを開けた状態。ケースは大きめで余裕がある。パーツ交換などの際でも手を入れやすく作業しやすい。ケース内の熱は効率的な空気循環により排熱される設計だ。
マザーボードは「ASUS PRIME X299-A」に刷新。Intel X299チップセットを搭載し、DDR4メモリ×8枚(最大128GB)対応、PCIex16×3、PCIex4×2、PCIex1×1、32Gb/sの転送速度を持つ M.2 SSDスロット×2が搭載されている。
電源は最大700W、定格出力650WのCWT GPK650S TB(80PLUS BRONZ)を選択した。
CPUは大きなファンの下にあるCPUソケットに装着されており、ファンの回転よる風によって冷却される。またCPUを挟むようにメモリーカードスロットが左右対称に4つずつ計8つ用意されている。
起動ドライブは、これまでのモデルと同様にSSDを採用している。これによりWindows 10の起動も速く、各アプリケーションもストレスなく動作する。なお起動SSDの容量は前モデルの480GBから512GBへとアップした。
起動ドライブ用として高速なM.2接続の512GB NVMe SSDがマザーボードに直接挿されており、その上を冷却用のヒートシンクが覆う。このヒートシンクによりSSDから発する熱を逃がして最適な性能を引き出す。
データを保管する目的のストレージディスクに関しては、これまでの400GB NVMe SSDから3TB HDDに変更した。
これは高速ではあるが高価で、かつ容量のあまり大きくないSSDから、SSDより速度は落ちるものの安価で容量の大きいHDDに変更することで、コストダウンと同時にストレージの容量拡大を狙うものだ。これはより現実的な構成へと見直す判断である。
ストレージHDDには容量3TB 5,400回転のHDDを選択。5段のHDD/SDDマウントはスライド式で脱着も簡単。3.5インチHDDはネジ不要のワンタッチでマウント可能。2.5インチのHDD/SSDはネジで固定する。
グラフィックカードにはNVIDIA Quadro P1000を採用。4系統のMini DisplayPortコネクタを搭載し、10bit Colorの4Kディスプレイ出力にも対応。ケーブル4本を使用することで最大7,680×4,320@120Hzまでサポートする。PhotoshopおよびLightroomでの描画の高速化が期待できるGPUを搭載。
待望の無線LANを内蔵
今回のツクモマスターズモデルサードバージョンでは、これまでの有線LANポートに加え無線LANにも対応した。
一般的にデスクトップPCでは有線LANによってネットワークに接続することが多いが、最近は家庭においてもインターネット接続のためのモデムやルーターと、PCの置き場を離して設置することも珍しくない。
また、最新のデジタルカメラにもWi-Fi機能を搭載する機種が増えており、設定によりカメラとPCを直接Wi-Fiで接続することで、撮影画像をダイレクトにPCに転送することもできる。
これらの利便性から、Wi-Fi接続を可能とする内蔵無線LANカードを採用することにした。
今回のマシンでは、PCI Expressスロットに拡張カードを挿す形でPCケース内に内蔵し、専用のアンテナを接続することで無線LANに接続する。
無線LANカードのASUS PCE-AC68は、大きな3本のアンテナを備える。IEEE802.11ac/n/a/g/bに対応。5GHzと2.4GHzのデュアルバンドを採用しており、ハイスピードかつより遠くまで電波の届く子機となっている。アンテナベース底面には磁石が搭載されており、PCケースの側面などに貼り付けることもできる。
ビデオカードと無線LANカードはマザーボードのPCI Expressスロットに挿して使用する。無線LANカードが挿さったスロットの奥にあるデジタル数値表示はエラー時に状況をエラーナンバーで表示するためのものだ。
ところで、通電時にはマザーボードなどに搭載されたカラフルなLEDが光輝くのが最近のトレンドらしい。確かにLEDが青や淡いピンクに光る姿を見ていると、なんだか凄いマシンに思えてくる。もっともケースを閉めてしまうと光は見えなくなるのだけども。
速さだけではなく実用的な機能にもこだわりアリ
マスターズモデルサードバージョンではこれまでのマスターズモデルから引き続き、ブルーレイディスクドライブやメモリーカードリーダーなどを搭載している。
昨今のPCでは光学ドライブを省いているモデルも少なくないが、大量の画像データの受け渡しにはまだまだDVD-RやBD-Rメディアなどを使用する機会も多い。
そのため、この写真編集用PCではBDドライブをあえて標準搭載としている。拡張性に余裕のあるタワー型ケースを採用しているメリットだ。
BDXL対応ブルーレイドライブを標準搭載。HLDS製 BH16NS58 SATA接続。書込・再生ソフトが付属する。もしもオーダーする際にBDドライブが不必要との判断をするのであれば、BTOにて構成から省くことも可能だ。
3.5インチベイにUSB 3.0マルチメモリーカードリーダーを搭載。デジタルカメラからのデータ転送を頻繁に行う者にとってはとても便利な装備。USB3.0接続で速いデータ転送が可能。UHS-I対応SD/MMC×1、microSD×1、CF/MD×1、MS×1、M2×1(M2とmicroSDスロットは同時使用不可)とUSB3.0ポートも1基搭載。
PCケース前面には格納式のUSB2.0ポートx2、オーディオ入出力(マイク入力×1、 ヘッドホン出力×1)が用意されている。マルチメモリーカードリーダーと合わせてPCの前面にポートが複数個用意されているのはとても便利。
ツクモオリジナルATXタワーケースの特徴として、背面の排気用ファンに加えてケース前面にも防塵フィルタ付属の吸気用ファンが搭載されていることが挙げられる。
これによりケース内の空気を強制循環させて、効率良く排熱を行うことができる設計となっている。高性能PCに欠かせない熱対策もバッチリだ。これはパネルを外して防塵フィルターが見えているところ。
いざ、新マスターズモデルを実戦投入!!
このようにパーツ構成を見直して組み上げられたマスターズモデルサードバージョン。早速、実際に撮影画像の処理に投入してそのパフォーマンスを体感してみることにする。
検証は有効3,040万画素のキヤノンEOS 5D Mark IVで撮影したRAW画像を、Lightroom Classic CCに読み込ませた後に、一気にJPEG画像へと現像処理を行い現像にかかった時間を計る。これを同条件にてマスターズモデルセカンドバージョンでも行い、双方の処理時間を比較する。
Lightroom Classic CCにEOS 5D Mark IVのRAWデータ1,000枚、約46GB分を用意してを読み込ませた上で一気にJPEG現像を行う。元ファイルの格納場所およびRAW現像後のJPEGファイルの保存先はいずれもSSDを採用した起動ディスク内とする。
結果は、マスターズモデルセカンドバージョンでは1,000枚のRAW現像を行うのに約29分が必要だったものが、マスターズモデルサードバージョンでは約18分でRAW現像を完了させることができた。実に4割近くも短縮されたことになる。
おいおい、いきなり予想以上のタイムを叩き出してしまったぞ。あまりの好成績に驚いてしまうが、これは厳然たる事実なのである。
なお、「1,000枚のRAW画像の一気現像なんて現実的ではない」と思った読者もいることと思うが、実はプロの仕事の中には1,000枚以上のRAW画像を現像することも珍しいことではないのだ。
また、一気に現像をしなくとも、数百枚単位での現像処理は日常的に行っている。1回に現像する枚数が少なくなれば当然処理にかかる時間の差も小さくなるが、これが数回、数十回と積み重なっていくとトータルとしては結構な差になっていくわけだ。その差イコール睡眠時間の差と考えてもらえると嬉しい。
GPU使用の設定を忘れずに
さて、このマスターズモデルサードバージョンの高いパフォーマンスの理由を考察するに、新型のマザーボードとCPU、そして高速なM.2接続がなされたSSDの組み合わせを採用したことによる恩恵と推測される。
もちろんこれらの能力を最大限に発揮させるためには、高速なDDR4メモリやGPUを搭載したビデオカード、安定した電源などが総合的なシステムとして支えているからに違いない。
なおビデオカードに搭載されたGPUは、Lightroom Classic CCやPhotoshop CCを高速化するのにも効果的となる。ただしGPUを有効にするには、Lightroom Classic CCおよびPhotoshop CCにてGPUを使用する設定にしておく必要がある。忘れずに事前に設定を確認しておくようにしよう。
Lightroom Classic CCでは[編集]-[環境設定]-[パフォーマンス]内「グラフィックプロセッサーを使用」にチェックマークを入れるとGPUが有効となる。
Photoshop CCでは[編集]-[環境設定]-[パフォーマンス]内の「グラフィックプロセッサーを使用」にチェックマークを入れることでGPUが有効となる。
テザー撮影や画像セレクトにも力を発揮
このように高いパフォーマンスを持ったマスターズモデルサードバージョンだが、RAW現像以外でも力を発揮してくれるはずだ。
そこでスタジオ撮影などでよく行われる、PCとデジタルカメラをケーブルで接続して行うテザー撮影を試すべく、マスターズモデルサードバージョンとディスプレイを撮影現場に持ち込んだ。
EOS 5D Mark IVをUSB3.0対応のケーブルでマスターズモデルサードバージョンに接続し、撮影記録設定はRAW+JPRGの同時記録に。撮影データはリアルタイムにマスターズモデルサードバージョンへと転送される設定とした。
EOS 5D Mark IVをUSB3.0対応のケーブルでマスターズモデルサードバージョンに接続。テザー撮影を行うためのEOS Utilityを起動して撮影を行う。シャッターを切る度に撮影データがマスターズモデルサードバージョンへと転送され、転送が済み次第にディスプレイに撮影画像が表示される仕組みだ。
テザー撮影には、撮影した画像をリアルタイムにPCの画面に表示させることで、画像の確認を大きな画面を使いその場で行うことができる利点がある。プロのスタジオ撮影の現場にてよく行われる方法だ。
しかし、3,000万画素を超える高画素カメラでのテザー撮影では、PCへのデータの転送速度やPCの処理能力が及ばず、ディスプレイへの表示が遅延してしまうことがよくある。
その点でも、このマスターズモデルサードバージョンでは、シャッターを切るとほぼ同時に撮影画像の転送と表示がなされることが確認できた。
またPhotoshop Bridge CCでPC内に保存されたオリジナル画像を閲覧する際にも、内蔵SSDとHDDいずれのフォルダ内の画像でも素早く読み込むことができる。コマ送りでもサクサクとストレスなく画像を繰っていけるのだ。
この軽快感こそが大量の画像から使用する画像をセレクトする際の効率を高めることに繋がり、カメラマンにとって大きなメリットとのひとつとなる。
これは日々大量の撮影データを処理するためのPCに、カメラマンが切実に求める性能である。画像の表示に時間がかかるPCほどイライラするものはない。忙しい時にテンポよく画像を繰っていくことができないと、PCをデスクごとひっくり返したくなるのは筆者だけではないはずだ(笑)。
コスパ最高なマスターズモデルができちゃった!!
このようにパーツ構成を大きく見直すことで更なる進化を果たしたマスターズモデルサードバージョンの販売価格だが、ツクモとの協議の結果、なんと税別27万9,800円と決定したのだ!!
なんとセカンドバージョンより、およそ4万円も安くなったのである!! しかもパフォーマンスも前モデルより上がっていているわけだから、これにはちょっとビックリしてしまった。
まさか、ここまでコストダウンが可能だとは思ってもいなかったのだが、この価格であればより多くのカメラマンにとって、ハイクラスなカメラ機材の1つとして考えることもできるはずだ。
さらにデジタルカメラでの4Kムービー撮影と編集などを手がけたいと思っている人にとっても、十分に検討対象の1つとなるだろう。
もちろんBTO対応パソコンなので、標準仕様から自分の用途に合わせてパーツを選択してオーダーすることもできる。この点もツクモeX.computerの魅力の1つだと言える。
このように新たなステージを迎えた「ツクモeX.computer写真編集向けパソコンシリーズ」だが、今後もより多くの写真愛好家やいろいろなジャンルのプロ写真家などの要望なども取り入れて、さらなる魅力を持った製品として進化させていきたい。
また、このPCを活用するためのイベントやセミナー企画なども検討中だ。
単なる製品としてのパソコンにとどまることなく、これまでにはない、カメラユーザーとパソコンメーカーが一緒になって育てていけるような、新たなソリューションを提案していけると面白いのではないだろうか。と、妄想はとどめなく膨らんでしまうのである。
制作協力:株式会社Project White(ツクモ)
撮影協力:株式会社美磋インターナショナル