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新SSD「インテル Optane SSD 900P」はパソコンでの写真編集に効くのか!?
TSUKUMO eX.computer写真編集向けパソコンでLightroomを活かす「ベストセッティング」はコレだ!
2017年12月29日 09:56
写真愛好家のためのPCがさらに魅力的に進化
TSUKUMOが販売するBTOパソコン「eX.computerシリーズ」には、プロカメラマンの監修した写真愛好家のための写真編集モデルが用意されており、カメラや撮影スタイルに応じて、「エントリー」から「マスターズ」まで4種類のモデルをラインナップする。
この2017年12月、写真家・礒村浩一(いそむらこういち)氏プロデュースによる「マスターズモデル」がリニューアルされた。各社のフラッグシップデジタルカメラではもはや当たり前とも言える、3,000万画素以上の超多画素機のRAW現像をターゲットにしたモデルだ。
メニーコアプロセッサーや大容量メモリー、デュアルストレージの採用により、写真の取り込みやRAW現像、フォトレタッチといった一連の作業をストレスなく行える内容となっている。
さらには今回、追加オプションとして、超低レイテンシー&高耐久性を誇るインテル®の「Optane™ SSD 900P」が追加される。ここでは、ベースのマスターズモデル (PA9J-D91/T) がどのようにな点で写真編集に向いているのか、技術的な視点から解説するとともに、インテル Optane™ SSD 900Pの実際の現像作業における効果も検証する。
マスターズモデルのベースを支える5つの性能
その1.フィルタ処理に効く8コア16スレッドのプロセッサー
まずはマスターズモデルのシステム内容を見ていこう。一般的なPCと大きく違うのは「プロセッサー」(CPU)と「チップセット」だ。
一般的なデスクトップPCに搭載されているのは、インテルの第8世代Core™プロセッサーや第7世代Core™プロセッサーだが、それよりさらに上位のウルトラハイエンドに位置づけられる「Core™X」ブランドのプロセッサーと「X299」チップセットを採用する。
標準構成のCore™ i7-7820Xは、8コア16スレッドのメニーコアであることが最大の特徴だ。このコアの多さが、フィルタ処理や画像変換に効く。
「コア」というのはプロセッサーの演算処理を行うメインの部分、コアが複数あると並行して演算ができるので、そのぶん高速になる。
スレッドは1コアぶんの命令のことを指す。通常は1コアに付き1スレッドが割り当てられるが、特別な技術 (Hyper-Threading) を使って2倍に増やしている。こちらも多いほうが速い。
例えば、コアが何かの職人だとすると、職人が多ければ多いほどたくさんの商品を作成できる。また、通常の職人が1つの商品を作るところ、熟練した職人なら手の空いている時間を有効に使いもう1つ並行して作業を進められるというイメージだ。
一般的なPCのプロセッサーは、以前は4コア8スレッドが最高。最新世代では6コア12スレッドに増えてパフォーマンスは向上したが、このCore™ i7-7820Xはさらに上をいく8コア16スレッドというスペックだ。超多画素の画像もサクサクと編集できる。
さらに、大量の素材をより高速に処理したいというユーザー向けに、10コア20スレッドのCore™ i9-7900Xのほか、12コア24スレッドのCore™ i9-7920Xといったオプションが用意され、注文時に変更することが可能だ。
その2.高速メモリーをたっぷりと搭載
ウルトラハイエンドのプラットフォームを採用しているメリットはコアが多いことだけではない。システム全体の性能、拡張性で大きなメリットがある。
まず、メモリーは4チャネルアクセスにより高速に読み書きできる。一般的なPCでは2チャネルアクセスなので、同じ仕様のメモリーを使うならスピードは2倍に上る。
プロセッサーが処理するデータはメモリーから読み出されるため、処理内容によっては、プロセッサーが速くてもメモリーが遅いとデータ転送が追いつかずにプロセッサーが待っている時間が増えて性能が出ないということもありうるが、そうした心配は皆無だ。
高速なだけでなく、大容量を搭載できることもポイント。写真編集用途でPCを探す場合、一般的なPCのスペックを見て不満を感じるのが、このメモリー容量ではないだろうか。RAW現像やレタッチをするには、とにかくメモリー容量が重要だ。
超多画素カメラで撮影した写真は単体でもデータサイズが大きいが、調整レイヤーなどを作成してレタッチしていくとどんどんメモリーを消費していくため、複数枚並行して処理していくと8GBや16GBではあっという間にメモリーが足りなくなり、処理性能が目に見えて低下してしまう。
メモリーを解放するため、ちょくちょく途中で中断して保存、再起動といった手間が必要になることも。
このマスターズモデルは標準でも32GBの大容量メモリーを搭載するため、ストレスなく作業に没頭できるだろう。最大128GBまで搭載可能だ。Adobe Photoshop CCのヒストリ (履歴) を思い切り増やしたりもできるだろう。
その3.高速デバイスの性能をフルに活かせる広帯域
ビデオカードやSSDを接続するデータバスであるPCI Express 3.0を、プロセッサー直結で28レーン (Core™ i7-7820Xの場合) 備えるのもポイント。NVMe対応SSDなどの高性能なデバイスを、性能を犠牲にすることなく拡張する余裕がある。
一般的なシステムであれば、高性能なデバイスといっても、ビデオカードが1枚 (16レーン)とNVMe SSDが1台 (4レーンが一般的) くらいで、それらが接続できればいい。
そのため、一般的な第8世代Core™プロセッサーのシステムではプロセッサー直結のPCI Express 3.0は16レーンしかなく、ビデオカードで16レーン、NVMe SSDを使う場合は、チップセット経由で接続されている。
チップセット経由でも1台のみならばいいのだが、プロセッサーとチップセットの間のバス (システムバス) 自体が4レーン相当の帯域しかないため、高性能なSSDを2台以上チップセット経由で接続すると、同じタイミングでアクセスが発生する場合には、システムバスがボトルネック (スピードの出ない原因) になって、フル性能を発揮できない。
後述するオプションのインテル Optane SSD 900Pなどを追加する場合なども、一般的なシステムではその魅力を完全には活かせないということになる。こうしたオプションを使えるのは、ウルトラハイエンドのCore™XとX299チップセットの組み合わせならではといえる。
その4.写真の編集/管理に最適なデュアルストレージ、便利なカードリーダーも標準搭載
ストレージは、SSDとHDDのデュアル構成を採用。OSやアプリケーションを起動するドライブには高性能でレスポンスに優れるNVMe (PCI Express 3.0 x4) 対応のSSD、写真データを保存/管理用には大容量HDDを搭載するという、写真編集向けにはまさに最適な構成だ。
SSDも多数の種類があるが、標準のSamsung 960 EVOは特に性能が高い。現像ソフトや編集ソフトの起動、サムネイル表示などもサクサクでストレスなく使うことができる。
HDDは標準で3TBだが、最大では4TBまで、さらにBTOで1台追加することも可能だ。
保存/管理用に、写真の取り込みに便利なカードリーダーを標準搭載している点も見逃せない。SDXCメモリーカードだけでなく、microSDXCメモリーカードやCFも直接使えるのはありがたい。
こうしたハイスペックの高性能なデスクトップPCでは、カードリーダーを搭載していない製品も多いだけに貴重だろう。USB 3.0ポートも同じ位置にあるので、XQDカードリーダーやCFastリーダーを接続するにも便利だ。
その5.クリエイティブに最適なQuadro P1000
グラフィックス機能には、NVIDIAのグラフィックスチップ(GPU)「Quadro P1000」を搭載するビデオカードを採用している。
コンシューマー向けのGeForceがゲームに最適化されているのに対し、Quadroシリーズはプロユース含めたクリエイティブツールやデザインツールをターゲットに性能の最適化やドライバーの動作検証が行われている。
もちろん、グラフックスチップを汎用的なプロセッサーのように使うGPGPU技術「CUDA」にも対応。Adobe LightroomやAdobe Photoshopを含め、クリエイティブツールの多くは、このCUDAによるGPUアクセラレーションに対応しているため、画像の回転や変形、フィルタ処理などを高速化することができる。
また、4基のMini DisplayPort出力のほか、4GBと余裕を持ったビデオメモリーを搭載するのもポイント。解像度が高くなれば高くなるほど多くのビデオメモリーを必要とする。
それをマルチディスプレイで利用するとなればなおさらで、4Kや5Kといった高解像度ディスプレイのマルチディスプレイ環境でもスムースな利用が可能だ。
このほか、RGB各色10bitの30bitカラー表示に対応している点も特徴。30bit表示に対応したディスプレイと組み合わせることで、一般的にフルカラーと呼ばれる24bitカラー (約1,677万色) を大きく超える約10億7,374色を同時表示できる。
より本来の色に近く、格段に滑らかな階調表現が可能になる。曇り空や夕陽の画像を等倍表示した時に、グラデーションの粗が目立ってしまうようなこともないだろう。
オプションで追加できる超速ストレージ「インテル Optane SSD 900P」とは?
新しいeX.computer写真編集 マスターズモデル「PA9J-D91/T」のBTOメニューでは、今回新たに追加ストレージとして「インテル Optane SSD 900P」を指定できるようになった。
このインテル Optane SSD 900Pは、簡単にいえば「超高速なSSD」なのだが、通常のSSDがNANDフラッシュメモリーにデータを記録するのに対し、「3D XPoint™メモリー」という、インテルとMicron Technologyが共同で開発した新しい半導体メモリーを利用する。
通常のSSDと違うのは、まずレイテンシー。メモリーにデータを要求してから最初のデータが出てくるまでの待ち時間だ。このレイテンシーの影響で速くなるのが、QD1 (QueueDepth=1) のランダムアクセス。
SSDはアクセス要求をある程度キュー (待ち行列) にためて一気に処理することでランダムアクセス性能を向上させることができ、ランダムアクセスのスペックとしてはQD32の性能が掲載されるが、現実的にQD32までたまるのはサーバーデータなどで、普通のPCの使い方だとだいたいQD4までで、QD1やQD2が大半を占めていると言われている。QD1のランダムアクセスが速いと、実質的な使い勝手の向上を見込める。
また、耐久性もケタ違い。SSDがストレージとして使われ始めたころ、寿命を不安視する見方があったのは、メモリーセルに書き込みを繰り返すと劣化し、書き込みやデータの保持ができなくなる性質がその理由だ。
それをSSDではコントローラーとキャッシュのアルゴリズムの工夫を行うことでカバーしている。通常利用では数年くらいでは問題ないことは実証されているが、それでもそう長くは使えない。
3D XPoint™メモリーにも寿命はあるが、それが格段に長く、ほぼ無限に使えるといえる。細かい書き込みを繰り返す用途などではより安心感が高い。OSのシステムドライブ、あるいはキャッシュドライブ用などに最適だ。
このマスターズモデルでは、サブドライブとしての追加が可能になっている。
インテル Optane SSD 900Pの基本性能を見る
インテル Optane SSD 900Pはどんな場面で役立つのか、そのパフォーマンスを検証してみよう。
まずは単体で、スタンダードなSSD向けベンチマークソフト「CrystalDiskMark」で性能を測定してみた。比較対象のSamsung 960 EVO M.2は、システムドライブとして使っているため、多少不利な条件になっている。
一番上の列 (Seq Q32T1) が、シーケンシャルリード/ライトの性能。単純なデータコピーの速さの目安になる数値だ。この数値もコンシューマー向けSSDとしては超一流だが、真骨頂は一番下 (4KiB Q1T1) 。これがQD1のランダムアクセス、特にリードは圧倒的にSamsung 960 EVO M.2をリードしていることが分かる。
CrystalDiskMark 6.0.0の結果。一番下の列 (4KiB Q1T1) の値に注目。これがOptane SSD 900Pの真骨頂だ。
次にRAWデータのコピー時間を見てみよう。まずニコン D810で撮影したデータ1,000枚を、標準搭載のカードリーダーを使ってSDXCメモリーカードからコピーする時間を計測した。
グラフ1を見ても分かるとおり、結果はSamsung 960 EVO M.2やHDD (Western Digital WD Blue WD30EZRZ) とほとんど変わらない。最も、これは想定内である。SDXCメモリーカードの性能がボトルネックになることは予想できていた。致し方のないところだ。
では、コピー元がより高性能なデバイスならばどうだろうか。USB 3.1接続の外付けSSD (シーケンシャルリード公称700MB/s) から同じデータをコピーしてみた結果がグラフ2だ。
インテル Optane SSD 900PはSamsung 960 EVO M.2よりも、約4秒速く処理が終了した。差が小さいのは、標準でシステムドライブとして使われているSamsung 960 EVO M.2自体も相当に高性能のSSDであるせいだ。
ちなみに、インテル Optane SSD 900PとSamsung 960 EVO M.2の、両者のコピー時間も相互に計測してみた (グラフ3) 。
Samsung 960 EVO M.2からインテル Optane SSD 900Pへのコピーのほうが10秒以上速いのは、インテル Optane SSD 900Pのライト性能が良いからだろう。
どちらも非常に高速で、40GB以上のデータを1分もかからずコピーできる。両ドライブ間でデータを移動させるのは全く苦にならないだろう。
Adobe Lightroom Classic CCでインテル Optane SSD 900Pをどう使う?
実際の写真編集では、インテル Optane SSD 900Pをどう活用すればいいだろうか。
Adobe Lightroom Classic CCで考えてみた。活用場面としては、「Camera RAWキャッシュ」や「カタログの保存先」、「書き出し先」に指定する、現像時RAWデータの一時的な置き場にする、といったところだろうか。
理屈で考えると、480GBと容量が限られていることやランダムアクセスの性能や耐久性のメリットを活かせるということから、Camera RAWキャッシュとカタログの保存先にするのが良いように思うが、とりあえず総当りでテストをしてみた。
利用したのはニコン D810の撮影データ100枚。現像設定はホワイトバランス「自動」に加えて、レンズ補正 (色収差除去、プロファイル補正:Nikon AF-S 24-70mm/F2.8G ED)を行っている。
結果は下の表にまとめている。どう使っても一定の効果はあるが、特に2通りの組み合わせの効果が高かった。
2つの共通点は、カタログだけ別ドライブにした設定であること。数値だけみれば、カタログのみインテル Optane SSD 900Pとした13番の設定が速いが、カタログのみメインドライブ (Samsung 960 EVO M.2) に置く8番の設定が筆者の推奨だ。
理由は、読み書きを繰り返されるキャッシュを耐久性の高いインテル Optane SSD 900Pにすれば、メインドライブの寿命延長につながると予想されるからだ。
また、RAWデータの置き場所、書き出し先として使う場合も、ずっと置いておくわけではないだろう。現像作業が一区切り付けばHDDなどへ移動して管理することになる。新たに撮影したらまたデータを取り込んで、現像作業をする。いわゆる作業ドライブであるわけで、こちらもやはりそれなりの頻度に読み書きを行うことになる。
細かい書き込みが日常的にあるメインドライブの負担を減らすためにも、こうした作業ドライブ的な役割は耐久性に優れたインテル Optane SSD 900Pのほうが望ましいだろう。
ゲーミングPCとの比較で優秀さが浮き彫りに
最後に参考までに、別のPCでも同じ作業を行ってみた。
用意したのは某社のゲーミングノートPC。ノート型ではあるが、プロセッサーがCore™ i7-7700HQ、メモリー16GB、ストレージは256GB (Serial ATA 6Gb/s) +1TB HDDで、GPUとしてNVIDIAのGeForce GTX 1050も搭載している。
ノートPCとしてはかなり高性能な部類に入るが、それでも9分以上もかかってしまった。マスターズモデルでは3分台で終わる処理である。
この結果だけを見ても、いかにマスターズモデルが優れているか、写真編集に適しているかがよく分かるだろう。
超多画素デジタルカメラのRAW現像に最適なマスターズモデル
さすがにプロ写真家監修のマスターズモデルというだけあって、写真編集における使用感は素晴らしいのひとことだ。
Adobe LightroomやAdobe Photoshopはサクッと起動するし、フォルダーのサムネイル表示もささっと表示され、とにかく快適そのものでストレスがない。
さらに、オプションのインテル Optane SSD 900Pを使えば、高速化だけでなく、長期耐久性の面でも大きなメリットが期待できる。大量のRAW現像を行うユーザーならば、ぜひとも検討したいオプションだ。
なお、すでにマスターズモデルを購入されたユーザーでも、追加で費用が発生するものの、所定の手続きを進めることで本オプションをツクモ側で取り付けてもらえるそうだ。作業で発生する料金は税別3,500円(会員は3,000円)。詳細は下記のページで確認してほしい。
提供:Project White