写真家が監修したフォトグラファー向けPCが登場!
写真家プロデュースPC「プレミアムモデル」に2ndバージョンが登場!!
どこまで高みに昇るのか…RAW現像マシンとしての実力を改めて検証
2017年2月22日 07:00
ツクモから、RAW現像作業に特化した写真家プロデュースPC「eX.computer 写真編集RAW現像」シリーズが発売され早一年。
マスターズモデル
プレミアムモデル
スタンダードモデル
エントリーモデル
の4モデルがラインナップされている。
これらのうち昨年12月、マスターズモデルがリニューアルした。
そして今回、プレミアムモデルも2ndバージョンとして生まれ変わることが決まった、というご報告なのである。
プレミアムモデルはハイパワーとコストの両立を目指した、カメラでいうところの中上級モデルという位置付けだ。プロデュースに携わった私自身、企画当初からかなりのワガママをいわせていただき、製品スペックに一切妥協をしないトンガッタ試用になっていたのが、結果的に写真愛好家の方々に支持され、好評な売り上げとなったようだ。これは実にありがたいことである。
ケースは前モデルと共通であるため外観に変化はないが、CPUとマザーボードが新しいタイプのものになったことで、より処理能力が向上している。さらにより高速なメモリを採用するなど、基礎体力の向上がなされているのが特徴だ。
旧プレミアムモデル | 新プレミアムモデル | |
CPU | Intel Core i7-6700(3.4GHz-4.0GHz) | Intel Core i7-7700(3.6GHz-4.2GHz) |
マザーボード | Intel H170 Express(H170-PRO) | Intel H270 Express(PRIME H270-PLUS) |
メモリ | PC4-17000 DDR4 16GB | PC4-19200 DDR4 16GB |
グラフィックカード | NVIDIA GeForce GTX 750Ti | NVIDIA GeForce GTX 1050 |
起動ドライブ | 256GB SSD SATAIII接続 / 6Gbps | 240GB SSD SATAIII接続 / 6Gbps |
ストレージドライブ | 2TB HDD SATAIII接続 / 6Gbps | (変更なし) |
販売価格(税別) | 145,800円(2017年1月31日時点) | 149,800円 |
変更されたパーツはこれだ!
それでは、各パーツを見ていこう。
CPUはCore i7-6700(3.4GHz-4.0GHz)からCore i7-7700(3.6GHz-4.2GHz)へと1ランク上のものになった。6700から性能は若干向上しつつ、消費電力は微減している。
CPUの変更にあわせ、マザーボードはIntel H170 Express(H170-PRO)から Intel H270 Express(PRIME H270-PLUS)へと変更された。これに伴いUSB Type-Cポートは廃止されたが、USB3.0 Type-Aが2ポートから4ポートに増加されている。Type-Cポートの普及がまだそれほどではないことを考えれば、現状では汎用性が増したといえよう。
実作業の効率を左右するメモリ。基本構成は前モデルと同じく16GB(最大64GBまで搭載可)であるが、使用するメモリはPC4-17000 DDR4からPC4-19200 DDR4となったことで高速化が図られている。
描画性能に寄与するグラフィックカードついても変更が見られる。前モデルに搭載されていたGeForce GTX 750Tiから、最新世代のGeForce GTX 1050に刷新された。GPUを搭載しており、Adobe PhotoshopおよびLightroomでの描画の高速化が期待できる。
なおBTOオプションで、GeForce GTX 1050からよりハイスペックなNVIDIA Quadro K620を選ぶことができる。Quadro K620はGeForce GTX 1050にはできない10bit表示に対応するため、10bit表示の環境が整っているなら選択するのもありだろう。
PCケースは前モデルと同じツクモオリジナルATXタワーケース(EX1/598TA)であるが、その中身は最新の構成となっている。
背面。USB 3.0×4、USB 2.0×2、PS/2×2、1000BASE-T LANポート×1、オーディオ入出力ジャック×3、そしてグラフィックカードに搭載されたディスプレイ出力 DVI-D×1、Display Port×1 HDMI×1が搭載。
PCケースの中の様子。ツクモオリジナルATXタワーケースは最近のトレンドからすると少し大きめのケースではあるが、この余裕のあるパーツ配置はカスタマイズのしやすさとケース内の空気循環の効率化に有利となる。eX.computerシリーズはケーブルの取り回しのきれいさも特徴のひとつ。吸気・排気といった基本的な冷却機能が高まるため、連続稼動でも安定した動作が期待できそうだ。
内蔵ストレージは5段のスライド式ラックに収納。3.5インチHDDはネジ不要のワンタッチでマウント可能。2.5インチのHDD/SSDはネジで固定する。
起動ドライブはSDやCFでも有名なサンディスクの240GB SSD SATAIII接続 / 6Gbpsを採用。ストレージのHDDは2TB HDD(SATAIII接続 / SATA 6Gbps対応)と前モデルと同じものとなる。
PC前面のインターフェースは前モデルを踏襲。ドライブベイに組み込まれたUSB3.0カードリーダーはデジタルカメラで使用する主要メモリカードに対応している。USB3.0ポートx1も搭載。またPCケース前面のカバーを開くとUSB2.0ポート×2とオーディオ入出力ジャックが現れる。
前面には前モデルに引き続き、ブルーレイディスクドライブ(BD書込み対応)を搭載している。
さらなるハイパフォーマンスを得たプレミアムマシン
さて「eX.computer 写真編集RAW現像」シリーズが発売され約1年が経ったわけだが、筆者の周囲でも実際に導入したという声を聞き、素直に驚いている。
ただこの1年間の間にいくつものデジタルカメラの新製品が発売されており、より高解像度の画像を扱う機会も増えてきているのも事実だ。
そこで去年発売されたキヤノン EOS 5D Mark IVとオリンパス OM-D E-M1 Mark IIで撮影されたRAWデータを、新しいプレミアムPCで実際にRAW現像を行いそのパフォーマンスを確認してみよう。
検証ではEOS 5D Mark IVおよびOM-D E-M1 Mark IIそれぞれで撮影した1,000枚のRAW画像を、Lightroom CCに読み込ませたうえで一気にJPEG画像への現像処理を行い、その処理時間を計測する。
EOS 5D Mark IVは有効約3,040万画素、RAW画像1,000枚の合計ファイルサイズは42.5GB。
OM-D E-M1 Mark IIは有効約2,037万、RAW画像1,000枚の合計ファイルサイズは17GB。
RAW画像1,000枚の現像速度
EOS 5D Mark IVのRAW画像1,000枚(42.5GB)
→31分24秒(1枚当たり1.88秒・1GBあたり44.3秒)
OM-D E-M1 Mark IIのRAW画像1,000枚(17.0GB)
→25分50秒(1枚当たり1.65秒・1GBあたり91.2秒)
参考までに同じく「eX.computer 写真編集RAW現像」シリーズの最上位、マスターズモデルでは、EOS 5D Mark IVのRAW画像1,000枚(合計46.4GB)をJPEG画像へ現像処理するのに約29分という結果が出ている(ただし今回と同じRAWデータではない)。これは1枚当たり1.74秒、1GBあたりでは37.5秒という計算となる。この値と比較しても、今回のプレミアムモデルの現像時間は大健闘といえるだろう。
意外なことにE-M1 Mark IIとEOS 5D Mark IVとでは、それほど大きな差を感じられない結果となっている。現像時間を1万画素単位で割ってみると、E-M1 Mark IIが1万画素あたり0.76秒、EOS 5D Mark IVが1万画素あたり0.64秒になり、E-M1 Mark IIの方が時間を要することがわかった。現像処理にかかる時間は画素数の大きさだけでなく、カメラ機種ごとの現像アルゴリズムにも左右されるのであろう。とりあえず参考としてほしい。
今回のテスト結果に限れば、新しいプレミアムモデルは、マスターズモデルに肉薄するほどの性能を有していることがわかった。もちろんPCの能力は、長時間高負荷で稼働した際の耐久性や信頼性、消費電力に対する効率など、多くの観点から見極める必要がある。とはいえハイパワーかつタフなマスターズモデルに加え、実戦力の高いプレミアムモデルが出揃ったことは、日常的に大量のRAW現像を行うフォトグラファーにとって大きな戦力となるに違いない。
写真家プロデュースPCがさらなる展開を!
このように写真家プロデュースの「eX.computer 写真編集RAW現像」シリーズは、マスターズモデルおよびプレミアムモデルともに、2ndバージョンとして新たな段階を迎えた。高画素化が進む現在、デジタルカメラユーザーからの写真編集用PCに対するニーズは確実に増えている。今後もよりワガママな製品の要望を、PCはもちろん、カメラに関わるの様々なメーカーにも提案していきたいと思っている。ぜひとも今後もみなさんの意見や要望をお聞かせいただきたい。
制作協力:株式会社Project White