PENTAX 100YEARS

FA Limitedレンズの魅力をフィルムで紹介!フィルムカメラ+現行レンズのススメ

昨今のフィルムカメラブームもあり、マニュアルフォーカス(MF)のフィルム一眼レフカメラを愛用する若年層が増えています。街中で往年の人気カメラを提げた人の姿を見ることも、それほど珍しくなくなりました。

そんな人気のMF一眼レフカメラに、現行レンズをつけてみようというのがこの企画の趣旨。名機「PENTAX LX」に現代のカタログに並ぶPENTAXレンズを装着して撮影してみました。用意したのは人気のFA-Limitedレンズ3本を含む4本の単焦点レンズ。フィルム時代からあるレンズですが、改めてその撮り味を確認してみたいと思います。

撮影・執筆は、フィルムでの作品撮りにこだわるフォトグラファー、山本春花さんです。(編集部)

PENTAX LXとは

1980年に発売された、当時のPENTAXの技術を結集したといわれるプロ向けのフラッグシップモデル。

旭光学創立60周年を記念してLX(ローマ数字の60)と名付けられ、交換タイプのファインダーシステム、一眼レフ初の防塵防滴機構、ダイレクト測光による絞り優先自動震出、機械式/電⼦式のハイブリッド機構を採用したチタン幕の横走リシャッターなどで注目を浴びた。

レンズマウントのKマウントは電子接点などないプレーンなタイプ。絞りリングを装備したKマウントレンズ(現行品を含む)やM42レンズ(マウントアダプターを使用)を装着できる。

今回の記事ではLX発売15周年記念モデルとして外装に黒チタン材と本革を採用した300台限定モデルの「PENTAX LX Limited」(1996年発売)を使用した。(編集部)

私がフィルムカメラを使う理由

山本春花さん

プロフォトグラファーになる前から現在までわたしがライフワークとして続けているシリーズ「乙女グラフィー」は、フィルムカメラを使用した女性ポートレートシリーズだ。

感覚的な表現になってしまうが、若い女の子のいつか失われる美しい瞬間を撮るには、フィルムというメディアが向いていると感じたから。記憶に留めておきたい瞬間を、フィルムという物質に化学反応として残すのだ。

もちろん、広いラチチュードに起因する美しい光の捉え方、忠実で奥深い色再現性など、フィルムならではの描写も愛用する大きな理由で、これはデジタルカメラを使ったレタッチとは趣を異にすると思っている。

また、やはりフィルムには撮影枚数に制限があり、1カットずつかなりの金額がかかっていることが頭をよぎり集中力が増すのか、最新鋭のデジタル機を使うよりも決定的瞬間を残す確率が高いことに驚いている。

フィルムカメラで現行レンズを使う

わたしは普段、デジタルカメラとの共存を考えて、現行レンズをフィルム一眼レフカメラでも使っている。移り変わりの激しい他の機器に比べると、カメラとレンズは新旧互いに使えることが魅力のひとつだ。

今回使用したペンタックスも年代を超えて互換性に優れたメーカー。フィルム時代も現在も「ペンタックスK」マウントを採用しており、絞りリングさえあれば現行AFレンズを往年のMFフィルム一眼レフに付けて楽しむことができる。絞りリングがない場合、MFフィルム一眼レフのボディ側から絞り制御が行えないという制限が出てしまうが、ペンタックスの現行レンズの一部は絞りリングが搭載されている。

smc PENTAX-FA31mmF1.8AL Limitedの絞り操作部。これがあればPENTAX LXのようなMF時代のフィルムカメラでも絞り操作が可能になる。

もちろん、オートフォーカス(AF)の現行レンズ+AFフィルム一眼レフカメラという軽快な組み合わせで楽しむこともでき、わたしは普段この組み合わせが多い。

しかし、今回PENTAX LXを使ったことで、MF一眼レフカメラを選ぶことの良さも身に染みた。厳密なMFを視野に入れたMF一眼レフカメラのファインダーは視認性が素晴らしく、特にLXのようなプロ機のファインダーは覗き込むだけでもワクワク。最高の光学ファインダーで被写体を見ることの楽しさを、デジタル世代の人にもぜひ味わっていただきたい。

もちろん描写の面でも現行レンズを使うメリットは大きい。逆光でも破綻しない優秀な描写とフィルム特有の階調性の組み合わせは、レンズへの投資額を抑えつつフィルムを楽しめるという大きな恩恵がある。フィルムカメラをはじめることに敷居の高さを感じている人は、ぜひデジタルとのレンズ共用も視野に入れてみては。

それでは、PENTAX現行レンズ4本とPENTAX LXを組み合わせた作品を観ていただきたい。

絶妙な画角&豊かなボケ

smc PENTAX-FA 31mmF1.8AL Limited

高級な造りと単焦点らしい高画質で人気を集めているLimitedレンズの1本。鏡胴と一体型の花形フードがスタイリッシュだ。

花形フードは現行レンズでは一般的なデザインだが、金属製のものはとても珍しく、LXチタンの上質な金属の質感とベストマッチ。レトロなMF一眼レフのたたずまいを損なわない。

フォーカスリングはAFレンズとしては扱いやすく、また距離指標は鏡胴のくり抜き窓に表示されるレトロさも嬉しい。

準広角/標準レンズとして愛用される35mm、オーソドックスな広角28mmの中間の31mmという画角は、適度なパースと豊富なボケ味のどちらも楽しめるだろう。広くもなく狭くもない、絶妙な画角のスナップにトライしてみたくなる。


smc PENTAX-FA 31mmF1.8AL Limited
◇   ◇   ◇

空き地とスカイツリー。通りかかったユニークな風景も準広角の31mmなら1枚の写真に封じ込むことができる。

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グッと近づいて撮れば、パースを感じられつつボケ味も豊かな写真に。標準画角以上のレンズでは出すことのできない世界観だ。

気軽に使える実は最新レンズ

HD PENTAX-FA35mmF2

以前から人気のあったsmc PENTAX-FA35mmF2 ALをベースに、HDコーティングを施した最新レンズ。さすがに鏡胴の質感などはLimitedレンズには及ばないものの、代わりに軽量化もされており、長時間の撮影の負担を軽減してくれる。

フォーカスリングは細くなったが、凸量のあるゴムびきで操作性は上々だ。

花形フードには円偏光フィルター操作のための窓が付いているほか、汚れに強いSPコーティングがレンズ前面に施され、タフに使い込めそうだ。

HDコーティングの実力はいかに、と思っていたが、非HDコーティングのものと比べると一段上の抜けの良さが感じられる。開放からコントラストも優秀で、安心して使うことができる。


HD PENTAX-FA35mmF2
PENTAX LXに装着

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開放F2でボケ味も豊か。少し絞ると、多角形の絞り形状が点光源に出るが、フィルム好きとしてはこのくらいの個性があった方が好ましい。

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あまりのクリアで抜けの良い描写に驚いた1枚。室内の弱い光を的確に捉え、団子を美味しそうに適度なコントラストで描写してくれた。

スナップに好適なLimitedパンケーキ

smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited

これぞLimitedレンズの風格。鏡胴の上質な素材と見事に融合したフードも魅力的だが、これを断腸の思いで取り外すと、このレンズがパンケーキレンズであることに気づき、この姿こそが真骨頂と思えてしまう。

フォーカスリングは細め。シルバーカラーとブラックボディの組み合わせは目立つこと間違いなしだ。

正真正銘の標準画角を追求した結果誕生した43mmという焦点距離。ファインダーを覗いた時の感覚は、まさにナチュラルでとても使いやすい。

絞り羽根は8枚でボケ味も自然。気軽に持ち出せるパンケーキレンズでは珍しい開放F1.9の大口径という点も魅力だ。


smc PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited
PENTAX LXに装着

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かなり強い逆光で撮影しているが、ゴーストもほとんど見られず、鮮やかに梅の花を写すことができた。ボケ味も滑らか。基本性能の高さを感じ取ることができた。フィルムらしいトーンでありながらシャープな描写。

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開放F1.9のため、夜の撮影でも手持ちで対応できる。フィルムは感度400のポートラ。前ボケも美しく、イルミネーションの撮影も楽しくなるレンズ。

極めてコンパクト・高画質な中望遠レンズ

smc PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited

現行レンズではもちろん、過去の中望遠レンズの中でもかなりコンパクトな1本ではないだろうか。カメラに装着した時もスッキリ。中望遠レンズは使いたいものの、カメラとのバランスが崩れることを嫌う人でも納得のパッケージングだ。

一方で前玉は大きく迫力がある。Limitedレンズの中で最も精悍な雰囲気だろう。フィンガーポイントはこだわりの七宝焼き。七宝焼きはペンタックスで度々使用される技法だ。

大口径中望遠レンズならではの豊かなボケ味、ゴーストの少ないコントラストに優れる描写が得意。光学設計のこだわりに加えて、取り回しが楽なために「常用中望遠レンズ」という変わった立ち位置で楽しめ、日常的でありながらドラマチックな切り取り方を楽しむことができる。


smc PENTAX-FA 77mmF1.8 Limited
PENTAX LXに装着

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まさに気軽に持ち運べる中望遠レンズだからこその1枚。語らい合う素敵なお二人をスナップさせていただいたが、一瞬の切り取りとボケ味を1枚の写真に同居させることができた。

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この前ボケの美しさは中望遠レンズならでは。前ボケを活かした写真を楽しむことができる。

まとめ

FA-Limitedレンズはとにかくスタイリッシュ。そして今回は激レアなブラックチタンのLXをお借りするという、緊張はするものの一生の記念になる企画に参加できて光栄だった。わたしは体が小さく常に中望遠レンズの大きさに苦慮している身だったので、特にsmc PENTAX-FA 77mmF1.8 Limitedの取り回しやすさに感動した。

そしていつもは現行レンズ+AF一眼レフカメラでフィルム撮影をすることが多いが、LXのシャッター音やフィルム巻き上げの手触りなどは心地よく、現行レンズ+MF一眼レフの組み合わせはもっと注目されて良いと感じた。

今回は全てポートラ400を使用して撮影。プロフィルムならではの階調表現と粒状性の良さは格別で、この利点を現行レンズを使うことでより味わうことができると再確認した。

制作協力:リコーイメージング株式会社

山本春花

(やまもとはるか)東京都生まれ。雑誌・書籍の撮影を中心にフリーランスで活動中。写真雑誌「snap!」の企画・編集にも参加。2014年より自身のブログで、女性モデルを被写体としたポートレートシリーズ「乙女グラフィー」の連載を開始。若い女性に対するコンプレックスの解消や、自らの“老い”に向き合うことをテーマとしており、同年開催されたアートフェア「台湾フォト」に出展された。2018年8月、スタンダーズより同タイトルで写真集を上梓。