【新製品レビュー】カシオEXILIM Hi-ZOOM EX-H20G
風景に強い24mm相当(35mm判換算)からの10倍ズームレンズに加えて、長寿命バッテリー、さらに屋内などでもモーションセンサーによる自律測位が可能なハイブリッドGPS機能まで備えたモデル。有効1,400万画素CCDに新開発の「EXILIMエンジンHS」を搭載。「超解像」技術との組み合わせで15倍までの「プレミアムズーム」も可能としている。
実勢価格は3万9,800円程度。シャンパンシルバーとブラックの2色が用意されている。発売は11月26日。
■600枚の大量撮影が可能
EXILIMのHシリーズはもともとちょっとクセのあるデザインだが、本機はさらに上面にGPSアンテナの膨らみまであったりするので、けっこう好き嫌いは分かれるのではないかと思う。グリップ部にはわずかながら突起が設けてあり指がかけられるようになっているものの、指があたる部分はつるつるなので、汗などで滑ってしまう。ちょっと気になった部分だ。
レンズは24-240mm相当でF3.2-5.7。広角端も望遠端も少々暗めのスペックだが、不満に感じるほど暗くはない。ただし、ベース感度がISO80と低めなので、室内などの暗いシーンでは注意が必要だ。もっとも、センサーシフト式の手ブレ補正機構を内蔵しているので、大きな心配はいらないだろう。
記録メディアは、14.5MBの内蔵メモリとSDXC/SDHC/SDメモリーカード。実写でのファイルサイズ(14M、高精細-F)は平均で約6.6MBだった。
電源は容量1,950mAhのリチウムイオン電池。CIPA基準の撮影可能枚数は600枚。よほどの大量撮影派でもなければ予備の電池はなくても平気だろう(もちろん、持っていたほうが安心できるのはいうまでもないが)。
レンズは24-240mm相当の光学10倍ズーム。開放F値はF3.2-5.7と明るくはないが、センサーシフト式の手ブレ補正機構を備えている |
ズームの広角端 | こちらはズームの望遠端。10倍ズームのわりにはそれほど長くは伸びない |
記録メディアは内蔵メモリー14.5MB+SDXC/SDHC/SDメモリーカード。電源は容量1,950mAhのリチウムイオン電池を採用している | 背面の操作部はこんな感じ。ボタンの表面がつるつるなので、爪で押そうとすると滑ってしまうのが気になった点 |
背面右手側上隅にある動画専用のシャッターボタン。解像度は1,280×720ピクセル、フレームレートは30fps |
■撮影場所をその場で確認できる面白さ
一番の売りはハイブリッドGPS機能だ。GPS電波が拾えない地下などでも、モーションセンサーのはたらきによって自律測位が可能。そのあたりは「カシオEXILIM EX-H20Gの『ハイブリッドGPS』を試す」を参照していただきたいが、電源をオンにしたときや屋内から屋外に出たときにも、受信できているかどうかを意識せずに使えるのは気楽でいい。
撮影した場所の緯度と経度、カメラが向いている方向が記録されるだけでなく、その場所の地名を表示したり、写真に焼き込んでくれたりする工夫もあって楽しめる。この地名は約100万件のデータが内蔵されているそうで、国内はもちろん、海外の主要な都市のデータも入っているとのこと。旅行好きにはうれしい仕様といえる。
すごいのは、カメラが地図データを持っていること。上面の「地図」ボタンを押すと、液晶モニターの画面に現在位置を中心とした地図が表示される。それまで移動してきた道筋も見られるし、地図の範囲で撮った写真も並べて見せてくれる。データの容量の問題もあるのだろう、地名などはそれほど詳しくは出てくれないが、Google mapを持ち歩いているような感じである。
筆者個人は、GPSにはあまり興味は持てなかったが、こういう見せ方をしてもらえると、ぐっと欲しい度が上がる。パソコン上で何らかの処理を必要とするようでは面倒くささが先に立ってしまうが、デジタルカメラが持つ「撮ったその場で写真が見られる」楽しさを「撮ったその場で地図といっしょに写真が楽しめる」かたちに拡張しているのがいいところだ。
12月6日に公開された最新ファームウェア(バージョン1.01)によって、カメラ内のログデータをGoogle Earthなどで利用できるKMLファイルとして出力できるようになった点にも注目したい。初期状態では、ログデータはカメラ内に保持されるだけで、液晶モニター上で見るしかなかったが、新ファームを適用することでメモリーカードに保存できるメニューが追加される。
上面にあるGPSアンテナ。ここだけ素材が違うし、こんもり膨らんでいるので、デザイン的にはちょっと違和感がある |
右の「地図」ボタンを押すと画面に地図が表示される。左の「現在位置」ボタンを押すと、今いる場所を中心にした地図に切り替わる | 屋外で地図を表示してみた。画面左上のアイコンは電波受信状態を示すもの。十字キーで移動、ズームレバーで拡大/縮小が可能だ |
GPS機能をオンにしておくと、電源を切っていても間欠的に一情報を取得。さらにモーションセンサーを利用して地下などでも測位し続ける仕様だ | 「緯度経度記録」をオンにしておくと、画像に緯度と経度、カメラが向いている方向が記録される |
「地名スタンプ」は撮影した場所の地名やランドマークの名前を写真に焼き込んでくれる機能。日付も入れられるし、記念写真には便利だ | 実際の地図はこんな感じ。赤い丸が通った道筋(外れてるのもあるけど)、水色のは写真を撮った場所とカメラを向けた方向をあらわしている |
こちらは再生時の画面。緯度と経度の情報が表示される |
■超高解像技術や連写パノラマ機能も
カシオらしく、カメラとしての機能も豊富なところに、新しく「超解像」技術を利用した「超解像高画質」や「プレミアムズーム」も加わった。
画面の部分部分に応じた処理を施すことでシャープ感を高める効果を持つ「超解像高画質」は、パナソニック機に比べると少々効果がきつく感じられる。ピクセル等倍で見ると輪郭部分がややガサついてしまう。50%縮小ではくっきりとした画面になるのを見ると、おそらくA4サイズ以下のプリントでの仕上がりを意識したチューニングなのだろう。
デジタルズームに「超解像」を組み合わせた「プレミアムズーム」は光学ズームと併せて15倍。240mm相当の望遠端が360mm相当になる。やはり輪郭部分がガサッとして見えるが、あまり大きなサイズにプリントしないのであれば十分な画質と言える。
画像処理には従来よりもパワーアップした「EXILIMエンジンHS」を搭載しているが、それでもなお「超解像高画質」、「プレミアムズーム」をオンにすると、撮影後の処理待ちが生じてしまう。筆者個人としては、ちょっと常用は難しいかなぁ、という印象。ここぞというシーンでだけ使うようにするのがいいだろう。
「スライドパノラマ」も面白い。機能としてはソニーの「スイングパノラマ」と同じ、連写+合成によるパノラマ画像生成機能だが、動作としては富士フイルムの「ぐるっとパノラマ」に近い。ソニーのはカメラ側の記録スピードに合わせてカメラを振ってやる必要があるが、こちらはカメラを振る手の動きに合わせて画像が記録されていくタイプなので、三脚撮影がやりやすい。カメラの揺れが抑えられる分、横長画面で撮るときのカメラの振りの安定度を高くできる。
「超解像高画質」はオン/オフのみで、効果の強弱のレベルは変えられない | 「超解像ズーム」をオンにすると、ズームの望遠端が15倍まで拡張される |
「超解像ズーム」をオンにしてめいっぱい望遠にズームした状態。緑の三角マークが光学ズームの望遠端を表している | どちらの「超解像」も処理には時間がかかるので、常用するのはちょっとためらわれる |
■まとめ
24mm相当からの光学10倍ズームにハイブリッドGPSの組み合わせに、地図表示機能まで備えているのだから、まさに旅行にはうってつけの存在。ログデータの出力機能も追加されたおかげで、撮ったあとの楽しさも増えたと言える。写真+GPSの楽しさを知っている人にはもちろんだが、面白いらしいけど面倒くさそうな気がしてGPSを避けていた人にこそおすすめしたいカメラだと思う。
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
・画角
光学ズームの範囲は24-240mm相当。デジタルズームと「超解像」技術を組み合わせた「超解像ズーム」をオンにすると360mm相当になる。ピクセル等倍で見ると、いかにもデジタルズームっぽい写りではあるが、単純なデジタルズームのような見苦しさはあまり感じられない。
広角端(24mm相当) 4,320×3,240 / 1/250秒 / F7.5 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.3mm(24mm相当) | 望遠端(240mm相当) 4,320×3,240 / 1/640秒 / F5.7 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 43mm(240mm相当) |
超解像ズーム(360mm相当) 4,320×3,240 / 1/800秒 / F5.7 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 43mm(240mm相当) |
・超解像高画質
ピクセル等倍で見ると、輪郭部分のシャープネス処理の度合いが強めになっているのがわかる。一方、空などの面の部分はほとんど変化が見られない。処理に時間がかかるのは難点だ。効果はやや強すぎるようにも見えるが、A3など大きなサイズにプリントするのでなければ悪くないチューニングだと思う。
超解像オフ 4,320×3,240 / 1/250秒 / F8.4 / -0.7EV / ISO80 / WB:オート / 6.1mm(34mm相当) | 超解像オン 4,320×3,240 / 1/250秒 / F8.4 / -0.7EV / ISO80 / WB:オート / 6.1mm(34mm相当) |
・感度
感度の設定範囲はISO80からISO3200まで。ピクセル等倍で見て満足できる画質が得られるのはISO200までだ。ISO400以上はノイズによるザラツキはかなり抑えられているものの、ノイズ処理によるディテールのつぶれが目立ってくる。が、小サイズのプリントであれば、ISO1600でもそれほど不満には感じないだろう。
ベース感度はISO80と心持ち低め。上限はISO3200までとなっている |
ISO80 4,320×3,240 / 1/250秒 / F3.2 / 0.3EV / WB:太陽光 / 4.3mm(24mm相当) | ISO100 4,320×3,240 / 1/320秒 / F3.2 / 0.3EV / WB:太陽光 / 4.3mm(24mm相当) |
ISO200 4,320×3,240 / 1/640秒 / F3.2 / 0.3EV / WB:太陽光 / 4.3mm(24mm相当) | ISO400 4,320×3,240 / 1/250秒 / F7.5 / 0.3EV / WB:太陽光 / 4.3mm(24mm相当) |
ISO800 4,320×3,240 / 1/500秒 / F7.5 / 0.3EV / WB:太陽光 / 4.3mm(24mm相当) | ISO1600 4,320×3,240 / 1/1000秒 / F7.5 / 0.3EV / WB:太陽光 / 4.3mm(24mm相当) |
ISO3200 4,320×3,240 / 1/2000秒 / F7.5 / 0.3EV / WB:太陽光 / 4.3mm(24mm相当) |
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・作例
カメラを縦位置にして撮った「スライドパノラマ」。左右方向に振ると360度、7,680×720ピクセルの横長画面で撮れる 4,320×1,280 / 1/2,000秒 / F7.5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 4.3mm(24mm相当) |
2010/12/13 15:34