【新製品レビュー】シグマDP2s

Foveonセンサーならではの画質は健在。さらにAFが高速化
Reported by 大浦タケシ

 先般、CP+2010にて発表のシグマ「DP2s」が発売された。手許にも製品版が早速届いたので、前モデル「DP2」からの進化を見てみることにしたい。ちなみに現時点におけるDP2sの販売価格は、大手量販店で6万9,800円前後である。

 DP2sの進化のひとつが、AFスピードだ。シャッターボタンの半押しを開始すると、AFの迷いが以前より少なく速やかに合焦する。その速さは一般的なコンパクトデジカメを大きく凌ぐまではないが、フォーカシングによるレンズ移動量が他よりも大きいことを考えればなかなかの速さといえる。これはDP2sの内蔵する映像エンジン「TRUE II」のアルゴリズムをより最適化した結果とのこと。AFに関していえば、ストレスを感じるようなことはほとんどないだろう。

AFスピードはDP2の約2倍

 一方、ストレスといえば、画像処理速度である。DP2に限らずこれらまでのDPシリーズは近年のデジタルカメラとして極端に遅いものであったが、これについてもわずかながら向上している。

 そこで、DP2sのAFスピードと撮影した画像の書き込み時間の進化を検証してみることにした。AFスピードはあらかじめピントを無限遠に合わせておき、50cmほど離れた被写体をターゲットに、シャッターボタンの半押しを開始したときから合焦までのタイムを計測。読み込み時間については、AF合焦後シャッターボタンを全押しした瞬間から読み込んでいる状態を示すLEDランプの点滅が終わった直後までのタイムとした。記録フォーマットはRAWに設定。AFスピード、読み込み時間とも10回行った計測の平均値としている。

 結果は、AFスピードではDP2sが0.71秒、DP2が1.47秒。書き込み時間は、DP2sが6.67秒、DP2が7.32秒となった。AFについてはDP2の半分以下のタイムで、前述のとおり大きく改善されている。読み込み時間は、正直にいえばもっともっと頑張って欲しいところであるものの、前モデルとくらべると向上していることが分かる。なお、結果はあくまでも筆者自身による拙い方法によるものであり、被写体までの距離や画質、使用する記録メディアのスピードクラスなど諸条件で大きく変動があることをご承知おき願いたい。

ボタンの視認性向上や省電力機能の追加

 DP2からの視覚的な変更点は、背面部の比較写真を見てもらえば一目瞭然であるが、AEL、QS(クイックセット)、MENU、再生、液晶モニター表示の各ボタンに対し白色の表示が加わったことだ(従来、白色であった再生関連の表示は赤色に変更)。これまでDP2のみならずDPシリーズにはこれらの表示がボタン上に小さくグレービングはされていたものの、白い塗料を流し込んで見切りをよくするような工夫は施されていなかった。そのため、筆者のような年齢的に視力の低下がはじまっているユーザーはボタン操作に迷うことも多く、ウィークポイントのひとつと感じていた部分である。

外観上大きく変わったのがカメラ背面部。見くらべてみると一目瞭然だが、DP2sのほうがボタンの表示がはるかに把握しやすいDP2、DP1sと同様「SET UP」のメニューは、撮影モードから呼び出す

 このボタン類の表示のリニューアルはちょっとしたことに過ぎないが、ボタンの視認性が圧倒的に向上し、操作はたいへん快適になった。個人的には、ある意味、AFスピードや書き込み速度の向上よりも実のある進化に思えるほどである。ちなみに、従来のDPシリーズユーザーに対しては、有料でもいいので、シールを配布するなどシグマに対応を望みたいところである。ほかの外観上の違いについては、カメラ上部の「DP2」と書かれたディカールが「DP2s」となった部分以外、変化はない。

カメラ上部の違いはディカールのみ。正面部に関していえば、まったく同じだ内蔵ストロボは従来と同じ手動ポップアップ式となる。ガイドナンバーは6(ISO100)

 DP2から新たに加わった機能としては、DP1sにも搭載される「パワーセーブモード」がある。レンズ側に常時供給した電力を、カメラがスリープ状態に入ると同時にカットするもので、待機電力の節約を目的とする。この機能をONにすると、OFFのときとくらべ起動が遅くなるが、もともとバッテリーの持ちに心細さを覚えるカメラなので、少しでも効率よくバッテリーを使いたいユーザーは積極的に活用してみるとよいだろう。

スリープ状態に入るとレンズへの電力をカットする「パワーセーブモード」を備える。この機能によりバッテリーの持ちも向上している

 そのほか、イメージセンサーなど撮影に関する部分についてはDP2からの変更は見受けられない。これはDP2sのカタログに掲載された作例がDP2のものと同じことからも理解できる。おさらいまでに主要スペックを見てみると、APS-CサイズのFoveon X3センサーは、有効画素数1,406万画素。最大記録解像度は2,640×1,760ピクセル(=464万画素)となる。ISO感度はRAW設定時でISO50~3200、JPEGではISO50~800。搭載するレンズおよび液晶モニターの仕様にも違いはなく、使用するバッテリーも同一。ボタンレイアウトも同じである。

バッテリーにも変更はないが、カメラ側の省電力設計のため従来よりも持ちはよくなっている。使用メディアもSDHC/SDと変更はない別売アクセサリー、ビューファインダー「VF-21」と専用フードアダプター「HA-21」を装着してみた。精悍な印象を受ける

ノイズ低減機能を新搭載したSIGMA Photo Pro 4.0

 同梱される画像ソフト「SIGMA Photo Pro」は、バージョンが4.0にアップした。変更点は、RAWからの画像生成時にノイズの低減を行なうことができるようになったことだ。DP2の高感度でのノイズレベルはお世辞にも褒めたものでなく、センサーサイズの小さいコンパクトモデル並みか、それ以下だったので、大きな進化といえる。なお、ノイズの低減機能はRAWのみ対応し、ISO400以上で撮影した画像で有効になる。

SIGMA Photo Pro 4.0調整パレットにノイズリダクションが表示された状態

 DP2sに限らずDPシリーズは、コンパクトでも上質の画像を楽しみたいデジタルユーザーにはピッタリのカメラである。RAWでの撮影が基本だが、画像ソフトでしっかり追い込んで生成すれば、小さなカメラで撮影したとは思えないほどの品位の高い画像を得ることができる。また、よくいわれることだが、“当った”ときの描写は本当に素晴らしく、デジタル一眼レフをも凌駕してしまうほどだ。撮影直後の画像の書き込みに他のカメラでは考えられないほど時間がかかるなど使い勝手の悪いところもあるが、反面デジタルをディープに楽しむにはこれ以上のカメラはない。

お馴染みのクイックセットの画面。十字キーにより直感的な設定が可能だ

実写サンプル

 作例はRAWで撮影し、付属する画像ソフト「SIGMA Photo Pro 4.0」でJPEGに現像した。なお、画像補正などは一切行なっておらず、撮影時の設定のままとしている。

カラーモード

 カラーモードは、RAWの場合同一画像を「スタンダード/ビビッド/ニュートラル/ポートレート/風景」に生成している。「白黒/セピア」はJPEGでの撮影時のみ選択が可能なカラーモードだ。

※共通設定:DP2s / 2,640×1,760 / F5.6 / ISO100 / WB:オート

・RAW

スタンダードビビッドニュートラル
ポートレート風景

・JPEG

スタンダードビビッドニュートラル
ポートレート風景白黒
セピア
感度

 RAWの場合、SIGMA Photo Pro 4.0ではISO400からノイズリダクションの強弱が選択可能となる。作例ではデフォルトの「標準」のほか、「強め」に設定した画像も掲載している(輝度ノイズはデフォルトの「通常」)。なお、JPEGの画質モードを選択した場合、最高感度はISO800までとなる。

※共通設定:DP2s / 2,640×1,760 / F8 / +0.7EV / WB:オート

・RAW

ISO50ISO100ISO200
ISO400ISO400(色ノイズ低減「強め」)ISO800
ISO800(色ノイズ低減「強め」)ISO1600ISO1600(色ノイズ低減「強め」)
ISO3200ISO3200(色ノイズ低減「強め」)

・JPEG

ISO50ISO100ISO200
ISO400ISO800
作例
DP2s / 約0.8MB / 1,760×2,640 / 1/250秒 / F6.3 / +1.3EV / ISO100 / WB:晴れDP2s / 約0.5MB / 2,640×1,760 / 1/80秒 / F4 / +1.3EV / ISO100 / WB:オート
DP2s / 約1.9MB / 2,640×1,760 / 1/125秒 / F4.5 / +1EV / ISO100 / WB:オートDP2s / 約0.6MB / 1,760×2,640 / 1/200秒 / F4 / +1.3EV / ISO100 / WB:オート
DP2s / 約1MB / 1,760×2,640 / 1/125秒 / F4.5 / +0.3EV / ISO100 / WB:晴れDP2s / 約1.1MB / 2,640×1,760 / 1/200秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / WB:晴れ
DP2s / 約0.7MB / 2,640×1,760 / 1/1,250秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:晴れDP2s / 約1.9MB / 1,760×2,640 / 1/200秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / WB:晴れ
DP2s / 約1.1MB / 1,760×2,640 / 1/250秒 / F7 / +0.3EV / ISO100 / WB:晴れDP2s / 約0.7MB / 2,640×1,760 / 1/160秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO100 / WB:晴れ
DP2s / 約1.9MB / 1,760×2,640 / 1/160秒 / F5 / +0.3EV / ISO100 / WB:晴れDP2s / 約2.8MB / 1,760×2,640 / 1/200秒 / F5.6 / +1.3EV / ISO100 / WB:晴れ
DP2s / 約1.1MB / 1,760×2,640 / 1/50秒 / F4 / -0.7EV / ISO100 / WB:オートDP2s / 約1.8MB / 2,640×1,760 / 1/60秒 / F3.2 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート
DP2s / 約1.2MB / 1,760×2,640 / 1/200秒 / F4 / +0.7EV / ISO100 / WB:オート




大浦タケシ
(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。

2010/4/1 00:00