新製品レビュー
Sigma BF
高い品位のボディに加え、“シグマ史上もっとも快適なカメラ”の一面も
2025年4月4日 07:00
新生シグマ話題の1台
「CP+ 2025」直前に発表され、独特のルックスで話題を呼んだシグマの新型フルサイズミラーレスカメラ「Sigma BF」。パシフィコ横浜でのシグマブースでは、このカメラを目当てに来場者が長い列を作ったほどだ。
さっそくそのユニークなデザインと写りがどのようなものか見てみよう。なおスペックなど詳細は本誌別記事や、シグマ公式サイトを参照してほしい。
魅力的なルックス
アルミニウムの塊から7時間かけて削り出された継ぎ目のないユニボディ構造は、非常に高い剛性感と特徴的な外観を実現している。
Lマウントを採用したボディはシンプルで、天面にはシャッターボタンとマイク穴のみ。右手側にはストラップホール、左手側にはUSB type-Cポートがあるだけだ。
底面にはバッテリースロットと三脚穴が存在している。メモリーカードスロットはなく、内蔵の約230GBのストレージに撮影したデータを格納する。
背面は3.15型約210万ドット静電容量方式タッチパネルディスプレイと、ステータスモニターの小窓、センターボタンを備えたダイヤル、3つのボタンがあるのみ。「fp」シリーズもシンプルだったが、よりソリッドで塊感のあるボディになっている。
見ての通りグリップはない。その部分はおろし金のような凸凹の加工がされており、これが意外と持ちやすい。プロトタイプではもっとギザギザとしており「痛い」という評価があって、現在の加工に落ち着いたとのこと。
鋭く見えるボディのエッジ部も「角張っていて持っていると手が痛くなるんじゃないか」と心配していたが、慣れると手に伝わってくるエッジ感が心地よく思われるほどであった。
右手部は背面下部の角が丸められており、背面上部のサムグリップとともにホールド感向上に寄与している。
また左手でレンズをホールドした際にあたる部分も角が丸められているので「痛い!」と感じる人は少ないのではないだろうか。
「fp」シリーズユーザーはシャッターボタンが押しにくいと感じるかもしれない。ちょっと外側に位置しているからだ。
新機軸のユーザーインターフェース
斬新なルックスがクローズアップされるが、ユーザーインターフェースにも注目だ。「BF」はミラーレスカメラとして初めて、感圧式のハプティックボタンおよびダイアルを採用している。スマートフォンでおなじみのアレである。
では操作部を見ていこう。まず1番下にあるのがパワーボタンだ。長押しで電源のオンオフ、チョイ押しでスリープと復帰ができる。
その上にある▶印のついたプレイバックボタンは、長押しで撮影画像を再生できる。秀逸なのは軽くボタンに触れていると、最後に撮影したカットをプレビューできるところだ。これは便利。
右にある大きなオプションボタン(・・・)は各種設定を呼び出すことができる。
円形のダイヤルは中央のボタンを押すと撮影メニューをディスプレイ上に表示できる。それをダイヤルの十字操作で選択して実行するかたちだ。丸いアイコンが表示された場合はディスプレイをタッチして操作可能である。
「BF」は既存のデジタルカメラにあったモード(P、S、A、M)を廃し、写真の仕上がりを決定づける「絞り値」「シャッタースピード」「ISO感度」「カラーモード」「露出補正」を指先ひとつでアクセスできるように再定義したという。
メニュー内の「絞り値」や「シャッタースピード」を自分で設定すれば各種優先オート、「AUTO」にすればプログラムになるというスタイルだ。まあ当たり前のことなのだが、この「モード」をあまり意識させないようなインターフェースにシグマは力を注いでいるようだ。
さらに、メニューに入らなくても、ダイヤルの十字キー操作で設定が可能になっている。ステータスモニターを見ながら各種の操作ができる。
文章では分かりづらいと思うので、シグマ公式サイトのムービーを参照してほしい。
また各地で開催予定のタッチ&トライイベントで体験するのもオススメだ。
「fp」シリーズから強化されたカラーモード
「TEAL AND ORANGE」などが好評だった「fp」シリーズのカラーモードだが、それに「RICH」と「CALM」という新モードが追加された。仕上がりはこのような感じだ。
ブラブラ実写インプレッション
さて、まず確認しておきたいのは、同じ2,400万画素の「fp」とはだいぶ色味の傾向が異なることだ。「BF」のオートホワイトバランスはかなり暖色傾向であった。
クロネコを撮った。驚いたことに高速かつ正確にネコの瞳を認識し合焦した。「BF」の位相差検出方式+コントラスト検出方式AFは、クロネコが動いてもしっかりと追従しその様子を撮影できた。
ディテールも豊富だ。錆びた看板を撮ったが、そのリアル感は「fp」シリーズのそれであった。
角張った「BF」のボディは持ちにくいと予想したがいい意味で裏切られた。縦位置でも意外とホールドしやすかったのだ。ただストラップホールは両側に欲しかった。試用時は落下させないようヒヤヒヤであった。
味わい深いモノクロームモードもシグマ伝統だ。トーンが豊かで好感が持てる
シグマ代表取締役社長の山木和人氏が言う「スマートフォンのように気軽に撮影できる」というのにはちょっと疑問符がつく。「BF」自体はシンプルでいいが、レンズを装着するとその体積はかなりのもので、スマホの軽快さはない。そのためにはよりコンパクトなレンズが必要だ。そう、パンケーキスタイルのレンズがだ。
写りはほぼ「fp」と同等と言っていい。ただ起動やAFなど、すべての動作が高速で快適に感じられる。「BF」から「fp」に持ち替えるとシグマらしくてホッとしたほどである。
風に揺れるサクラの花を指先でタップすると、スーッとAFが正確に追従してくれた。また多点モードでも意図したところに合焦した。
「BF」に組み合わせるレンズはやはり「Iシリーズ」が似合うだろう。絞りリングを備えているので、カメラ側での操作が減らせてクイックに撮影できるからだ。
仕事柄、最近よくバーに行くのだが「BF」はカウンターの雰囲気を壊さないカメラだと思った。寄れないレンジファインダー機より使えるし、ルックスもいい。シャッター音も静かだし、話題の元になる1台だと感じた。ただフリッカーと手ブレには要注意である。
この「BF」はどんなシーンに合うだろうか。撮影が主目的でない旅や、ちょっとした外出、パーティーなどにマッチしそうだ。また電子シャッターのみなので動体撮影にはあまり向かないだろう。スマホ以上デジカメ未満的なシチュエーションや使い方にハマりそうだ。
弱点はバッテリーの持ちだ。公称値で約260枚(静止画)ということだが、ブラブラと撮り歩いていても1日2本はバッテリーが必要に感じた。しっかりと撮影するならば合計3本はバッテリーが欲しい。モバイルバッテリーで充電する時間があるのならそれでもいいかもしれない。
JPEG + RAW(DNG)で撮影していたが、手持ちの最新版「SIGMA Photo Pro」では「BF」のDNGは展開できなかった。カメラのリリースとともに新バージョンが登場するのだろうか? シグマの新UIにマッチしたデザインになればうれしいところだ。
高感度特性は「fp」同様に良い。このカットはISO 8000だが、暗部にノイズこそあるものの整っており、まずまずの画質といったところか。ボディ内手ブレ補正機能がないのでここは歓迎したい。
他に気になった点はディスプレイだ。快晴の日中ではやや見づらく、もうちょっと輝度が高いといいなと思った。可動式ではないので、しっかりとフレーミングするには最大輝度に設定する必要があったが、それでも暗かった。Iシリーズのシルバーモデルも晴天時にレンズの絞り値が読み取りづらい。
また使用中にほんのりとマウント部分の発熱を感じられた。製品版では改善されるのかもしれない。
「BF」はひとまず絞りとシャッタースピード、ISO感度をオートに設定して、AFを多点モードにしてしまえば、そつなくいい絵が撮影できるカメラに仕上がっていると思う。
シャッターボタンを半押しにすれば、背面ダイヤルでサッと露出補正が可能なので、あらかたのシチュエーションで失敗なく撮影ができるはずだ。多少ホワイトバランスがおかしいケースも見受けられるが、その場合はマニュアルで設定すればいいだろう
まとめ
さて、この「BF」を短い貸出期間中に使って感じたことは、ズバリ「シグマ史上もっとも快適なカメラ」だということだ。
何よりも起動がとても速い。そしてAFも高速で、被写体検出も優秀だ。追従性もいい(静止画時)。さらに230GBの内蔵ストレージが素晴らしくスピーディーでサクサクと連続再生も可能だ。L-Logで6Kムービーも録れる。「シグマらしくない!」と起動しただけで思ってしまったほどである。
ただ、“写り”は「fp」とほぼ同等である。超高速で超快適な「fp」だと思っていい。そして多くのシグマユーザーが望んでいた「X3ダイレクトイメージセンサー」ではないということを忘れないでおきたい。
また新しいUIは慣れれば使いやすいかもしれないが、他機種と一緒に使うと混乱するかもしれないと感じた。使い始めはかなり戸惑ったが、日を追うごとに慣れてしまった。そこで「fp」シリーズを使うと、「えっと」と考えてしまった。動作のスピードも段違いなのでそれも原因かもしれない。
「BF」のボディはたしかに工作精度も高く、品位を感じられるものになっている。そのボディデザインに魅せられてアクセサリーやガジェット感覚で購入する人もきっといることだろう。ただ当然のことだが、7時間かけて削り出したアルミのボディだからといって、写真の「画質」が向上することはない。いい写真が撮れるということもないだろう。あるとしたらその製品の裏側にある「物語」によって触発され湧き上がる「写欲」が、より数多くのシャッターを切らせてくれることであろう。