新製品レビュー

COOLPIX P1100

3,000mm相当の超望遠撮影が簡単に…野鳥撮影での実力は?

2025年2月に発売されたニコン「COOLPIX P1100」は、1/2.3型のイメージセンサーを搭載したレンズ一体型デジタルカメラです。

特長はコンパクトなボディに、超広角24mm相当から超望遠3,000mm相当までにおよぶ高倍率ズームレンズを搭載していること。2018年4月に発売された「COOLPIX P1000」のマイナーチェンジモデルにあたります。

サイズ感と操作性

実のところ本モデル「COOLPIX P1100」のスペックは、前モデルである「COOLPIX P1000」とそれほど変わるものではありません。

質量は本モデルが約1,410gで前モデルが約1,415gと5gほど軽くなっていますが、外形寸法に関しては幅が約146.3mm、高さが約118.8mm、奥行が約181.3mmとまったく同じです。外見からは両者の違いを見分けることはできません。搭載する1,679万画素1/2.3型センサーも変更はありません。

それなりのサイズなのに小型軽量とは? と思う人もいるかもしれません。しかし“24-3,000mm相当の超高倍率ズームレンズを搭載している”と考えれば、桁外れに小型軽量なボディなのが理解いただけるのではないでしょうか。1/2.3型センサーを搭載したCOOLPIXだからこそできる芸当で、APS-Cサイズセンサーやフルサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラでは、とてもこうはいきません。

コンパクトデジタルカメラでも、しっかりファインダー(電子ビューファインダー:EVF)は搭載されています。超望遠撮影ではカメラを保持するうえで、非常に頼りになる存在です。約236万ドットと、コンパクトデジタルカメラとしては贅沢な仕様となっています。

液晶モニターはバリアングル式の可動タイプ。ローアングル撮影とハイアングル撮影がやりやすいだけでなく、本モデルで動画撮影もこなしたい人への対応だと思います。サイズは3.2型で約92万ドットと、こちらもコンパクトデジタルカメラとしては十分な仕様です。

超望遠撮影に比重をおいたモデルながら、ストロボを内蔵しているのは嬉しいところ。ただし、2,000mm相当より長い焦点距離は調光範囲外となるので注意が必要です。まあ2,000mm相当の撮影でストロボ光が使えるというのも何気にスゴイ話なのですが。

一般的なコンパクトデジタルカメラのズームは、原則パワーズームとなります。たいていのコンパクトデジタルカメラはシャッターボタン同軸のズームレバーで操作をしますが、本モデルもご多分にもれず、シャッターボタンと同軸に「ズームレバー」を備えています。

「それだけがCOOLPIX P1100ではないぞ!」と言わしめるのが、鏡筒左側に備えられた「サイドズームレバー」の存在です。用途は「ズームレバー」と変わりませんが、超望遠時のカメラの保持の具合、あるいは撮影者の好みに応じて使い分けることができます。

「サイドズームレバー」の先にあるのは「クイックバックズームボタン」で、望遠撮影時に被写体を見失った時などに(望遠撮影時には良くあること)、このボタンを押すことで見える範囲が一定程度まで広がり(一時的なズームアウト)、被写体を捉えやすくなります。そして「クイックバックズームボタン」を離せば、また設定したズーム位置に戻って撮影できるという優れモノです。

光学3,000mm相当からダイナミックファインズームでもっと大きく

125倍の高倍率ズーム、24mm相当から3,000mm相当までの広いズーム域をカバーするというスペックは前モデルから変わっていませんが、改めて撮影してみてもその迫力はやはり本モデル最大の特徴だと実感せずにはいられませんでした。

例えば、ワイド端24mm相当で写した下の画像ですが、これだけだとワイド過ぎて何を写したかったのか分かりません。

COOLPIX P1100/24mm相当/絞り優先AE(1/2,000秒、F2.8、-0.3EV)/ISO 100

そこで、一気にテレ端3,000mm相当までズームインすると、そこには堤防の上で、数種の野鳥が群れ固まって休んでいる様子を写せるというわけです。ダイゼン、ハマシギ、カワウなどがいるようです。

COOLPIX P1100/3,000mm相当/絞り優先AE(1/500秒、F8.0、-0.3EV)/ISO 220

ここで光学ズームの限界なのですが、「COOLPIX P1100」には「ダイナミックファインズーム」というデジタルズーム機能が搭載されているので、さらに大きく写すことが簡単にできてしまいます。使い方も簡単で、そのまま「ズームレバー」あるいは「サイドズームレバー」をテレ側に入れるだけです。

というわけで、「ダイナミックファインズーム」でハマシギをさらに大きく写してみたのが下の画像です。Exif上ではあくまで3,000mm相当と記録されているため、何倍までデジタルズームしたのかは分からなくなってしまいましたが、デジタルズームというわりには結構綺麗に写っているので驚きます。

COOLPIX P1100/3,000mm相当/絞り優先AE(1/500秒、F8.0、-0.3EV)/ISO 140

「ダイナミックファインズーム」の最大は、250倍となる6,000mm相当。ミラーレスカメラではちょっと想像できないような超々望遠ですね。しかし、さすがにここまで拡大すると光学的にもデジタル的にも無理がくるようで、画質はそれ相応に低下していきます。どこまで大きく写したいかと、どのくらい画質を保ちたいかのせめぎ合い、と言ったところでしょうか。

COOLPIX P1100/3,000mm相当/絞り優先AE(1/500秒、F8.0、+0.3EV)/ISO 140

ユーザーの希望に応える進化点

基本的には前モデル「COOLPIX P1000」からのマイナーチェンジに留まる「COOLPIX P1100」ですが、わかりやすく進化したところもあります。その筆頭がモードダイヤルに独立して搭載されている「鳥モード」。

従来は固定されていたAFエリアが、「中央(スポット)」、「中央(標準)」、「中央(ワイド)」の3種類から選べるようになり、撮影の自由度が広がりました。

「鳥モード」はダイヤルを合わせるだけで、野鳥を撮影するために最適な設定に切り換わるという便利なもの。他の被写体を撮影するために異なる設定にしていたら突然に撮りたい野鳥が現れたなんてときに、とりあえずこのオートモードにダイヤルを合わせれば、とっさの場合でも確実に野鳥を記録できる確率が上がります。

COOLPIX P1100/1,600mm相当/絞り優先AE(1/500秒、F8.0、+0.3EV)/ISO 280

モードダイヤル上に「鳥モード」と並んで設定されている「月モード」も健在です。両者とも3,000mm相当までズームできる本モデルの特徴を生かした機能といえます。

そんな「月モード」を試してみたところ、三脚こそ必須でしたが、比較的簡単に満月を撮影することができました。ちなみに月が赤かったりもやっとしているのは、月の出から姿を見せた昇りたてだからです。

COOLPIX P1100/2,000mm相当/月モード(1/250秒、F8.0)/ISO 400

もうひとつの新機能として、シーンモードの「比較明合成」に「花火」が加わったことがあげられます。今回は試すことができませんでしたが、季節がきたら試してみたいものです。

動画性能

「COOLPIX P1100」で記録できる動画モードの最大フォーマットは「4K 30p」(3,840×2,160)です。

ただ、鳥などの良く動く被写体を撮る場合には、やっぱり60fpsが欲しいというのが正直なところ。また本モデルの使用用途を考えると4KまでいかずともFHD(1,920×1,080)で十分という人も多いのではないでしょうか。

というわけで、「FHD 60p」でサンプル動画を撮影してみたのが以下になります。「電子手ブレ補正」も非常によく効いてくれるため、望遠での動画撮影も手もちで簡単に撮ることができました。気楽に撮れる望遠での動画、これはなかなか楽しいです。

作例

ふいにコサギが餌を探しているところに出くわしたので「鳥モード」で撮影しました。「鳥モード」ではOKボタンを押すだけで指定した焦点距離にズームする機能があります(この場合は800mm相当に設定)。それを利用してとりあえず800mm相当にしてから微調整のうえ、構図を決めました。とても簡単です。

COOLPIX P1100/1,100mm相当/絞り優先AE(1/500秒、F8.0、-0.3EV)/ISO 100

オートモードの場合、感度はISO 100~1600までの範囲で選択でき、「P」「S」「A」「M」「U」「マニュアル動画モード」ではそれらに加えてISO 3200とISO 6400が選択できるという仕様。そのオートモードでの上限感度であるISO 1600で撮影したのが下の画像ですが、スマートフォンでの鑑賞やSNSへのアップロード程度なら十分に許容できる画質は維持されているように思いました。拡張感度のISO 3200やISO 6400は、どちらかといえば非常用かな? と思います。

COOLPIX P1100/2,000mm相当/シャッター優先AE(1/2,000秒、F8.0)/ISO 1600

電子シャッターを利用した約60コマ・120コマ/秒の高速連写や、シャッター全押し前の5コマが記録できるプリ撮影的な機能(先取り撮影)もあるのですが、その場合は画素数が大幅にダウンして約30~200万画素になってしまいます。加えて、AFもカワセミのように高速で飛ぶ被写体にはなかなか合わせるのが難しいといった状態。「先取り撮影」で撮った画像が以下になりますが、何度か挑戦してみたもののここまでが限界でした。

COOLPIX P1100/2,800mm相当/シャッター優先AE(1/2,000秒、F8.0)/ISO 1600

しかし高速で動く被写体を捉えるのは難しくても、比較的ゆっくり飛んだり歩いたりする被写体でしたら十分に対応できるだけの性能があります。ちょこまかと歩き回るバンを撮影しましたが、すべてのコマで完璧にピントを捉えてくれました。「連写H」(約7コマ/秒)のような通常の連続撮影でしたら、本来の1,679万画素で綺麗に撮れます。

COOLPIX P1100/1,400mm相当/絞り優先AE(1/320秒、F5.6、+0.7EV)/ISO 400

今回は野鳥を多く撮影してきましたが、何しろ24mm相当から始まる高倍率ズームを備えたレンズ一体型デジタルカメラですので、当然のように日常で目についたあれこれを記録するのにもとてもよく役立ってくれます。むしろ、遠くの被写体を手軽に撮れる望遠撮影でのスナップに新鮮な感動を覚えるかもしれません。

COOLPIX P1100/400mm相当/絞り優先AE(1/40秒、F5.6、+1.3EV)/ISO 400

まとめ

24mm相当の超広角から3,000mm相当の超望遠までを1台でカバーするカメラ、これだけで気分は爆上がりするというもの。しかも「ダイナミックファインズーム」を活用すれば、最大6,000mm相当の拡大撮影だってできてしまいます。コンパクトデジタルカメラというカテゴリーが縮小して久しい昨今ですが、本モデルのような高倍率ズームレンズ搭載モデルは依然としてその存在価値を放っているというものです。

先に触れたように、素早く動く被写体を撮るにはなかなか難しいものがあるものの、比較的緩やかな動きの被写体や、いわゆる「止まりモノ」の記録でしたら、ネイチャー撮影の分野においてこれ以上ないくらいの活躍をしてくれるでしょう。ミラーレスカメラやスマートフォンでは、決して真似できない貴重な記録を残してくれるのが、新しくなった「COOLPIX P1100」です。

本誌:宮本義朗