新製品レビュー
Kandao QooCam 3 Ultra
8K 360°動画に対応 高解像度でのDNG記録も
2024年9月26日 07:00
Kandao Technologyの新型360°カメラ「QooCam 3 Ultra」がいよいよ発売。製品版を試用できたので、その性能や使用感を紹介していく。
KandaoはVRカメラを中心として、コンシューマーから業務用まで幅広い向けカメラがラインナップされている。その中でコンシューマー向けの製品がQooCamシリーズである。
初代QooCamの登場は2018年、2020年にはいち早く8Kに対応したQooCam 8Kが発売された。その3世代目のVRカメラとして登場したのが昨年発売されたQooCam 3であり、さらにその上位モデルに位置づけられるのが今回ご紹介するQooCam 3 Ultraだ。
96MPの静止画と8K動画に対応した360°カメラ
外観はQooCam 3をちょっと大きくした感じで操作感もほぼ同じなのだが、実は中身はガラッと生まれ変わっていてAndroidベースで動作している。
ユーザーが真っ先に気づくのが記録解像度の違いであろう。静止画は96MP(13,888×6,944)、動画は8K(7,680×3,840)@30fpsにまで対応。さらにソニー製1/1.7インチセンサーに絞りF1.6という大口径の明るいレンズを採用し、暗所にも強い性能となっている。
外形寸法は71.5×103.2×26.6mm、バッテリーを含めた重量は336g。2.19インチのタッチスクリーンを搭載し、撮影モードなどの各種操作を直感的に設定できる。またIP68防塵防水性能で、本体のみで最大10メートルまでの水中撮影も可能。急な雨や水辺での撮影でも安心だ。
microSDカードの他に128GBのストレージを内蔵しているので、本体のみでも記録可能。USB Type-Cポートからパソコンに接続してデータ転送できる。
静止画ではRAW記録にも対応。解像度をアップできるモードも搭載
前述の通り静止画の最大記録サイズは9,600万画素(13,888×6,944)。コンシューマー向け360°カメラとしては頭1つ抜き出た感じだ。JPEGとDNG(RAW)の同時記録も対応しているので、あとからパソコンでじっくりと現像処理もできる。
さらに8枚連写して合成することでノイズを軽減して解像感もアップできる「DNG8」モードや、露出ブラケット撮影してHDR処理ができる「AEB」モードといったより高度な撮影も可能。画作りにこだわったプロの現場でも活躍してくれそうだ。
またGPSも内蔵しているので、マップを使った撮影地の絞り込みや、Googleストリートビューへの公開などにも利用できる。
以下のサンプルは薄暗い滝壺でAEB撮影してRAW現像したもの。
拡大して見ても解像感が高いだけでなく、暗部や岩肌のディティールも良く再現されている。若干スティッチ精度が甘い部分があるが、スティッチアプリも頻繁にアップデートされるので少しずつ改善されていくだろう。
10-bit対応で広い色域に対応。アクションカメラ的な使い方も
360°動画は最大8K@30fpsで、4chの空間音声記録にも対応している。発売の時点ではスティッチや手ブレ補正は後処理が必要となるが、今後ファームアップで本体内リアルタイムスティッチにも対応するとのこと。ただし現時点でも実際に液晶画面ではスティッチと天頂補正のされた映像を確認することができる。
流石に8K動画は従来機種と比べてかなり高画質。手ブレ補正も強力なので、走ったり階段の移動などでもスムーズな撮影ができた。
ただしこの手のカメラの中では重量があるので、自撮り棒を持って長時間歩くのには向いていないと感じた。あえて長めの自撮り棒に装着し、カメラと反対側にカウンターウェイトを付けたほうがバランスは良いかも知れない。
QooCam Studioでは360°映像のスティッチだけでなく、リフレーム機能で通常の映像としても書き出しできる。タイムラインにキーフレームを打って、切り出す方向や画角、投影変換などのアニメーションも可能。1台のカメラから通常の16:9の動画やSNS用の縦動画など、別の画角やバリエーションを作り出せる。
さらに注目したいのが「10-bit BT.2020(HLG)」記録に対応していること。従来の8-bit BT.709よりも広い色域で記録できるので、より色の再現性が高くなる。ダイナミックレンジブーストをオンにすると、明暗差のあるシーンに有効だ。
今回の作例ではステレオ音声で書き出しているが、4chマイクを搭載しているので空間音声のVR動画の制作も可能。ヘッドセットなどで閲覧すれば臨場感もバツグンだ。別売りアクセサリーのレンズプロテクターを装着すればスポーツなどの激しいアクションにも対応できるだろう。
そんなアクションカメラやVlogカメラとして使用したい場合には、いずれか片面180°だけを使用するシングルレンズモードに切り替えて最大4K@60fpsで撮影できる。もちろん編集で手ブレや回転も補正できるので、さらに用途も広がるだろう。
解像度とフレームレートの比較をしてみた。各解像度の最高フレームレートは8K@30fps、5.7K@60fps、4K@120fpsとなっている。VR映像として使用するのか? それともリフレームで切り出して使うのか? 用途に応じて使い分けられそうだ。
高解像度記録となると気になるのが熱問題であるが、ひとまず作例を撮っている最中にシャットダウンしてしまうようなことはなかった。とはいえ本体はかなり熱を持つので、実は本機には冷却用のファンが内蔵されている。静かな環境ではこのファンの音が気になる場面もありそうだが、ファンの設定は「録画静音/静音優先/冷却優先」から選択ができる。音を優先するなら録画静音、長時間録画を優先したいなら冷却優先など、用途に応じて切り替えて使用できる。またBluetoothやUSB Type-Cを利用して外部マイクを接続することも可能だ。
高解像度静止画機能の魅力。プロの現場でも活躍できる性能
最近の360°カメラユーザーの広がりを考えると8K動画が目を引くが、個人的には静止画性能に注目したい。
96MPという高解像度でDNG記録にも対応しているだけでなく、KandaoならではのDNG8やAEBの高速ブラケット撮影も最高解像度で使用できる。これはパノラマ写真のジャンルでも頭一つ抜き出た機能で、不動産業界などバーチャルツアー撮影にも威力を発揮してくれるはずだ。
もちろん動画も8K解像度だけでなく10-bit記録や4ch空間音声などにも対応しているので、高解像度/高画質が望まれるプロの現場でも活躍してくれるだろう。
よりライトな用途であれば、軽量コンパクトなQooCam 3を選択するのも良いだろう。解像度は若干落ちるが、DNG8やAEBなどのKandaoならではの機能が搭載されているのも魅力だ。
コンシューマー向け製品の中で9万6,800円は高価に感じるかも知れないが、フラッグシップモデルとしてクリエイターが業務用途でゴリゴリに使いこなせる機能が詰め込まれている印象だ。ただし若干重量があるので、三脚やマウントに装着してじっくり撮影するシーンに向いているだろう。