新製品レビュー
ライカQ3
デジタルライカの人気シリーズ 気になる進化を実写で検証
2023年6月27日 12:39
35mmフルサイズセンサーを搭載するレンズ一体型デジタルカメラ、ライカQシリーズの三世代目となる「ライカQ3」。初代ライカQから高い人気を誇り、今やレンジファインダーカメラのライカMシステムと並ぶ、ライカを代表するカメラと言える。
ライカQ2との機能的差違については既報記事をご覧いただくとして、ここでは実際に使用したインプレッションをお届けする。
変わらぬ基本スタイル。細部に進化点多数
外観のデザインはライカQ(2015年)、ライカQ2(2019年)を踏襲。正面から見ると、どの世代のモデルか見分けられないほど似ている。ラウンドした側面も継承されていて、ライカMシステムのカメラにも通ずるライカらしいスタイルだ。
しかし背面は大きく異なる。まず目立つのはチルト式になった背面モニターだ。ライカで背面モニターがチルト式になったのは初めて。使い勝手はアップしたものの、モニターに厚みが増したため、ライカQ2までの本体と一体感のあるスッキリした印象はやや薄れた。
そして背面の操作部が右手側に集中したのも特徴だ。これまでライカQ2をはじめ、ライカM11やライカSL2など、カメラのカテゴリーを問わず、背面モニターの左側にボタンが3つ(PLAY、FN、MENU)並ぶスタイルが統一されていた。しかしライカQ3ではチルト式モニターを採用したことで、十字ボタンの上にPLAY、下にMENUという配置に変わった。またFNボタンはモニターの上部に移動している。いずれライカSLシステムなどもチルト式モニターを採用したら、このレイアウトを踏襲するかもしれない。
モニター上面に2つ配置されたFNボタンは、ボタンの高さを変えてあり、押し間違えないよう配慮されているのが嬉しい。
重量もライカQ2からわずか6gほど重くなっただけなので、実際に持ち比べてみてもほぼ同じ感覚だ。チルト式モニターを採用しても重量が偏ることもなく、安定して構えられる。
MENUボタンを押すとメイン画面が表示されるのもライカQ2と同じ。そこから主な撮影設定をタッチで設定できるのも便利だ。ボタン類を極力少なくし、タッチ操作と併用することで、シンプルな操作で多機能をコントロールできる。画面上の文字もライカQ2より大きくなり、視認性がアップした。メイン画面からさらにMENUボタンを押すと、「お気に入り」項目の一覧が表示される。よく使う項目(メニュー画面の設定項目など)をお気に入りに選んでおくと素早くアクセスできる、便利なカスタマイズ機能だ。ここからさらにMENUボタンを押すと、メニュー画面のページに移動する。
有機ELのファインダーも約368万ドットから約576ドットへさらに高精細になった。ライカQ2と見比べても極端な差は感じないが、MFで画面を拡大しても滑らかで見やすく、ピントの山がつかみやすい。ただAFを駆動させると、合焦直前に一瞬だけ画面がブレるような動きがあり、撮影していて何度か気になった。ライカQ2には見られない挙動なので、ファームアップでの改善に期待だ。
レンズもライカQ、ライカQ2から受け継ぐ「ズミルックスf1.7/28mm ASPH.」。しかしAFは進化し、従来のコントラストAFに加え、ライカで初めて像面位相差AFを搭載したハイブリッドオートフォーカスシステムを採用。フォーカス移動量の少ない広角レンズのためか、通常の撮影ではライカQ2と大きな差は感じないが、動体を狙うとしっかり被写体を追尾した。さらに顔認識・瞳認識だけでなく、動物認識も搭載された。
解像力とボケをチェック。RAWサイズを選べる新機能
ご存知の通り、ライカQ3では画素数が6,030万画素のCMOSセンサーを搭載。ライカQ2の4,730万画素でもかなり高精細だと思っていたのに、ついにライカM11と同じ解像度になった。そして画像処理エンジンもLEICA MAESTEO Ⅳに進化した。このため解像力がアップしただけでなく、メリハリもアップしたように見える。ダイナミックレンジが狭くなることもなく、被写体の細かい部分まで、しっかり解像している印象だ。
ライカQ3で新たに採用されたのがトリプルレゾリューションシステムだ。JPEGだけでなく、DNG形式のRAWも6,000万画素、3,600万画素、1,800万画素に切り替えができる。「6,000万画素のDNGはさすがにデータサイズが大きくて扱いにくい」と思った人も、用途に応じて画素数が選べるのは便利だ。同条件でそれぞれの画素数で撮影し、Adobe Lightroom Classicでストレート現像したところ、仕上がりの印象はほぼ同じだが、よく見比べると画素数を少なくするほどわずかにコントラストが高くなった。これもいずれファームアップで全く同じ仕上がりに調整されるかもしれない。
トリプルレゾリューションテクノロジー
6,000万画素のLサイズ、3,600万画素のMサイズ、1,800万画素のSサイズ、それぞれのDNGデータをAdobe Lightroom Classicでストレート現像した。色調の違いはないものの、ほんのわずかだがサイズを小さくするほどコントラストが高くなった。
高解像度化で、高感度画質はどうなった?
一般に画素数が増えると、画素が小さくなり高感度が苦手になるイメージがある。ところがライカQ3の最高感度はISO 100000。ライカQ2のISO 50000から1段も強くなった。撮り比べをしても、ライカQ3はライカQ2よりコントラストが高く、ISO 50000の画質は明らかに向上している。ISO 100000ではさすがにノイズが目立つが、6,030万画素という高解像度を感じさせないレベルだ。
高感度比較
ライカQ2とライカQ3の高感度比較。それぞれISO 3200から1段ずつ上げている。ISO 3200では大きな差がないものの、ISO 6400からライカQ3はややノイズが目立ってくる。しかしライカQ2よりディテール再現には優れていてシャープな印象だ。またライカQ2はISO 25000からノイズ感が強く、シャドー部が締まらなくなるが、ライカQ3はISO 50000でもメリハリのある画質だ。ISO 100000でもカラーバランスは大きく崩れない。高感度画質の進化が感じられた。
※以下のサムネイルは、画面内のほぼ同じ範囲を切り出したもの。クリックでオリジナル画像が開きます。
気軽に使える「デジタルズーム」(クロップ)機能
画素数が6,030万画素になったことで、クロップに強くなったことも見逃せない。ライカQ2では75mm相当までだった「デジタルズーム」(クロップ機能)が、ライカQ3では90mm相当が追加された。6,030万画素のLサイズの90mm相当では、画素数は約600万画素になる。FNボタンに割り当ててクイックに呼び出せる便利な機能だ。
ただし記録サイズを落としていると、当然クロップ時の画素数も少なくなる。Mサイズでの90mm相当クロップは約400万画素、Sサイズでは約200万画素。記録画素数はクロップしたときのことも考えて選択するのがおすすめだ。
絵作りプリセット「Leica Look」をダウンロード
今回新たに追加された絵作り機能が、Leica FOTOSアプリとの連携で選べるようになる「Leica Look」だ。現在公開されているのは5種類。これらをライカQ3にダウンロードすることで、JPEG設定時に個性的な仕上がりが楽しめる。これからLeica Lookの種類も増えていくだろうから、JPEG派には嬉しい機能だ。
通信や動画機能も進化。総合力アップの注目カメラ
Wi-Fi機能もアップデートされ、スマートフォン・タブレットPC用の「Leica FOTOS」アプリとの接続が高速化された。一度ペアリングしてしまえば、Bluetooth経由でスマートフォンからカメラの電源を入れるなどの操作も可能で、画像転送も非常に速い。さらにライカQ3はUSB端子(USB Type-C)が装備されたことで、ケーブル接続も可能になった。ワイヤレスのスマートさはないものの確実な操作が行え、新たにテザー撮影も可能になった。
今回は使用していないが、動画機能が強化されたのもライカQ3の特徴。ついに8Kに対応した。装備されたUSB Type-C端子やHDMI端子を使用して、モバイルバッテリーや外部モニター等に接続できる。
一見するとライカQ2から画素数がアップし、背面モニターがチルト式になったのが主な違いかと思いきや、中身は大きく進化したのを実感した。クロップ自在のフルサイズ・6,000万画素センサーや明るい28mm F1.7レンズを搭載し、手ブレ補正や被写体認識AFといった先進機能を搭載しているコンパクトカメラはライカQ3以外に存在しない。ライカファン以外からもますます注目が集まりそうな1台だ。