私はこれを買いました!

いつでも使える便利さと、じっくり現像する喜びと

ライカQ3(鈴木誠)

年末恒例のお買い物企画として、写真家・ライターの皆さんに、2023年に購入したアイテムをひとつだけ紹介していただきました。(編集部)

神様的なM、デキる相棒みたいなQ

職業柄なのか「誰もが良いと知っているモノを買っても面白くない」的なマインドが時折発生しまして、ライカはQシリーズを買わず、M型を使い続けていました。デジタルカメラ世代としては、M型で写真を撮れることが、すなわちカメラの原理と基本操作を理解しているという控えめな誇りにもなっていたわけです。

ただ改めて写真について「何を撮って、どう仕上げるか」に集中してみたいなと思い、その折にライカQ3が発表されたので、即座にライカストアへオーダーしたわけです。必要十分に自動化されたカメラで、性能は間違いないから、あとは撮るだけだと。さも論理的行動だったかのような後付けの話を塗りたくっておりますが。

そして煩悩マックスで入荷連絡を待つ中、長期のバックオーダーという噂も聞こえてきてヒヤヒヤしましたが、秋の海外取材に間に合って良かったです。私にとっては初めてバッテリーチャージャーのいらないライカなので狙い通りの使いやすさがあり、出かける時は必ずバッグに入れている感じです。普段の取材撮影やブツ撮りもコレ1台にしてしまいました。

またライカQ2比でWi-Fi転送スピードがかなり速くなっており、加えて最近のiPhoneには持て余すほどの処理能力がありますから、これまでJPEGをスマホ転送していたのと同じ感覚でRAWデータを転送し、Lightroom Mobileで編集して即時にSNSへ上げたりもしています。と、ライカ本社の人に話したところ「Qは“スイスアーミーナイフ”のようなカメラ」と表現していました。ナルホド。

撮った写真は、時間があればMacの前に座り、Lightroom ClassicからDxO PureRAW 3のプラグインを立ち上げ、じっくりとデモザイクしなおします。6,030万画素のバッチ処理はM1 MacBook Airには重荷ですが、これがまた喜びの時間なんですね。デモザイクをしなおすと全画素がビシッと当事者意識を持ったような雰囲気で、大胆にクロップしてもアラが目立ちにくいです。カメラ内で選べる90mm相当までクロップしても、写真として伝えたい質感、カメラ専用機らしいは描写は十分伝わるように思います。

それこそPureRAWなど現像処理を工夫して高画質を引き出すというのは銀塩写真的であり、まさに小型精密カメラ=ライカの歴史に通じます。ただこれは単に画素数が多くてもダメで、レンズも相応に高品質であることが必須になってきます。だからこそライカは、自信を持ってQシリーズのクロップ機能をアピールしているのかもしれません。

写り以外でも、電源レバーの感触や、素っ気ないようで不足のない設定画面など、デジタル機器ながらソリッドな道具感を実現している部分を気に入っています。AF/MFの切り換え操作と、マクロモードを使った後の戻し忘れだけは相変わらず慣れを要しますが、他に替わるカメラが現状存在しないので許します。外装のクオリティもM型に比肩しそうな勢いです。神様的なMデジタルに対してQには“デキる相棒”みたいな気安さがありますから、使い込まれてフード先端部が傷だらけのQを見かけると、なかなかカッコいいなと思ったりします。結局、カメラ煩悩の解脱は遠いです。

箱根ターンパイクの大観山展望台にて。手ブレ補正を活用した手持ちのスローシャッター撮影で、手前を被写体ブレさせつつ、遠景はシャープに写しました。現場では35mmクロップ(39MP)のフレームラインを見ながら撮り、帰宅後に仕上げの編集を加えて31.2MPが残りました
ライカQ3/SUMMILUX f1.7/28mm ASPH.(トリミング)/シャッター速度優先AE(1/8秒・F13・±0EV)/ISO 100/DxO PureRAW 3(DeepPRIME+光学補正)

近況報告

30歳も過ぎてから始めたクルマの運転ですが、ペーパーゴールドから引き続き、ゴールド免許のまま運転歴4年目を迎えました。最近はわざわざめんどくさいMT車で箱根やら千葉やらに出かけ、写真はラクチンなカメラで撮るという休日を過ごしています。

本誌:鈴木誠