新製品レビュー
キヤノン EOS R100
シンプルな機能で軽快な撮り味 シリーズ最軽量のエントリーモデル
2023年6月21日 08:00
6月22日に発売されるキヤノン「EOS R100」(以下、R100)は、APS-Cサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラです。大口径RFマウントを採用する「EOS Rシリーズ」の、エントリーモデルになります。
ところで、EOS Rシリーズのエントリーモデルと言えば、つい2カ月程前に「EOS R50」(以下、R50)を当サイトでレビューしたばかりです。一瞬頭が混乱してしまいそうになりますが、答えを先に述べますと、R100はR50よりさらに軽くなっており、なおかつ思い切った機能の簡略化を進めたモデルです。お値段もさらにお買い求めやすくなっていますよ。
EOS Rシリーズで最小最軽量
そんなR100の一番わかりやすい特徴は、やっぱり何と言っても“軽いこと”ではないかと思います。
サイズ感的には、同じAPS-Cサイズミラーレスカメラの「EOS Kiss M2」(以下、Kiss M2)やR50とあまり変わりありませんが、R100の質量は約356g(バッテリー、カード含む)とEOS Rシリーズ中で最軽量のカメラとなっています。R50とKiss M2の約387gよりも軽い。“とにかく軽いカメラ”です。
操作系もシンプルで使いやすい
操作系については、概ね先輩モデルにあたるR50のそれを踏襲しているのですが、さらに簡略化を進めてシンプルになった結果、随所に違いを見てとることができます。
シャッターボタン周辺の操作系はR50とほぼ同じ。違うところと言えば、R50にあるISO感度ボタンがR100では省略されていることくらいでしょう。キヤノンならではのスプーンカットは本モデルでも健在で、並み居る上位機種と同時に使っても違和感を覚えることなく使うことができます。
背面のボタン類の配置もほぼ同じ。使用するユーザー層を考慮してのことか、割り当てられた機能に違いもみられますが、それほど大きな変更はなく基本的には同じと考えてよいと思います。
操作系の大きな違いはここだと思います。背面のモニターが完全固定式で非タッチパネル仕様。上下チルト式でもバリアングル式でもなく、そのうえタッチ操作もできないというのは、キヤノンのミラーレスカメラとしては珍しい。価格を抑えるため、操作の煩雑性を整理するため、と捉えることもできます。
また、最新EOSが搭載している、マルチアクセサリーシューは非搭載となっています。ただし、R50とは異なり、従来型の接点となっていますので、社外品のストロボを使いたいという場合には、むしろ汎用性が高いと言えるでしょう。
手動ポップアップ式の内蔵ストロボを搭載しています。ガイドナンバーは約6、充電時間は約5秒ですのでR50と同じ仕様です。後述のオートモードによる多彩な表現を本モデルで実現する際には、必須の機能となります。
ファインダーは約236万ドットと小型軽量なミラーレスカメラとしては標準的。こちらもR50と同じ仕様です。上位モデルより性能は低めになりますが、フィルム時代のエントリーモデルのファインダー性能を知っていれば、驚くほど高い視認性が確保されていることに納得できるのでないでしょうか? ここはEVFを採用するミラーレスカメラの良いところで、液晶モニターしかない機種と比べれば大きなアドバンテージです。
イメージセンサーと画像処理エンジン
搭載する約2,410万画素のAPS-Cサイズセンサーと、映像エンジン「DIGIC 8」の組み合わせはKiss M2と同じです。
画質的には、新世代のイメージセンサーと映像エンジンを搭載するR50の方に優位性があることになりますが、実績のあるKiss M2と同等の画質ですので、解像感などにおいて不満を覚えるようなことはまずないと思います。
常用最高感度はISO 12800と、これもKiss M2と同じ。APS-Cサイズのミラーレスカメラとしては一般的な性能と言えますが、R50の常用最高感度がISO 32000と、1段分以上優れていることと比べるとやや見劣りしてしまいます。
実際にISO 12800で撮影したのが下の写真。同時に比較したわけではありませんが、やはりR50ほど高感度が得意とは言えないようです。実用性という意味なら本モデルでも十分な高感度性能がありますが、もし「エントリーモデルでも高感度性能は重視したい」という希望があるのでしたら、迷わずR50をオススメします。
エントリーモデルならではのオート撮影モード
キヤノンのエントリーモデルでは定番となっている、「撮影モードガイド」や「機能ガイド」は本モデルにももちろん搭載。それぞれの撮影モードや機能の効果を、初心者でも分かりやすいように図と文章で説明してくれます。
初心者向けの撮影モードと言えば、忘れてはいけないのが「シーンインテリジェントオート」。この撮影モードでは、カメラが被写体や撮影するシーンの状況を判断して、露出やISO感度はもちろんのこと、写真の色合いまでも自動的に設定してくれます。
下の画像はシーンインテリジェントオートで撮影したものですが、撮影中にシャッターを半押しすると「クローズアップ(チューリップのマーク)」のアイコンが点灯するとともに、ストロボマークが点滅したので、内臓ストロボを引き上げて撮りました。近接撮影に適したカメラ設定を自動で調整してくれた上に、日中シンクロの手筈も整えてくれたというわけです。
さらに、シーンインテリジェントオートの状態で「SETボタン」を押すと、「クリエイティブアシスト」を調整できるようになります。
クリエイティブアシストは、露出補正や色調調整といった専門的な知識がなくても、スマートフォンのアプリ感覚で(タッチ操作はできませんが)、直感的に写真の雰囲気を変えることができる機能。プリセットフィルターから好みの色調を選んだり、「背景ぼかし」や「明るさ」、「コントラスト」などの項目をスライダーの操作で簡単に調整できます。
以下の動画は、そのクリエイティブアシストの「明るさ」項目を調整してたものです。
シーンインテリジェントオートはキヤノンの多くのデジタルカメラに搭載されている撮影モードですが、本モデルのようなエントリーモデルでこそ便利に活用したくなる機能だと思います。R50との違いは、R100ではシーンインテリジェントオート中で「アドバンスA+」が使えないということくらいです。
4K動画記録も可能
R100で記録できる動画モードの最大は「4K 24p」(3,840×2,160)。フレームレートが24pというのは正直心もとなさを感じますが、EOS Rシリーズ最軽量のエントリーモデルで4K動画が撮れるのは大したものだと思います。
一方、FHD(1,920×1,080)のフレームレートは、24p、30p、60pと充実しています。R100で気兼ねなく動画を撮りたいという場合は、解像度をFHDにして好みのフレームレートを選択した方がよいかもしれません。
動画撮影で注意したいのは、1回の撮影上限時間が最大29分59秒であるところ。長時間の撮影だと途中で記録が止まってしまいますので、気をつけたいところです。
街スナップしてみました
EOS Rシリーズで最小最軽量というだけあって、街に持ち出して撮り歩いてもまったく苦になることがありません。少し前の世代のイメージセンサーと映像エンジンを搭載していますが、そんなことが気にならないのはさすが“キヤノンのEOS”と言ったところでしょう。キットズームの「RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM」の写りもイイ感じです。
街スナップということで、気分を変えて「クリエイティブフィルター」の「ラフモノクロ」で撮ってみました。クリエイティブフィルターもオート撮影機能の1種ではありますが、普通に撮影しただけでは味わえない独自の雰囲気を楽しめますので、本格的な撮影方法にステップアップした後でも、折に触れて気軽に使いたくなります。
クリエイティブフィルターをもう1題。今度は「トイカメラ風」で撮影しました。本モデルは、これらの他にも「ソフトフォーカス」や「水彩画」など、合計10種類のフィルターが用意されています。こうした特殊効果を体験した後に、次は本格的な画像レタッチに挑戦してみるなんていうのもアリかもしれません。
タイサンボクという白くて大きな花をつける高木を撮りました。高いところに花が咲くのでダブルズームキットの望遠ズーム「RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM」の出番です。このレンズも35mm判換算336mm相当まで届く超望遠レンズのわりにはコンパクトで軽いため、R100との相性はとてもよかったです。解像感、階調性、ボケ味といった描写性能も満足でした。
キットズームもよいのですが、そこは豊富なレンズラインナップを誇るEOS Rシリーズのデジタルカメラです。1本くらいは大口径レンズを手に入れて、本格的な大きなボケを味わってみたくなるというものです。今回は「RF50mm F1.8 STM」でウチのネコちゃんを撮らせてもらいました。本モデルは動物の被写体認識AFを搭載していませんが(人物の顔や瞳の認識はできます)、きちんと基本通りにカメラを使えばピント合わせもそれほど難しいものでありません。
まとめ
本モデルのキャッチコピーは「このシンプルさが、ここちよい。」となっています。本音を言うと、使う前はシンプルというより単なる廉価版なのではないかと思っていました。しかし、実際に使ってみると、お世辞でもなんでもなくこのシンプルさがここちよかったです。
まず何よりも小さくて軽い。これだけで、バッグから出し入れする億劫さから大きく解放されます。当然、持ち運びもちっとも苦にならないので、身の回りにいつもあるカメラとして最適でした。
モニターが固定式でタッチ操作ができない、被写体認識AFがない、といったシンプルさゆえの不自由があるのは事実ですが、そもそも溢れるカメラの多機能に辟易としてしまうこともありますので、むしろこの割り切ったシンプルさこそが本モデル最大の長所と言えるのかもしれません。
さらに嬉しいのは、本モデルがレンズキットで10万円を切る価格になるということ。キヤノンは必要な機能の整理と価格との整合性をとるのが実に上手いメーカーですね。エントリーモデルはかくありたいと思いました。