新製品レビュー
Panasonic LUMIX S5II
シリーズ初の像面位相差AFを試す
2023年4月14日 08:00
LUMIX S5IIはLUMIX Sシリーズのミドルレンジとして、手堅くつくられたモデルである。新開発のイメージセンサーは有効画素数が2,420万画素。LUMIX S1Rのように5,000万画素前後とするフルサイズモデルも少なくないが、2,420万画素でも必要にして十分。A3ノビサイズ以上の大判プリントでも解像度に不足を感じることがなく、データの大きさからハンドリングもしやすい。保存する際もストレージの容量を圧迫することが少なくなるため、実用的な画素数と言っていいだろう。
ちなみにLUMIX Sシリーズには、フラグシップで4,730万画素の「LUMIX S1R」、同じく2,420万画素の「LUMIX S1」、動画撮影に軸足を置く「LUMIX S1H」をラインナップ。さらに、LUMIX S5IIの派生版として動画記録により重きを置いた「LUMIX S5IIX」が本年6月に発売予定となっている。
大きさを感じないルックス
「LUMIX S5II」の外形寸法は約134.3×102.3×90.1mm・約740g(バッテリー、SD含む)。従来モデル「LUMIX S5」の約132.6×97.1×81.9mm・約714gと比べて多少増加している。大柄な部類に入るボディだが、それを感じさせないルックスである。マウントはライカおよびシグマと共通とするLマウントを採用する。レンズ装着の指標の位置は検討の余地がありそうだ。
余裕のあるボタン、ダイヤル配置
ミドルレンジのミラーレスとしては大柄なボディのLUMIX S5II。そのメリットと言えば、操作部材などのレイアウトに余裕が生まれ、操作性の向上に一役買っていることだ。小型化を図ったカメラのなかにはボタン、ダイヤル類の間隔が小さくカメラを構えた右手での操作がしにくいものや、操作する指が迷うこともある。本モデルはそのようなことは少なく扱いやすいカメラと言える。
特に実感するのがフォーカスエリアを選択するジョイステイック。指の当たる部分が大きく、長時間撮影しても操作する右手人差し指の腹が痛くなるようなことがない。小型軽量とするか操作性を優先させるかはトレードオフであるが、本モデルのようなコンセプトも悪くないように思える。
ピントの山がつかみやすいEVF
EVFがクリアで見やすく思えたのも好感の持てるところ。解像性能は368万ドットと最近のモデルとしては一般的な値であるが、コントラストが極めて高く、すっきりとした見え具合を実現。ピントの山の掴みやすさなどもライバルよりも秀でているように思える。また、ファインダーアイピース周りのアイカップは大きく遮光効果が高いことも見え具合のよさに寄与していると述べてよいだろう。積極的にファインダーに接眼して撮影したくなるカメラである。なお、液晶モニターはバリアングルタイプ3インチ・184万ドットとしている。
フレアを抑制して高画質を実現するイメージセンサー
イメージセンサーはローパスフィルターレスであり、センサー表面にAR(Anti Reflection)コーティングが施されている。効果として逆光撮影などで発生しやすいセンサー面での反射を抑制している。
このイメージセンサーのもうひとつの特徴と言えば、ローリングシャッター歪みをこれまで以上に抑えていることだ。
センサーからの読み出し速度の高速化により、多少動きが速い被写体でもほぼ気にならないレベルで記録することが可能。しかも最高コマ速は30コマ/秒を実現する。クラシックのコンサートやオペラ、バレエ、はたまた結婚式など静寂性を要求されつつもカット数の欲しい撮影では心強い見方となりそうである。
なお、電子シャッターでの最高速はメカシャッターと同じ1/8,000秒としている(メカシャッター設定時の最高コマ速は9コマ/秒)。
良好な高感度特性
高感度性能に関して、ISO 3200まではノイズの発生はよく抑えられベース感度であるISO 100と遜色ない仕上がり。それ以上の感度となるとわずかずつとはなるが、色ノイズ、輝度ノイズとも増していく。コントラストも少し高くなっていくようだ。ただし、最高感度であるISO 51200でも階調および色調の破綻らしい破綻はない。解像感の低下についてもさほどではなく、良好な高感度特性と述べてよいだろう。
バッファメモリは従来機の4倍
キーデバイス以外として、バッファメモリの強化は忘れてはならない部分だ。メーカー発表値となるが、先代「LUMIX S5」と比較し、約4倍の容量を持つバッファメモリを搭載。RAW+JPEGの同時記録で連続撮影を行なった場合など最大撮影可能コマ数が大幅に向上している。
スポーツなどの動体、野鳥、動物、ポートレートなどの撮影では、その恩恵は小さくなく、バッファフルとなり撮影が止まってしまうようなことは皆無と思われる。これまで高速連写を得意とする一部のハイエンドスピードモデル以外致し方ないところと思われており、我慢を強いられることも少なくなかった部分だけに、連続撮影の多い写真愛好家は注目しておきたい。
手ブレ補正は最大6.5段補正
従来モデル同様、5軸対応センサーシフト方式の手ブレ補正機構を採用する。カメラ単体で最大5.0段の補正効果を達成し、さらに手ブレ補正機構を内蔵するレンズとの組み合わせでは最大6.5段の補正効果が得られる。また従来では補正しきれなかった大きなブレを補正する「アクティブ I.S.」を搭載。手持ちでの動画撮影時に有効で、従来機と比べ約2倍のブレまで補正ができる。特に歩きながらの撮影に効果的である。
最大9,600万画素のハイレゾ撮影
そして、LUMIX S5IIではこの機構を応用したものとして最大9,600万画素相当の画像が得られる高解像度モード(ハイレゾモード)を新たに搭載。イメージセンサーを微動させながら8回連続で撮影を行い、カメラ内で自動合成処理を行う。三脚を必要とし、動体の撮影には適さないものの、合成精度は極めて高く風景撮影や物撮影などでは積極的に使ってみたい機能である。
AFセンサーはLUMIX初の像面位相差方式に
像面位相差方式としたAFはある意味トピックといえるだろう。「LUMIX S1R/S1」も含め、パナソニックのデジタルカメラはこれまで全て、AFスピードで不利と言われるコントラスト方式を採用してきたため、待ち望んでいたLUMIXユーザーも少なくなかったことだろう。ちなみにプレスリリースなどを見ると、同方式のAFを採用したことを高らかに謳っているようだが、随分以前からライバルの多くがそうであることを考えると、むしろようやくパナソニックも重い腰をあげてくれたかと思わずにはいられない。
実際使ってみると、AFスピードでストレスを感じることはほとんどない。コンティニュアスAF(AF-C)による動体撮影でも被写体への喰いつきは良好で、ようやくライバルたちに追いついたように思える。なお、被写体認識機能としては、顔と瞳以外に人体、動物にも対応。クルマや航空機、野鳥といった被写体には残念ながら対応していないが、今後のファームアップに期待したいところだ。
動画について
静止画撮影では直接関係のない部分であるが、動画撮影機能に一際力を入れるパナソニックのカメラらしいのが、ボディ内に放熱構造を採用していることだ。
これは動画撮影時にイメージセンサーをはじめキーデバイスの発熱を抑えるもので、ファインダー部分に放熱ファンを持ち、前面下部と両脇にヒートシンクがある。放熱ファンは外からは見えないが、スリット状のヒートシンクが外観上のアクセントにもなっている。
ミラーレスでの動画撮影では、熱対策が課題となっており、富士フイルム「X-H2/H2S」に至ってはカメラ背面に装着する外付けの冷却ファンを純正オプションとして用意していたり、一部のミラーレスに装着できるサードパーティ製の冷却ファンもあると聞く。今回のLUMIX S5IIの冷却ファンとヒートシンクはそれらをさらに一歩すすめたものと言えるだろう。なお、ヒートシンクを見ると水やホコリの侵入が気になるが、LUMIX S5IIは防塵防滴構造としているので、心配は無用だ。
まとめ
冒頭にも記したように手堅くまとまったLUMIX S5II。プロやアドバンスドアマチュアは当然ながらが、カメラの扱いに慣れ始めたビギナーへも機能的に末長く使えるカメラとしてオススメできる一台である。また、比較的熟れたプライスもこのカメラのポイント。
同じミドルクラスに位置付けされるキヤノン「EOS R8」は、「RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM」の付属するレンズキットが同社オンラインショップで税込29万3,700円であるのに対し、LUMIX S5IIは「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」の付属するレンズキットが同じくメーカーオンラインショップで税込28万1,160円と1万円以上リーズナブル。
LUMIX S5IIにはボディのつくりのよさに加え、ジョイステイックやコントロールダイヤルが搭載されているなど使い勝手は、マルチコントローラー(=ジョイステイック)やサブ電子ダイヤル2(=コントロールダイヤル)を未搭載とするEOS R8を大きく上回り、お買い得感は極めて高いと述べてよいだろう。
加えて今年3月1日にフルサイズ対応のLUMIX Sレンズの一部はメーカー希望小売価格が値下げされており、このことも強く訴求できるものである。こちらも冒頭で記しているが、本年6月には、LUMIX S5IIにRAW動画出力に対応するLUMIX S5II Xが登場。値段は1割ほど高くなるようだが、ブランド名がブラックアウトされているなどLUMIX S5IIには異なる外観上のカッコ良さがある。
どちらを買えばより幸せになるのか悩むのも悪くなさそうだ。
モデル:透子